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「青い鱗と砂の街(小森羊仔著)」①
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「青い鱗と砂の街(小森羊仔著)」①

2021-07-29 19:00
    ・シンプルできれいな線で描かれる、独特な雰囲気の漫画。



    壱 美しい街

     溺れて海の底に沈んでいく女の子を、人魚が手をつかんで助け上げる。

     父の仕事の関係で海辺の街に越してきた青山時子(トキ)という名の少女。
     ここ砂の森は母の故郷で、祖母の家で父と一緒に暮らすことになったらしい。母は何か事情があるようで一緒に居ない。トキがいないところで祖母は落ち着きのない娘で悪いねえ、みたいなことを言い、父は僕が不甲斐なかったんです、お義母さんみたいな会話。
     トキはほとんど記憶が無いが4歳の時にこの街にしばらくいたことがある。さっそく海岸に出て砂浜を散歩する。海の家とも喫茶店とも判然としない店があり、そこの若?主人にラムネをおごってもらう。主人はトキが海を見ていたと聞くと、冗談交じりに人魚を見たかい?と聞いてくる。トキが6年生と知った主人はじゃあ三雲ちゃんと一緒だな、なんて言っていて、このあたりの子供には詳しいらしい。
     再び砂浜を歩くうちに父親が呼びに来たので帰るが、その後姿を見つめる同じ年ごろの男の子がいる。
     祖母は小料理屋でもやっているのか夕方になると和服姿で仕事に出かけて行くが、刺身や寿司などのごちそうを準備してくれている。

     明日は新しい学校。寝床に入ったトキは波の音を聞きながら4歳の時の記憶を思い出す。
    トキは4歳の時にこの海で溺れて、人魚に助けられたという記憶を持っている。
    もう一度人魚に会えたら
    「あの日助けてくれてありがとう」と言いたいと思っている。

     この街の子供は少なく、どの学年も一クラスしかない。トキは6年生。新学年がはじまったばかりだが、クラスメートは五年間ずっと一緒だった中に入っていくのでなじめるか不安もある。クラスに海辺でトキを見つめていた少年がいて、この少年の顔は4歳の時に助けてくれた人魚にも少し似ている。
     東京から来たと自己紹介したのでさっそく東京に興味のある女子たちに囲まれたりする。
    席をはずしたところで、あの男子が話しかけてくる。彼は鳴海と名乗り、君、昨日海にいたでしょ、何か見た?と聞いてくる。トキは鳴海になぜだか懐かしさを感じる。

    弐 深海
     鳴海の質問には何も見てないよ、と答えるトキだが、ふと人魚って見たことある?と聞いてしまう。鳴海はないよ。何で?と聞くので海の家のおじさんが、と答えるのだが、不思議ちゃん扱いされるからそんなこと言わない方がいいよ、と忠告されてしまう。

     始業式が終わると午前中で学校はおしまい。トキは学級委員の三雲という少女に方向が同じだから途中まで一緒に帰らない?と誘われる。のぞみとさゆという少女もついてくる。
     彼女たちは東京のことを聞きたいのだが、トキは東京もここもそんなに極端に違うわけじゃないよ、お洒落な人ばかりでもないし芸能人ばかりでもないしみたいに答える。
     買い食いをしている男子三人と遭遇するが一人は鳴海。これは校則違反なのでのぞみが悪いんだ!と指摘すると鳴海以外の二人が逆切れ。転校生、東京から来たからって調子乗るんじゃねえぞみたいに何故かトキが標的になってしまう。この時に何でこんな卒業まであと一年みたいな時期に転校してきたんだよ、と言われるが、トキにはいろいろ事情があるらしく つらい記憶を思い出したようで涙を流して駆け出してしまう。残った女子三人は明日謝んなさいよね、と男子を責め立てる。
     トキは家に帰ったわけではなく、テトラポッドに座って海を見ながら気持ちを落ち着けている。そこに鳴海がやってくる。あいつらも反省してると言いながら、泣けばよけい面倒になる、泣くなよなどとも言ってくる。そして夜の海を見たことあるかと聞いてくる。
     トキは無いと答えながら夜の海を連想すると、母に関する辛い記憶が蘇る。母は浮気をしており、それを父が知るきっかけがトキの無邪気な質問だったみたいな。
     鳴海は辛いことは夜の海に沈めて、閉じ込めて鍵をかけるみたいに想像すればいいんだみたいにトキを慰めて、金平糖をくれて去っていく。
     トキは鳴海ってクラゲみたいな子だなと思う。つかみどころがない。

     翌日、二人の男の子が謝ってくる。トキはもういいの、これから仲良くしてね、と答える。トキは母親のことがあってか、いつも何かを探して迷子になっているような 心もとない精神状態だった様子だが、この街で何かが定まるような気持ちになりはじめている。

