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「蒲生邸事件(宮部みゆき著)」前半
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「蒲生邸事件(宮部みゆき著)」前半

2021-03-02 19:00


    ・2月26日にレビュー上げようと思っていたけど忘れちゃって今頃。

    ・主人公の受験生は上京しての大学受験に失敗して、今は予備校受験のために国会議事堂に近い平河町の某ホテルに泊まっている。ここで彼は非常に暗い雰囲気を持った宿泊客を目撃する。
     ホテルのロビーには由来みたいなものが書かれたプレートや写真が飾られていて、この敷地には戦前は陸軍大将の蒲生憲之(のりゆき)という人物の屋敷があったという。蒲生大将は優秀な軍人で順調に大将まで出世したが病を得て予備役に退くと二年後の昭和11年2月26日に長文の遺書を残して自決。この遺書は公表されなかったが戦後発見されてその後の対米開戦や敗戦に至る経緯をほぼ見通した、軍の現状を憂いた内容で先見性に満ちていた。
     そのことから慧眼の人物として後世高い評価を受けているという。

     主人公は受験生だけど2・26事件って何?という感じで関心は無い。その彼はホテルの火事をきっかけに暗い雰囲気を持った男に助けられ、2・26事件直前の蒲生邸に時間遡航をして当時の日本がどんなだったのかを体験することになる。みたいな話。

     以下覚え書き。

    第一章 その夜まで
     主人公尾崎孝史(おざきたかし)がホテル火災に遭遇し、逃げ遅れて命が危ういところを時間旅行能力を持った男に救われる。男は時間を遡って孝史と共に過去に逃げる。
     そこは蒲生邸で、男はある目的を持って平田次郎という仮名でこの屋敷に使用人として住み込んでいるらしい。時間旅行は空間的には移動できず、孝史は火傷も負っていて身体に負担がかかるためすぐに現代には戻れないし、空間が同じだとホテルが焼けて消防や報道や野次馬の目の前に戻ることになってしまう。この作品での現代は平成六年。
     たどり着いた時間は昭和11年2月26日未明であと30分で2・26事件がはじまるというタイミング。これから4日間はこの一帯は封鎖されて、屋敷からもほとんど出れないような状態になる。つまりそれまでは帰りようがない。
     平田はそれまでは君は俺の甥ということにしよう、と使用人として与えられている部屋にかくまってくれる事になる。屋敷には向田ふきという若い女中がいて、平田のことは信頼しているらしく黙って火傷の手当てをしてくれる。孝史は鉄工所で働いていたが虐待されて火傷をさせられておじの平田のところに逃げ込んできた、怪我が治るまでおいてやってほしい、みたいな設定だ。平田もここに来たばかりで、黒井という人物の後釜らしい。

    第二章 蒲生家の人々
     平田は使用人としての仕事があるのであまり孝史のそばにいられない。じっとしているように言い含め、この時代の知識をざっと教えて部屋を出て行くが孝史は勝手にあたりをうろついて、ふきに見つかってしまう。孝史は親切なふきに好意を持つが、現代人としてふきはこれからの歴史を何も知らない、みたいに優越感のようなものも感じている。
     そんなことをしているうちに、この屋敷には60代の蒲生大将の他娘の珠子(たまこ)、息子の貴之、蒲生大将の自称後妻の若い女鞠江(まりえ)、蒲生大将の年の離れた弟で40代、商売をやっている嘉隆(よしたか)、年配の使用人、ちゑがいることがわかる。大将は病気のためめったに自分の部屋から出ないし階下に降りることもないという。
     珠子は20歳くらいに見えてふきとさほど年齢が変わらない様子。年の割にちょっと天真爛漫で子供じみたところもある、いかにもお嬢様という感じだが向こうっ気は強い様子。タクシー会社の社長の所に嫁に行くことが決まっているらしいが内心本人は不服の様子。
     貴之は東京帝大を出ているとかで20代後半。ほっそりしていてふきはこの貴之に心酔している様子で孝史はちょっと面白くない。陸軍大将の長男にしては物柔らかな雰囲気だが、嘉隆からは臆病者の役立たずみたいに陰口を言われている。
     どうも嘉隆と鞠江は不倫関係にあるようで、駆け落ちを計画していたようだが2・26事件の発生を知って考えを変える。この決起が失敗すれば兄は自決するだろう、そうすれば財産は俺たちのものだみたいな。蒲生大将は皇道派というやつで、決起した青年将校と考えが近いらしい。昔はもっとイケイケだったが最近は病気のせいか気が弱くなっているみたいな。
     孝史は「時をかける少女」や「バック・トゥ・ザ・フューチャー」は知っているので自分がここに来たことで歴史が変わるのでは、と平田に尋ねるが、平田は細部を変えても大枠は変わらないという。平田自身が自分の知る大事故などを防ごうと何度も試みたが、犠牲者の顔ぶれは変わっても事故そのものは必ず同じような時期に起きてしまうらしい。平田はそのことに深い徒労のようなものを感じている様子。
     孝史はこんな時代はもう嫌だから早く現代に戻してほしいと平田に訴え、平田もその方がいいだろうなと同意する。
     だが孝史を抱えての時間遡航中、平田は途中の時代に落下してしまう。そこはちょうど戦争中で、蒲生邸が爆撃された直後の昭和二十年五月二十五日。孝史は焼夷弾で火だるまになって死んでいくふきを目撃してしまう。
     平田は力を振り絞って昭和十一年に戻るが、身体に負担がかかったのか意識不明になってしまう。貴之に発見された二人はふきに手当てを受けるが平田の意識は戻らない。貴之は平田たちをとがめることなくふきに任せた様子。医者も呼んでくれたらしい。
     ラジオでは2・26事件(まだそういう名前はついていないけど)のニュースをやっている。その時一発の銃声が響く。

