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        <title><![CDATA[橘川幸夫放送局通信]]></title>
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        <description><![CDATA[リアルテキスト塾の塾長、塾生による総合メディアです。]]></description>
        <language>ja</language>
            <item>
                <title><![CDATA[橘川放送局は2015年4月よりリニュアルします。]]></title>
                <description><![CDATA[<p>いろいろな動きが始まる2015年4月です。時代の変わり目に、ますますめまぐるしい動きをするデメ研にご注目を。</p>]]></description>
                <link>https://ch.nicovideo.jp/metakit/blomaga/ar756823</link>
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                <pubDate>Tue, 24 Mar 2015 09:17:00 +0900</pubDate>
                <content:encoded>
                        <![CDATA[<p>いろいろな動きが始まる2015年4月です。<br />時代の変わり目に、ますますめまぐるしい動きをする<br />デメ研にご注目を。<br /><br /></p>]]>
                </content:encoded>
                <dc:creator><![CDATA[橘川幸夫]]></dc:creator>
                <nicoch:article_thumbnail></nicoch:article_thumbnail>
            </item>
            <item>
                <title><![CDATA[パンは裏切らない 2　たかなしみるく]]></title>
                <description><![CDATA[<p>「はるちゃん。『好き』って何？なんで『好き』だからほかの人とは違うの？それ、傍から見たら、全部一緒だよ。言動が一致しない。あたしには、はるちゃんの事が、よくわからない。」
――よく、わからないんだ。自分自身のことが。
「うち。自分でも、自分のことがよくわかんない。確かにみちゃんから見たら、うちの言動は伴ってないと思うよ、わかってる。でも『好き』なんだもん。優弥のこと。優弥優しいから、うちのそばに、それでもまだ寄り添ってくれるから、だから、傍にいたいって、思うから、だから。」
「だから、『好き』なの？」
「わかんない、そんなの定義できない。じゃあみちゃんは何で今好きな人のことが『好き』なの？」
「え？」
「じゃあなんでみちゃんは今も好きな人のことが」
そもそも、『好き』と言う感情のメカニズムが、もうあたしにはわからない。と言い聞かせるも、段々と抑えていた感情が、あたしの中で氷解していくのを、</p>]]></description>
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                <pubDate>Sun, 28 Jul 2013 16:09:00 +0900</pubDate>
                <content:encoded>
                        <![CDATA[<p><p>「はるちゃん。『好き』って何？なんで『好き』だからほかの人とは違うの？それ、傍から見たら、全部一緒だよ。言動が一致しない。あたしには、はるちゃんの事が、よくわからない。」</p>
<p>――よく、わからないんだ。自分自身のことが。</p>
<br /><p>「うち。自分でも、自分のことがよくわかんない。確かにみちゃんから見たら、うちの言動は伴ってないと思うよ、わかってる。でも『好き』なんだもん。優弥のこと。優弥優しいから、うちのそばに、それでもまだ寄り添ってくれるから、だから、傍にいたいって、思うから、だから。」</p>
<p>「だから、『好き』なの？」</p>
<p>「わかんない、そんなの定義できない。じゃあみちゃんは何で今好きな人のことが『好き』なの？」</p>
<p>「え？」</p>
<p>「じゃあなんでみちゃんは今も好きな人のことが」</p>
<br /><p>そもそも、『好き』と言う感情のメカニズムが、もうあたしにはわからない。と言い聞かせるも、段々と抑えていた感情が、あたしの中で氷解していくのを、あたしは感じ取ってしまった。溶けていく、バランスが、溶けていく、崩れていく。</p>
<p>さっき火をつけた煙草は、もう既に全て燃え尽きて、灰になっている。</p>
<br /><p>――『♪頭の中の僕が　我慢できない声で』</p>
<p>「みちゃんはさあ、好きな人に会いたくないの？会ってその人の肌に触れたいとかさ、一緒にいたいとかさ、思わないの？だって大学生の時、みちゃん…」</p>
<br /><p>――『♪バランスが』</p>
<p>「いや、私だってわかんないよ。今もまだ『好き』かどうかもわかんないよ。だから何も言わないんじゃん！そもそももう、もうすぐに、あいつは…。」</p>
<br /><p>――『♪崩れても』</p>
<p>「『好き』かどうかわかんないんじゃなくて、『好き』であることを認めたくないんでしょ、みちゃんが。余裕がないんじゃないよ？傷つくから？怖いから？でもまだ『好き』としか、ねえ、思えないよ。みちゃん。」</p>
<p>「そんなことない本当にわからない。だって、もう、『本当に好き』だとしても、『好きでいても』意味ないもん。意味、ないんだよ。」</p>
<br /><p>――『♪誰も』</p>
<p>あたしは、言葉に詰まった。かと言って、此処で涙を流すわけには行かない。沈黙を埋めるために、もう一本吸おうと箱に手を伸ばすと同時に、はるちゃんがゆっくりと、あたしを諭すように言葉を放った。</p>
<br /><p>「人って、何も言わなくても、意外と雰囲気で、その人が何考えてるかわかるもんだと思う。言葉が先じゃない。言葉よりも前に、身体は感情を放出するよ。」</p>
<br /><p>――『♪見て見ぬ』</p>
<p>「だから。もう吉岡くん、多分今のみちゃんの気持ち、大体気づいてるよきっと。素直にさ、『好き』って言っても、いいんじゃないかな。」</p>
<br /><p>――『♪振りさ』</p>
<p>「だって。吉岡は、もうすぐ死ぬ。もうすぐ死ぬ人のこと、『好き』で居ても、仕方ない。死後の世界から、迎えなんてこないんだ。」</p>
<p>「死ぬ？死ぬって何？」</p>
<p>「とにかく、死ぬんだよ。あいつは、夏に。死ぬんだよ。だから、意味が、ないんだよ。」</p>
<br /><p>あたしは小声で、言葉を絞り出した。それが、今の、全てだ。これ以上、言いたいことも、言えることも、ない。</p>
<br /><p>「みちゃん。どうした？大丈夫？」</p>
<p>――息が上がっている。</p>
<br /><p>「今の、聞かなかったことにしてくれていいから。・・・てか、なんか。はるちゃんの話、聞いてたのに。」</p>
<br /><p>はるちゃんは、こくんとうなづいた。</p>
<p>悔しいが、はるちゃんの言うことの大体はあたしに当てはまる。そういえば、いままではるちゃんに此処まで言われたことがなかった。</p>
<br /><p>「みちゃんにさ。いま『意味わかんない』って言われて、ちょっとすっきりした。みちゃん、自分が思ったことを直ぐ口にするでしょう？」</p>
<p>「割と。」</p>
<p>「うち、すぐに相手に対して嘘付くからさ。言えないんだ。はっきり。だから、みちゃんのそういう部分、羨ましいと思うし、嫌いじゃないの。だから、思ったこと言われるのが嬉しい。」</p>
<p>「そうなの？」</p>
<p>「うん。でも、いまみちゃんに強く言ったのは、自分の気持ち、隠し通すことで、みちゃん自身が傷ついてるように見えたから。」</p>
<p>「そうだね。傷ついてる。でも、いい。大丈夫。自分の中でなんとかするよ。」</p>
<p>「みちゃん、優しいから。でも、無理しないで。」</p>
<br /><p>　あたしを諭す言葉からも瑞々しさは消えないままだった。何だろう。</p>
<p>「傷ついてる？」そりゃああたしから見たらあんたの方がそう見える。しかしきっと、あたし以上に傷ついてきたからこそ、あたしが抱えている「諦めにも似た、捻くれ曲がった」気持ちなど、直ぐに見通せる。</p>
<br /><p>「みちゃん、もう、うちは大丈夫。」</p>
<br /><p>大学時代、そこまで一緒にいたかと言われたら、そうでもない。嫌いではなかったけれど、何処かはるちゃんは常に『別の空間』にいるような子だった。強そうに見えて、本当は触れると壊れそうな、お砂糖菓子で出来ているような子。本来はそう言う子なのに、自前の頭の良さで、自身の思考と感情をどんどん品種改良していったような。なんだか『人工的な儚さ』と言うものを醸し出しているみたいだ。</p>
<br /><p>――はるちゃん、なんとなくありがとう。</p>
<p>でも、『好き』の向こう側なんか、全然まだあたしには見えない。見たくない。はるちゃんみたいに、あたしにはもうなれない。傷つきたくない。でも、『傷つきたくない』一心で、あたしはあたし自身に傷を付けていたことに気づかせてくれて、ありがとう。だからと言って、答えは出ない。</p>
<br /><p>はるちゃんが携帯をちらちらと気にしだす。</p>
<br /><p>「昔ここら辺のパン屋でバイトしてた。」</p>
<p>「ああ、アンゼリカ。」</p>
<p>「そう。パン大好きだからね。あ、『パンは裏切らない』って、あったよね、うち、言ってたよね。懐かしい！」</p>
<p>「言ってた言ってた。懐かしい。『パンは裏切らない』　人間は、裏切るんでしょ。」</p>
<p>「そう、でもパンは裏切らないから。そろそろ出ようか。うち、これから渋谷に向かう。」</p>
<p>「相変わらず忙しい人だね。」</p>
<br /><p>　そう言いながら、あたしたちは帰り支度をして、お会計を済ませる。</p>
<br /><p>「みちゃん、本当にありがとう。」</p>
<p>「うん、じゃああたしは小田急線に乗ります。またね。」</p>
<p>「じゃあ、また。」</p>
<br /><p>はるちゃんと別れて、改装された下北沢駅の地下まで、あたしは下っていく。</p>
<p>崩れたバランスは崩れっぱなしで、緊張が溶けたその瞬間から、もう階段の位置がよく把握できない。兎に角、長い、地下深くまで、あたしは潜っていく。</p>
<br /><p>――パンは裏切らない。</p>
<br /><p>本当に、パンは裏切らないのだろうか。</p>
<p>いや、パンだって、放置しておけば腐る。腐ったパンを食べる訳にはいかない。そう言う意味では、パンだって余裕であたし達のことを裏切る。</p>
<br /><p>放置しておけば腐る。</p>
<p>今あたしの胸の中を這いずり回る言葉たちも、このまま放置しておけばそのうち腐るだろうか。腐るのならば、あたしはそれを願う。いや、放置することも痛々しく、無理矢理に殺しているのだけれども。吉岡が、この夏に、<span style="font-family:Century, serif;"><span>7</span></span>月<span style="font-family:Century, serif;"><span>7</span></span>日に死ぬまで、待てない。いや、吉岡が死んでもなお、死んだらなお、あたしは『想いを』殺し続けて生きていくのだろう。例え、別の誰かに『想い』が移ったとしても、それも、全部。</p>
<p>だけど、はるちゃんの、あの品種改良されたような科白の瑞々しさは、何処かそのまま腐らせていくには、勿体ない。「所詮は他人事」だから。だろうか。</p>
<br /><p>――貴女の科白を、砂糖漬けにしてやろう。腐らせることの、裏切られることの、ないように。呪いをかけるかのように。砂糖漬けに、してやるよ。</p>
<br /><p>そうするより他に、バランスを保つ方法が、見当たらないから。</p>
<br /><br />終わり<br /><p>＊＊＊＊</p>
<br /><p>この春から、大学に通い直しています。</p>
<p>襲い来る定期試験期末レポートが嫌で仕方がありません。</p>
<div><br />●「パンは裏切らない」　<a href="http://d.hatena.ne.jp/xxmilk69xx/" target="_blank">たかなしみるく　深呼吸歌人153</a></div></p>]]>
                </content:encoded>
                <dc:creator><![CDATA[橘川幸夫]]></dc:creator>
                <nicoch:article_thumbnail>https://secure-dcdn.cdn.nimg.jp/blomaga/material/channel/article_thumbnail/ch1204/109616</nicoch:article_thumbnail>
            </item>
            <item>
                <title><![CDATA[パンは裏切らない 1　たかなしみるく]]></title>
                <description><![CDATA[<p>　「うちさ、みちゃんのさ、ブログ読んでるよ。」
　「あ、ほんとに。ありがとう。」
　「良いの？」
　「え？」
　「良いの？好きって言わなくて。」
　「え？」
　「このままで良いの？」
　「いや、好きかどうかも、あれだしね…余裕とか、ないし。」
　「そっかー。」
　
そっと、ホーム画面に切り替えて、携帯をベッドに投げる。
――「♪頭の中の僕が　我慢できない声で　バランスが崩れても　誰も見て見ぬ振りさ。」
（28日目の月／0.8秒と衝撃。）
「じゃあ、明日13時に！」
2013年5月某日。13時に。京王線明大前駅の、改札前に、はるちゃんは、いた。
一通りの挨拶を終えて、一頻り昔の空気を嗅ぎ切った。ここしばらく、はるちゃんとはメールでやり取りしていたので、「物凄く久しぶりに会った感じ」と言う感じは、あまりしなかった。周りの学生たちが飲み会の時間を打ち合わせている会話が聞こえるような時間帯に、それ</p>]]></description>
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                <pubDate>Sun, 28 Jul 2013 16:00:00 +0900</pubDate>
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                        <![CDATA[<p><p>　「うちさ、みちゃんのさ、ブログ読んでるよ。」</p>
<p><span style="margin-left:10em;">　「あ、ほんとに。ありがとう。」</span></p>
<p>　「良いの？」</p>
<p><span style="margin-left:10em;">　「え？」</span></p>
<p>　「良いの？好きって言わなくて。」</p>
<p><span style="margin-left:10em;">　「え？」</span></p>
<p>　「このままで良いの？」</p>
<p><span style="margin-left:10em;">　「いや、好きかどうかも、あれだしね…余裕とか、ないし。」</span></p>
<p>　「そっかー。」</p>
<p>　</p>
<p>そっと、ホーム画面に切り替えて、携帯をベッドに投げる。</p>
<br /><p>――「♪頭の中の僕が　我慢できない声で　バランスが崩れても　誰も見て見ぬ振りさ。」</p>
<p>（<span style="font-family:Century, serif;"><span>28</span></span>日目の月／<span style="font-family:Century, serif;"><span>0.8</span></span>秒と衝撃。）</p>
<br /><br /><p>「じゃあ、明日<span style="font-family:Century, serif;"><span>13</span></span>時に！」</p>
<br /><p><span style="font-family:Century, serif;"><span>2013</span></span>年<span style="font-family:Century, serif;"><span>5</span></span>月某日。<span style="font-family:Century, serif;"><span>13</span></span>時に。京王線明大前駅の、改札前に、はるちゃんは、いた。</p>
<br /><p>一通りの挨拶を終えて、一頻り昔の空気を嗅ぎ切った。ここしばらく、はるちゃんとはメールでやり取りしていたので、「物凄く久しぶりに会った感じ」と言う感じは、あまりしなかった。周りの学生たちが飲み会の時間を打ち合わせている会話が聞こえるような時間帯に、それを聴きながら、あたし達は井の頭線に乗って下北沢まで出て、はるちゃんに連れられて、カフェバーに入る。</p>
<p>あたしは、大学の喫煙所で拾ってきたライターで、煙草に火をつけ、煙を吐いたあとに、はるちゃんの方をちらっと見た。彼女は携帯をずっと弄っていた。バイトのお兄さんがグラスを<span style="font-family:Century, serif;"><span>2</span></span>つ持って、こっちにやってきた。なんとなく、<span style="font-family:Century, serif;"><span>3</span></span>年ぶりの再会に乾杯をして、なんとなくビールをごくごくと飲んだ。おいしい、単純に。おいしい。</p>
<p>はるちゃんは、自分の脳内からうまく言葉を選び出すようにして、あたしに色々と質問をしてきた。どれもこれも、差し障りのない範囲内の会話で留まった。あたしが話すと、はるちゃんは「うんうん。」と笑顔で返してくれる。優しいのだけど、でも何処かその笑顔になにか引っ掛かるものを感じる。</p>
<br /><p>――作られたような、でも作られていないような、笑顔。</p>
<br /><p>「でもまあ元気にやってますよー。」</p>
<br /><p>と、あたしが言ったか言わないかぐらいで、</p>
<p>「みちゃん、ごめん。」</p>
<br /><p>急に、はるちゃんはつぶやいた。</p>
<br /><p>「ごめん！みちゃん、ごめん。」</p>
<p>　「え。何、なんの話？」</p>
<p>　「さっき、歩道橋で嘘ついた。」</p>
<p>　如何せん話題の振り方が唐突だ。彼女の心理状況に追いつけない。彼女はあたしの状況判断を待たずして、いきなり泣き出した。</p>
<p>　「いや、まあ、え？何？」</p>
