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「黒の放射線(中尾明著)」前半
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「黒の放射線(中尾明著)」前半

2021-04-16 19:00


    ・盛光社から鶴書房と名前が変わった出版社から出ていたジュニアSFシリーズというのがあって、学校の図書館にあったので読んでいたことがある。「時をかける少女」なんかも入っていた。他には少年エスパー戦隊、時間砲計画、ぽんこつタイムマシン騒動記、新世界遊撃隊、リュイティン太陽、続時をかける少女、いて座の少女、眠りの星レア、見えない者の影、ねじれた町など読んだが読みそこなってそのままのものも多い。

     「黒の放射線」は読んだけど内容はかなり忘れている。ソノラマ文庫版が古本屋にあったので久々に読み直し。読むとなんか今の時代にぴったりな内容で、NHKあたりでドラマにするのにちょうどいいような気がする。

     全世界で突然原因不明の病気が流行する。その名も「黒あざ病」。成長期の若者が多く発病し、全身に黒いあざが広がるというもの。最初のうちは成人はかからないということで大人たちはかわいそうに、と言いながらも余裕だが次第に年齢の高い者にも患者が出るようになるとパニックになる。白人は黒人の仕業だ!みたいに言い始めて人種間の対立も激化する。あざは皮膚表面だけではなく筋肉部分まで及んでおり皮膚移植も不可能だという。つまり治療法は無いしあざは止まらずに広がっていく。
     あざができる以外の症状は今のところなく命に別状はない様子だが顔にもできるので罹患した少女にとっては人生の終わりみたいにも思える。
     伝染病ではないらしいのだが病気にかかった人を人々は気味悪がり、あからさまにいじめや差別をするようになったりもして患者の多くは不登校になるが、次第に患者の人口が多くなって世間の雰囲気が黒あざ病で当たり前、と変化すると登校するようになっていく。
     一方で我々の仲間になれば黒あざ病にならない、と主張する宗教団体も出現して、確かにその信者からは患者が出ない。財力のある人々はその教団に大金を払って次々に入信するが教祖はどこか怪しい。
     黒あざ病にかかった人たちが一斉に操られるように集団で行進をはじめるという現象が起きはじめ、最初は短時間で我に帰るが次第に時間が長くなり、ついに大勢の人が海に向かって行進して溺死するという大事件に発展する。
     この現象は宇宙線の変化と連動しているらしいとわかるが相手が宇宙線では防ぐすべはない。平凡な女子中学生だったヒロインは親友も母親も失い、いとこで放射線科の医師をしている青年と行動を共にするようになってこの事件の真相を知ることになる。
     みたいな話。以下章立てに従って簡単に。

    ・親友の欠席
     東陽中学二年B組の学級委員の松田ナオミは、親友の庄司礼子が10日間にわたって欠席を続けているのを案じている。風邪をこじらせたと聞いているのだが、見舞いに行っても顔も出さず、旧知の礼子の母親も追い帰さんばかりの態度をとる。
     気になった彼女は裏口からしのびこんで礼子の部屋を窓からのぞきこむと、顔に大きな黒あざができた礼子の姿があった。

    ・いとこの信一
     ナオミの家にいとこの堀江信一が遊びに来る。彼は東都大学の医学部を出て、今は附属病院で放射線科に勤務している。ナオミは理由は書いてないが母一人子一人の家庭なのでこの信一が兄であり父親のような存在になっている。信一は雑談として最近成長期の子供に黒いあざができる事例が増えていることを話題にする。今のところ治療法が無いらしい。ナオミは迷った末に親友の礼子もその病気らしいと話す。

    ・家出
     そこに礼子の母から電話が来る。礼子が遺書を残していなくなったらしい。ナオミと信一は礼子の家に行き、発病の経緯を聞く。医者にもみせたが原因も治療法もわからず、礼子は絶望したらしい。二人は礼子の母と一緒に捜索願を出しに警察に行くことにする。

    ・東京湾の死体
     警察で書類を提出したところ、東京湾に同じ年ごろの少女の水死体が上がったということを三人は聞かされる。顔には黒いあざがあるという。現地に確認に行くが、遺体は礼子ではなかった。礼子の母は帰宅する。信一は病院に行き、ナオミも帰宅。ナオミの母は礼子からナオミにあざが伝染しないか心配するが、黒あざ病の患者が発生していることが初めて夕刊に出ると母は患者に対して無理解な発言を繰り返す。

