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「黒の放射線(中尾明著)」後半
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「黒の放射線(中尾明著)」後半

2021-04-23 19:00


    ・SL教団
     母を失い一人になってしまったナオミは信一に引き取られることとなり、下田の黒あざ病対策第二研究所に併設された住宅に移る。研究所のスタッフが暮らす集合住宅である。
     海を見ると母を思い出す。東陽中学のクラスメートも多くが海で死んでしまった。その中には修二も浅井恵子もいた。礼子の母は行方不明だ。
     このころまでに研究チームは黒あざが宇宙線の受信機のような働きをすることは突き止めているが、この働きを止める手段を見つけていない。放射線で組織を破壊しようと試みたが成功しない。もちろん黒あざを消す方法も見つからない。
     下田は礼子の手紙の消印の場所であり、小山治の行ったSF教団の本部がある場所でもある。ナオミはふと治と話して協力できないかと思う。ごうまんな性格で好きになれない治だが、話せば何かわかるかもしれない。
     総本部は山の上にある。道々訪ねると、どうも周辺の人たちには心よく思われていない様子。研究所と教団が同じ地域にあるのも変な巡り合わせである。
     教会のような建物のそばで、ナオミは治と会う。

    ・白いベールの少女
     治はナオミが入信しに来たと早合点して歓迎するが、ナオミの母の死を聞いても信者じゃないから死んでも仕方ないみたいな。ナオミに入信の気持ちは無く、庄司礼子を探す手伝いをしてほしいと頼みに来たと知ると黒あざの奴らなんてけがらわしい、と拒絶する。
     だが完全に決裂しない方がいいという思惑からナオミは言い返さない。治もナオミには好意があるようで、ちょっとだけなら手伝ってもいいと軟化する。
     治が礼拝堂で団長なる人物のお祈りがはじまる、聞いて行かないかと熱心に誘うので気は進まないが付き合うことにする。礼拝堂は劇場のような造りで、最前列に座らされてしまう。
     壇上には握りこぶし大の隕石のようなものが安置され、左右に三人ずつ白いベールをかぶった少女が立つ。やがて団長なる人物が現れる。白いガウンに身を包んだ小柄な男。50代くらい。優しそうな顔つきだが目は鋭い。団長はナオミにはよくわからない呪文のようなものを唱えだす。どうも数日後に宇宙の神が海にくだってけがれたものを滅ぼす、みたいに言っているらしい。
     ベールの少女の一人が隕石のようなものを捧げ持ち、信者にむかってお払いをするようにゆっくりと左右に歩く。ベールの下の顔がちらりと見えるが、礼子とそっくりだ。だが黒あざは無い。顔だけでなくからだつきも歩き方も礼子だ。だがすぐに彼女の姿は幕の向こうに消える。
     ナオミが礼子に似た少女に興味を示したのを誤解した治は、やっぱりきみも感激したろう、みたいに気をよくしている。あの少女の名前は、と聞くと高野はる子だと教えてくれる。教団ではシスターと呼ばれているらしい。

    ・オレンジ色の光球
     信一はナオミからSL教団の話を聞いて苦々しい顔をする。黒あざ病患者を排撃して金儲けに利用するやり方に反感を持っている。だが大衆は研究所より教団を頼る傾向もあるのだという。だが小山治の話を信じるならば、教団の信者から一人も患者が出ていないのも本当らしい。信一はそれは偶然にすぎない、と信じない。
     数日後の夜、濃霧の中でナオミは海上に浮かぶオレンジ色の火の玉のようなものを目撃する。次第に数を増してくる。信一に知らせるが不知火でもなく正体はわからない。
     そこに研究所から連絡。急激に宇宙線の量が増えており、すぐ来てほしいという。行進がはじまるかもしれない。ナオミも一緒に研究所に行く。一人では不安で待っていられない。二人が研究所に着くと宇宙線の量は普段の50倍にも増えている。そして行進がはじまる。研究所の所員にも行進に加わる者がいる。そして行進はどんどん海に入っていく。一瞬、ナオミはその行進を見物するように白いガウンの人物が高台に立っているのを見る。教団の団長のように思える。そういえば団長はけがれたものをほろぼすみたいな予言をしていた。