    第三章 事件
     貴之と孝史は思わず飛び出して、銃声の聞こえた二階に向かう。それを珠子に見つかるが、珠子は孝史を貴之の学友と誤解して一緒に行くことに。
     蒲生大将は机に突っ伏して死んでいる。拳銃自殺したらしいがその銃が見当たらない。先に部屋に入って脈を確かめたらしい貴之は最初から無かったという。
     家のものが居間に集まって今後のことを話し合う。孝史の提案で使用人のふきとちゑも同席することになる。ここで珠子と鞠恵が非常に仲が悪いことがわかる。平田はようやく意識を取り戻すがまだ起き上がれない。
     平田の治療に医者が来るはずなので、蒲生大将の検視も頼むことにする。この時貴之は蒲生大将の部屋で何かを探していたような怪しいそぶりを見せる。
     医者がなかなか来ないのでどこかで足止めされているのかもしれない。孝史は申し出て迎えに出ることにする。
     孝史は武装した兵隊に見つかって尋問されるが、蒲生大将の屋敷から来たと言うと態度がやわらぎ、いろいろあって葛城という医師に会うことができる。孝史は兵士たちが若く、決して乱暴ではないことに気付く。
     この老医師は気骨ある人物で、兵士の前でも軍部批判をしたりもするが、蒲生大将とは古い付き合いらしい。中隊長の安藤輝三大尉という人が許可を出してくれて、孝史は医師を連れて蒲生邸に戻る。兵士も見張りをかねてついてくるが、屋敷には入らないで引き返してゆく。
     医師は平田を診察し、血圧が高く不整脈があると指摘するがすぐにどうこうということは無いだろう、と孝史を安心させる。平田は眠っている。おそらく時間旅行の無理のためだろうと孝史にはわかっている。
     葛城によれば貴之も軍の専横を憤る気骨ある人物だったのだが、ある事件以来無気力に変わってしまったらしい。
     陸軍には皇道派と統制派の主導権争いがあり、蒲生大将は皇道派の人間に尊敬される存在だったのだがある時皇道派をたしなめるような発言をして裏切り者扱いされるようになったという。貴之は蒲生大将の命を受けて動いたが、何か失敗したらしい。
     平田の診察がすむと貴之は葛城医師に蒲生大将が自決したことを伝え、公表をしばらく待ってもらう。この時貴之が何かを隠してるようで、孝史はもしかしたら蒲生大将は自決ではなく貴之に殺されたのでは、と疑いを持つ。そういえば銃も見つからない。
     葛城医師が仕切る形で屋敷内の人間たちに聞き込みをするが、珠子と嘉隆・鞠江がお前が犯人だ!みたいに激しく衝突して一時お開きになる。この時孝史はもしかしたら珠子が犯人で、貴之が妹をかばおうとしているのかもと思いつく。
     この時に孝史は、貴之から鞠恵が後妻ではなくて、勝手に押しかけて来た行きつけの料亭の仲居に過ぎないことを聞かされる。どうも嘉隆にいいように利用されているみたいな。本当の妻だったとしてもこの時代の相続権は貴之にしか無い。
     平田はだいぶ回復してきたようだが左半身に麻痺がある。孝史は平田に意識が無い間に起きたこと、特に蒲生大将の自決を伝えるが、その時もしかしたら平田にも大将を殺せたのではないか、と思いつく。時間旅行すればアリバイは関係ないのだ。
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