    ・黒い奇病
     東京湾の少女のことは大きく報道され、黒あざ病も周知のこととなる。礼子の発病と家出のことも先生からクラスメートに伝えられ、ナオミも礼子を探してほしいと訴える。それから十日ほどすぎると、学校のどのクラスでも二割ほどの長期欠席者が出るようになる。クラスの長田修二は手鏡にマジックで黒いあざを書いてナオミの顔にあざができたと思わせるいたずらをしてナオミに平手打ちされる。信一が久々にやって来て患者の年齢層が上がってきたと告げる。ナオミの母も自分と同じ38歳の患者が出たと聞いて不機嫌になる。
     信一は医学界だけではなく科学者を集めた対策本部が発足して調査をはじめ、まだ関連は不明だが宇宙線の量が増えているという報告があったと教える。治療法の研究も続けられているという。

    ・学級委員の活躍
     文部省から黒あざ病を理由にした病欠を認めないという通達が出る。教師にも生徒にも適用される。ナオミは20人ほどいる欠席している生徒の家を訪問して登校をうながす役目を担任の先生に手伝うよう依頼され、長田修二の家へ。手鏡のいたずらのこともありナオミに会いたがらない修二だが、クラスで20人が同じ病気で、今大丈夫でもいつかかるかわからないことをナオミが説明すると登校すると約束してくれる。
     続いて浅井恵子の家へ。ミス東陽中と呼ばれる美人で児童劇団所属。CMにも出ているがちょっと美人を鼻にかけ高慢なところがある。だが恵子はドーランを厚く塗り、家族ぐるみであざができていることを認めようとしない。ナオミが担当した5軒のうち、恵子以外は明日から登校することになった。

    ・ママの背中
     帰宅したナオミは母の背中に黒いあざがあるのを見つける。母はショックで横になり、ナオミは信一に連絡する。母は強いショックを受けていたが信一が日常生活に影響は無く、既に人口の二割が発病していると説明するとようやく落ち着きを取り戻す。

    ・黒あざ組の登校
     翌日、12人の黒あざ病の生徒が登校してくる。修二をはじめナオミが説得した4人もやってくる。恵子は来ない。担任の平井先生はこの病気が人にうつるものでは無いことを説明し、自分もいつかかるかわからないが発病しても休まないと決意を述べる。だがやはりクラスの雰囲気が暗い。小山治という生徒が修二の隣は嫌だ、黒あざ病同士で並べと言い出して喧嘩になる。ナオミが貴方だっていつかかるかわからないでしょ、と仲裁すると、治は自分はSL教団の信者だから絶対にかからない、と胸をはる。

    ・うたがわれた黒人
     突然地響きがして言い争いは中断する。学校の近所にあるアフリカ連邦大使館で爆発があり、火の手が上がる。ニュースによれば黒あざ病は黒人の仕業だと決めつけるテロ組織が爆弾を仕掛けたものらしい。大使は無事だったが職員が2名死亡、3名重傷と報道される。同様の事件が世界各国で発生している。黒人は発病してもさほど目立たないということも白人から見れば腹立たしいらしい。著名な黒人の細菌学者・キンダー博士が発病したエレーヌという白人の女子大生に撃たれ重傷を負うという事件も起きる。博士はこの病気の原因を調べる最前線の人間なのだが、エレーヌは博士が黒あざ病のウイルスを培養したと主張する。もちろん事実ではない。同じようなデマがいくつも流れ、衝突も拡大する。

    ・黒あざの行進
     東陽中では全校生徒603名のうち150名近くが発病。だが百名ほどが教室に戻る。ナオミは小山治のような生徒が黒あざ病の生徒とトラブルを起こさないように仲をとりもつような立場になる。世間の雰囲気が黒あざ病をからかうのは卑劣で恥ずかしいことだ、という方向に変わっていく。だが原因も治療法もわからない。黒あざの出来た人たちも化粧でごまかすことなく、堂々とあざを見せるようになる。テレビにも黒あざのあるタレントが大勢出演するようになり、浅野恵子もあざを見せ、むしろそれを売り物にしてCMに出演するようになる。
     ナオミの家を礼子の母が訪ねて来る。彼女の顔にも黒あざがある。礼子から「自分のことは心配しないで」とだけ書いた手紙が届いたのだという。住所は書かれていないが下田の消印になっている。礼子の母は既に下田に行って現地の警察とも相談したが手掛かりは無いのだという。礼子に下田に住む知り合いもいないという。そんな話をしているうちに突然礼子の母もナオミの母も話を中断して立ち上がり、靴もはかずに裸足で外に出て行ってしまう。夢遊病者のようである。ナオミが後を追うと、同じように歩いている人が大勢いてみんな黒あざがある様子。信号も無視して同じ方向、南に向かって黙々と歩いていく。ナオミも母のあとを追おうとするが、歩く人波にはばまれて見失う。だが10分もすると突然行進は終わり、人々は我に返ったように帰宅をはじめる。母も家に戻って来るが、全く記憶が無いという。母は黒あざ病のせいだと不安そうにしている。
     