<p>　「だから、どしたの。嘘って？なんのこと？」</p>
<p>　「みちゃん…。」</p>
<p>　「ん？」</p>
<p>　「あたし、歩道橋んとこで、東京来て今んとこ凄い楽しかったって言ったじゃん？」</p>
<p>　「言ったねぇ。」</p>
<p>　「でもね、あたし全然ダメでね、昨日ね、<span style="font-family:Century, serif;"><span>1</span></span>日でね、<span style="font-family:Century, serif;"><span>3</span></span>人と…うん、<span style="font-family:Century, serif;"><span>3</span></span>人と。」</p>
<p>　</p>
<p>――寝たっつうらしい。</p>
<br /><p>　「うん。それで？」</p>
<p>　「いや、だから、それ嘘付いちゃったから。なんか、なんか申し訳なくなって…」</p>
<p>　「はあ。いや、別に申し訳なく思うことないよ。ただびっくりしただけで。」</p>
<p>「なんか、みちゃんが一生懸命うちの言うことに答えてくれる姿見てて、『ああ、なんでこんなうちに、みちゃん付き合っててくれるんだろう』って、考えちゃって…。」</p>
<br /><p>――なんだかぎこちない謝罪の科白だな。</p>
<p>言われて悪い気はしなかったけれど、その科白には、窮屈さを感じる。居心地が悪いと言うのか。</p>
<br /><p>　「それで、<span style="font-family:Century, serif;"><span>3</span></span>人って…どの？」</p>
<p>「ソウタと、優弥と、あと、ナカハシくん。」</p>
<p>　「ナカハシくん？」</p>
<p>　「そうだよ。あの子だよ。連絡付いたから一緒に飲んで、泊めて貰ったら流れで。でもね、あのね、優弥とのはね、他の<span style="font-family:Century, serif;"><span>2</span></span>人のとは違うの。全然違うの。『好き』だから。今も『好き』だから違うの。それは自分が望んだことだから、いいの、納得してるの。頭なでてくれて、手ぇ握ってくれて。違うの、ちがかったの、ちがくって…。うん。チガウんだ。」</p>
<br /><p>――「好き」っていう言葉の向こう側に、一体何があるというの。</p>
<p>「違う…。」</p>
<br /><p>――ちがく、ない。でも、違う。</p>
<p>「『好き』だから。」</p>
<br /><p>――その言葉の向こう側に、一体何が・・・・・・・。</p>
<p>「うん。そっか。よかったね。『好き』な人と、デキて。」。</p>
<br /><p>そこから先、はるちゃんが一方的に呟く「科白たち」は、非常に瑞々しかった。ふるふると震える心の奥底からは、後悔罪悪感自己嫌悪感といった類の負の感情から、或いは其処には自尊心や自己を他者より有利に見るような感情まで、一緒くたになったものが熟れたての果実の果汁のように、じゅわじゅわと湧いてくる。その瑞々しさは、何処か計算されたようなものの感じもした。品種改良を重ねて、作られたような、瑞々しさ。それは感じ取れても、どうしてかはるちゃんの「科白たち」は、もうあたしの心には浸透しない。これだけの事を言っておいて、まだ『優弥のことは、特別』なんて。言わんとしていることだけは受け取っておくけど、説得力なんか、ない。というよりも、「説得されたくなかった」。その考えを振り払うように、あたしはグラスに口をつけて、ぐっとビールを飲み込む。</p>
<p>別に、はるちゃんと争う気はない。争う気はないのだけれど、次に出てきた言葉は、一戦起こしそうな言葉だった。</p>
<br /><a href="http://ch.nicovideo.jp/metakit/blomaga/ar300689" target="_self">続く</a><br /><p>＊＊＊＊</p>
<br /><p>この春から、大学に通い直しています。</p>
<p>襲い来る定期試験期末レポートが嫌で仕方がありません。</p>
<div><br />●「パンは裏切らない」　<a href="http://d.hatena.ne.jp/xxmilk69xx/" target="_blank">たかなしみるく　深呼吸歌人153</a></div></p>]]>
                </content:encoded>
                <dc:creator><![CDATA[橘川幸夫]]></dc:creator>
                <nicoch:article_thumbnail>https://secure-dcdn.cdn.nimg.jp/blomaga/material/channel/article_thumbnail/ch1204/109616</nicoch:article_thumbnail>
            </item>
            <item>
                <title><![CDATA[地方書店、好文の木の実験]]></title>
                <description><![CDATA[<p>湯河原の小さな地方書店である「好文の木」は、地元作家の田口ランディとの関係を生かして、新しい書店のあり方を模索している。</p>]]></description>
                <link>https://ch.nicovideo.jp/metakit/blomaga/ar273321</link>
                <guid>https://ch.nicovideo.jp/metakit/blomaga/ar273321</guid>
                <pubDate>Fri, 28 Jun 2013 09:55:00 +0900</pubDate>
                <category><![CDATA[田口ランディ]]></category>
                <category><![CDATA[書店]]></category>
                <content:encoded>
                        <![CDATA[<p><div>●橘川幸夫<br /><br />◇湯河原の小さな地方書店である「好文の木」は、地元作家の田口ランディとの関係を生かして、新しい書店のあり方を模索している。書店というのは、売り場の采配が限られていて、取次が配本してきた本を並べて、売れない本を返本することがメインの仕事だ。だいぶ少なくなったけど、年寄り夫婦がやっている小さな書店が潰れないのも、自分の家を店舗にして、配本された本や雑誌を並べて売れなければ返本すればよいので、固定客さえいれば、年寄りの小遣い程度の利益は出るからだ。こういう店は、子どもたちが商売を引き継がずに廃業していく。</div>
<br /><div>◇インターネットによってAmazonなどの電子書店が大きな力となり、街の本屋も大型書店による覇権争いが全国的に展開されて、中小の書店は大きく淘汰された。これは、日本だけではなく、世界的な傾向であるようだ。</div>
<br /><div>◇委託返本制度は、利益は少ないが買取リスクのない安定したビジネスモデルとして高度成長の時代とともに栄えたが、高度成長の終焉と、版元の生産過多が、書籍の洪水を生み、取次もパターン配本のシステムに頼らざるを得なくなり、総量規制によって、返本のコスト削減をはかっている。</div>
<br /><div>◇小さな書店では、自分が売りたいと思う商品が実は、手に入らないことがある。2013年春の出版業界の話題は、村上春樹の「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」だった。大手書店では、発売当日は開店時間を早めたり、巨大なディスプレーを作って販売キャンペーンを行った。必ず売れると分かっているのだから、どこの書店でも部数確保に熱心だった。しかし、希望部数が確保出来るのは取引高の多い大手書店だけで、販売力のない地方の小さな書店には、少ししか回ってこない。</div>
<br /><div>◇好文の木にも、配本されたのは2冊だけであった。テレビをはじめとしてマスコミは、村上春樹旋風を報道する。好文の木の林店長は、しかたなく、Amazonで10冊購入をして、書店に並べた。Amazonは超巨大な大型書店だから、部数は確保されていた。もちろん、定価で買って、定価で売るわけだから、利益はない。しかし、テレビでこれだけ村上春樹が騒がれれば、普段、本屋さんに来ない人も買いに来るだろうから、その時に「ありません」と言ったら、本屋として認められなくなるという危機感があったのだろう。しかし、定価で仕入れて定価で売るというのは、商売人としては、なんとも屈辱的なことだろうと思う。人件費や営業コストの分だけ赤字である。</div>
<br /><div>◇好文の木がはじめたのは、作家と組んで、新しい商品を開発するということだ。本年5月に発行された田口ランディの新作「ゾーンにて」を、なんと200部仕入れて、サイン本にして、写真家トニー谷内さんの写真集のデモ版付きの<a href="http://koubunnoki.shop-pro.jp/?pid=58959373">「出版記念特別パック」</a>にして、ネットで販売した。これは、あっという間に完売した。</div>
<br /><div>◇更に、田口ランディが原爆と原発について書いた4冊の本をセットにして<a href="http://koubunnoki.shop-pro.jp/?pid=60023142">「田口ランディさんの作品から原爆と原発を学ぶ ４冊セット」</a>を販売している。</div>
<br /><div>◇書店の役割は、多様なコンテンツとお客のニーズを出会わせるところにある。Amazonの普及により、あらかじめ読者が選択している書籍は、Amazonで買うというスタイルが定着した。書店の生き残る道は、書店員が売りたい本を積極的にアピールして、オリジナルな商品を創造するところにあるのかも知れない。</div>
<br /><div>◇すべての本のメキキになることは出来ない。書店員が本音で売りたい本を、丁寧に売ることが、書店とお客との新しい関係を生み出すことが出来るかも知れない。本屋はたくさんあるが、「本屋さん」と愛情込めて語られる店が少なくなった。Amazonは便利だが「Amazonさん」とは呼ばないw </div>
<br /><div>◇好文の木は、田口ランディの読者コミュニティである<a href="http://chita-grandy.demeken.net/">「チタ・グランディ」</a>(通称・チタグラ)のコミュニティの中でも部屋を開き、読者からの相談に応じている。</div>
<br /><div>◇インターネットや大規模店舗の大波にもまれながら、書店に限らず、小さなお店が生き延びる方法は、お客との確かな関係を築いていくことしかないと思う。<br /><br /><br /></div></p>]]>
                </content:encoded>
                <dc:creator><![CDATA[橘川幸夫]]></dc:creator>
                <nicoch:article_thumbnail>https://secure-dcdn.cdn.nimg.jp/blomaga/material/channel/article_thumbnail/ch1204/273321</nicoch:article_thumbnail>
            </item>
            <item>
                <title><![CDATA[メデイア古老譚(１)本屋さんの巻]]></title>
                <description><![CDATA[<p>メディアにまつわる昔話です。</p>]]></description>
                <link>https://ch.nicovideo.jp/metakit/blomaga/ar262843</link>
                <guid>https://ch.nicovideo.jp/metakit/blomaga/ar262843</guid>
                <pubDate>Mon, 17 Jun 2013 05:20:00 +0900</pubDate>
                <content:encoded>
                        <![CDATA[<p><div>メデイア古老譚(１)本屋さんの巻<br /><br /></div>
<br /><div>昔、新宿に紀伊国屋書店の田辺茂一という店主がいて、書店に訪れる文学者との交流で、有名人になった。70年代までの新宿は、喫茶店の町で、青蛾とかランブルとか風月堂といった喫茶店には、紀伊国屋で買った本を読みふける若者たちが多くいた。</div>
<br /><div>DIGや木馬といったJAZZ喫茶でも、音楽が鳴り響いている中で、こむづかしい本を若者たちが読んでいたさ。新宿は早稲田大学の町でもあり、早稲田の学生が多かったな。茂一さんは銀座で飲んでたんだが。</div>
<br /><div>紀伊国屋のすぐそばにアメリカ屋靴店という靴屋があり、多いに繁盛していたものだ。</div>
<br /><div>この靴屋の店主が、いつも納得がいかなかったのは、同じ商いをしていながら、紀伊国屋の田辺つあんは文化人として雑誌にもよくとりあげられているのに、自分のところは儲けてはいるが、文化人になれない。</div>
<br /><div>それで、ある時、思い切って自分も書店をはじめることにしたんだ。それも銀</div>
                            <a href="https://ch.nicovideo.jp/metakit/blomaga/ar262843">続きを読む</a>
                        </p>]]>
                </content:encoded>
                <dc:creator><![CDATA[橘川幸夫]]></dc:creator>
                <nicoch:article_thumbnail>https://secure-dcdn.cdn.nimg.jp/blomaga/material/channel/article_thumbnail/ch1204/262843</nicoch:article_thumbnail>
            </item>
            <item>
                <title><![CDATA[未来フェス新聞vol.01 (2013年6月15日)]]></title>
                <description><![CDATA[<p>2013年10月12日13日に、京都で、未来フェスが開催されます。イベント、セミナー、ワークショップなど、さまざまな空間が同時多発で現れます。</p>]]></description>
                <link>https://ch.nicovideo.jp/metakit/blomaga/ar261898</link>
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                <pubDate>Sun, 16 Jun 2013 10:04:00 +0900</pubDate>
                <category><![CDATA[未来フェス]]></category>
                <category><![CDATA[京都]]></category>
                <category><![CDATA[橘川]]></category>
                <content:encoded>
                        <![CDATA[<p><br /><div>未来フェス新聞vol.01 (2013年6月15日)Twitterにて配信しました。</div>
<div>●橘川幸夫</div>
<br /><div>◇今年の10月12日13日に京都で「未来フェス」を行います。ただいま仕込み準備中。先日、京都に行って、いろいろな人と会いました。京都は、今、いろんな人が流入してきていて、いろんな動きが起きている感じがします。もともと超保守的な風土と超やんちゃな人たちが入り混じった町だと思ってますw　</div>
<br /><div>◇シェアハウスの広がりや、小さなイベント、ワークショップなどが多発しています。これは京都だけではなく、全国各地で、新しい社会構造や人間関係のあり方を模索するような動きが起きています。それは個人レベルでも、組織の内部でも。</div>
<br /><div>◇21世紀も13年が経ち、そろそろそうした動きが本格的に社会に根付いてもよいと思うのですが、なかなかそうはいってません。それは、どうしても、規模の経済学に縛られてしまう側面もあるのでしょう。</div>
<br /><div>◇京都の帰りの新幹線で「未来フェス」のイメージを思いついて、すぐに京都の若い仲間たちと連絡をとり準備をはじめました。未来フェスの案内サイトは、こちらです。http://miraifes.demeken.net/</div>
<br /><div>◇僕のイメージは、今、京都で起きている、さまざまな個別イベントやワークショップを、ひとつの「時間」でつなげることです。つまり日時を決めて、同時多発でイベントを行ってもらい、僕ら事務局は、共通パスポートを発行します。</div>
<br /><div>◇それぞれのイベントの内容・運営に事務局はタッチしません。いつものようにいつものことをやってもらいたい。ただ、日時を合わせましょうと。そうすれば、「未来フェス」全体で集客活動を行えます。</div>
<br /><div>◇それぞれのイベントのお客さんを別のイベントに誘うことも出来ます。つまり、「顧客のシェア」をしようということです。</div>
<br /><div>◇イベントの主催者は、未来フェスへの参加費は不要です。それぞれのリスクで場所を確保し運営内容を決め、それぞれの集客活動をしてもらいます。事務局で発行したパスポートの客が来場したら、参加させてもらい、参加者数に応じて費用を後日精算します。</div>
<br /><div>◇まだ呼びかけをはじめたばかりですが、10程度の主催候補が決まってます。これを100ぐらいにしたいと思ってますが、それはまだ分かりません。なんでもかんでもOKにすると、怪しい物販セミナーや自己啓発系も来てしまうので、審査を行います。</div>
<br /><div>◇農業問題も家族問題もメディア問題も音楽ライブもファッションショーも、いろいろ集まってます。クォリティよりも、今を生きていて、未来への意思を感じられるような動きをしている人に合流してもらいたい。</div>
<br /><div>◇「街コン」が盛んですが、僕らのは「街フェス」ですw 更に、いろいろ奥深い思惑があるのですがw 関心のある人は、東京と京都で説明会を随時行ないますので、賛同者の方にご案内さしあげます。以下で登録お願いします。http://miraifes.demeken.net/</div>