    参 寄せては返す
     新学期がはじまって最初の日曜日、トキは父親と一緒に教科書、ノート、上履き、体操着やリコーダーなど学校で必要なものを買いに行く。数日間はスリッパで過ごした様子。
     トキは父親と一緒に買い物に出かけるのははじめてで、何を話せばいいか戸惑ってしまう。母親とはどうでもいいようなくだらないことで延々と話せたが、父親とはそうもいかない。
     本屋、文房具屋・・・と巡り、父親と食事をして帰る。父親の仕事の話題になり、一緒に住んでいる父のことを何も知らないなと思う。父は帰り道に海岸に立ち寄って、トキが4歳の頃母親とこの場所に来たことを覚えているかと問いかける。彼女は砂浜で城を作り、一人で海に入って溺れた記憶がある。そして青い鱗を持った人魚のような少年に助けられたのだ。
     彼女は砂浜で目を覚まし、木陰で昼寝をしていた母親はそのことに気付いていない。

     父親はトキに母の帰りをこの街でしばらく待っていたいのだと語りかけると、彼女もしばらくこの街にいたいと答える。あの人魚の彼に会って、助けてくれた礼を言いたいから。

     その夜、父に届いた回覧板には「海つ霊祀り」というお知らせが入っている。

    四 秘密の秘密
     トキは人魚の少年の夢を見る。その顔は鳴海に似ている。翌朝、はじめてクラスメートと同じ上履きや体操服を持って登校する。
     トキは三雲に「うみつれい」って知ってる?と聞いてみるが彼女は知らず、鳴海も知らないという。駄菓子屋のキミばあなら、と放課後行くことになる。
     三雲だけでなくのぞみとさゆも一緒。さらに鳴海にはこの前トキをいじめた二人の男の子がついてくる。うち一人は文房具屋の息子だった。
     キミばあに聞いて、「海つ霊」は「わだつみ」と読むのだとわかる。そう言われれば子供たちにもわかる。この街の人間なら誰でも知っている海の神様のことだという。そしてその使いとして人魚がいるのだという。

     トキは駄菓子屋の帰り、皆と一緒に裸足になって海に入る。溺れた記憶からか、この海に入るのにためらいがあった様子。さらに男子がおバカをするので海の中で尻もちをついてしまう。彼女はびっくりした、と笑い、一同は波打ち際ではしゃぐ。
     解散となるが、鳴海は笑った顔初めて見た、と言い残して去っていく。
     ツインテールのさゆちゃんはやはり別れ際に「わたし、人魚を見たことあるんだ」とトキに打ち明ける。

    伍 海鳴り
     翌日。さゆは休み時間にトキに自分が見た人魚の話をする。彼女が見たのは真っ白な髪をした若い女性の人魚だったらしい。緑色の鱗をしていたという。
     トキはこのことを鳴海と話すが、鳴海は「人魚なんかいない 信じない。 俺は自分の目で見たものしか信じない」とにべもなく、ついトキと言い争うような感じになってしまう。

     その様子を見ていたのぞみが鳴海と何かあったの?と話かけてきて、さゆにはちょっと虚言癖があるんだ、あの子鳴海のこと好きだから鳴海とよく話しているトキの気をひきたいんだよ、と教えてくれる。その虚言癖のためにさゆは女子グループの中で浮いていたことがあるらしい。ちょっとトキは鳴海と気軽に口をきけない雰囲気となってしまう。

     放課後、三雲もさゆものぞみも用事があって、トキだけ一人で帰ることになる。雨がけっこう降っている。海の家の若?主人と出会うと、ちょっと雨宿りしていきなよと誘われる。
     主人はトキに元気がないけど何かあったのかな?と問いかける。トキは鳴海とちょっと意見がすれ違っちゃって気まずいの、みたいに答える。
     主人は鳴海にはこの海で死んだ兄がいて、今も遺体が見つかっていないこと、鳴海はおそらく兄の面影を探して海によく来るんだろうと話をする。兄の死を自分の目で確かめない限り認めたくない、みたいなこともあるのだろうと。
     トキは鳴海が自分は信じないと言いつつも、トキが人魚を信ずることは否定しなかったと主人に話す。やがて雨も上がり、トキの心も少し晴れた様子。母に会いたい、話したいと思う。

     海つ霊様に奉納する魚の絵を学校の図画工作の授業で描くことになる。三雲とそのことを話すうちに一緒にお祀りに行こうよ、という話になる。三雲の弟も一緒に来るかもしれないという。夏が近づいてくる。

    番外編 鳴海君の一日
     日曜日、彼が目覚めると母親は仕事で出かけている。自分で朝食を準備して海に行き、トキを見る。一日外をふらふらしていた様子で遅く帰宅すると母親がケーキを準備している。京は彼の誕生日だったらしい。父親から航空便の手紙も届いている。

     一巻はここで終わり。

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