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「黒いチューリップ(アレクサンドル・デュマ著)」
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「黒いチューリップ(アレクサンドル・デュマ著)」

2021-02-28 19:00


    ・時代背景は長くネーデルランド(低地)と呼ばれてスペインの領地だった現在のオランダ(とベルギー)が貿易の要衝であったことから富を蓄えて市民階級が勢力を握り、宗教革命が起きるとすぐそっちに行って、その分強く弾圧されたのでさらに強く反発してネーデルランド独立戦争というのが起きて、ネーデルランドも北部七州と南部十州に分裂して北部七州が独立してネーデルランド合衆国・オランダが誕生する。この間オランダを率いたのがオレンジ公ウィリアム。英国王室の血を引いてもいる。一世は暗殺されるが後を継いだ二世がウェストファリア条約というのを結んで独立を勝ち取る。
     だがスペインからは独立したが今度はフランスの侵略を受けてオランダ戦争というのが起きる。その直前にはまだ青年のオレンジ公ウィリアム三世ではなく、できたばかりの共和国の政治家が実権を握っていたのだが、総理大臣のジャン・ド・ウィットという人物がその中心にあった。
     彼はフランスとの戦争で叩きのめされ、七州総督制度というのを廃止するのだが、これはウィリアム三世の政治基盤を奪うものであって、オレンジ党と呼ばれる三世の支持者たちの怨嗟の的になる。それ以外にもいろいろとフランスに融和的な政策をとったため、三世を立ててフランスと戦おうという人々から何度も暗殺されそうになるが切り抜ける。
     すると暗殺で駄目なら誹謗で倒せということになって、やはり政治家だった兄コルネイユが冤罪で三世の暗殺を企てたとして逮捕され、それに連座する形で辞任させられる。
     コルネリウスは先に拷問に屈しないまま監獄に入れられていたが追放が決まり、ジャンはこの拷問でろくに歩行もできなくなった兄をもらい受けてハーグ市を脱出しようとするが激怒した民衆に囲まれて兄と共になぶり殺しになる。この虐殺シーンはすさまじい。肉を一片一片剥がされて肉屋で売られてしまい、骸骨となって広場に晒しものになるというものすごさ。
    デュマはフランスの人なのでこの兄弟を剛直の正義の人物と描いているが、オランダの人からは裏切り者扱いで必ずしも評価されていないらしい。
     三世にとってはジャンは政治の師でもあったのだが、オランダの真の独立のためには、みたいに見殺しにする。
     日本で言えば井伊直弼みたいな感じだろうか。

     という史実に基づいたらしいシーンからはじまって、本編に入っていく。

     そんな政治的な動きの激しい都会から離れたドルトレヒトという田舎町で、のんびりチューリップを作っているコルネリウス・ファン・ド・ベルルという青年がいる。彼はこの町の富豪の跡取りで、働かなくても毎年地所から莫大な収入があり、さらに祖父と父の遺産として40年分の収入に当たる遺産を継承している。
     ウィット兄弟の生まれ故郷もドルトレヒトで、兄の方はここの市長も務めたことがある地元の名士。なので地元の名家であるベルル青年の親とも交流があって、青年の名付け親になっている。
     彼はある重要書類を青年に渡して保管を頼んでいたのだが、自分が無実の罪で囚われて処刑されるだろうとわかったところで、青年を巻き込まないようにあの書類は焼き捨てるように、と伝令を出す。

     青年は莫大な財産を使って植物や昆虫の研究を始め、チューリップ栽培に行き着いた。この時代はチューリップが非常にもてはやされ、その新種発見や品種改良に成功した者には名誉が与えられる。青年はたちまち五つの新種を発見する。
     というわけでチューリップは名誉と富をもたらすものになっている。ハルレムという都市にチューリップ協会というのがあって、ここが黒いチューリップを見出した者には莫大な賞金を出すと発表する。
     青年はこれを聞くと彼の知性と財産を注ぎ込んで、黒いチューリップの開発にほぼ成功する。球根の側芽と書いてあるけど、これを植えてきちんと育てれば黒いチューリップが咲くこと間違い無し、というものを三つ作り出す。あとはこれを育てればよい。
     だがここで落とし穴があり、青年の隣人のイザーク・ボクステルという人物もチューリップ研究家でいくつも新種を発見するその世界ではそこそこ知られた人だったのだが、青年がチューリップ栽培をはじめるとその功績はあっという間に忘れさられ、青年の建てた温室の屋根に自分のチューリップ畑の日射しが遮られたりすると青年に一方的に敵意をつのらせるようになって、青年の畑に猫を投げ込んで荒らさせたり、青年を何とか葬れないかとチューリップ作りも忘れて青年を見張って落ち度を探したりするようになる。そして彼は青年の名付け親が逮捕されたのをきっかけに青年をこの協力者として告発し、伝令が来たのがぎりぎりで青年が処分できないでいたコルネイユの手紙が発見されたことによって青年も逮捕されて収容所に送られてしまう。この時青年は黒いチューリップの球根を三つ持っている。
     ボクステルはこの球根を奪うつもりだったのだが当てが外れ、この球根をなんとか手に入れようと死刑執行人を買収する。青年の死体から奪おうというのだ。

     だがオレンジ公ウィリアム三世の恩赦がでて青年は死刑を免れ、終身刑の囚人としてレーヴェスタインの監獄に移動させられてしまう。ボクステルもこれを追う。ボクステルは今度はジャコブ・ジゼルという偽名を使ってグリフュスという看守の老人を抱き込んで球根を狙う。

     このグリフュスは性根の曲がった人物でベルル青年に嫌がらせばかりするのだが、一緒に牢獄に住み込んでいるグリフュスの娘・ローザは心根が優しく、ベルル青年と恋に落ちる。

     青年はグリフュスに球根の一つを発見されて踏み潰されたりするが、ローザに球根の一つを託して栽培方法を教え、花を咲かせることに成功する。だがこれをボクステルに奪われてしまう。チューリップ協会へ向かうボクステルをローザは馬で追い、どちらが本当の持ち主かを争うことになるのだが、ボクステルは言葉たくみに言い逃れる。
     その裁定にオレンジ公が臨席することになるのだが、ローザが証拠として三つ目の側芽を陛下に差し出すと、その包み紙がめぐりめぐってこの場にあることになった、ベルル青年の無実をコルネイユが証明した手紙で、同時に黒いチューリップが青年のものである証明にもなっている。オレンジ公はベルル青年の釈放を命じ、黒いチューリップのお披露目式に青年を呼び寄せてローザとの結婚式に変える。ボクステルはこのことを知ってショック死してしまう。

     結婚した二人は花の栽培にいそしみ、二人の子供にも恵まれる。

     オレンジ公はこの頃、オランダ戦争でフランス侵略軍と戦っている。彼は後にイギリスに渡って名誉革命の立役者となり、イギリス王ウィリアム三世となる。

     実際にはローザみたいな娘が監獄にいることは無いのだろうけど、それを言ってはお話にならない。



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