<br /><div>◇とりあえず、会いたいのは、お客さんではなく、イベントの主催者です。みなさんの活動をつなげていきたいと思います。陰謀会議にご参集くださいw</div>
<br /><div>◇「未来フェスin京都2013」は、プロトタイプのデザイン活動です。この方式がうまくいけば、各地で出来ます。インターネットとモバイル環境がフルに使えるので、パスポートのシステムも開発します。</div>
<br /><div>◇これまでのビジネスショーなどは、大規模な会場を借りて、ブースを不動産屋よろしくリセールするものです。僕らのは、「今、やっている活動」を時間のスペースに並べてつなげていくものです。だいたい、大会場を借りるお金はありませんw　</div>
<br /><div>◇お金のある奴には革命をやる資格なし(笑)。ないから、工夫する。工夫出来るから、楽しいのです。</div>
<br /><div>◇音楽関係のイベントは現在2本。ライブやコンサートやる人は、一緒にやりましょう。映画も2本検討中。まあ、ようするに、京都全体を使った学園祭だなw</div>
<div>10月12日13日、全国から遊びにきて欲しい。</div>
<br /><div>------------------------------------------------------------------</div>
<div>◇未来フェスのイベント主催者向けの説明会を行います。</div>
<div>東京は、6月22日(土)16時から高円寺コモンズです。</div>
<div>京都は、7月6日(土)18時からです。場所は未定。</div>
<div>未来フェスに関してのお問い合わせは事務局(miraifes@demeken.net)までご連絡ください。</div>
<div></div></p>]]>
                </content:encoded>
                <dc:creator><![CDATA[橘川幸夫]]></dc:creator>
                <nicoch:article_thumbnail>https://secure-dcdn.cdn.nimg.jp/blomaga/material/channel/article_thumbnail/ch1204/261898</nicoch:article_thumbnail>
            </item>
            <item>
                <title><![CDATA[映画「ガレキとラジオ」]]></title>
                <description><![CDATA[<p>●橘川幸夫　僕らの体内に残されている記憶遺伝子には、大災害と戦争と疫病による大きな不幸の悲しみが刻まれている。衛生学の発達は、疫病の大被害を最小限に抑えることが出来ているように見える。戦争は、常に人類滅亡の危機をはらみながらも危うい平和が保たれている。しかし、大地震、大津波の恐怖は、何十年サイクルで起きることを知りながら、人間の進化など自然を前にしては児戯に等しいといわんばかりの猛威を見せつけ、人々を物理的に精神的に不幸の極みに追い立てる。
　2011年3月11日の悲劇は、この時代を生きた人間にとって、生涯忘れることの出来ない事件として、語り続けるだろう。祖父母や両親が、関東大震災や太平洋戦争を語り続けたように。更に、大自然の災害は、原発崩壊という高慢な人間の知への信仰を打ち砕く悲劇を生み出し、無限の現在進行形の悲劇を子孫にまで押し付けてしまった。
　「ガレキとラジオ」という映画を見た。海</p>]]></description>
                <link>https://ch.nicovideo.jp/metakit/blomaga/ar247077</link>
                <guid>https://ch.nicovideo.jp/metakit/blomaga/ar247077</guid>
                <pubDate>Sat, 01 Jun 2013 09:46:00 +0900</pubDate>
                <content:encoded>
                        <![CDATA[<p><div>●橘川幸夫<br /><br />　僕らの体内に残されている記憶遺伝子には、大災害と戦争と疫病による大きな不幸の悲しみが刻まれている。衛生学の発達は、疫病の大被害を最小限に抑えることが出来ているように見える。戦争は、常に人類滅亡の危機をはらみながらも危うい平和が保たれている。しかし、大地震、大津波の恐怖は、何十年サイクルで起きることを知りながら、人間の進化など自然を前にしては児戯に等しいといわんばかりの猛威を見せつけ、人々を物理的に精神的に不幸の極みに追い立てる。</div>
<br /><div>　2011年3月11日の悲劇は、この時代を生きた人間にとって、生涯忘れることの出来ない事件として、語り続けるだろう。祖父母や両親が、関東大震災や太平洋戦争を語り続けたように。更に、大自然の災害は、原発崩壊という高慢な人間の知への信仰を打ち砕く悲劇を生み出し、無限の現在進行形の悲劇を子孫にまで押し付けてしまった。</div>
<br /><div>　「ガレキとラジオ」という映画を見た。海岸に住む人たちですら想像を絶する大津波で多くの肉親、友人たちを失った人たちの表情は、観る者を悲しくさせる。どんなに笑顔を見せてくれても、その裏側の悲しみが伝わってきて、たまらなくなる。ただ、この映画は、単に、被災地の悲しみを共有しようというものではない。</div>
<br /><div>　ある被災者の女の子は、津波以前の生活を思い出す。家族が大嫌いで、喧嘩ばかりして、「死んでしまえ」と、憎しみさえ覚えていた。しかし、津波がその家族を押し流してしまった時に、どれだけ自分が家族を愛していたことを知る。大きな喪失感は、そのことによって、本当に大切なものを知る。日常とは愚か者である。何が大事で、何が大切で、何を愛しているのかを、自分のエゴによって見えなくさせてしまう。災害は悲しいが、その中で生き延びた人は、失うことで発見したことを伝える役割がある。人間は、一人で生きているのではなく、家族や友だちや地域の仲間たちと一緒に生きることによって、はじめて自分なのだと。</div>
<br /><div>　この映画を作った梅村太郎くんとは、彼が博報堂に入社する前からの友人である。太郎くんは、神戸の古い出版社の息子で、阪神淡路大震災の被災をもろに受けた。その経験もあって、東北大震災があって、すぐに現地に向かったのだろう。太郎くんは博報堂に入って、優秀なクリエーターとして、テレビCMの撮影を数多く手がけた。その彼の仕事上のノウハウが、ここに見事に生かされた。太郎くん、君が仕事で選んだ技術は、こういう映画を撮るためだったのだよ。</div>
<br /><div>　311以後、南三陸町のガレキの中に二度ほど立った。そこは生命も生活も根こそぎ奪ったのに、何もなかったかのような平穏な海面と大空が広がっていた。そこには、紛れも無い日常の時間が流れていた。僕たちが、人間の傲慢な意識と欲望によって見えなくさせている本当に大切なものを、非日常の力によってではなく、日常の中で発見していくことが大事であることを、この映画を見て、何度も思い起こした。</div>
<br /><br /><div><span style="font-size:150%;"><a href="http://www.311movie.com/">▼ガレキとラジオ</a></span></div>
<div></div></p>]]>
                </content:encoded>
                <dc:creator><![CDATA[橘川幸夫]]></dc:creator>
                <nicoch:article_thumbnail>https://secure-dcdn.cdn.nimg.jp/blomaga/material/channel/article_thumbnail/ch1204/247077</nicoch:article_thumbnail>
            </item>
            <item>
                <title><![CDATA[ポップコーンなんかいらない　　ちとく]]></title>
                <description><![CDATA[<p>
　春特有の嵐から一夜明けた駅前公園で、鷲掴みにされたポップコーンが無造作にばら撒かれた。
　公園風景の一部に過ぎなかった数羽の鳩が、一斉にポップコーンを見た。その瞬間、風景上に点在していた鳩とは思えない程の鳩が数十羽、散らばったポップコーン目がけて沸き立つように集まった。
　その中に一羽だけ、その凄まじい光景から浮いてしまっている雄鳩、すなわち俺がいた。
　俺は、気がついたときには、求道的に生きていたのだ。俺が求めているのは、形而上的な真理や哲学などではない。たぶん、突き詰めてみれば「何故俺が求道的に生きる鳩なのか」ということなのだ。
　ばら撒かれたポップコーンは数分で食べ尽くされ、公園の鳩は風景の一部に戻っていった。ところが俺は、風景に戻ることなく、何も無い公園の真ん中に立ち止まり、他の鳩の原始的な、欲求そのままの行動を冷ややかに見ていた。俺の中にも幾分残っている本能的な部分、それは求</p>]]></description>
                <link>https://ch.nicovideo.jp/metakit/blomaga/ar181570</link>
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                <pubDate>Tue, 02 Apr 2013 00:47:00 +0900</pubDate>
                <content:encoded>
                        <![CDATA[<p><div>
<div>　春特有の嵐から一夜明けた駅前公園で、鷲掴みにされたポップコーンが無造作にばら撒かれた。</div>
<div>　公園風景の一部に過ぎなかった数羽の鳩が、一斉にポップコーンを見た。その瞬間、風景上に点在していた鳩とは思えない程の鳩が数十羽、散らばったポップコーン目がけて沸き立つように集まった。</div>
<div>　その中に一羽だけ、その凄まじい光景から浮いてしまっている雄鳩、すなわち俺がいた。</div>
<br /><div>　俺は、気がついたときには、求道的に生きていたのだ。俺が求めているのは、形而上的な真理や哲学などではない。たぶん、突き詰めてみれば「何故俺が求道的に生きる鳩なのか」ということなのだ。</div>
<div>　ばら撒かれたポップコーンは数分で食べ尽くされ、公園の鳩は風景の一部に戻っていった。ところが俺は、風景に戻ることなく、何も無い公園の真ん中に立ち止まり、他の鳩の原始的な、欲求そのままの行動を冷ややかに見ていた。俺の中にも幾分残っている本能的な部分、それは求道的な俺にとって厄介な足枷に過ぎず、俺の嫌悪の対象だ。特に最近では、身悶えするほど気障りな、原始的欲求に悩まされている。</div>
<br /><div>　見よ、俺の前を、一羽の雌鳩が通り過ぎ、ベンチの日影に入って休息している！</div>
<div>　俺は求道的に生きてきたから、いまだに独り身だ。本能剥き出しの鳩一般と同じ行動はもはやできない。にもかかわらず、適齢期の雌鳩が視界に入ると、体中の原始的な欲求が活動を始めてしまう。</div>
<div>　俺は、日影で休息する雌鳩に向き直った。傍目には落ち着いているように見えたかもしれないが、俺の体内は劇的に活動し始め、体中の血や体液が、まるでポップコーンに群がる鳩のように、一斉に下腹部に集中していた。</div>
<div>　一般的な雄鳩であれば、早足で雌鳩に近づく場面であった。ところがその変った雄鳩つまり俺は、拡げた尾羽を地面に引きずって、きわめてゆっくり雌鳩に対する求愛を始めたのである。</div>
<br /><div>　尚も見よ、俺は恥ずかしくて恥ずかしくて、今にも逃げ出してしまいたいのに、体毛が膨れ、下腹部が脈打っている滑稽！</div>
<div>　俺の求愛行動を認めた雌鳩は、お約束通りにトコトコ逃げた。痛々しいほど興奮しているぎこちない俺は、雌鳩のトコトコに歩調を合わせて、お約束通り雌鳩を追いかけた。</div>
<div>　追いかけている最中、俺の思考は乱れに乱れ、嘲笑すべき肉欲を無理やり求道的生き方に結びつける出鱈目な解釈を、次から次へと発明していたようだ。</div>
<br /><div>　俺がもたもたしていると、視界の雌鳩を遮るように、俺より若い別の雄鳩が尾を向けて割り込んできた。そいつはさっさと雌鳩に追いついて、嘴をつつき合ったり背中に乗ったり降りたりして、あっという間に一組のつがいとなった。</div>
<div>　俺は、目の前の一連の出来事を一度に消化できなかったが、俺の体はすぐに反応を示した。一旦は下腹部に集中した血や体液が、今度は一気に頭部へ昇っていったのだ。</div>
<br /><div>　春特有の嵐から一夜明けた駅前公園で、鷲掴みにされたポップコーンが、再び無造作にばら撒かれた。</div>
<div>　あれほど嫌悪した本能に身を任せ、目の前のつがいに攻撃しようとしていた俺は、思わずポップコーンを見た。その瞬間、おびただしい数の鳩が、散らばったポップコーン目がけて沸き立つように集まった。本能剥き出しの鳩一般と同じ行動ができない俺は、攻撃対象を見失い、眼下の地面をひたすらつついた。</div>
<div>　何故俺は、求道的に生きる鳩なんだ？……嘴が削れて無くなっても、いつまでもいつまでも俺は地面をつついていたのだ。</div>
</div>
<div> </div>
<div> </div>
<div>＊＊＊＊</div>
<br /><div>
<div>春は寂しいです。出会いも別れも関係ないです。街に人が溢れ出て、居場所が無いと感じるからです。（<a href="http://d.hatena.ne.jp/chikajo-chitoku/20090417/1239904536" target="_blank">深呼吸する言葉・chitoku</a>より）</div>
<br /></div>
<div>●「ポップコーンなんかいらない」　ちとく（リアルテキスト塾12期生）</div></p>]]>
                </content:encoded>
                <dc:creator><![CDATA[橘川幸夫]]></dc:creator>
                <nicoch:article_thumbnail>https://secure-dcdn.cdn.nimg.jp/blomaga/material/channel/article_thumbnail/ch1204/181570</nicoch:article_thumbnail>
            </item>
            <item>
                <title><![CDATA[ああ、うるわしき、ぼくらの殺人姫。　　たかなしみるく]]></title>
                <description><![CDATA[<p>　彼氏が、死んだ。正確に言うと、元彼が、死んだ。もっと正確に言うと、元彼は、私の脳内で、死んだ。もっともっと正確に言うと、元彼は、私の脳内で、私が、殺した。パニック症状で喘いでいる女の子を助けに向かっていた救急車に轢かれて死んだ。っていうことにして、殺した。私が、私の、脳内で。多分、3ヵ月ぐらい前の話かな。ついでにその事故のせいで、女の子もやばいとこまでやばくなったのかもしれない。そのへんは知らない。その女の子にはちょっと申し訳ないとか思ってる。でも、私の脳内の話だからなぁ。とにかく、元彼は、死んでいる。轢かれてfly away して passed awayしちゃった、的な。
　もう1回ゆうけど、死んだのは（殺されたのは）私の脳内での話だから、現実問題、2013年2月×日現在、多分、まだ、生きている。北関東の奥の方で、多分、生きている。らしい。そう、Twitterで回ってきた。そもそも北関</p>]]></description>
                <link>https://ch.nicovideo.jp/metakit/blomaga/ar157539</link>
                <guid>https://ch.nicovideo.jp/metakit/blomaga/ar157539</guid>
                <pubDate>Thu, 14 Mar 2013 00:37:00 +0900</pubDate>
                <content:encoded>
                        <![CDATA[<p><div>　彼氏が、死んだ。正確に言うと、元彼が、死んだ。もっと正確に言うと、元彼は、私の脳内で、死んだ。もっともっと正確に言うと、元彼は、私の脳内で、私が、殺した。パニック症状で喘いでいる女の子を助けに向かっていた救急車に轢かれて死んだ。っていうことにして、殺した。私が、私の、脳内で。多分、3ヵ月ぐらい前の話かな。ついでにその事故のせいで、女の子もやばいとこまでやばくなったのかもしれない。そのへんは知らない。その女の子にはちょっと申し訳ないとか思ってる。でも、私の脳内の話だからなぁ。とにかく、元彼は、死んでいる。轢かれてfly away して passed awayしちゃった、的な。</div>
<br /><div>　もう1回ゆうけど、死んだのは（殺されたのは）私の脳内での話だから、現実問題、2013年2月×日現在、多分、まだ、生きている。北関東の奥の方で、多分、生きている。らしい。そう、Twitterで回ってきた。そもそも北関東って、まず海ないし、ちょっとなんでそんなところに住めるのかよくわかんないけど。一緒に海見にゆりかもめ乗ったりしたけどさ、なんであんなに汚い東京湾の海ごときではしゃぐの？あ、私、高校の目の前海だった。千葉のね、京葉線の駅が最寄りだった。コウコウ。そうそう、風吹くとすぐ止まるあれね、だから、海珍しいとか、意味わかんない。今、マンション建っちゃって高校から海も見えないけど。まあ、海がないとかあるとかの話じゃなくてさあ。あ、海に掛けて言うなら、死体を東京湾に沈めてやりたいかも。芝浦ふ頭辺り。でもそうすると死体、漂流して、千葉の海の底にも流れてきたりするのかな。えー、やだな。それは嫌だな。ていうか、現実問題はまだ生きているんだから、私それやったら殺人と死体遺棄の容疑で即逮捕じゃん。結構罪重いんだよね。あれ、因みに強盗殺人が刑法的に一番やばいんだっけ？あ、じゃあ、死体遺棄ぐらいにしとく？誰か私の代わりに殺しといて。あ、それじゃあ計画犯でやっぱり容疑かけられる系？まじ？じゃあやらない。</div>
<br /><div>　そもそも、私の中では死んでいるはずなのに、なんでこんなに現実問題は生きていることに固執しちゃうんだろう。勝手に死んでくれないかなあ。うーん…、あ、やっぱ死んじゃダメだ、殺してもダメ、現実問題ね。だって私まだ実は、元彼に、迎えに来て欲しいって、思ってる。本当に死んじゃったら、絶対来てくれない。あ、でも来ないか、私の中じゃ死んでるんだもん。来ないわ。だって、私の脳内にちゃんと、元彼の墓標あるし。元彼が前にゆってたようにしたまでじゃん。「お前の中で死にたい」って、私の首を締めながら『いってた』から。いつだか前にセックスしたときに。（あ、今の『いってた』は二つの意味で取っといてください。）ああ、そんなこともあったねえ、ウケる。懐かしい。ほら。私、えらい。いや、エロい、いや、えらい。</div>
