「つゆのあとさき」(赤羽みちえ著)紹介と感想
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「つゆのあとさき」(赤羽みちえ著)紹介と感想

2015-12-06 17:02



     著者の赤羽みちえさんは、お母さんが倒れて、その介護の様子を「のんびりいこうよ」というギャグ調のエッセイ漫画にして産経新聞に連載していたことがあり、その時に名前を知った。


     確かこの連載中に、お母さん、お父さんを続けざまに亡くされて、その事もマンガの中に書いていたように記憶している。新聞も単行本も所持していないので、単行本に最終回まで収録されていたのかは確認していないが、発売日と連載終了日の関係からおそらくそうではないと思う(最終回は2010年10月29日らしい)。
    http://ameblo.jp/444/entry-10690826574.html

     ご本人のHPとかは無いみたい(ツイッターは見つけたが、2012年が最新書き込みになっていて、以降放置の模様。フェイスブックなど他のSNSに移行したのかもしれないが私にはわからない)で、あまり詳しいプロフィールなどは、当時漫画の中で描いていたことを除けば存じ上げない。

     だが検索すると、もともとそういう方面に興味をお持ちだったのか、お母さんが倒れたのがきっかけかはわからないが、介護方面の著作が多い。現在もフォアミセスという雑誌に、「ぬくもり」という介護関係の作品を連載しているらしい。
    http://www.akitashoten.co.jp/formrs/2015/11

    「つゆのあとさき」は永井荷風の小説とも、さだまさしの歌とも関係無く(作者はどう思ってつけたのかは存じ上げない)、特別養護老人ホームを舞台にした著者の漫画作品のタイトル。
     ひと昔前は、「老人ホーム」に親を入れるなんて、何て親不孝なの、嫁がよっぽどアレなのね、なんていう雰囲気もあったみたいだが、現在はむしろそれが普通で、そうしたいのに空きが無くて入れない、というのが社会問題になっていたりする。
     老人ホームという言葉も正確ではなくて、法律用語としては有料老人ホームもしくは介護老人福祉施設らしく、特別養護老人ホームというのはこの後者に該当するらしい。ややこしい。こうした施設は、建設すると補助金が出るよ、なんて時ににどっと建設ラッシュになって、補助金が無くなるとパタリと供給が止まる。ホームを運営するよりも、建設して補助金をもらうのが目的の業者(その後は転売してしまう)なども出てきてしまうらしい。
     常時一定数確保、のような計画になっていないみたいで、減りすぎたら補助金でてこ入れみたいな感じ?職員も募集が多い年、ほとんど無い年の波が激しいように聞いたことがある。補助金行政の難しいところだろう。このあたりは噂レベルの話で、きちんと自分で裏付けを取ったことはありません。私の周囲ではそう思われている、ということ。

     特別養護老人ホームには、原則的として要介護3~5の人が入るとのこと。要介護3というのは自分一人では立ったり歩いたりが出来なくて、食事、トイレ、入浴にも誰かの手助けが必要な状態、ぐらいの目安らしい。頭がはっきりしていても、日常生活が一人でできなくなれば要介護3ということみたい。実際には、高齢化すれば誰でも物忘れや不注意は多くなり、人によってはいわゆる認知の症状も出てくるそうで、認知症の面からは自分の生年月日や名前を忘れたり、暴言・暴行、介護に抵抗する、何て症状が出てくるという。4だと徘徊がはじまって、5だと寝たきりくらいが大雑把な目安みたい。
     困るのは身体は元気一杯で動き回れるけど、会話が通じなくなって大声で怒鳴ったり暴力をふるったり、という人だと思うが、こういう痴呆症状だけの人が特別養護老人ホームの入居資格に該当するのかよくわからなかった。
     一般的に、大家族でない場合の家族、配偶者とか子供とかその両方とか、一人二人の少人数では仕事もあるし目がゆきとどかないし世話もしきれない、となれば施設でお願いしたい、となるのが普通だろう。でも普通の人は施設がどんなところか、どんな事をそこでしているのか、はあまり見る機会が無い。ニュースで施設での虐待や事故の事を知ると、不安になるばかり。
     そこでこの作品みたいに、きちんと取材した事が感じられる内容で実態を紹介してもらえる事はありがたい。著者のお母さんが世話になった施設を参考にしているような事があとがきに書いてあった。

     実は私は1巻しか読んでいないのだが、1巻に4話くらい入っており、ほぼ新人の若い介護福祉士(6年目だがこれまではデイケア担当で、入居者の担当経験はまだ2ヶ月)を主人公に、様々な患者模様と、起こりうるトラブル、患者の家族側の事情などを描いている。例えばこんな感じ。

    1話
     糖尿病で目も見えなくなり、足も不自由になったお婆さんがいる。彼女は人当たりが柔らかく、きちんと感謝を言葉にしてくれる人で、主人公を娘のように思ってくれる。ほとんど身寄りがいない人である。だが彼女は主人公が休暇の日に、容態急変してしまう。
     また、これと前後して主人公が幼い頃から買い物をし、かわいがってもらった魚屋のおかみさんがアルツハイマーで入所してくる。主人公があこがれていたほど、生命力に溢れてハツラツとしていたおかみさんは、無表情で突然暴れ出す、別人のような人になっていた。ご主人はそんな妻の様子を見るに耐えない、いっそ死なせてやりたい、と思いつめ、悪いことにお店も潰れてしまった・・・

    2話
     ショートステイの寝たきりの患者を迎えに行く主人公。だが、その患者は嫁に放置され、排泄物も片付けてもらえず、床ずれもひどい。これは老人虐待だわ、と憤る主人公。だが、嫁は放置していたわけではなく、義母の世話が出来ない、心の病を抱えていた。彼女の方が、義母にずっと虐待を受け続けており、寝たきりになっていても、怖くて義母のそばには寄れない・・・このままでは二人とも共倒れになってしまう。

    3話
     ホームに時折りやってくるボランティア団体。善意に溢れた人たちだが、ちょっと押し付けがましいところもあり、彼女たちを歓迎する人もいるが、何人かの入居者は彼女たちを毛嫌いする。どうすればよいか、主人公たち、施設の人々は知恵を絞る。

    4話
     主人公が介護士を目指すきっかけとなった話。彼女は小学5年生の頃、中学生の姉と二人で、脳出血で倒れ、寝たきりとなった祖母を介護した経験があった。だが祖母の回復は見込めず、何をしても無反応。主人公がうっかり暖房のスイッチを切ってしまったことに気付くと、祖母の容態は悪化していて・・・
     
     私も「のんびりいこうよ」を読んでいた頃は、どこか他人事と思っていたのだが、現在は周囲にこうした家族を抱えている人も多い。私自身も何時そういう立場になってもおかしくない。そうなる前に4巻まで読んでおこうと思っている。

     ニコニコ静画でも電子書籍として購入できるようで、1巻は50ページ、2~4巻は10ページ程度を試し読みもできる。関心がある方はのぞいてみては(閲覧数がすごく少ない。ひょっとしたら私しか見ていない。こういう真面目な物ほど、ネットだと埋もれちゃうんだよなあ。私のブロマガにたいした集客力は無いが、誰かの役に立てばと思って紹介してみる)。

    http://seiga.nicovideo.jp/book/series/113131
     

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