    ・海に消えた人々
     翌朝、海に入った人々を救出に出動した人たちは戸惑う。海で見つかるのは衣服ばかりで、遺体は一つも発見できない。服だけ残して溶けてしまったようにしか思えない。日本全土で似たような人間消失事件が起きているとわかる。人々は黒あざ病になったらもう助からないんだ、黒あざ病の対策なんか研究しても無駄だと考えるようになり、政府や研究所は信頼されなくなる。その代わりに教団が注目されて信者が急激に増えていく。研究所にも教団の勧誘員が堂々とやって来るようになり、治もナオミを教団に誘いに来る。ナオミは高野はる子が礼子ではないかという疑いを今も捨てられず、治の誘いに乗って様子を見に行くことにする。治によれば信者たちは全財産を教団に寄付してしまうのだという。教団は衣食住はめんどうを見てくれるらしいが、ナオミはあとで困るんじゃないかと思う。治のいる宿舎に入り、治が飲み物を準備しに行った間に、ナオミは窓から六人のシスターが歩いていくのを目撃し、思わず後をつける。

    ・ふしぎな団長
     シスターたちはそれぞれ仕事の分担があるのか散会する。ナオミは高野はる子と呼ばれている少女に「礼子さん!」と呼びかける。少女はビクッとしたような反応を見せ、ナオミは礼子に間違いないと確信する。礼子の母が黒あざ病になって行方不明になったこと、ナオミも母を亡くしたこと、クラスメートも多く死んだことなどを一気にしゃべる。
     ナオミはどうやって黒あざ病を治したの?と礼子に聞く。すると礼子は怯えたように身を縮め、私はもう高野はる子なの。何も聞かないで帰ってちょうだいと言ってくる。
     ナオミはどうしてそんなことになったのよ、と問いただす。そこに団長がやってきて礼子を下がらせてナオミに確かにあの子は以前は君の友人の庄司礼子だったかもしれないが、私が黒あざを消して私が生まれ変わらせた。もう高野はる子というこの教団のシスターだ。礼子はもういない、みたいに話す。
     黒あざが本当に治せるんですかと驚くナオミは、たくさんの患者を救ってあげてくださいと団長に訴える。だが団長は信仰の力なので、とこれを断り、もう礼子とも話してはいけないと言う。ただしナオミが信者になれば別らしい。物別れになってナオミは建物を出る。
     団長は話題によっては急に不機嫌になるが、基本的には人当りもいい人物だった。
     
    ・ウォーター・バレー
     団長が去ると礼子が再びナオミの前に現れる。本当の事を言いたいという。初期の黒あざ病患者だった礼子は深く絶望して家出したが死にきれず、いつの間にか下田までやってきて教団施設に迷い込んだ。この頃はまだ建設中で出入りを監視する信者もいなかったらしい。そこで団長に発見され、この敷地内に汚れを持ち込んだな!祓ってくれようみたいにあざを消されるが、この施設を離れるとまた黒あざが出ると言われて逃げ出せないのだという。団長は普通の人間ではないと怯えてもいる。
     人が来たので礼子は身を隠すようにどこかに行ってしまう。ナオミは礼子が外に出られるよう交渉してやろうと、団長が行った教団内の地下洞窟に向かう。ここが海とつながっていることは先ほど聞いている。建物の廊下がそのまま洞窟につながっていて、目の前に岩に囲まれた海が現れる。その水際に団長がいる。何か祈っている様子。
     急に水面が光はじめ、波が大きくなる。巨大な水のかたまりが空中に躍り上がってバレエを踊るように形を変えていく。団長の身体も光り出して水中に飛び込むが、団長のガウンはその場に残ってくたっと崩れていく。中身だけが飛びこんだのだ。水の乱舞は三十分ほど続き、やがて静かになる。ハッと我に返ったナオミは、団長が戻って来ないうちに、と洞窟を後にする。信一に相談だ。