<br /><div>　勿論私も強いわけじゃないからさ。時折ね、季節の虚ろう匂いに惑わされて、私の気持ちに影が見えることがあるよ。彼の。そうしたら、コンビニの安い発泡酒500ml缶を持ってきてね、この墓標の前でぱしゅっと開けるんだよ。で、どばどばーーって酒を墓標にぶっかけてやるの。最初は私も笑いながらなんだけど、残り200mlぐらいで、つつつーって涙流れてくるの。で、仕舞いには、ぶあああああって大泣きしてる。悔しい。悔しいけど、大泣きしてるの。まだ好きなのかな、未練がましいのかな、そっか。わかってる。ごめん。泣いたらちょっと、すっきりするんだけど。早くこの墓標の前に現れるのをやめたいと思うよって、こんなもの立ててる事自体がいけないのかな。引っこ抜けるかな、あ、やっぱ無理。痛い。胸が痛い、なんか、なんか、べろーんって剥がれていく感じがする。気持ち悪いし、痛いし、あっ、感じちゃ…わない。痛い！</div>
<br /><div>　ひとつ言っておくとね、意外と、普段は元気にやってるよ。好きな音楽と、好きなひとたちに塗れて、毎日笑ったりにやにやしたり、ちょっと泣いたり、してる。今日は普通に職場行くはずだったんだけど、インフルエンザかかっちゃってお休みを余儀なくされてる感じ。まじ申し訳ないよね。でもCD買いに外出たいな、あ、だめ？そんぐらいならいいよね、とかね。そんなコトばかり考えている。もしかしたら、墓標を立てているおかげで、こうしてられるのかも。まあなんだっていいか。私が元気で、可愛くいられるのなら。あ、そうそうそうだ、こないだライブハウスで話しかけられた男の子がタイプの顔してて、で、しかもビール1杯奢ってくれちゃったんだけどどう思う？あ、ごめん…。もう下手にじたばたしないよ。まだ元彼好きだよ認めるよ一応。一応。だけど、多分いい人に告白されたら付き合うと思うよ。普通に。いつまでも引きずってても、もうしょうがないっしょ。だって、既に死んでるし。因みに元彼本人も、夏に死ぬって公言してるし。オフィシャル、オフィシャル。Twitterで回ってきた。多分。死因？そこまでわからないけど、自殺するんじゃない？うん、「21世紀の自殺者」、あれいい曲大好き。まさにそんな感じ。何れにせよ、あと少しで＜本当に＞死んじゃう人と付き合ってもどうしようもなくない？</div>
<div>　だって私まだ生きていたいもん。</div>
<div> </div>
<div> </div>
<div>＊＊＊＊</div>
<br /><div>「模倣と、想像と、妄想と、創造と、煌びやかな破壊と、なけなしのアイラブユー。」</div>
<div>2月頭、インフルエンザにかかっていた時期に、書きました。</div>
<br /><div>●「ああ、うるわしき、ぼくらの殺人姫。」　たかなしみるく　深呼吸歌人153</div></p>]]>
                </content:encoded>
                <dc:creator><![CDATA[橘川幸夫]]></dc:creator>
                <nicoch:article_thumbnail>https://secure-dcdn.cdn.nimg.jp/blomaga/material/channel/article_thumbnail/ch1204/157539</nicoch:article_thumbnail>
            </item>
            <item>
                <title><![CDATA[人、来る　　灰我染也（はいが　しみや）]]></title>
                <description><![CDATA[<p>　今日はたくさんの方が来られるようです。
　忙しくなりそうですから、お迎えする準備を急ぎましょう。
　
　そんな言葉を聞いて、私たちはみんなでお迎えの準備を始めた。
　ここには老いた者も若き者も、たくさんの人がいる。眠る者もいれば、ゆったりと過ごす者もいる。
　お迎えと言っても、そんなにたいそうなことをする訳じゃない。ただ、お迎えをするだけだ。
　
　しばらくすると、言ってたとおり、たくさんの人が遠くから静かにやってきた。
　大げさな歓待などしないが、みんな控えめに「寒くなかったですか」とか「疲れてませんか」と声を掛け寄り添うように一緒に白く長い一本道の先へ進んでいく。
　
　来た人は遠い道を来たんだろうか、それともそう感じるだけなんだろうか。表情は疲れた感じでもあり、何か考え込んでいるような表情の人もいる。
　わたしたちはそんな人たちのために、頭を整理する時間を歩きながら作っている。
　</p>]]></description>
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                <pubDate>Wed, 13 Mar 2013 23:53:00 +0900</pubDate>
                <content:encoded>
                        <![CDATA[<p><div>　今日はたくさんの方が来られるようです。</div>
<div>　忙しくなりそうですから、お迎えする準備を急ぎましょう。</div>
<div>　</div>
<div>　そんな言葉を聞いて、私たちはみんなでお迎えの準備を始めた。</div>
<div>　ここには老いた者も若き者も、たくさんの人がいる。眠る者もいれば、ゆったりと過ごす者もいる。</div>
<div>　お迎えと言っても、そんなにたいそうなことをする訳じゃない。ただ、お迎えをするだけだ。</div>
<div>　</div>
<div>　しばらくすると、言ってたとおり、たくさんの人が遠くから静かにやってきた。</div>
<div>　大げさな歓待などしないが、みんな控えめに「寒くなかったですか」とか「疲れてませんか」と声を掛け寄り添うように一緒に白く長い一本道の先へ進んでいく。</div>
<div>　</div>
<div>　来た人は遠い道を来たんだろうか、それともそう感じるだけなんだろうか。表情は疲れた感じでもあり、何か考え込んでいるような表情の人もいる。</div>
<div>　わたしたちはそんな人たちのために、頭を整理する時間を歩きながら作っている。</div>
<div>　</div>
<div>　</div>
<div>　たくさんの来た人の中に、女の子が一人いた。</div>
<div>　</div>
<div>　「あっちゃんじゃないか！」</div>
<div>　</div>
<div>　迎える側にいた老婆が、少し驚いたように女の子に声を掛けた。</div>
<div>　</div>
<div>　「おばあちゃんは、だれ？ねえ、ママを知らない？いつの間にかはぐれちゃったの。」</div>
<div>　</div>
<div>　女の子は、そうつぶやいて、小さくくしゃみをした。</div>
<div>　老婆は、女の子のそばに寄り、を静かに抱きかかえるとゆっくり話し始めた。</div>
<div>　</div>
<div>　「そっか、あっちゃんはばあちゃんのこと知らないんだね。でもばあちゃんはね。ずっとあっちゃんのことを見てたんだよ。まさか、こんなに早く会えるとは思わなかったし、ほんとはもっと、あっちゃんの大きくなる姿を見ていたかった。」</div>
<div>　</div>
<div>　話しかけながら、老婆は静かに泣いていた。</div>
<div>　</div>
<div>　「ママのところに帰りたいの。ママはどこにいるの？」</div>
<div>　</div>
<div>　女の子の問いかけに、老婆はしばらくの沈黙の後に答えた。</div>
<div>　</div>
<div>　「あっちゃん、いきなりの話でびっくりしちゃうかもしれないけど、ママはちょっと遠くに行っちゃったんだ。というか、あっちゃんが少し遠くに来ちゃったって言う方が正しいかな。これからは、なかなかママに会うことが出来ないけど、でもね、ママが何をしているかは、不思議な窓から見ることは出来るんだよ。そして、１年に一回だけはママのところに遊びに行けるんだ。その時は、ママの背中をぎゅっと抱きしめてあげてね。そしたらきっと、ママもあっちゃんがそばにいることがわかるはずだよ。」</div>
<div>　</div>
<div>　聞きながら、女の子も静かに泣いていた。</div>
<div>　</div>
<div>　僕も、母さんのことを思い出して泣いた。</div>
<br /><br /><div>＊＊＊</div>
<br /><div>http://d.hatena.ne.jp/hi_ga438/</div>
<br /><div>●「人、来る」 灰我染也（リアルテキスト塾12期生）</div></p>]]>
                </content:encoded>
                <dc:creator><![CDATA[橘川幸夫]]></dc:creator>
                <nicoch:article_thumbnail>https://secure-dcdn.cdn.nimg.jp/blomaga/material/channel/article_thumbnail/ch1204/157476</nicoch:article_thumbnail>
            </item>
            <item>
                <title><![CDATA[峯岸みなみの「丸刈り動画」についての対話 ★田口ランディ+橘川幸夫]]></title>
                <description><![CDATA[<p>田口ランディと橘川幸夫の、峯岸みなみの「丸刈り動画」についての対話です。
</p>]]></description>
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                <pubDate>Sat, 02 Feb 2013 17:10:00 +0900</pubDate>
                <category><![CDATA[田口ランディ]]></category>
                <category><![CDATA[橘川幸夫]]></category>
                <content:encoded>
                        <![CDATA[<p><div>------------------------------------------------</div>
<div>峯岸みなみの「丸刈り動画」についての対話</div>
<div>田口ランディ　橘川幸夫</div>
<div>------------------------------------------------</div>
<br /><div>■田口■</div>
<div>　AKBのみなみちゃんが、彼氏とお泊まりしたことを週刊誌にすっ</div>
<div>ぱ抜かれて、頭を丸刈りにしてYouTubeで謝罪したんだ。そのこと</div>
<div>が話題になっているんだけどね、この丸刈り謝罪動画が、ナマゆえ</div>
<div>に妙にエロくてグロいんですよ。だって、二十歳の女の子が丸刈り</div>
<div>して、YouTubeだよ。「AKB止めたくない！」って泣いていて、すご</div>
<div>いなあ、そこまでして……と思ったよ。これって、橘川さんはどう</div>
<div>思う？</div>
<br /><div>■橘川■</div>
<div>　大騒ぎだね、みいちゃんの丸刈り問題。これは、「本質の橘川」</div>
<div>（笑）から言わせると、自主体罰だとかいうことではなくて、もっ</div>
<div>と根本的な問題がある。それは「コンテンツ労働」という問題。</div>
<div>AKB48がいわゆる通常の仕事で、彼女たちが会社員だとしたら、恋</div>
<div>愛禁止なんてパワハラ以外でなく、会社組織としてブラックだ。会</div>
<div>社法的には、そうなのかも知れない。だけど、それで片付けてしま</div>
<div>うのは、これからの時代を潰してしまう。彼女たちは「仕事」なん</div>
<div>だけど「仕事以上の価値」をアイドルやることで満たされている。</div>
<div>大人は仕事としてか見てないのかも知れないが。</div>
<br /><div>■田口■</div>
<div>「コンテンツ労働」ね、面白いね。土方は「肉体労働」、看護師や</div>
<div>ホステスは「感情労働」、SEは頭脳労働、で、アイドルは「コンテ</div>
<div>ンツ労働」ね。</div>
<br /><div>■橘川■</div>
<div>「コンテンツ労働」の問題って言ったけど、これは、80年代ぐらい</div>
<div>から社会の問題として潜伏していたことなんだ。例えば、テレビ</div>
<div>のADというのは、ものすごい劣悪な条件で仕事している。テレビ局</div>
<div>の社員は高給なのに。それでも仕事を続けるのは、その仕事が面白</div>
<div>いし、タレントに会えるから。アニメーターも同じ。アニメの制作</div>
<div>の仕事に携われるならと、ひどい条件で仕事している。出版なんか</div>
<div>も、昔からそうかも知れない。雇う側は何と言うかというと「文句</div>
<div>あるなら、やめていいんだよ、やりたい人はいくらでもいるから」</div>
<div>と言うんだ。AKB48などのアイドルという仕事も同じような構造な</div>
<div>のではないかと思う。</div>
<br /><div>■田口■</div>
<div>　なるほど、コンテンツ労働は、肉体労働でも感情労働でも頭脳労</div>
<div>働でもありえるのね。仕事以上のなんらかの価値を感じて労働する</div>
<div>こと……限りなくボランティアに近いソーシャルビジネスや、儲か</div>
<div>らないけど雰囲気のいい喫茶店のオーナーなんかもそうなのかな？</div>
<div>　そう思うと、いまやコンテンツ労働の時代と言えるね。</div>
<br /><br /><div>■橘川■</div>
<div>　そうそう、これからの労働のあり方なんだ。「仕事のような遊び、</div>
<div>遊びのような仕事」ね。でも、そうなるためには、コンテンツの当</div>
<div>事者が主体にならなくてはダメで、裏方が権力握るという構造を変</div>
<div>えなければダメだね。コンテンツ労働というのは、「食うための労</div>
<div>働」だけではなく「自分らしく生きるための労働」なんだ。</div>
<div>　AKB48が、普通の会社で、会社の規約に「恋愛禁止」なんてあっ</div>
<div>たら、人権問題で訴えることも出来るし、組合作って団交だ（笑）。</div>
<div>だけど、そうではない「労働」なんだな、アイドルって。そこのと</div>
<div>ころを否定してしまうと、これからのコンテンツ・ビジネスのあり</div>
<div>方が見えなくなる。そういう、新しい「労働」が生まれているのに、</div>
<div>それを支える構造が旧態依然の越後獅子の親方みたいなことが問題</div>
<div>なんだと思う。</div>
<br /><div>■田口■</div>
<div>　はっはっは、秋元さんが越後獅子の親方ね。言いえて妙。いまじ</div>
<div>ゃ二十歳はまだ子どもだからね……。みなみちゃんは特に幼い感じ</div>
<div>がする。周りに彼女を護る大人がいなかったことが……いまの芸能</div>
<div>界の問題なのかもしれないね。必ずいるものだよ、親方に逆らって</div>
<div>子どもを護ろうとする大人がね……。それがいなかったんだなあ……。</div>
<br /><div>■橘川■</div>
<div>　秋元さんは、AKB48作る時に、友人の娘さんとか、片っ端に連絡</div>
<div>とって誘っていたという話がある。実際、あれだけの仕掛けを作る</div>
<div>には、相当なエネルギーと投資が必要だったと思う。単に一方的な</div>
<div>搾取構造ではなく、ある意味、自腹切って賭けたギャンブルに勝っ</div>
<div>たみたいなところがある（笑）。</div>
<br /><div>　僕は、今の若い子が、簡単に独裁者に従うほど、弱々しいとは思</div>
<div>えないな。面従腹背というか、もっとしたたかだと思う。みいちゃ</div>
<div>んだって、バレなければ、秋元さんをだまし通せたわけで（笑）。</div>
<div>ていうか、マスコミに出なければ、秋元さんだって見ぬふりしてた</div>
<div>だろう。</div>
<br /><div>■田口■</div>
<div>　秋元さんが賭けに出て、 AKBの女の子たちもアキハバラでがんば</div>
<div>ってきた……ってのは、以前にドキュメンタリーで見たよ。そして</div>
<div>大勝利したわけだね。勝つことばかり考えていたから、その後をど</div>
<div>うするか……ってのは、あまり考えていなかったかもしれないよ。</div>
<div>男が組織を作るとどうしても軍隊っぽくなっていくね。支配しコン</div>
<div>トロールするのに都合がいいからだろうか。人が多くなっていけば</div>
<div>当然、統制のための規律も厳しくなる（ちょっと共産圏っぽい感じ</div>
<div>あったよね）。</div>
<br /><div>　で、質問、コンテンツ労働を支える構造はどうあればいいの？　</div>
<div>そこに必要なのは何だろう。徒弟制度的なものに変わる構造ってな</div>
<div>んだろう？</div>
<br /><div>■橘川■</div>
<div>　まず、テレビとか出版社とか、中心が権力握って全体をコントロ</div>
<div>ールする構造を変えなければダメだと思うな。同時に、コンテンツ</div>
<div>やる人間が自分でやれることをやること。インターネットで行われ</div>
<div>ていることは、その構造との戦いみたいなもの。</div>
<br /><div>　僕はずっと、若い人からの投稿雑誌をやっていたから、若い子の</div>
<div>カタマリがいると、その中で面白い子がいないかなあ、と見てしま</div>
<div>うんだよ。だから、AKB48がいると、その中にも面白い子がいるは</div>
<div>ずだと思ってしまう。光宗薫という女の子が人間的に良いな、と思</div>
<div>っていたんだけど、ストレスためすぎて辞めてしまった。</div>
<br /><div>■田口■</div>
<div>　私はAKBというグループには、そんなに関心はないんだ。同じく</div>
<div>らいの年ごろの娘がいるから「娘たちがんばってるな、親は心配だ</div>
<div>ろうな」くらい（笑）誰だって人から「面白いね」と言われればう</div>
<div>れしいさ。だから冒険したくなる。それが若さってもんだ。自分も</div>
<div>そうだったからね。だけど、みなみちゃんの謝罪会見のあの動画が</div>
<div>出てしまったのは……「そこまでする必要はない」と判断できる大</div>