    ・校庭は大こんらん
     東陽中学は明日から夏休み。終業式が行われている。前方に並ぶ先生にも顔に黒あざのある人が三名。校長先生も見えないところに黒あざがあるらしい。
     突然校長先生が訓話を中断する。壇から飛び降りて生徒の列に割り込むように歩き出す。黒あざのある三人の先生もそれに続く。黒あざのある生徒も動き出す。約百名がひとかたまりになって校門を目指し歩いていく。ロボットの群れのようだ。だが今回はすぐに行進は終わり、校門を出る前に散会する。
     小山治が見ろ、黒あざ病のやつらは頭もおかしいんだ!と叫ぶ。ここには書けないような単語も使う。治はあすからSL教団の施設に家族全部で泊まりに行くのだと言い、ナオミを教団に勧誘する。ナオミは断るが、その施設が下田にあると聞いて礼子を思い出す。
     終業式が終わるとナオミは信一のいる病院に向かう。ここは今黒あざ病対策本部みたいになっていて、信一は中心メンバーのひとりみたいな。ナオミは行進のことを信一に話し、母もそれに加わったことを伝える。
     信一は別室にナオミを連れて行くとあるグラフを見せる。宇宙線の強さを示すというそのグラフが、突然はね上がるように増大した時間が行進の発生した時間と一致するのだという。行進を防ぐには睡眠薬で眠らせ、時間が過ぎるのを待つしかないらしい。国民の二割という全患者を入院させるだけの病床は既に無い。政府は睡眠薬のアンプルを各家庭に配ることにしたという。ナオミは信一からこれを渡される。
     
    ・狂った地球
     黒あざ病による行進は頻発するようになり、時間も20分ほど続くなど長くなる。患者は交通や医療、治安や教育、報道関係といった職場から事実上締め出される法律ができる。つまり患者は職を失った。日本は世界に先駆けてこの処置をとり、交通事故を未然に防いだと評価される。人権問題だとこれを非難したかどうかは書かれていないけど、そうしなかったイギリスでは飛行機の操縦士・副操縦士とも黒あざ病だった旅客機が墜落して客船を巻き添えにした事故が起きて飛行機の150人、客船の380人が死亡する。船から行進して海に落ち溺死する者も増える。フランスでは実弾を使った軍事演習場に行進する民間人が侵入し、400名以上が地雷で爆死する。ヨーロッパでもアメリカでも行進による惨事が起き、犠牲者が増えていく。

     一方で対立していた黒人と白人が肩を並べて行進する皮肉な現象も起きる。ブロードウェイでは有名な舞台女優が公演中に発生した行進によって観客に踏み殺される。この頃には黒あざ病による行進は、操り人形を思わせることからマリオネット病と呼ばれるようになっている。

    ・母の死
     黒あざ病対策本部の研究所が下田に開設され、信一はそちらに異動することになる。別れのあいさつに来た信一。ナオミとナオミの母は信一が東京を去ることに心細さを感じる。
     礼子の手紙の消印も下田だった。ナオミは礼子の手がかりをみつけたら知らせてほしいと信一に頼む。門まで信一を見送りに出たナオミはそのままふらりと近所の商店街に出るが、その商店街の人波がやけに多い。これは黒あざ病の行進だ、と気付く。
     ナオミは母にアンプルの睡眠薬を、と思って自宅に戻るが母の姿は無い。そこに行進に気付いた信一が戻ってくる。ナオミの母を案じてのことだ。信一によれば今回の行進はこれまでになく大規模だとのこと。行進を止めることはできないし、仮にバリケードで止めれば次々に後ろから人が押し寄せて前の人は圧死してしまう。警察も見守るだけだ。行進が終わるのを待つしかない。だが今回の行進は終わらない。1時間、そして2時間が過ぎても人々は歩き続ける。ナオミと信一も母を探すうちに行進に巻き込まれ、前後左右を囲まれて抜け出せないまま同じペースで歩き続けることになってしまう。そして行進はついに海に達して人々は岸壁から海に落ちはじめる。ナオミと信一も。二人は人を避けて沖合に泳ぎ出して逃れるが、行進から覚めない人たちはそのままおぼれ死んでいく。
     二人は運よく海面に浮いている母を見つける。折よくやってきた海上保安庁のモーターボートに救助されるが、母は意識を取り戻したものの信一にナオミを頼む、と言い残して息をひきとる。

     このあたりでほぼ半分。続きはそのうち。病気によって疲弊し分断していく世界というのが今読むといろいろ思うところがある。

     


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