    ・ゆくえ不明の船
     研究所に戻ったナオミは信一に報告する。ナオミのこと、団長のこと、洞窟の水の乱舞のこと。信一はしばらく休みなさい、とあまり信じてくれない。
     ニュースでは海で行方不明になった船のニュースをやっている。最近漁船や貨物船などの遭難が続いているらしい。SOSも打たずに消えているという。客船も被害にあっている。
     研究所専用の海洋観測船が完成し、明日下田港に入るというタイミング。どうも黒あざ病と海になんらかのつながりがあると思われてきている。そのため新造の観測船が急遽研究所に配属されたのだ。アメリカの科学者三名も観測船に乗船することになっている。
     信一とナオミも観測船に乗ることになった。

    ・観測船「はまかぜ」
     黒あざが流行っていても、漁師たちは毎朝海に出る。漁獲量には特に異常はない。ナオミは信一に連れられて漁船で賑わう港に係留された観測船「はまかぜ」に向かう。出航したはまかぜは、行進の際に目撃されたオレンジ色の火の玉が黒潮の上に降下しているとの情報を得て、その降下地点に向かっている。
     同乗したアメリカの科学者・アーベル博士は世界中で火の玉が暖流の上に落ちていることが観測されていて、船舶の行方不明も暖流の海域で発生していること、行進で海に入った人の身体が消えるのも暖流に近い海岸だということを乗組員に説明する。
     ナオミは礼子のことを考える。礼子のお母さんも黒あざ病になった。行方不明のままだが、おそらく行進で死んだのだろう。礼子の父はアメリカにいるはずだが音信普通である。礼子を教団から連れ出しても、彼女には帰る場所が無い。
     「はまかぜ」は目的の海域に到着して観測を開始する。信一もアーベル博士と一緒に海水の分析をはじめる。物理班の所員が海面から放射線が発生しはじめたことを報告する。黒あざ病の行進を起こす宇宙線とよく似ているという。海面が風も無いのに突然うねり出す。突然発生した高波が観測船を襲う。甲板にいたナオミは波にさらわれそうになるが信一に助けられる。
     ちょうど発進しようとしていたヘリコプターが二人を入れてくれて飛び上がる。見下ろすと観測船を取り囲むように高さ20メートルの波がいくつも現れて踊っている。ナオミは洞窟で見た水の乱舞を思い出す。その大規模なやつだ。やがてはまかぜは挟み潰されるように海に沈められてしまう。生存者も見当たらない。燃料が無いので捜索をあきらめ、ヘリコプターは下田に戻ることにする。

    ・団長の告白
     下田の研究所ではアーベル博士など三人のアメリカ人科学者に加えて各分野を代表する研究員ばかり30名以上を一気に失った。残る研究員は信一を含めわずか5名。壊滅的な打撃である。信一はふさぎこんでしまい、ナオミも声をかけられない。
     政府筋からは5人ではどうしようもないだろうと研究所引き上げの打診が来るが、信一は留まって研究を続けると決意したようでようやく動きはじめる。その決意をナオミに伝える信一は、きみは東京に戻りたいかと聞くが、ナオミは信一と一緒にいたいと愛を告白する。
     そんな時SL教団から研究所に連絡が入り、けが人の手当てをしてほしいとの依頼がある。捻挫してろくに歩けない状態らしい。市川という医学班の所員と信一が対応するが、処置は市川に任せて信一はナオミのもとに戻る。患者は白いガウンを着た50代の男だと聞いたナオミは、それは団長よ、と信一に教える。
     信一はそれを知ると市川に耳打ちして団長に自白剤を投与する。尋問の結果、恐ろしいことがわかる。
     SL教団とはスペース・ロウ、つまり宇宙の法則のことで、団長が教団を作ったのは二年前に宇宙の声を聞いたかららしい。声はがダル星座の四番惑星のものだと名乗り、神だという。彼らは近々地球を訪れる、黒あざ病がその前触れだと告げ、神は既に地球の海に来ているという。団長は黒あざができた人間を神に捧げ、一方で人間の絶滅を防ぐために教団を作って選ばれた人間たちを黒あざから守る使命を与えられたのだという。
     本当の事を言っているのか狂人の妄想なのかわからない。