<div>人がいなかったってことだ。まともな判断力があればあの映像は流</div>
<div>れなかったと思うよ……。橘川さんも言ってたじゃない、「ネット</div>
<div>には残ることが前提で発言しなきゃならない」って。</div>
<br /><div>■橘川■</div>
<div>　僕らは、そうだけど、そうではない、もっと刹那的な世代が出て</div>
<div>きているんだろうと思う。AVで、次から次から次に若い子が出てき</div>
<div>た時に、驚いた。この子たち、20年したら、この記録残っちゃうけ</div>
<div>ど、大丈夫なのだろうか、と。でも、そういう発想は、僕の方が親</div>
<div>父として見ているからかも知れない（笑）。どんな恥ずかしい記録</div>
<div>でも、その時は真実なんだから、残っても悔いはない、というのは、</div>
<div>それはそれで、潔い（笑）。</div>
<br /><div>■田口■</div>
<div>　AVかあ……。「なんでそこまで？そんなにかわいいのに？」って</div>
<div>子が出てるよね。誰が観るかわかんないのに……って、オバさんは</div>
<div>ドキドキしてしまう。私が焦ってどうすんのって感じだよね。みな</div>
<div>みちゃんもそうなのかな……でも……やっぱ一六歳の娘を育ててい</div>
<div>る親としての自分が出ちゃうね。乗り込んで行って、親方に跳び蹴</div>
<div>り喰らわして、ニ、三発平手打ちして、娘を奪還したい……って、</div>
<div>思うよ……。きっと娘には「止めてよお母さんのバカア！」って嫌</div>
<div>われるだろうけど、やっちゃう。親は嫌われてなんぼだ。</div>
<br /><div>■橘川■</div>
<div>　わはは、奪還の光景が目に浮かぶね（笑）</div>
<br /><div>■田口■</div>
<div>「コンテンツ労働」を業界や親方が仕切るのじゃなく、働いてる人</div>
<div>たちが仕切るべき……というのはよくわかる。AKBの混乱を生き抜</div>
<div>いた少女たちが、自分たちで次のコンテンツ労働を創っていったら</div>
<div>いいよね。もっと橘川さんみたいな人がいっぱいいて相談に乗って</div>
<div>あげたらいいのになあ。</div>
<br /><div>「付加価値を求める労働」って、ある特定の組織に所属しているこ</div>
<div>とを「自分の最大の価値」と思い込んでしまう場合もあるから、自</div>
<div>尊心というものを育てにくくなる。「ここに所属している以外の自</div>
<div>分がありえない」みたいな人が従事すると、ますます自分を無価値</div>
<div>に思ってしまったりする。みなみちゃん、自分に自信がなくてあま</div>
<div>り自分を好きになれなかったんじゃないかなあ……そう思うとね、</div>
<div>「コンテンツ労働」にのめり込むのは怖いなあと感じるね。</div>
<br /><div>　でも、人は成長していくし、いろんなことを乗り越えて自分と向</div>
<div>き合っていくものだから……。自分の人生は自分しか生きられない</div>
<div>し、自分の苦しみは自分しかわからない。二十歳でしょ、これから</div>
<div>だね……、がんばれー！</div>
<br /><div>■橘川■</div>
<div>　若い子は、どんな子でも頑張れと思う（笑）。</div>
<br /><div>　みいちゃんの丸刈りビデオ、僕は、回りの大人が誘導したのでは</div>
<div>なく、本人の意思で、スタッフが協力したんだと思う。峯岸と仲の</div>
<div>よいサシコが、同じようなトラブルで、博多にやられたから、彼女</div>
<div>も「バレた時はどうするか」を、あらかじめ考えていたんではない</div>
<div>かな。勘ぐり過ぎかもしれないけど（笑）。だけど、どうせやるな</div>
<div>ら、あの動画を有料課金したら、秋元康を超えられたのに（笑）</div>
<br /><div>■田口■</div>
<div>　うわ、そうきますか……。さすが橘川さん。私は相変わらずどっ</div>
<div>ちつかずで複雑な気分だな。</div>
<div>　母としては、少女をコンテンツ労働させるなら、もっとちゃん</div>
<div>と護れと越後獅子の親方に言いたい。女としては、男の少女趣味</div>
<div>は好きじゃない。</div>
<div>　だけど、だからって「あたし文化リテラシーの高いのよ」って感</div>
<div>じでAKBを批判する気にはなれない。浦河べてるの家みたいに（例</div>
<div>が飛びすぎ？）「じぶんたちで好きなことやって生きていく」って</div>
<div>いう女の子たちが、自分たちで勝手にあんなグループ創って、がん</div>
<div>がん歌ったり踊ったりできたら楽しいのにね。そしたら、好きなよ</div>
<div>うに恋愛もできるし（笑）子どももがんがん産んで、親子で舞台と</div>
<div>かね、なんでもありだ。</div>
<br /><div>　若者よ、掟は自分が創れ……！</div>
<br /><div>∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞</div>
<div>○本原稿は、「チタ・グランディ」の登録会員向けに配信された、<br />メルマガから転載。<br />○「チタ・グランディ」は、田口ランディの表現と生き方に関心を</div>
<div>持つ人たちのコミュニティです。ただいま、無料メルマガ配信中。</div>
<div>詳しくは、こちらへどうぞ。http://bit.ly/WUyrEL </div>
<div>∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞</div>
<div>「チタ・グランディ」事務局　橘川幸夫+淵上周平</div>
<div>∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞</div></p>]]>
                </content:encoded>
                <dc:creator><![CDATA[橘川幸夫]]></dc:creator>
                <nicoch:article_thumbnail>https://secure-dcdn.cdn.nimg.jp/blomaga/material/channel/article_thumbnail/ch1204/86039</nicoch:article_thumbnail>
            </item>
            <item>
                <title><![CDATA[辛いものは、辛い。　　たかなしみるく]]></title>
                <description><![CDATA[<p>「多分あんたには表現したいことなんて、なんにもないんだと思う。」
　8ヶ月目に閃いた答えが、これ。今のところ、これが一番納得する考え。
　先日、高校時代の先輩と、偶然最寄駅で再会した。Facebookに寄れば、先輩は新宿区で友達とルームシェアをしているようだが、その日はたまたま金曜日の夜だということもあり、実家に帰ってきたようだった。
「みーちゃん！お久しぶり！元気してた？」
　よくある「再会」のノリで先輩に話しかけられた。高校時代に比べたら、顔がしゅっと引き締まっている。それ以外に変化は特になく、直ぐに誰だかは気がついた。はきはきしているなかにも、何処かまったりと、のんびりとした、「確固たる自分だけの時」が流れている様子を醸し出す喋り方は、今でも私の心の端っこを燻るものがある。そのまま私たちは近くのダイニングバーに向かい、カウンター席に座った。
　先輩は今、銀座の一角にあるギャラリーで受</p>]]></description>
                <link>https://ch.nicovideo.jp/metakit/blomaga/ar28793</link>
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                <pubDate>Wed, 16 Jan 2013 23:35:00 +0900</pubDate>
                <content:encoded>
                        <![CDATA[<p><br /><div>「多分あんたには表現したいことなんて、なんにもないんだと思う。」</div>
<div>　8ヶ月目に閃いた答えが、これ。今のところ、これが一番納得する考え。</div>
<br /><div>　先日、高校時代の先輩と、偶然最寄駅で再会した。Facebookに寄れば、先輩は新宿区で友達とルームシェアをしているようだが、その日はたまたま金曜日の夜だということもあり、実家に帰ってきたようだった。</div>
<div>「みーちゃん！お久しぶり！元気してた？」</div>
<div>　よくある「再会」のノリで先輩に話しかけられた。高校時代に比べたら、顔がしゅっと引き締まっている。それ以外に変化は特になく、直ぐに誰だかは気がついた。はきはきしているなかにも、何処かまったりと、のんびりとした、「確固たる自分だけの時」が流れている様子を醸し出す喋り方は、今でも私の心の端っこを燻るものがある。そのまま私たちは近くのダイニングバーに向かい、カウンター席に座った。</div>
<div>　先輩は今、銀座の一角にあるギャラリーで受付の仕事をしながら、写真を撮ったり、絵を描いたりしているようだった。高校卒業後は美大に進学、卒業していることは分かっていたので、その現状に対し、意外性を感じることはなかった。</div>
<div>「先輩、やっぱり芸術に関わっているんですね。」</div>
<div>「そりゃあそうだよ。指定校推薦で美大に入ったんだもん。高校時代からずっと何らか、芸術に関わるつもりではいたよ。」</div>
<div>「そっか・・・。」</div>
<div>「うん。みーちゃんは何か書いたり、作ったりしないの？大学はどこ行ったんだっけ？何学部だっけ。文学部とかじゃなかった？」</div>
<div>「モノを書いたり、作ったりは・・・ないですね。大学は、まあ私立の普通のところの、学際系の学部です。結局何を学んだのだかよくわからないまま卒業しちゃいました。」</div>
<div>「まあ。私大文系なんてそんなものでしょ。でも、みーちゃん、絶対なんか書いたほうがいいよ。あたし高校のときからそう思ってたよ。」</div>
<br /><div>　まさか。先輩まで。</div>
<div>　たまに言われるのだ。</div>
<div>　特に男の子に。</div>
<div>「お前はブログの文章だけでは勿体ない。1本小説を書いてみろ。」と。</div>
<div>　女の人に言われたのは、これが初めてかもしれない。</div>
<br /><div>「たまに言われるんですけど。特に男の子には。でもなんかな。書くの怖いんですよ。こう、なんつうか、自分のことしか絶対に書けないし・・・。何だろう。書いていると自分から目を逸らせなくなるから、辛かったこと苦しかったことが一気に押し寄せるんです。一回試しに書いてみたけど・・・。気持ち悪くなっちゃって。トイレで吐いてました。だからもうやめようって。」</div>
<div>「確かに表現するっていうことは、そういう一面があるよ。それを乗り越えて皆モノを作るんだよ。みーちゃんなら乗り越えられると思うんだけどなあ。」</div>
<div>「・・・どうしてですか？」</div>
<br /><div>　思わず強い口調になってしまった。いつもこうなのだ。相手に対して、理由を問い詰めたくなる。どうして相手が自分に対してそのように感じたのか、一から十まで説明してもらわないと気が済まない。「なんとなく、雰囲気で」と言う答えが、私には通用しないのだ。</div>
<br /><div>「なんでだろ。なんとなく。」</div>
<div>「なんとなく、かぁ。」</div>
<div>「みーちゃんは昔からそうだよね。絶対に理由を聞きたがる。でもそんな理由、本当にみーちゃんに対して必要なものなのかな。」</div>
<br /><div>　あれ。昔から？私高校時代に先輩に対して同じような態度を何回も取ったっけ？記憶がない。記憶がなくても、先輩が覚えているのなら、自覚なしに同じようなことをしていたのかもしれない。</div>
<br /><div>「そんなこと、先輩に対しては、記憶にないんですけど・・・。でも。理由は聞いちゃいますね。自分に自信がないので。」</div>
<div>「うん、そうそう。自分に自信がないのは知っているよ。でもだからって理由付けしたところで、それに対してまた、どうして？どうして？って聞くのがみーちゃんでしょ？」</div>
<br /><div>　先輩はニヤニヤ笑いながら、私にそう返答した。そのあと、グラスに残っていたビールを飲み干し、店員に「同じもの、もう一つ。」と注文をした。私は返す言葉を一生懸命探す他に、気が回らなかった。そうだ。恐らく堂々巡りだ。すべての事象に対してそうだ。特に恋愛に関しては。堂々巡りから抜け出せなくて、一人でぐるぐると同じところを廻り続け、恋人を辟易させてしまった。ひりひりと胸を抉る生傷は、少しだけかさぶたになってくれたと思ったのに。かさぶたにまた爪をいれ、傷を抉り返そうとし始めている。</div>
<br /><div>「今日はね。ママが、おうちにウイスキーがあるっていうから。ビールだけにしておこうと思って。」</div>
<br /><div>　急に動揺し始めた私を見かねてか、先輩はそう呟いた。</div>
<br /><div>「そうなんですか。先輩、お酒強いのに、次もビールだなんて、変だなって思ったんです。」</div>
<div>　そつない言葉を返す。</div>
<div>「みーちゃん、相手に対して、もの言いすぎちゃうタイプじゃない？言いすぎちゃうっていうか、言いたいことが的を射すぎていると言うか。いや、言いたいことを、言えてしまうタイプ？かな。」</div>
<div>「言いたいことを言えてしまう？それはどういうことですか？」</div>
<div>「ほらまた。」</div>
<div>　あ・・・。同じことを繰り返している。それでも、気になったことは聞いておかないと、やっぱりなんていうか、その、落ち着かない。</div>
<div>「なんだろうなあ。良いことも悪いことも、遠慮なしにまっすぐ出てくるんだよね。みーちゃん以外の人が言う、『所謂、言葉にならない』なんていう感情をさ、言葉にして口から外に出してしまうんだよ。ストレートにね。」</div>
<br /><div>　少しの間私は黙った。次に出てきた言葉を、言うか言わぬか、迷った。この一言を言ってしまえば、私はとめどない感情にまた覆い尽くされて、壊れてしまいそうな気がした。</div>
<div>「だって、なんかもう、言わないとなんも、なんもわかんないじゃないですか。不安なんですよ。言葉にしていないと。ダメなんですよ、空気読むのとか。できないんです。」</div>
<br /><div>　・・・やっぱりだ。一言放つと、一気にかさぶたが抉り返ってしまった。また、生傷が外気に晒される。だって、言わないとわからない。私がどれだけ恋人のことを思っていたのか。不安を感じたのか。言われないとわからない。どうして恋人が私のことを思ってくれるのか。この世の中の無数の女の子の中から、何故私を選んでくれたのか。顔も可愛い方でもなく、自意識だけが高い、その割に自分の中は空っぽで、手の内に握っているものも何もない、私を、選んでくれたのか。芸術的なセンスと技術を自らの手で伸ばし、「自分が作りたいもの作っている時が一番いい」と常に呟いていた恋人が、何故私を選んでくれたのか。比較すれば手の内にある物の数など圧倒的に違う。何もできない自分を惨めに感じてしまうぐらいだ。</div>
<div>　一度その思考に嵌ってしまうと抜け出すまでにはかなり時間がかかる。正直に言うと、先輩には大変申し訳ないのだが、一刻も早くグラスのビールを飲み干して、家に帰って大泣きしたい気分だった。</div>
<br /><div>　涙を必死で堪えようとする私の姿に、先輩は気づかない振りをした。</div>
<div>「うん。そればっかりじゃ、ダメだと思うけどね。たまには空気を読むというか、雰囲気で相手の心を掴めなきゃ、ダメだ。」</div>
<div>「はい・・・。」</div>
<div>「でもね。」</div>
<div>　先輩は、強い言い方で、話を切り替え出す。</div>
<div>「でも？」</div>
<div>「自分の思ったことを言葉にすることができない人間に、表現は無理だよ。だからつまり、みーちゃんは、やっぱり表現するに比較的向いていると思う。私もさ、大学時代から今まで、色々な人の作品見たり、一緒に作品作ったりして思ったんだけどね。音楽も写真も絵も、なんでも出来るって言う人の作品見ても、何も伝わらないこともね、あるんだよ。確かに技術はあるよ。でもそれも、小手先だけのっていうのかな。実際に話をしてみると、なんかこう、真意が見えてこないというか。何を考えているのか相手に伝えようとしないとか。抽象論だけで終わっちゃうとか。ああ、この人自身には、中身ないんだなあって思う。」</div>
<div>「・・・。そんなもんなんですか。」</div>
<br /><div>　先輩の2杯目のビールがカウンターに置かれる。先輩はにこっと笑って、それを二口ぐらい、飲んだ。</div>
<br /><div>　そうだったのか。</div>
<div>　私が抱いてきた違和感に、一歩近づいた。</div>
<div>　芸術的なセンスと技術を粗方持った恋人の作るものに、いまいち共感できない理由が、ここにあった。確かに私には何かを作り出す力などないし、勢いも、覚悟もない。常に自分を縛り上げ、表現することから遠ざかってきた。しかし、感じる力だけは人一倍にあったのかもしれない。恋人が作るものに対し、常に何かしらの違和感を抱いてきた。「それ、どこがいいの？」「それ、結局伝えたいものは何？」そう聞きたい気持ちを堪えながらも、「まあ、いーんじゃない？」と答え続けてきた。</div>
<div>「そんなもんだよ。まあ、あたしがそんなもんだって感じているだけかもしれないけど、でも、そんなもんだよ。表現する術を知っていることと、表現したい事柄があるかというのは、多分別物。まあ、表現する術を知っている人間のうちの大体は、表現したい事柄があると思って表現しているのだろうけどね。そこのところ、混同されやすいと思うよ。みーちゃんは、術を知らないだけで、事柄には満ち溢れているんだろうなって、思ったんだよね。自分の感情を、ちゃんと言葉にできるから。はい、みーちゃんの疑問に答えたよ。」</div>
<br /><div>　恋人は、私に辟易したのか、いつぞやから私への連絡を断ってしまった。いくら私が「好きなの？嫌いなの？中途半端な気持ちなの？なんでもいいから答えてよ。」と訴えたところで、返事はなかった。ただ、たまにWeb上で「伝えたいことをどう言葉にしていいかわからない。」と発言していることを、見かけることはあった。だったらそれを直接私に言ってくれればいいのに、どうしてそれが出来ないのだろう。そう思い、悔しくて何度泣いたことか、もう計り知れない。しかし、確かに、先輩の言うとおりだ。自分の思うことを思うままにありのままの形でさえも言うことが出来ない人間が、自分の思うことの形も縁どれない人間が、誰かの心を揺れ動かすような作品を作れる訳がない。私が抱いてきた違和感は、解消に近づいた。悔しさも残るが、どこか救われた気がした。そりゃあそうだ。私に対してのみならず、恋人は、誰に対しても何に対しても、自分の思いをぶつけることが出来ない人間なのだ。きっと。私だけが悪いわけではない。私だけにすべての原因があるわけではない。作品に対して常に疑問を抱いていたことも、何も私が悪いわけではない。そもそも。そもそもなのだ。</div>
