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「為朝二十八騎(佐野絵里子著)」4話~6話
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「為朝二十八騎(佐野絵里子著)」4話~6話

2021-06-19 19:00


    第4話 都一の美女
     これも八郎が京にいた頃の話。「美女選び」という美人コンテストみたいなものがあり、これで一位になった娘が嵯峨野にいると聞いた八郎は遊び仲間と語らってどんな美女か見に行こうということになる。嵯峨野は京の西の外れで当時の感覚では平安京の郊外みたいな。
     美女がいるのは后と呼ばれる女性の別荘らしい。この后に仕える女官を集める際に箔付けをするために美女選びというものが后の父親の肝いりで催され、千人近い候補の中から都一の美女とされたのが常盤と呼ばれる女性。
     となればこの娘は源義経の母となる常盤御前で、后とは九条院と呼ばれることになる近衛天皇の中宮・藤原呈子ということになる。常盤は童女の頃から呈子に仕えていたようだが生まれは貧しく何の後ろ盾も無い。この話では養父母がいて、育ててやった恩を返せと責められてもいる様子。詩歌管弦の才も無く、美女の名だけが独り歩きして過大評価されることに戸惑っている。一位になったことで文など送ってくる男も増えたのだが、自分が単なるゲームの駒になった陽にも感じて不安を感じている。
     后は常盤が控えめで心優しいところを好ましく思っているようだが、そなたの武器はその美貌ですからもっと強くおなりなさいと諭している。貴方は私と違って庶民の出、好きな相手と一緒になりなさいみたいな。
     そんなふうに二人の美女が話しているところ、塀の上から覗き込んでいる者がある。もちろん八郎である。常盤は無礼者!名乗れと一喝すると八郎は六条堀川源氏館の鼻つまみ八郎だ、と返す。后は笑って常盤にそなたがそのように怒ったのを初めて見ましたよ、と常盤を押し出すようにして八郎とやら、よくこの娘をみなさいな、都一の美女ですよと面白がっている。常盤は恥じらう。
     さあ見なさいと言われると八郎の方も恥ずかしくなって、恥じらう常盤に悪いような気もしてきて早々に退散する。
     当然父親にもこの話が行って、八郎は家季に叱られるのだが、どうせ叱られるならもっと都一の美女をよく見ておけばよかったと変なところで反省している。

    第5話 弓手(ゆんで)へ回るな!
     ようやく第一話よりも後の話。天龍を失った八郎は馬市など見て回るがなかなかこれはという馬がいない。
     だがある大きな馬に目を止めると、売り手らしい子供がお目が高い、こいつは大陸渡りの名馬だぜ、と声をかけてくる。馬の名は猛帝胡(もてこ)だという。
     子供は馬市の関係者ではなく個人で馬を売りに来ているらしいのだが、実は気性の荒いモテコに試乗した客を振り落とさせて、相手が気を失っている間に金品を奪っていくみたいな泥棒である。八郎の刀や弓の様子から金持ちのカモと思ったのだ。
     八郎はモテコに試乗する。少年は八郎が乗ってきた馬に乗ってついていく。いつもなら相手をすぐに振り落すモテコがいつになっても素直に八郎を乗せているのにじれて来る。八郎はモテコなら自分の体重にも耐えられそうだと喜んでいる。
     そこに突然騎馬武者が数名現れて、八郎と少年に矢を射かけて来る。少年はパニックになるが、八郎は弓手(ゆんで)へ回るな!と注意する。弓手とは騎馬武者の左側。右手で弓をひく騎馬武者は、自分の左側にいる相手には広角度で攻撃できるが右側にいる相手は狙いにくい。
    だから八郎は相手の右側、馬手(めて)に回れと教えたのだ。 
     八郎はそう教えて少年を逃がすが矢も尽きて自分は囲まれてしまう。だが少年が戻って来て、石つぶてで騎馬武者の一人を倒し、その男の箙(矢の入った入れ物)を八郎に渡す。八郎はあっという間に残った騎馬武者を一掃する。
     少年は三町礫(さんちょうつぶて)の喜平次(きへいじ)と名乗り、モテコと一緒に八郎の仲間になる。
     喜平次は縄で石を引っかけて、これをぐるぐる回して遠くまで威力のある礫を飛ばす。町は距離の単位で60間と言われているので1間は6尺だから、1町は360尺で約109m。
    喜平次は俺の礫は300メートル先の相手を倒せるぜ、という意味で名乗っているのだろう。

    第6話 為朝虎口に入る
     この時代、九州は九国(くこく)と呼ばれていて 筑前、筑後、肥前、肥後、豊前、豊後、日向、大隈、薩摩に分かれている。大宰府は筑前、為朝の館は筑後にある。
     先日八郎を襲った騎馬武者は、八郎を捕らえれば恩賞が出ると言っていた。八郎はこれを誤解と思い、大宰府の長官のもとに自ら出向いて誤解を解こうと家季に持ち掛ける。
     家季は先の砦への襲撃といいこたびの騎馬武者の襲撃といい、きちんと準備されているわりには送り込んだ兵士を平気で使い捨てるようでもあり、何者かが裏にいるのではと考え込む。

     その頃大宰府に近い博多の遊女たちが最近この地に来た若侍の噂をしている。その若侍こそ八郎為朝と因縁のある平元盛。彼は今博多の伯父・武盛の屋敷に滞在している。目的は自分を辱めた為朝にネチネチと仕返しをして思い切り嫌がらせをした上で殺してやりたいというちょっと病的なもの。武盛はそれを聞いてそんな男らしくないことはよせとは言わずに喜んで力を貸そうみたいな。まず思いきり汚名を着せてやろうみたいに画策している。
     ここしばらくのあれこれはこの武盛の仕業である。

     平氏と源氏はいろいろな意味でライバル関係にあり、九国の支配権も争っている。武盛にとっても為朝の武勇は邪魔なのだ。
     大宰府にいるのは都から派遣された長官だが、武盛はこの地に来て長くいろいろと勘所を握っている。そんな中為朝が大宰府に行くのは罠の中に飛び込むようなものなのだが、本人は全くわかっていない。家季はわかっているが止めずに為朝を送り出す。これも試練と思って。
     為朝が心配ならお前も来るか?と言うのにこの地にて館を守っております、とある覚悟をして答える。
     為朝は家季のそんな覚悟も知らずに大宰府へ旅立っていく。左仲二と喜平次もお供に加わっている。
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