「テスタメントシュピーゲル1(冲方丁著)」読み直し(ちょっとネタバレ)
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「テスタメントシュピーゲル1(冲方丁著)」読み直し(ちょっとネタバレ)

2015-07-13 20:46
    ・シュピーゲルシリーズは、冲方丁氏のライトノベル作品。
     生まれつき身体に欠損がある、あるいは事故でそのままでは生きていけない身体になった子供たちが、機械の手足を持ち、脳内にもチップを埋め込んでネットワークと接続できる 作品中では特甲児童と呼ばれる一種のサイボーグとなって、自分の生存と引き換えに国家に奉仕する。
     舞台は近未来のウィーン(作品中では違う名前に変わっている)と設定されており、主人公たちの出自は様々(両親の国籍が異なる例が多い)だが、みんな日本名を持っている。というのも日本は詳しくは説明されていないものの既に国家としては滅びたも同然の状態となっており、世界的な文化保存の観点から、多くの人が成人するまでの幼名、という扱いで日本名をつけている。
     
     この時代はテロが日常茶飯事となっており、特甲児童たちは治安組織に所属し、テロと戦う最前線に投入されることになる。
     憲兵隊みたいな組織と公安みたいな組織があって、それぞれ3名の特甲児童が所属している。物語開始時点で14歳前後の少女である。男子の特甲児童もいるが、彼らは海外派兵要員として戦場に出され、あるいは戦闘能力を持たない後方支援要員となり、都市警備は女子の役割となっている。

     彼女達は機械の手足を持ち、戦闘になると通常タイプから戦闘用に手足や羽、防護服、各種の銃や爆弾など(兵器には手足と一体化したものもある)が転送・換装される。戦闘中に破壊された手足や武装も後方支援員によりすみやかに換装される。耳飾には、頭部を保護する一種の力場発生装置が埋め込まれている。

     憲兵隊みたいな組織には涼月、陽炎、夕霧の3名が所属。それぞれ黒犬、紅犬、白犬というコードネームを持ち、黒犬は拳で戦車も破壊して前に進む突撃兵、紅犬は遠距離精密射撃を行う狙撃兵、白犬は指先から放出する液体金属の鞭をふるい何でも切り裂く遊撃兵。彼女たちは「オイレン・シュピーゲル」というシリーズで主役をつとめる。1巻から4巻までが出ている。




     一方の公安には鳳(アゲハ)、乙(ツバメ)、雛(ヒビナ)の3名。それぞれ紫、青、黄のシンボルカラーを持ち、それに炎をつければコードネームになる。蝶、蜻蛉、蜂の翼を持ち空を飛ぶ。アゲハは優雅な姿ながら最強の特甲児童、お嬢様で気品ある指揮官。ツバメはある事件で出会った日本の老人から引き継いだ日本刀を操り、今は亡き彼を心の師とする。ヒビナは爆発物検知とその解除に長ける。内向的で臆病者だが、仲間を見捨てて逃げることはしない。こちらは「スプライト・シュピーゲル」という作品で主役をつとめる。こちらも1巻から4巻まで。
     ただし、こちらのチームは2代目で、最初は蛍、皇(スメラギ)、鳳の3人のチームだった。この頃のアゲハは泣き虫だった。最初の任務で何かがあったらしく、2人が失われ、一番年下だったアゲハだけが生き残り、今は凛々しい小隊長になっている。ツバメとヒビナは後から補充されたメンバーで、歳も若い。
     真相はいまだにわからないのだが、どうも脳内チップに欠陥があって、そのため敵に精神を汚染され、6名の特甲児童同士が殺し合ってしまったらしい。生き残った4名からは心を守るため、その記憶が消去されているらしい。
     脳内チップの開発者は事故死しており、その欠陥を見つけ出し、正せる者はいないまま今も使われ続けている。
     