<br /><div>「多分あんたには表現したいことなんて、何もないんだと思う。」</div>
<br /><br /><br /><div>「先輩、有難うございます。」</div>
<div>「そう。他に聞きたいことは、ないの？もう大丈夫？」</div>
<div>「聞いてしまうと、きりがなくなっちゃうので、もうやめておきます。」</div>
<div>「それが正解だよ。あとは自分で考えな。自分で考えられる人にならないとさ。」</div>
<br /><div>　気づいたら先輩のグラスは空っぽだった。私もグラスに残ったあとわずかのビールを一気に飲み干す。</div>
<br /><div>「じゃあ。帰るか。ママが待ってるし。パパももうすぐ帰ってくるって言うし。うん。ごめんね、なんかあたしのペースで付き合わせちゃって。」</div>
<br /><div>　一気に空になった私のグラスを見て、先輩はそう言った。</div>
<div>　お会計は、私がトイレに行っている間に、先輩が済ませてくれたようだった。</div>
<br /><div>「先輩。」</div>
<div>　またも、涙を堪えながら、私は続けて言った。</div>
<div>「いつになるかわかんないんですけれど、ちょっと本当に怖いんですけど、自分がどうなっちゃうかわかんなくて、嫌なんですけど・・・。私、お話を、書いてみようと思います。絶対自分のことしか書けないと思うんですけど。でも、いつか、完成させたいなって、思います。」</div>
<div>　言葉と共に、白い息も吐き出されていく。涙も堪え切れず、頬を伝い出した。</div>
<div>「うん。最初はみんなそう。自分のことからのスタートだよ。じゃあね。また飲もう。」</div>
<br /><div>　店先で先輩と私は別れた。抉り返った傷は、ひりひりと、まだ痛みを伴う。そりゃあそうだ。一度はがしたかさぶたがまた元通りになるのには、時間がかかる。ゆっくりと、長い目で付き合っていこう、この傷と。自分自身と。表現するということの、意味と。</div>
<br /><br /><br /><div>「多分あんたには表現したいことなんて、なんにもないんだと思う。」</div>
<div>　8ヶ月目に閃いた答えが、これ。今のところ、これが一番納得する考え。</div>
<br /><br /><div>　じゃあお前はどうなんだよ。</div>
<br /><div>　恋人がそう私に突っかかってくる。ような気がした。</div>
<br /><div>「私？私はね、表現したいことだらけだよ。伝えたいことだらけだよ。例えばそうね、一言で言うならば、</div>
<br /><div>　私はまだ、あんたのことが、好きだ。」</div>
<br /><br /><div>＊＊＊＊</div>
<br /><br /><div>嘘が上手に付けるようになりたいです。</div>
<div>早くリアルテキスト塾に入りたいです。</div>
<br /><div>●「辛いものは、辛い。」　<a href="http://d.hatena.ne.jp/xxmilk69xx/" target="_blank">たかなしみるく（深呼吸歌人[153]）</a></div>
<div></div></p>]]>
                </content:encoded>
                <dc:creator><![CDATA[橘川幸夫]]></dc:creator>
                <nicoch:article_thumbnail>https://secure-dcdn.cdn.nimg.jp/blomaga/material/channel/article_thumbnail/ch1204/28793</nicoch:article_thumbnail>
            </item>
            <item>
                <title><![CDATA[マツザカ君　　オガサワラユウ]]></title>
                <description><![CDATA[<p>　マツザカ君はマツザカ牛を食べる時だけ「んまい」と言う。何故か、訊いてみた。
　
　
　非マツザカ「ねえマツザカ君」
　
　マツザカ「なんだい？　出っ歯」
　
　非マツザカ「えっいきなりなんだよ」
　
　マツザカ「ごめん」
　
　非マツザカ「マツザカ君さ、マツザカ牛食べる時」
　
　マツザカ「出っ歯…」
　
　非マツザカ「おい！」
　
　マツザカ「ごめんごめん！　もう言わない」
　
　非マツザカ「マツザカ牛食べる時だけ『んまい』って言うでしょ」
　
　マツザカ「うん」
　
　非マツザカ「あれってなんでマツザカ牛のときだけ」
　
　マツザカ「出っ」
　
　非マツザカ「……」
　
　マツザカ「……」
　
　非マツザカ「……あれってなんでマツザカ牛のときだけ」
　
　マツザカ「歯」
　
　非マツザカ「ちょい！」
　
　マツザカ「すまん」
　
　非マツザカ「いい加減にしてくれよ！」
　
　マツザカ</p>]]></description>
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                <pubDate>Mon, 07 Jan 2013 00:30:00 +0900</pubDate>
                <content:encoded>
                        <![CDATA[<p><div>　マツザカ君はマツザカ牛を食べる時だけ「んまい」と言う。何故か、訊いてみた。</div>
<div>　</div>
<div>　</div>
<div>　非マツザカ「ねえマツザカ君」</div>
<div>　</div>
<div>　マツザカ「なんだい？　出っ歯」</div>
<div>　</div>
<div>　非マツザカ「えっいきなりなんだよ」</div>
<div>　</div>
<div>　マツザカ「ごめん」</div>
<div>　</div>
<div>　非マツザカ「マツザカ君さ、マツザカ牛食べる時」</div>
<div>　</div>
<div>　マツザカ「出っ歯…」</div>
<div>　</div>
<div>　非マツザカ「おい！」</div>
<div>　</div>
<div>　マツザカ「ごめんごめん！　もう言わない」</div>
<div>　</div>
<div>　非マツザカ「マツザカ牛食べる時だけ『んまい』って言うでしょ」</div>
<div>　</div>
<div>　マツザカ「うん」</div>
<div>　</div>
<div>　非マツザカ「あれってなんでマツザカ牛のときだけ」</div>
<div>　</div>
<div>　マツザカ「出っ」</div>
<div>　</div>
<div>　非マツザカ「……」</div>
<div>　</div>
<div>　マツザカ「……」</div>
<div>　</div>
<div>　非マツザカ「……あれってなんでマツザカ牛のときだけ」</div>
<div>　</div>
<div>　マツザカ「歯」</div>
<div>　</div>
<div>　非マツザカ「ちょい！」</div>
<div>　</div>
<div>　マツザカ「すまん」</div>
<div>　</div>
<div>　非マツザカ「いい加減にしてくれよ！」</div>
<div>　</div>
<div>　マツザカ「許してくれ」</div>
<div>　</div>
<div>　非マツザカ「もう出っ歯出っ歯うるさいよ冒頭から！」</div>
<div>　</div>
<div>　マツザカ「頼む許してくれ」</div>
<div>　</div>
<div>　非マツザカ「いい、もういい」</div>
<div>　</div>
<div>　マツザカ「お願いだ、このとおり！」</div>
<div>　</div>
<div>　非マツザカ「なんで気をつけの姿勢なんだよ！」</div>
<div>　</div>
<div>　マツザカ「バレた」</div>
<div>　</div>
<div>　非マツザカ「バレたじゃないだろ」</div>
<div>　</div>
<div>　マツザカ「バたレ」</div>
<div>　</div>
<div>　非マツザカ「意味わからないよ！」</div>
<div>　</div>
<div>　マツザカ「落ち着いて」</div>
<div>　</div>
<div>　非マツザカ「もう最低だよマツダカ君、人の話ちゃんと聞かないでさぁ！」</div>
<div>　</div>
<div>　マツザカ「なんかパリダカみたい」</div>
<div>　</div>
<div>　非マツザカ「ちょっと噛んだだけだろ！！」</div>
<div>　</div>
<div>　マツザカ「ちょっ…大きい声出さないで！　赤ちゃんやっと寝付いたんだから…」</div>
<div>　</div>
<div>　非マツザカ「あっ…ごめん…。って赤ちゃんなんていないだろ…！(小声)」</div>
<div>　</div>
<div>　マツザカ「なんで小声になるの」</div>
<div>　</div>
<div>　非マツザカ「えっだってほんとにいたら嫌だし…。えっいるの？」</div>
<div>　</div>
<div>　マツザカ「どっちだと思う…？」</div>
<div>　</div>
<div>　非マツザカ「えっいやいないでしょ…えっウソいるの？いるとしたらあっちの部屋の」</div>
<div>　</div>
<div>　マツザカ「いません」</div>
<div>　</div>
<div>　非マツザカ「このやろー！！」</div>
<div>　</div>
<div>　</div>
<div>　</div>
<div>　終<br /><br /><br /><br /><div>   * * *</div>
<br /><div>最近作りました。</div>
<div><a href="http://js.ogasawa.la/" target="_blank">http://js.ogasawa.la/</a></div>
<br /><div>●マツザカ君　　オガサワラユウ（リアルテキスト塾4期生）</div>
</div></p>]]>
                </content:encoded>
                <dc:creator><![CDATA[橘川幸夫]]></dc:creator>
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            </item>
            <item>
                <title><![CDATA[内田勝さんの思い出。]]></title>
                <description><![CDATA[<p>1970年前後の黄金の少年マガジンを作った編集長との思い出をまとめました。今後、書き足していく予定。</p>]]></description>
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                <pubDate>Sat, 05 Jan 2013 10:49:00 +0900</pubDate>
                <content:encoded>
                        <![CDATA[<p><div><span style="font-size:150%;">●Twitter連投</span><br />2013年1月3日</div>
<br /><div>内田さんに聞いた話。内田さんは教育大の学生時代に、講談社のバイトで入って、そのまま入社して少年マガジンの編集部に。マガジンを作った牧野さんというのは、戦後出版きっての編集者だと思う。牧野さんの無理難題に、内田さんは振り回されるんだな。</div>
<div>posted at 02:13:58　</div>
<br /><div>通販というのは、少年マガジンが始めた誌上領布会というのが、はじまりだと言われてる。マガジンの誌面で、記念切手とかモデルガンとか売ったんだな。それは、確か、牧野さんに命じられた内田さんがやったはず。切手代用というシステムも。このへん、記憶不確かw</div>
<div>posted at 02:17:39　</div>
<br /><div>30数年前に、内田さんと、飲みながら聞いた話だから、記憶が不確かだが。ある時、牧野編集長から、内田さんは、マンガの原画を渡される。講談社の受付に、誰かが置いていったのだが、名前も連絡先も書いてないので、調べろという命令だった。</div>
<div>posted at 02:21:02　</div>
<br /><div>その原画は、確かにオリジナルな画風で完成度も高かった。内田さんは、いろんなマンガ家や、アシスタントに絵を見せたが、誰も分からないと言う。困り果ててしまった。それで、神保町にあった、マンガを得意とする古本屋があって、そこに持って行くことにした。</div>
<div>posted at 02:24:49　</div>
<br /><div>その本屋の店長も、分からなかったが、アルバイトの少年が、「ああ、この線知ってます」という。そのマンガ家は、まだ無名の、モンキーパンチだった。</div>
<div>posted at 02:26:34　</div>
<br /><div>それから何年かして、内田さんが、少年マガジンの編集長になり、黄金時代を迎えるのだが、講談社に原稿を持ち込んできた新人がいた。絵は下手だけど、何か凄いパワーを感じて、内田さんが会うことにした。いろいろ話してると、その少年が「僕のこと分かりますか」と言う。</div>
<div>posted at 02:31:03　</div>
<br /><div>よく見ると、あのモンキーパンチを教えてくれた、古本屋のアルバイト少年だった。そして、その少年こそが、ジョージ秋山だったのである。この話を内田さんから聞いた時、僕は、えええっ、と大声をあげてしまった。当時の少年マガジン編集部というのは、無名の才能が、渦巻いていたのだな。</div>
<div>posted at 02:34:33　</div>
<br /><div>ジョージ秋山の、銭ゲバとか、アシュラの顔のモデルは、内田さんだと言われている。迫力あるんだ、これが。内田さんは、少年マガジン黄金時代のエピソードをたくさん教えてくれたが、この話が一番驚いたな。</div>
<div>posted at 02:38:02　</div>
<br /><div>エピソードのたくさんある人生が良いなあ。</div>
<div>posted at 02:41:25　</div>
<br /><div><hr /></div>
<br /><div><span style="font-size:150%;">内田勝さんの発言メモ</span></div>
<div>1979年9月10日 20:42　記</div>
<br /><div>１９７９年９月１０日</div>
<div>銀座・三笠会館で会合。</div>
<div>参加者は、高山英男（現代子どもセンター所長）と内田勝（ホットドッグプレス編集長）。いずれも４０代。橘川は２９才。</div>
<br /><div>内田勝さんは、１９６０年代の後半に「少年マガジン」の編集長として、新しいマンガの潮流を作った人。若い時代に少年マガジンで、通販ビジネスを作った人でもある。当時は切手代用であった。１９７７年頃、講談社の新規雑誌開発部長だった頃、高山さんの紹介でお会いして、以来、不定期ながらお会いして情報を交換してきた。新規事業の雑誌は「ホットドッグプレス」（HDP）となった。創刊の前に、文化通信で発行した、創刊キャンペーン特別号の一面で僕と内田さんの対談が掲載された。その新聞は、特別号であったためか、文化通信に問い合わせても実物を発見できなかった。以下の文章（メモ）は、食事をしながらおしゃべりした時に、記憶に残っていたものを、家に帰って記録しておいたものだ。読者マーケティングと時代の流れを見ることによって雑誌を編集していた内田さんの編集者態度が分かる。内田さんから教えてもらったことや、少年マガジン編集長当時の数々のエピソードもある。いつか、まとめる。</div>
<div>　</div>
                            <a href="https://ch.nicovideo.jp/metakit/blomaga/ar26660">続きを読む</a>
                        </p>]]>
                </content:encoded>
                <dc:creator><![CDATA[橘川幸夫]]></dc:creator>
                <nicoch:article_thumbnail>https://secure-dcdn.cdn.nimg.jp/blomaga/material/channel/article_thumbnail/ch1204/26660</nicoch:article_thumbnail>
            </item>
            <item>
                <title><![CDATA[鏡の効果－真崎守作品の快楽－]]></title>
                <description><![CDATA[<p>70年代を疾走した伝説のマンガ家・真崎守の資料アーカイブ、論考を進めています。</p>]]></description>
                <link>https://ch.nicovideo.jp/metakit/blomaga/ar24892</link>
                <guid>https://ch.nicovideo.jp/metakit/blomaga/ar24892</guid>
                <pubDate>Mon, 24 Dec 2012 21:21:00 +0900</pubDate>
                <content:encoded>
                        <![CDATA[<p><div>鏡の効果－真崎守作品の快楽－</div>
<br /><div>最中義裕（真崎守図書館・館長）</div>
<br /><div><a href="http://www.masaki-mori.jp/">▼真崎守図書館</a></div>
<br /><div>一、序文</div>
<br /><div>　ふとした機会に旧知の仲ではない人とまんが談義になり、話の流れで「どういうまんがが特に好きですか」と問われた時に「貴方は多分知らないと思うけれど、私は真崎守というまんが家の作品が好きです」と正直に答えると、当然ながら「真崎守という人は、どういうまんがを描いているのですか」と訊かれる。</div>