    ・青い内臓
     団長の告白をまとめると以下の通り。
    ガダル星座四番星に住む知的生命体が地球侵入を企てた。彼らは特殊な放射線を武器として使い、第一の放射線で黒あざを発生させた。次いで第二の放射線で人間をロボットのように操り、何度か人間をうまく操れるか実験を繰り返す。
     確信が持てたところで地球にやってきて海面に降下。行進も本番として参加者を海に入れ、宇宙生命体の餌食とした。
     だが人間を食い尽くすと餌がなくなって困ることになる。そこで自分たちと交信できる能力を持った人間として団長を引き入れ、黒あざ病の過剰発生を防ぐとともに海へ行進する人間の数を一定の規模以下に抑えさせる。団長に餌の安定供給の役割をふったのだ。

     礼子の黒あざを治した方法について聞き出そうとしたところで薬が切れ、団長は目覚めてしまう。団長は薬を盛られたことに気付いて診察室にあったメスを振り回して暴れるが、足がもつれて転び、自分の胸にメスを突き立ててしまう。緊急手術をしようとした所員たちは、団長の体内には人間の内臓が存在せず青いブヨブヨしたものが詰まっていることを発見する。治療のしようもなく団長は死ぬ。おそらく遠隔操作で宇宙生命体に身体を作り替えられてしもべ同然の存在になっていたのだろう。
     詳しく調べると皮膚と筋肉は人間のものだが内臓と脳は青い組織に置き換わっていた。所員たちはさらに詳しく調査をすることとし、警察にも通報する。

    ・信一の調査
     警察はSL教団の解散を命じる。信者は団長が人間ではなくなっていたと聞いて身震いするが、一部には黒あざ病から守ってくれたのは確かだ、どうしてくれる、と抗議する者もいる。
     ナオミと信一は警察の調査に同行し、礼子に事情を聞く。だが礼子にも団長が黒あざを消した方法はわからないという。ひと晩寝ている間に消えたのだという。
     どこで寝たのかを聞いて案内してもらうと、その部屋には祭壇があって御神体として隕石が供えられている。また、屋上に通信機らしいものが据え付けられている。これでガダル星座四番星と交信していたらしい。
     結局肝心なことはわからないが、礼子も研究所に引き取られることになる。
     小山治の一家が現れる。全財産を寄付してしまった彼らは東京に帰ることにしたらしい。治は騙しやがって!と団長を罵りながら去っていく。ナオミに対してはバツが悪そうである。礼子のことは全く気付かなかったらしい。

    ・生と死
     それからも時々行進が起こるが、黒あざの出来た人々は一種の寿命としてこれを受け入れて黙々と暮らしている。礼子とナオミが町を歩いている時に、行進がはじまる。ナオミは突然目の前がかすみ、意識を失ってしまう。いつの間にかナオミも黒あざ病になっていたのだ。
     礼子はナオミを止めようとするが止められない。とっさに倒れていた自転車で信一を呼びに行こうと決意する。ナオミには目印になるよう派手な帽子をかぶせる。
     研究所に駆け込んで信一と一緒に引き返し、ナオミのルートをたどって目印の帽子を探す。
    ようやくナオミを発見し、信一が抱え上げる。海水が人間を飲み込むように盛り上がり、陸にかぶさってくる。信一は波をかぶりながらもナオミを抑えるが、そのため礼子が波に飲まれるのを防ぐことはできなかった。
     その直前に、礼子は団長がご神体の隕石を自分の身体にかざしていたことを思い出し、信一に告げていた。

    ・救われたナオミ
     ナオミは意識を取り戻し、礼子の死を知る。自分のために死んだようなものだと知ってむせび泣く。だが礼子の話から信一は既にナオミに治療を施している。黒あざはひと晩眠れば消えるはずだと信一は話す。