     治安組織とテロリストの戦いは、次第にテロリストの方が優勢になるかに見え、男子特甲児童は軍を脱走して敵方の陣営にまわってしまう、その中には夕霧の想い人もいる。
     祖国を失った日本人移住者はつつましく助け合って暮らしているが、当局からはテロリスト扱いされている。実際にテロ組織に走った者もいるが、大部分は真面目に暮らしている。だが、犯人役の濡れ衣を着せるにはちょうどおあつらえ向きの位置にいる。
     相手方には物語開始時点では主人公たちの敬愛する上官や親友、想い人だった存在が次々と加わっていく。治安機関も政治に翻弄される存在であり、治安機関上層部や政府には腐敗も対立もあり、責任を回避するために強引にスケープゴートを求めるものもいる。テロリストに侵食もされている。テロリスト側は子供の脳を摘出して、それを兵器のAIや爆弾の起爆装置代わりに使用するなど、あらゆる非人道的手段をとる。
     そんな中でも治安維持のために自分の持ち場を守り、踏みとどまって全力を尽くして戦う人達がおり、彼女達はその最前線にいる、切り札的存在である。

     作品中では、ドイツ語やイタリア語、ロシア語、ギリシャ語など、あまり聞きなれない単語が固有名詞や漢字のルビなどで多用され、一種独特の雰囲気を出している。

     構成として、1、2巻あたりは別個の事件に出動する彼女たちを描くが、しだいに互いの事件が相手の事件に関わりを持つようになり、3、4巻では同じ事件に別々の角度から関わるようになる。その過程で互いに相手を認識し、同僚とはまた異なる親しみと反発と信頼を感じるようになる。若い少女なので、ストーリーがすすむうちにそれぞれ想い人もできてくる。どの娘も不器用で、ほほえましく、いたましい恋をする。
     彼女達はほとんどが愛してくれる両親や家族を持たない。不自由な身体に生まれついた故に捨てられたり、両親や兄妹と共に事故にあって自分だけが生き残ったり、父親や母親が自分の目の前で自殺したりしている。家族の不幸を自分のせいだと思い、自分が生きていていいのかと常に不安を持ち、自分の生きる意味を探しながら、敵と戦えば絶対に負けない、絶対に生き残る、と底力を発揮し、それでいて誰か、仲間や大切な人を助けるためには命を捨ててもいい、と思いつめてしまう。とても繊細でアンバランスな心と、強力な身体能力を持っている。
     
     そして最終章になるテスタメント・シュピーゲルでは2つのシリーズを融合した一つの作品として彼女たちの最後の戦いを描くことになる・・・はずだったのだが、2009年に1巻が発表されてからずっと続編が出なかった。周知の通り2011年には大震災が発生し、作者も被災し、日本は作者が描いたような惨事に襲われてしまった。そのあたりも執筆意欲に影響を与えたのか、私は特に作品以外の作者の発言などは追っていないのでよく知らないが、とにかく出なかった。

     
     これまでは2つのチームの描写が、作品として分かれていたせいもありほぼ同等になされていたのだが、テスタメント1では涼月チーム側が中心に描かれ、鳳側はちらっとしか登場しない。しかもアゲハは終盤敵の手におちてしまう。だがあまり描写がなく、なぜそうなったのか詳細がわからない。

     涼月も陽炎も夕霧も、それぞれの人生の課題に直面し、それをクリアする過程で大切な人を喪失するなど、1巻はかなり主人公サイドがへこむ展開だったし、特に終盤は展開が目まぐるしく、経過を省略して結果だけ書く、という感じだったので 何があったのかがわからない。続編でアゲハ側から書かれるのか、そしてこの先はどうなるのか、ずっとモヤモヤした状態が続いていた。

     それがようやく今年出たのだが、まだ2の前編、後篇ということで完結ではない。しかも分厚い(2冊で約1000ページ)。もともとはネット上で連載していたらしいが、私は読める環境ではないので単行本になるのを待っていた。


     よし続き出た、読むぞ、と思ったらかなり前の内容を忘れていたので、これはいかん、読み直さければもったいなくて新刊が読めない、と思って旧作を読み直した。
     本当はオイレン、スプライトの各4冊も読み直したかったのだがそこまで待てなかったので
    テスタメント1だけだが。なので細かい設定はかなり忘れている。

     まだ2は最初の方を少し読んだだけなのだが、1を読んでもやもやしていたところはかなり埋まりそうな気配なので、少し安心している。

     もし興味を感じる人がいれば、と思って紹介がてら書いてみた。漫画版もあるので忙しい人はそちらから入るのもいいかも。漫画版では2巻くらいまでの内容しか読めないけど。


     中途半端な記憶で書いているので、いろいろ間違いはあるかもです。
     
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