<br /><div>　そこで、真崎守というまんが家の（まんが史における）位置や影響、作品の特徴についてそれなりに言葉を尽くして説明することなるのだけれども、そうやって説明しながら、自分の心の中では「はたしてこんな（ウィキペディアの解説のような）通り一遍の明で、真崎作品の魅力や、自分がそれにのめり込んでいる想いが伝わるのだろうか」「いや、絶対に伝わらないだろうなあ」という諦めに似た気持ちが頭をもたげて来る。簡潔に説明することが常に真実を突いているとは勿論言えないけれど、短文で解りやすく過不足なく説明することが出来ない自分の国語力不足が呪わしくさえ思う。</div>
<br /><br /><div>　そもそも、自分が真崎作品の何に魅力を感じているのか、それが言語表現できる形で解っていないから説明に窮するのではないか。一体、真崎作品を面白いと思う時、自分の心の中では何が起こっているのか。</div>
<br /><div>二、まんがを「面白い」と感じることとは</div>
<br /><div>　まんがの面白さとは何か、と問えば直ぐに以下のような声が聞こえてくるだろう。「面白いということを他の言葉で説明するのはナンセンスだ」「何が面白いかなんて読者各人それぞれで異なる、要するに好みの問題、それを普遍化しようなんて言葉の遊び、徒労に終わるよ」</div>
<br /><br /><div>　たしかに、まんがに限らず面白いと思った作品のどこが面白かったのかを言葉にしようとする時、言葉を重ねれば重なるほど、本能的・本質的な感動から離れて行くような気が起きて虚しくなることがある。また「作品を読めば済むことを、あえて言葉で語ることに意味がない」という意見にも確かに一理あり、まんが評論というジャンルが（作品紹介やデータベースの部分を除いて）ほとんど全く市場（＝読者）から望まれず定着していない事実がそれを証明している。</div>
<br /><div>　しかしながら、その基準は読者によって異なるものの、確実に「面白い作品」と「面白くない作品」は存在する。また、100人の読者のうち、70人が面白いと感じる作品と、10人しか面白いと感じない作品があるのも事実である。</div>
<br /><div>　人はどういう時に、まんがを読んで面白いと思うのか。まずはそのキーワードを思いつくまま挙げてみよう。（1）本能的な興奮や快楽、（2）欲望の代理達成、（3）自己体験に照らしての共感、（4）自己希求、（5）知的好奇心、（6）超常信仰、（7）恐怖趣味、（8）映像表現、（9）独占欲…他にもありそうだが、まずはこれらについて考える。</div>
<br /><div>1 本能的な興奮や快楽…本能的刺激や快楽の疑似体験。スポーツ根性まんがやエロまんがが突出的代表例であるが、巧妙に変転するストーリー展開から得られる興奮も加えれば、優良なエンタテイメント作品の多くが当てはまる。また、人は同様に、難解な作品を読み解くことにも知的な快感を覚える。だから、推理・サスペンスものや「ライアーゲーム」（甲斐谷忍）のような知力ゲームに特化した作品が古えからの定番として在る。</div>
<br /><br /><div>2 欲望の代理達成…（1）と重なる部分が多いが、現実の自分が出来ない夢や願望の達成感の共有。サラリーマン出世物語や、モテない男の恋愛成就作品等々。（1）と併せて少年まんがの王道（売れ筋）要素であり、疑似空想世界を舞台にした冒険ものやＳＦも含む。</div>
<br /><div>3 自己体験に照らしての共感…日常のささいな出来事から個人的大事件まで、人は皆、自己体験により笑い・喜び・悲しみ等の感情を積み重ねて行く。その様々な過去累積感情の反芻や追体験が読</div>
<div>む者の心を動かす作品。</div>
<br /><div>4 自己希求…「人は何故生きるのか」「自分は何を成せば良いのか」という自問は、古今東西を問わず人類のテーマとして常に我々の側にある（はずだ）。明確な答を示せなくても、その想いを共有できる作品。</div>
<br /><div>5 知的好奇心…人は（それが実生活に役に立つかどうかに関係なく）知識を得ることに快楽を感じる。だから、単に知識や情報が提供される趣味的作品に、専門家や当事者でない読者が集まる。</div>
<br /><div>6 超常信仰…人智を超えた超自然的な存在や現象に魅力や畏怖を感じることは、古来より人間の性としてあり、そのような人々にとって、自然神、物の怪、妖怪、異世界等はある種の憧れの対象と言え（まんがに限らず）様々な作品で取り上げられている。</div>
<br /><div>7 恐怖趣味…人は何故か「怖いもの」が好きらしい。そういう刺激を欲する人は、怖い怖いと言いながら恐怖まんがを読まずにはいられない。</div>
<br /><div>8 映像表現…映像は他の要素の表現手段として（1）～（2）全てに絡むが、それが突出しているだけで作品価値のほとんどを形成し得ることを、「童夢」（大友克洋）は証明して見せた。</div>
<br /><div>9 独占欲…一部の人々は「自分だけのもの」を強く欲している。そういう人は、まだあまり注目されていない作家を見つけた時に過度に肩入れしたり、難解あるいは極めて個性的な作品に出逢った時に「これは自分のために描かれた作品だ」「これを面白いと思う自分はスゴいのだ」と思い込むことがある。「何かを拠り所にしたい」という点では宗教に似ている。かなり大雑把な分類であり、これ以外にも要素があるとは思うが、人がまんがを面白く思うあるいは共感するパターンを列記してみた。</div>
<br /><div>三、真崎守作品の場合</div>
<br /><div>　では、真崎守作品を読んで得られる面白さや共感は、前記９パターンのどれに当てはまるだろうか。</div>
<br /><div>　とは言っても面白さの感じ方は読む人それぞれであり、また、特に真崎守作品の場合、読んだ時の読者の年齢や時代、当時の体験等によって感じ方が異なる傾向にあるが、それでも、大くくりで言えば、前述9要素のうち（3）（4）の比重が高いという点に異論を唱える人は少ないと思う。むろん、個々の作品や年代によって差異はある。「白い伝説」「ゆきをんな」を含む「環妖の系譜」シリーズでは（6）がメインであるし、そもそも商業まんが家という立場から（1）を無視することなど出来ず大なり小なりその要素は多くの作品中に含まれているわけで、時にはそちら側に大きく軸足を置いた作品も描いている。</div>
<br /><div>　真崎守がまんが家として表舞台に登場した1960年代終わりから1970年代初頭、まんがは良い意味で、何でもありの混沌（カオス）状態の中にあった。「ガロ」や「ＣＯＭ」のような特殊な雑誌があっただけでなく、少年マガジン等の大手少年週刊誌にも、社会的・政治的・個人的な題材を扱った作品や、先鋭的表現による問題作が発表されていたし、ヤングコミックという青年誌では商業的な作品とマニアックな作品が違和感なく同載されていた。</div>
<br /><div>　そういう時代だからこそ、ある程度の娯楽性（知的興奮による快楽を含む）により読者を惹きつけるという行為と、社会的・自己希求的題材を同居させた作品を、メジャー雑誌で発表することが可能だったと言える（どちらが正しかったのか、という話とは関係なく、安部慎一作品には前者（娯楽性）の要素がなかったため、大ブームを起こすには至らなかった）</div>
<br /><div>（話の軸が横道に逸れ、読者側から作者側に流れて来ているが、もう少しお付き合い願いたい）</div>
<br /><div>四、「リアリズムと虚構」「表現と商売」の狭間で</div>
<br /><div>　まんがを描くということはある意味「仕事」であり「商売」である。むろん、ただ描くだけならそれは「趣味」であり得るが、それを雑誌に載せて売るという行為は商売そのものである。だから、好きな作品を自由に描きたいと願うまんが家に対し、出版側＝商売人である編集者は「より多く売れるまんが」を描くことを要求する。真崎守もまた、そういう出版社の要求を完全に無視してはまんがを描けなかったわけで、売れるまんがの王道とも言える前述（1）（2）要素を、いかに取り入れるか（折り合いをつけるか）に腐心したのではなかろうか。</div>
<br /><div>　去る2012年11月18日に開催された真崎守図書館第一回トークライブ「真崎守の作品と、その時代」に、何と真崎守さん御本人が来られ、貴重で得難いお話を拝聴することが出来たが、「ジロがゆく」について下記のようなエピソードを語られた（記憶に頼って書いているので、実際の表現と若干の差異あり）</div>
<br /><div>　当時「子供がボクシングで王者になるようなリアリティのない話は描けない。普通の中学生を描かせてくれ」と言ったら担当編集者が渋い顔をした。もちろん、ヒット作を出したい担当編集者としてはそれが正しい立場だったのだろう。</div>
<br /><div>「じゃあ（そういう地味な話なら）週刊（少年マガジン）じゃなく別冊（少年マガジン）にしましょう」と編集者に言われ、自分もその方が気楽だからと引き受けた。ある日、編集長がジロの原稿を持ってきて「これで1年間やりませんか」と言ってきたので、思わず</div>
<div>「最初、これじゃ売れないっておたくの編集者は言ってたよ」と答えた。そうしたら編集長は「（大ヒット作だけでなく）こういうまんがも必要なんです」と言ってくれた。</div>
<br /><div>　自分が唯一、手塚治虫先生に勝てたのは「普通の、等身大の少年を描ける」ことで、手塚さんは何でも出来たがそれだけは出来なかった。「ジロがゆく」が講談社出版文化賞児童まんが部門（第2回）でノミネートされていますと（出版社から）電話があった時に「（審査委員の）手塚治虫先生は何とおっしゃってますか」と訊いたら「“（手塚先生は）まだ若いし（受賞は）早いんじゃないか”と言っていました」と返ってきた。手塚さんが若手をけなすのはライバル視し嫉妬している証拠だから、内心“やった”と思い嬉しかった。</div>
<br /><div>「ジロがゆく」は別冊（実質的には月刊）という場所を得ることで、地味ながらリアリティのある物語設定を可能にした。もしかしたら、これが当時の作者にとって唯一の、純粋な意味での「少年まんが」だったのかもしれない（その点、週刊連載だった「ナガレ」「キバの紋章」では、売らんがための刺激的要素をいかに配するか、そのバランスに苦慮したのではと（当方の勝手な推測ながら）思わずにいられない）</div>
<br /><div>（ここで再び、話を読者側に戻させて頂く）</div>
<br /><div>五、鏡の効果（とりあえずのまとめ）</div>
<br /><div>　真崎守の作品は難解である、としばしば評されるのは、話の結末を明確に描かないこと（＝2つの等価な視点の提示）と、過剰なまでの言葉による隠喩的表現や（それと背中合わせの）「語らずに表現する」ことが多いことによる。これは明らかに作者の意図する表現様式であり、それを「はっきりと描くに足る内容がないから、ぼかした話になるのだ」と批判する向き（例：「漫画主義」同人の一部）もいたが、それはまったくの見当違いであろう。あえて断言させてもらうが、ストーリィの結末、物語の結構などどうでもいいのだ。作者の最も言いたいこと、表現したいことはそんなことではない、最も表現したいことを強調するために、結末を描かない方が効果的だったというだけのことである。言い換えれば、複数の視点を用意することにより、逆に「見えてくる」のである。</div>
<br /><div>　2つの視点を目の前に突き付けられた時、人は自らを問い直さなければならない。この2つの現実を、どちらとも判断できない（あるいは、どちらかと判断したい）自分は何者なのかと。「花と修羅」（原題・せくさんぶる）には、四人の主人公のうちの二人、しのぶと蛍の三つ子の姉妹、鏡子という女性が名前だけ登場する。</div>
<br /><div>「今は昔、鏡子と名付けられた娘がいた」</div>
<div>「鏡子を問いかけても浮かび上がるのは」</div>
<div>「ただ、問いかける者の姿だけ」</div>
<br /><div>　鏡が映すのは「問いかける者の姿」である。読者は、真崎守作品を通して自らと対峙する。だから、自らのありようや考え方が十人十色なら、作品から得る「面白さ」も十人十色となる。そしてそれは当然ながら、同時代性の濃い作品ほど個体差が大きくなる。例えば「共犯幻想」は、原作者の斎藤次郎が1993年単行本あとがきで語ったように「挫折に終わった全共闘運動の負け惜しみでも、レクイエムでもない」のだろうけれど、それを認めない（認めたくない）読者がいても不思議ではない。</div>
<br /><div>　 真崎守作品を読む快楽とは、まさしく、作品という鏡を通して「自らと対峙する」ことに尽きる。だからこそ、人間本来のありようが変わってしまわない限り、真崎守作品の価値と輝きも不滅なのだ。<br /><br /><br /></div>
<div></div></p>]]>
                </content:encoded>
                <dc:creator><![CDATA[橘川幸夫]]></dc:creator>
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            </item>
            <item>
                <title><![CDATA[えてもの　　はな]]></title>
                <description><![CDATA[<p>　自分が生まれ育ったのは現代の姥捨山みたいな過疎地の片田舎。特徴といえば山間でよく雨が降ることくらい。寂れたガソリンスタンドや農機具屋を兼ねたホームセンターが並ぶ県道をはずれると山ばかり。少し奥へ入れば軽四トラックが一台通るのもやっとという、畦道に毛が生えたような道しかない。それでも田んぼはかなり区画整理されていて、広い長方形が規則正しく並んでいる。自分の家はそんな田んぼの間を通り抜けて細い山路をうねうねと百メートルほど上がった所にある。リョウという幼馴染の家はそのさらに上手になる。田舎の中でもさらに不便な山手だ。
　
　なだらかな谷をはさんで三・四キロ離れた向かいの山側には何件もの家が偏っているが、こちらの山には二軒しか家はない。それには何か経緯があるらしいが、自分は詳しいことは知らない。
　
　子供の足では向かい山の家々までは遠いので幼い頃はたいていリョウと二人で遊んでいた。夏場は水遊</p>]]></description>
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                <pubDate>Mon, 24 Dec 2012 01:28:00 +0900</pubDate>
                <content:encoded>
                        <![CDATA[<p><div>　自分が生まれ育ったのは現代の姥捨山みたいな過疎地の片田舎。特徴といえば山間でよく雨が降ることくらい。寂れたガソリンスタンドや農機具屋を兼ねたホームセンターが並ぶ県道をはずれると山ばかり。少し奥へ入れば軽四トラックが一台通るのもやっとという、畦道に毛が生えたような道しかない。それでも田んぼはかなり区画整理されていて、広い長方形が規則正しく並んでいる。自分の家はそんな田んぼの間を通り抜けて細い山路をうねうねと百メートルほど上がった所にある。リョウという幼馴染の家はそのさらに上手になる。田舎の中でもさらに不便な山手だ。</div>
<div>　</div>
<div>　なだらかな谷をはさんで三・四キロ離れた向かいの山側には何件もの家が偏っているが、こちらの山には二軒しか家はない。それには何か経緯があるらしいが、自分は詳しいことは知らない。</div>
<div>　</div>
<div>　子供の足では向かい山の家々までは遠いので幼い頃はたいていリョウと二人で遊んでいた。夏場は水遊びの他、虫をとったり、涼しい場所を求めて木に登った。冬になると鳥の捕獲罠をしかけたりする他は、探検と称して山を歩き回るくらいしかする事がない。とにかく家族以外に人がいないのだからリョウの他の遊び相手は人間ではないものばかりだった。</div>
<div>　</div>
<div>　そんなだから五月頃にトラクターの音がし始めるとリョウと自分はいそいそと田んぼに降りていく。トラクターも珍しいが、家族以外の人間が珍しい。しかも農作業にくるおばさんが非常に親切で昼飯やオヤツを分けてくれる。リョウと自分はおばさんにもらったおむすびをかじり、漬物や飴玉を舐めながら飽きもせず畔に座って代かきの様子を見ていた。</div>
<div>　</div>
<div>　ある年、やはり代かきの翌日だったと思う。自分はリョウを持て余していた。リョウは濁水の田んぼを覗き込んではエビがいないと泣いた。エビというのは豊年エビのことだ。腹を上に向けて逆さに泳ぐ不思議なエビで、出てくるのは田植えからひと月くらい後だ。けれど、まだ小さなリョウに理屈は通じない。田んぼの水の中にはいつでも面白い豊年エビがいると思い込んでいる。自分はリョウを連れて午後いっぱい山沿いの田んぼを覗き込んで歩いたがカエル一匹見つからなかった。代かきのあと田植えまで一日か二日は田んぼには誰も来ない。時たまカラスが鳴いた。歩き疲れたリョウと自分はいつのまにか畦道のはたで寝込んでいた。</div>
<div>　</div>
<div>　目覚めた時には陽は暮れかかっていた。湿気た風が吹いて草むらがざわざわと鳴った。自分達は暫く茫然と畦に座り込んでいたが、寝起き不機嫌なリョウはメソメソとぐずりはじめた。自分はリョウをなだめて立ち上がらせ家に向かおうとした。リョウは足が痛いだの何だのとダダをこねる。困っていたところ、帰り道とは反対の田んぼを向いた途端にリョウはピタリと泣き止んだ。これ幸いと手を引いたが頑として動かず、自分の服の裾をつかんで黙って田んぼを指差した。</div>
<div>　</div>
<div>　自分の家を背にして田んぼに向かって立つと、真向かいの山の中腹に氏神様の社が見える。日はその山向こうへ沈む。夕日が沈むまでは向かいの山は真っ暗な影にしか見えないが、陽が落ちてしまえば暗くてもそれなりに鳥居や社の屋根、木々の間に石段も見える。下の方には向こう山の人家の屋根が見える。水を張った田んぼは巨大な水鏡になって山の社や白っぽい鳥居を映す。何時の間にか風は凪いで水面には色を失った山と空が映っていた。しかしリョウの指差す先には山でも空でもないものがうごめいていた。</div>
<div>　最初は霞だと思った。けれどそれは社から立ちのぼり上へ伸びてゆくようだ。煙かもしれない。境内の草刈り後に草を焼くことがある。</div>
<div>　</div>
<div>　「焚き火じゃ、草を焼く煙が映っとるんじゃ」</div>
<div>　空を見ても煙はない。でもその時は煙と思い込んだ。</div>
<div>　「おとうちゃん」</div>
<div>　リョウが向こう岸を見つめてつぶやいた。広い田んぼの向こう岸にぼんやりと白い影が見えるような気もする。けれど自分にはそのぼんやりとした影が人には見えない。だいたい死に別れたリョウのおとうちゃんがこんなところを歩いているはずがない。熱心に向こう岸を見つめるリョウは先ほどまで握っていた自分の手をつとふりほどいた。</div>
<div>　「リョウ！」</div>
<div>　呼びかけた声も聞こえない様子でリョウは黙々と田んぼに入って行こうとする。自分は慌ててリョウの襟首を捕まえる。と、リョウはいやがって暴れはじめた。その力が半端でない。</div>
<div>　「リョウ！」</div>
<div>　手足をバタつかせるリョウの肩を捕まえて踏ん張った。その自分の足がふうっと沈み込む。あっと思った時には、リョウと自分は崩れた畦土ごと田んぼに転落していた。</div>
