空中都市008について
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空中都市008について

2014-11-27 20:35
    「空中都市008」の原作(小松左京著:原題 アオゾラ市のものがたり)とDVD(竹田人形座の世界)を見る機会があったので作品について書いてみたい。
     
     「空中都市008」は、NHKで夕方6時台に放送していた人形劇。「ひょっこりひょうたん島」の後番組だったらしい。この頃は6時から5分間の「こどもニュース」があって、そのあとに人形劇が放送されていたと記憶している。

     今ウィキペディアを見てきたところ、夕方6時5分から20分まで、月曜から金曜まで15分ずつ、1969年4月7日から1970年4月3日まで、230回が放送されたらしい。
     1970年といえば大阪万国博の年。3月から9月までが開催期間だったから、万博に向けて放送されていたかのよう。そして空中都市008は、万博のような世界の話だった。と思うのだが、どんな話だったか全く記憶がない。
     見たことは確かで、主題歌は覚えているし、オープニング映像も微かに覚えている。
    だがもう霞の向こうの記憶になってしまい、具体的に説明できない。
     万博の住友童話館のような建物が地平線の向こうから現れてくるような白黒アニメーションだったと思うのだが・・・(DVDに収録されているオープニングは、特番だからかDVD用に作ったのかはわからないが、本編のシーンを編集したもので、記憶とは違う)

     正直当時の私には合わなかったようで、すぐに視聴をやめてしまったのか  話もキャラクターも全然覚えていない。主人公の少年がいて、妹がいて、両親がいて、博士みたいな人がいて。何かの雑誌に載った写真で覚えている程度で、動く映像の記憶がない。

     今ひとつ子供の頃に興味を持てなかったのは、「空中都市008」というものの実体がよく見えなかった、という事もあると思う。
     これが例えば「宇宙都市008」で、宇宙ステーションみたいに外観がはっきりしていて、そのプラモでも発売されていればイメージがつかめるのだが、「空中都市」と言いながら
    画面に映るのは高層ビルと高速道路。私の目からは 普通の都市にしか見えなかったような。
     
     当時の普通の都市と、未来の都市の違いがよくわかってなくて、また大阪万博の記事などでテレビ電話とか人間洗濯機とかについても知識があって、それらがこれからの技術ではなくて 既に世の中にはあるけど 私の家のような貧乏な家庭には無くて、金持ちの家には普通にあるもの、と思ってしまっていたので、現代劇みたいに感じていたような気がする。

     当時の私には「ウルトラマン」や「ウルトラセブン」でも前半の怪獣やヒーローが出ていないドラマ部分は、何かよく理解できない退屈なものだったので(そうした部分が面白いと感じるようになるのは小学校の高学年になってから)、怪獣もヒーローも出ない008には早々に見切りをつけてしまったのだと思う。いわゆる帯番組で、月~金で一つのエピソードだったのであればなおさら、1話見逃せばもうついていけなかったのだろう。
     同じ人形劇で「サンダーバード」は当時人気があって私も好きだったが、これも話はほとんど理解していなくて、メカを見ていたのだと思う。008にはそうしたレギュラー的なメカは無かったようだ。

     というような次第で当時の記憶は全くといっていいほど残っていない。

     でも大人になるとちょっと見てみたくなって、たまたまDVDを見かけたのでかなり前に買ったのだが、そのまま放置状態になっていた。
     最近再発見し、ほぼ同時にこれも以前に買って積ん読になっていた原作をようやく読んだ。
     

     で、初めて知ったのだが この空中都市008の映像は DVDに収録された1本を除き、失われてしまっているという。NHKの番組は記録媒体(詳しくは知らないが業務用のビデオテープとあるので、磁気記録だったのか?)が当時高価だったため、別の番組のため再利用されて上書きしてしまったため。
     収録されている「北極圏SOS」というエピソードは正月特番か何かで、これだけフィルムが残っていたらしい。

     で、これを見てみたのだが・・・・うーん、正直なところビミョー。
     人間がマグマを取り出して気象制御しようとしたのが失敗し、地球規模の災害が起こってしまうのだが、話はこのあおりで氷山に閉じ込められてしまった主人公たちの乗った船を世界中の都市が力をあわせて救出する、という内容になっている。
     派手に建物が爆発したり崩落したりするシーンが多く、映像的には迫力があるのだが、地球どうなっちゃうの?という状況の中、10人も乗っていない船を地球そっちのけで世界中が助けようとする。という感じで 物事の優先順位にすごく違和感を感じてしまった。
     これであれば、気象制御うんぬんは無しで単純に主人公たちが乗った船が嵐か何かで遭難してそれを世界中で助ける、とした方が安心して見れたように感じる。
     特番という事で、派手な爆発シーンとか入れたかったんだろうなあ・・・