    ・宇宙生命体
     翌朝、ナオミのあざはきれいに消えている。教団施設から同じ効果を持つ隕石が何個も発見される。隕石には治療だけでなく予防効果もあることがわかる。教団に入れば黒あざ病にならないというのは真実だったのだ。
     信一たちは隕石の放射線を分析して人工放射線の発生装置の開発もはじめている。漂白を意味するブリーチング線と呼ばれている。研究所は反撃の拠点となって人員も補充されている。アメリカから海洋学者をしている、アーベル博士の弟も駆けつける。
     研究所では巨大水槽に行進の際に地上に上がってきた海水を貯めて実験をはじめている。団長の身体から採取した青い内臓を水槽に近付けると、海水が光り出す。内臓もそれに呼応するように光る。交信しているようだ。
     例の水のダンスがはじまる。水槽を覗き込んでいたアーベル博士の弟は巻き込まれて、衣服だけ残して溶けてしまう。今頃行進で海に入った人々がどうなったかわかった。
     この一部始終を目撃したナオミはショックを受ける。

    ・第二の予言
     水槽の水を抜いて博士の遺体を回収するが、ほとんど溶けてしまっている。博士はポケットに隕石を一つ入れていたようだがその隕石も水槽の底から見つかる。隕石には白い結晶のようなものがこびりついており、分析の結果宇宙生命体の死骸とわかる。
     宇宙生命体は放射性原子の集合体で、きまった形も持たない。だが海水に混じることで活動を行う。淡水では駄目で、塩分と適度な温度、つまり暖流程度の水温が必要らしい。
     全世界の海に宇宙生命体が混じりこんでしまい、事実上除去は不可能になっていたが、彼らが団長に与えた隕石には彼らを殺す力があったのだ。人工的にブリーチング線を発生させてこれを増幅し、海面に照射すれば宇宙生命体を殺せることになる。博士の死は無駄ではなかった。
     さっそく人工ブリーチング線発生装置と増幅装置の建設がはじまる。
     ナオミに東京に戻った小山治から手紙が届く。団長の予言について書かれている。死ぬ数日前に「秋風が吹くころ 町は死ぬ」と言い残していたというのだ。

    ・ふたりの行進
     装置の建設は順調にすすむ。完成は九月はじめの予定だ。八月も終わりに近づき、東陽中学の平井先生から夏休み明けに下田の中学校に転校するか、それとも戻って来るかという問い合わせがある。そういえば学校どころではなくなっていた。信一は装置の試運転が成功したら東京に戻るかもしれない。先生への答えはそれまで保留にする。
     試運転を待たず、装置の完成と同時に信一の東京行きが決まる。ナオミも同行することにする。だが試運転の前夜、所員が狙ったように黒あざ病にやられて次々に自殺してしまう。
     残った信一が装置を起動しようとするが、信一もそこで意識を失い行進をはじめる。ナオミが信一の押そうとしたボタンを思いきり押す。信一は海に向かっている。必死に追いかけるナオミ。どうしても信一を止めることができず、信一と一緒に波がうごめく海に入って死のうと決意したナオミは腕を組んで二人で行進を始める。海が目の前に迫ってくる。



     だが信一は海に入ってすぐに行進を止め、意識を取り戻す。海も静かになっている。海面に次々に白い結晶が浮いてくる。ナオミの押したスイッチで発射された放射線が宇宙生命体を殺したのだ。この勝利は世界中に広がっていくだろう。
     信一はナオミを抱き上げて、砂浜に向かう。
     
    ーーーーー

     前半の現象が淡々と述べられていくくだりは、今の世の中と同じ。
    治療法が無く死に至る病気の流行、患者に対する差別、これに起因する人種間憎悪。宇宙線もしくは放射線。でもジュブナイルなのでそのへんはあまり掘り下げないし、人間側に対する絶望感みたいのは無い。

     後半の真相が明らかになる展開はそれまでのシリアスな雰囲気からとんとん拍子に人間側に都合のいい流れになっていく。宇宙生命体を出さなくても話としては成立しそうにも思う。
     登場人物の多くはすぐに死んでしまう。活躍しそうに登場して全然見せ場なく退場する人も少なくない。作品の完成度的には、ラストで二人で海に行進するバッドエンドの方がまとまりがいいかもだけど、ジュブナイルでバッドエンドというわけにも。

     前半は比較的よく記憶していたけど後半はほとんど覚えておらずラストもどうなったっけ?という感じだったので、ようやく確認できて一つ宿題が終わったような。
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