     これ以外のエピソードはどんな内容だったのか、先に書いたような事情もあってかほとんど情報が無い。あとは当時発売された絵本とか、雑誌に載ったものがあるようだが、中古市場で非常に高価で買う気にならず確認できない。ひとつだけ読んだ記憶があって、何に載っていたのか覚えていないが(たぶん)主人公か主人公の妹?が入り組んだパイプの奥に迷い込んだか何かで出られなくなってしまい、008を設計した博士か何かに助けを求めて、パイプを細くする仕掛けがあってそれで助かる、みたいな話があった。写真がついていたような記憶があるのでテレビのエピソードだったのかもしれないが、1週間持つ内容とも思えないのでオリジナルストーリーに写真をつけただけなのかもしれない。

     小松左京の原作を読んでみると、北極圏SOSのような事件、事故の話はほとんどなくて、どちらかというと子供の視点で未来の日常生活を描きながら、当時考えられていたもう少しで実現するであろうテクノロジーを紹介する、という感じだった。
     ウィキペディアによると原作に準拠したエピソードも多くあったようなので、特番の方が異色だったのかもしれない。

     原作版のエピソードと、関連するテクノロジーを書き出してみる。関連するテクノロジーについては、小松左京本人が注をつけて、章ごとに解説している。
    1.ひっこし
     主人公一家が郊外の家から空中都市008に引越してくるまでの話。
     ・エア=キャスター・・・米GM社が開発した、空気圧による重量物搬送システム。
     ・可動キャビン ・・・・シャインやシアバルトという建築家が提案している移動ハウス。
     ・すきとおったパイプの中を走っていくプロペラつきののりもの・・・仏で考案。
     
     ・アイオノクラフト ・・電気イオンを吹き出すエアカー。米リッコーバー少将が試作。
     ・ヘリックス   ・・・建築家黒川紀章が東京計画21で提案したねじりんぼう型のビル。
    2.地下道のぼうけん
     隣人の金髪の女の子と仲良くなり一緒に町の探検に出かけた主人公が昔の地下鉄駅を発見。
     ・空中道路   ・・・高層ビルの中間界同士をつなぐ動く歩道。
     ・総合道路   ・・・ガス・水道・電気・貨物列車・自動車などの総合道路。眞鍋博案。
     
    3.春休みの旅
     ブラジルのおばあちゃんの所へ遊びに行く主人公一家。だがおばあちゃんは入れ違いで。
     ・ファクシミリ ・・・電波で各家庭に送られてくる新聞。
     ・個人呼び出し ・・・特定人物につながるまで探す呼出電話。見つからなければ無料。
     ・通信衛星   ・・・国際電話を中継する通信衛星。当時は米ソしか持たなかった。
     ・ジャンボジェット・・乗客1000人以上を運ぶ巨大飛行機。ボ747は当時未就航。
     ・人工島    ・・・国際空港は飛行機の騒音や衝撃波対策として海上に建設。
     ・SST    ・・・超音速旅客機:スーパーソニック・トランスポート。マッハ2超。
     ・HST    ・・・超超音速旅客機:ハイパーソニック・トランスポート。マッハ7。
     ・モビル=ラウンジ・・動く待合室。タラップの乗降不要のバス型待合室。
     ・体内時間調整薬・・・時差ボケを調節する薬。
     ・エアクッションカー・国鉄が研究中のリニアモーターカー。時速500キロ可能。
     ・原子力ホバーシップ・大陸間を時速200キロ以上で走る大型ホバークラフト。
    4.ふしぎなロボット
     主人公は学校のクラブ活動で、友人とロボットを作ることにするが、大変なことに。
     ・電子図書館・・・・・本ではなく磁気テープやビデオテープに記録する図書館。
     ・レーザー銃・・・・・警察官が携行している。波のそろった光を出す装置と紹介。
    5.宇宙から帰った人
    宇宙空港を見に行く主人公と金髪の隣人。そこで出会った男の人は記憶喪失だった。
     ・宇宙ステーション・・宇宙ステーション経由で月、火星、木星との間で定期便がある。
    6.くるった電子脳
     008の中央電子脳が細菌に冒され、自動配送や交通管制システムが狂ってしまう。
     ・立体カラーテレビ・・立体テレビで買い物ができる。壁掛けテレビにも言及。
     ・配達シュート・・・・パイプとコンベアを組み合わせたシステムで、家庭に配達する。
     ・音声合成・・・・・・交通管制システムに使用されている。人工声帯によるもの。
     ・細菌  ・・・・・・コンピューターウィルスではなく、金属を食べる細菌。
    7.海の中のお友だち
     学校行事で海底都市へ。主人公と金髪の女の子は、言葉を話すイルカの子供と仲良くなる。
     
    8.月へいったうさぎ(その1)
     お隣と合同で月に家族旅行に行く主人公。妹は記念にうさぎのぬいぐるみを貰い大喜び。
     ・宇宙ロケット・・・・ジェット機の先端部分がロケットとなる方式を紹介。
     ・人工衛星速度・・・・いわゆる第一宇宙速度、7.9km/sをこのように表記。
     ・宇宙ステーション・・中継地点として、ドーナツ型の宇宙ステーションが登場。
     ・宇宙靴   ・・・・連絡船でスチュワーデスが、いわゆるベロクロ式の靴を使用。
     
    9.月へいったうさぎ(その2)
     月に到着、月生まれの子供と友人になった主人公。人間は何故宇宙に行くのか考える。
     ・晴れの海 ・・・・・ホテルが出来ている。 
     ・重力   ・・・・・月の重力が地球の1/6である事が語られる。
     ・結晶水  ・・・・・月の岩石の中に含まれている水を取り出して利用している。
     ・月生まれの子・・・・月生まれの子供は背が高いことになっている。

     というようなラインナップ。4と6が異常事態発生の話だが、他はこの世界での日常を描いている。
     読むと何でも自動化、無人化、省力化されていてあまりにも科学技術至上主義にも読めてしまうのだが、角川文庫版解説によると小松左京本人はこの時期、急激な国土開発による荒廃を危惧しており、この作品は一度荒廃してしまった地球を復活させた人類の姿であるとも読める、と紹介されている。
     ピックアップされたもの以外にも、さりげなくいくつかのテクノロジーが紹介されており、小松左京の完全創作ではなくどこかで発表や研究されている技術をベースにしているためか、
    この作品は21世紀に入ったばかりの設定だが、大部分はそのままの形でないにせよ、既に実用化されているものが多い。
     海底都市や月面ホテルは無理と思いつつも話の広がりをもたせるため登場させたのだと思う。未来予測としてはかなり当たっているのでは、と思う。

     一番外れたのは 皮肉にも 小松左京が読者である子供たちに向けて書いたまえがきの中にある 「(どんなに科学技術が進歩しても)子どもって、ちっとも変わらないんだなあ、」という部分、未来がより豊かな人間性をもちうる社会であり、21世紀の子どもたちが、より子どもらしい子どもであってほしい、という願いだったような気がする。
     今の子供は私の世代ほど こうした話に 未来への夢や科学技術への憧憬を持たないのではないかと感じてしまう。

     作品が現存していたら、今の子供に見せて 感想を聞いてみたかった気がする。今子供がいる人なら、お父さん(お母さん)が子供の頃は、このような技術はまだ夢物語だったんだ、などと親子の会話ができたかもしれない。

    iPad用の電子書籍のようなものが2010年に作られたらしい。そのために主題歌が
    新しく作られ、これを歌ったのはオリジナル版を歌った中山千夏と、何と初音ミクのコラボだった。ミクさんこんな歌も歌ってたのか。

     どの位売れたのかわからないが、この会社の公式HPにはもう記載されておらず、
    ウィキペディアなどのリンクをたどっても途中で切れている。アマゾンやヤフオク
    などにも情報が無かった。
     一応会社(オフィスエラン)のHP。ページ内のリンクがかなり切れてしまっている。
    http://www.office-elan.com/elan/

     声優さんはオリジナルキャストだったのだろうか。見たい気もするがiPad用だと私は見れないな。

     以下はこの音楽を担当したご本人がUPした動画のようだが、この再生数(現時点で1247)を見るとほとんど注目されなかったのだろうと思われる。

    i

     人形の制作、操演などを担当した竹田人形座は江戸時代から存在し、「宇宙船シリカ」や「銀河少年隊」を制作したテレビ人形劇の老舗だが、中心人物だった東大出身の竹田喜之助を交通事故で失い、活動を停止したとのこと。人形そのものは人形劇発祥の飯田市や出身地である瀬戸内の郷土資料館のようなところに寄贈されて残っているようだが、人形制作や操演技術は失われつつあるようで残念。
     008同様、シリカや少年隊の映像もほとんど残っておらず、最初に紹介したDVDに収録されたものがほとんど全て(音声なしのものなどがもう少しあるようだが)だそうだ。
     

     市民有志による喜之助フェスティバルなど、継承の試みはされているようだが、こうしたものに関心がなかなか向けられない現在。頑張ってほしい。
     公式HP
    (飯田市 竹田人形座のページ)
     http://www.city.iida.lg.jp/site/puppet/takeda.html
    (喜之助フェスティバルのページ)
     
     http://www.kinosukefes.com/

     
     
     


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