<div>　水面に無数の波紋が広がる。</div>
<div>　「おとうちゃん？おとうちゃんは？おとうちゃんはどこ？」</div>
<div>　水はまだ冷たい。リョウはそんなことも気せず、まだ向こう岸を見つめている。</div>
<div>　</div>
<div>　「帰るぞ！」</div>
<div>　リョウを引きずるようにして家への道を駆け上がった。まごまごしていたら、リョウがおとうちゃんと呼んだあの影が後ろからついてくる気がした。赤ちゃんの時に死に別れた父親。リョウは知っているはずがないのだ。リョウよりも自分の方が怖気付いていた。細い道の両側に茂ったクマザサがざわめく。木々の影が家の灯りを隠す。したしみ深いはずのものが恐ろしく見え、暗い茂みの中に何か禍々しいものが潜んでいて、じぶんたちを狙っているように思った。薄暗い細道の途中まで迎えに出ていたリョウの祖母に会ってホッとした。その後はよく覚えていない。人に話したかどうかもわからない。子供の話だから相手にする者もなかっただろう。</div>
<div>　</div>
<div>　あれから２０年近くが経ってそんなこともすっかり忘れていた。</div>
<div>　</div>
<div>　自分は去年地元へUターンした。今は、出来たばかりの小さなコンビニでバイトしている。その日は久しぶりの早番だった。明るいうちに帰れる。しかも明日は休みだ。田んぼのそばを通りかると、晴れた夕方でちょうど夕日が山向こうに沈み切ったところだった。水面には色を失った空と山。その眺めに見覚えがあった。車を停めて降りると思ったより空気は冷たかった。道には何匹ものカエルが車に轢かれ、ひしゃげてこびりついていた。生臭い。誰もいないはずだがどこからか人のさざめきがするようだ。耳をすませると突然耳鳴りがした。大きな水鏡に映った景色のどこかで何かが動いている。雲だろうと空を見た。雲はない。気のせいか。いや、向こう岸に動くものがある。人だ。ゆっくりと歩いている。突然子どもの時を思い出した。手のひらに汗がにじんだ。</div>
<div>　誰もいるはずはない。何かの見間違いだ。自分は大きく息を吸って正体を確かめようとじっと見つめた。</div>
<div>　</div>
<div>　それはもちろんリョウのおとうちゃんではなかった。けれど自分の知っている人でもないようだった、影の濃淡から、ふたり連れのように見て取れた。自分の家のある山を指さし何かを語らいあっている様子だ。それがふと立ち止まった。向こうの方でもこちら岸の自分に気がついたようだった。女のほうが少しほほえんで、懐かしそうに目を細めた。自分もなんだか懐かしい気持になった。薄暗くてはっきり見えないのがもどかしい。近ければはっきり見えるのに。もう一人が大きく手を上げて手招きをした。</div>
<div>　</div>
<div>　くゎっ！</div>
<div>　唐突な鳴き声。鳥だ。ゴイサギが田んぼの真ん中から疑い深くこちらをうかがっていた。辺りは車から降りた時と変わらない明るさで、遠くまで見わたせる。向こう岸のひとかげはもうなかった。辺りには隠れるところもない。ホッとすると同時になぜか寂しかった。泣きたいような喪失感があった。自分はなぜか田んぼに踏み込もうとしていた。田んぼには鳥がたてた波紋が広がり、もう何も映っていなかった。</div>
<div>　</div>
<div>　話はこれだけだ。</div>
<div>　</div>
<div>　あれが何かは分からない。話しても笑われそうだから人に尋ねてもない。ただ、最近知ったが、長野の山中には「えてもの」と呼ばれる物の怪があるそうだ。白昼から幻を見せて山に迷わせたり、生首や何か気味の悪いものを見せて正気を失わせたりする。この「えてもの」を見るのはたいてい猟師、つまり殺生をする者だけ。</div>
<div>　</div>
<div>　ここは長野の山中ではなく、自分は猟師でもない。あれが「えてもの」かどうかもわからない。</div>
<div>　ただ殺生だけは、猟師のように直接手をかけないだけで、今の人間はずいぶんやっている気がする。「えてもの」の類が人里へ進出して不思議ないくらいには。</div>
<div>　</div>
<div>　</div>
<div>   * * *</div>
<div>　</div>
<div>寒い午後。</div>
<div>サツマイモの皮をむいて角切りにし塩水で茹で、甘く煮たリンゴと和える。あとは熱いコーヒーと深呼吸を。</div>
<div><a href="http://shin-kokyu.jp/" target="_blank">http://shin-kokyu.jp/</a></div>
<div>　</div>
<div>●「えてもの」 はな（深呼吸歌人[47]）</div></p>]]>
                </content:encoded>
                <dc:creator><![CDATA[橘川幸夫]]></dc:creator>
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            </item>
            <item>
                <title><![CDATA[うらみと時間　稲葉多恵]]></title>
                <description><![CDATA[<p>　だれもうらみたくねぇな
　頼（より）はそうおもった
　頼は30前に結婚をした
　1年後、連れ合いは病にかかり
　頼はこらえてばかりになってしまった
　あいつのことは大切だけど
　抑えつづけてるおれの気持ちはどうなるわけ？
　でもはなれたくない訳よ、ほかの奴と一緒にはいられない訳よ
　あいつのかなしい顔はみたくないけど
　俺のくるしさは、どうすりゃいい？
　連れ合いは今はもう、なにもできない
　ただしやはり頼のことはすきなようで
　どんなことをいわれたとしても、頼からはなれる選択肢は無いようだ
　こんなとき「そこにいてくれれば、それだけでいい」なんて
　ピュアな気もちで居たい
　トントン拍子に進んでいく奴らの仲間に入りたい
　俺はおまえらより数倍苦労してるはずなのに、どうして何処にも行けねぇの？
　世の中色々あるからって、ふたりでちぢこまって生活していくなんて
　そういう心境になるのはまだ</p>]]></description>
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                <pubDate>Sun, 23 Dec 2012 11:13:00 +0900</pubDate>
                <content:encoded>
                        <![CDATA[<p><div>　だれもうらみたくねぇな</div>
<br /><div>　頼（より）はそうおもった</div>
<div>　頼は30前に結婚をした</div>
<div>　1年後、連れ合いは病にかかり</div>
<div>　頼はこらえてばかりになってしまった</div>
<br /><div>　あいつのことは大切だけど</div>
<div>　抑えつづけてるおれの気持ちはどうなるわけ？</div>
<div>　でもはなれたくない訳よ、ほかの奴と一緒にはいられない訳よ</div>
<div>　あいつのかなしい顔はみたくないけど</div>
<div>　俺のくるしさは、どうすりゃいい？</div>
<br /><div>　連れ合いは今はもう、なにもできない</div>
<div>　ただしやはり頼のことはすきなようで</div>
<div>　どんなことをいわれたとしても、頼からはなれる選択肢は無いようだ</div>
<br /><div>　こんなとき「そこにいてくれれば、それだけでいい」なんて</div>
<div>　ピュアな気もちで居たい</div>
<div>　トントン拍子に進んでいく奴らの仲間に入りたい</div>
<div>　俺はおまえらより数倍苦労してるはずなのに、どうして何処にも行けねぇの？</div>
<div>　世の中色々あるからって、ふたりでちぢこまって生活していくなんて</div>
<div>　そういう心境になるのはまだまだ若すぎねぇ？俺</div>
<br /><div>　頼はいつも、底で、「心だけの存在になりたい」「身体は要らない」とおもっている</div>
<div>　そうなれば相手を純粋にあいせるような気がするからだ</div>
<br /><div>　身体があるから、この世が在るから、自分やあいつや周りをうらんじゃうんだ</div>
<div>　俺は今、くるしくて仕方が無い</div>
<div>　なんか、みとめられたい</div>
<br /><div>　つらすぎるのは、単なる被害者意識で、</div>
<div>　自分の責任であると、すべてひきうける程に頼は強くない</div>
<div>　また頭でそれをわかっている分、もう何処にも行けなくなってしまったと</div>
<div>　頼は毎日静かに絶望し続けている</div>
<div>　誰かとはなれることのつらさはもう味わいたくなかったし</div>
<div>　なくなることによって誰かを苦しめることもしたくない</div>
<div>　だから、最初から心だけの存在になって、そしていっしょにいたい</div>
<div>　お金もかからず、欲もなく、ただいっしょにいたい</div>
<br /><div>　そういう気持ち、もうどっかにいっちまったな</div>
<div>　だれもうらみたくないのに、うらんじゃってるよな、実際</div>
<br /><div>　頼は「早く、時間が経ってくれないかな」そう思っている</div>
<div>　はやく今を懐かしがりたい、そう願っている<br /><br /><br /></div>
<div>＊＊＊＊</div>
<br /><div>慌ただしかった此処数年が過ぎ去り只今、充電期間に入っています。</div>
<div>でも、もう少しで抜ける気もしています。</div>
<div>なので、出来る限りぼんやりしていきたいとおもっています。</div>
<br /><div>●「うらみと時間」　稲葉多恵（リアルテキスト塾12期生）</div></p>]]>
                </content:encoded>
                <dc:creator><![CDATA[橘川幸夫]]></dc:creator>
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            </item>
            <item>
                <title><![CDATA[かける×おかね　やました√とおる]]></title>
                <description><![CDATA[<p>  電車はやけに空いていた。いつもは満員ではないものの、空いている席はない。でも、今日は席に座ることができた。会社の最寄り駅まで一時間足らず、新聞を読みながら過ごす。一面は見出しだけをチェックし、テレビ欄から見始める。テレビ欄の次は社会面、地域、スポーツ、経済、国際、政治と順にめくっていく。めくるごとに自分の関心からは遠ざかっていく。
  つまるところ自分にとって最も重要なのはテレビ欄ということになる。月9のドラマが面白そうなら、月曜は9時までに家に着こうと仕事を頑張るわけだ。テレビ欄を見ながら、そういうきっかけとなる番組を無意識のうちに探している。
  今日は7時から仮装大賞があるようだ。おなじみ「欠ちゃんの仮装大賞」である。さすがに7時に家に着いているのは難しいが、優勝した仮装は見たい。優勝決定後に優勝チームの仮装のVTRが流れるはずだから、それに間に合えばいい。二時間番組だからそれは</p>]]></description>
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                <pubDate>Sun, 23 Dec 2012 11:00:00 +0900</pubDate>
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                        <![CDATA[<p><div>  電車はやけに空いていた。いつもは満員ではないものの、空いている席はない。でも、今日は席に座ることができた。会社の最寄り駅まで一時間足らず、新聞を読みながら過ごす。一面は見出しだけをチェックし、テレビ欄から見始める。テレビ欄の次は社会面、地域、スポーツ、経済、国際、政治と順にめくっていく。めくるごとに自分の関心からは遠ざかっていく。</div>
<br /><div>  つまるところ自分にとって最も重要なのはテレビ欄ということになる。月9のドラマが面白そうなら、月曜は9時までに家に着こうと仕事を頑張るわけだ。テレビ欄を見ながら、そういうきっかけとなる番組を無意識のうちに探している。</div>
<br /><div>  今日は7時から仮装大賞があるようだ。おなじみ「欠ちゃんの仮装大賞」である。さすがに7時に家に着いているのは難しいが、優勝した仮装は見たい。優勝決定後に優勝チームの仮装のVTRが流れるはずだから、それに間に合えばいい。二時間番組だからそれは8時40分過ぎということになる。そのためにはいつ会社を出ればいいのか、そんなことを考えながら、新聞をめくっていく。</div>
<br /><div>  国際面で「正男がディズニーランドに来ていた？」という小見出しが目に入った。最近は小雪・優香・夏帆など名字のない芸能人が珍しくない。正男もその流れの人か。全然知らなかったが、どうやら正男というのは有名な人なのかもしれない。スポーツ紙ではない、れっきとした一般紙でプライベートが取り上げられるというのはよっぽどの有名人じゃなければありえない。記事の中身に目を移そうとしたところで、電車は目的地へ着いてしまった。新聞を畳んで席を立つ。</div>
<br /><div>  駅から会社までは五分もかからない、一直線の道だ。いつもなら会社員が無表情で歩いている。だが、今日は誰も見当たらない。腕時計に目をやると8時24分。遅刻したわけでもなさそうだ。</div>
<br /><div>  会社の入り口に着いた。いつものように社員証をピッとやって認証を済ます。自動改札のようなゲートが開き中へ進む。すると、会社の受付を兼ねた警備員が慌ててこう言った。</div>
<br /><div>  「すいません。休日出勤届にサインをお願いできますか？」</div>
<div>  「…えッ？」</div>
<br /><div>  僕は思わずすっとんきょうな声をあげてしまった。</div>
<br /><div>  「今日は休みじゃないですよね」</div>
<div>  「いえ、今日は土曜日です。8日、土曜ですよ」</div>
<br /><div>  ケータイを取り出して待ち受け画面を見ると確かに「9月8日土曜日」と表示されている。会社をズル休みしたことはあるが、会社に頼まれもしないのに来たのはこれが初めてだ。知らず知らずのうちに疲れがたまっていたのかもしれない。</div>
<br /><div>  「…あ、間違えました。今日は土曜でしたね。失礼します」</div>
<br /><div>  なにかドッキリを仕掛けられたような気持ちになった。でも、本当にドッキリならもう少し映像として見映えがするものにするだろう。もやもやが取れないまま、今来た道を戻る。ふと会社近くのコンビニに立ち寄ってみた。コミックコーナーにある「岡の東術師」という漫画に目が止まる。「東術」というのは何だろうか。あいにくビニールに包まれており、中身は見られない。気になって仕方ないので、５巻全部を買い物カゴに入れた。</div>
<br /><div>  続いて目についたのは週刊誌の見出し「袋とじ企画　不況の今こそ失岡株を買え！</div>
<div>中国で失岡の需要急増」だ。株については詳しいほうだと思うが「失岡株」というのは聞いたことがない。おまけに「失岡」というのは中国で求められているのだそうだ。この週刊誌も買うことにした。</div>
<br /><div>  DVDが少し置いてあるコーナーには「セーラー服と機関充」というのが置かれていた。リメイクなのかパロディなのか、よく分からない。気になるのでこれも買い物カゴへ。</div>
<br /><div>  お弁当と飲み物とおやつも持ってレジへ向かう。見かけたことのない綺麗な店員だった。「令木」という名札がついている。「珍しい名字ですね。なんと読むんですか」なんて言って話しかけたいところだ。でも、コンビニにはそういうフリートークは似合わないと思って止めておいた。会計は8952円。思ったより高かった。</div>
<br /><div>  駅へ行く途中、不動産屋では開店準備のため、店先にのぼり旗を立てている。「礼が不要の物件多数」と書いてある。初めて見た内容だ。「いまだに田舎では、大家にお歳暮を送ったり、年賀状を出したりして、礼を尽くす風習があるのかもしれない。でも、ここは都会ですから、そういう礼は要りませんよ」、そういう意味だと解釈した。確かにこの街は、田舎から出てきた人が初めて住むのにはちょうどいいところかもしれない。</div>
<br /><div>  駅に着いたら、電車に乗って帰るのが面倒に思えてきた。体がだるいのだ。ロータリーに停まっているタクシーに向けて手を挙げた。行き先を告げ、後部座席いっぱいにごろんと横になった。「目的地近くなったら、声かけさせてもらいますんで」、運転手はそう言って走りだした。発車してしばらく経つと、猛烈な頭痛が襲ってきた。おまけに耳鳴りもする。</div>
<br /><div>  「すいません。最寄りの病院に行ってもらえますか？　気分が悪いんです」</div>
<br /><div>  気がつくと、そこは病院のベッドだった。看護婦がこっちを見た。</div>
<br /><div>  「起きましたか。タクシーを降りる時に倒れられたそうですよ。運転手の方が運んできてくださって…あ、先生がいらしたようです」</div>
<br /><div>  ごく簡単な問診の後、聴診器が当てられた。女医はちょっと首をひねりながらこう言った。</div>
<br /><div>  「…世の中には実に様々な病いがあります。ちょっとプライベートなことになるかもしれませんが、診察の一環ですので、どうか正直にお答え下さい」</div>
<div>  「はい」と答えるしかなかった。</div>
<br /><div>  「最近、何か買い物をしましたか？　いわゆる衝動買いというのはありませんでしたか？」</div>
<div>  「最近というか今日ですが、コンビニでコミック、週刊誌、DVDと食べ物を買いました。初めから買おうと思っていたわけではなく、なんとなく入っただけだったのですが。それなのに、会計が9000円近くになってて驚きました。言われてみると、たしかにそういうことがこの頃何度かありました」</div>
<div>  「差し支えなければ今日買ったものを見せてもらえますか？　無理にとは言いませんが」</div>
<br /><div>  かばんからコミック、週刊誌、DVDと食べ物を出すと、女医はコミックを手に取ってこう質問してきた。</div>
<br /><div>  「失礼な質問かもしれませんが、このコミックのタイトル、分かりますか？」</div>
<div>  「岡の東術師（オカノトウジュツシ）です」</div>
<div>  「週刊誌のこの見出し、読んでもらえますか？」</div>
<div>  「不況の今こそ失岡株を買え（フキョウノイマコソシツオカカブヲカエ）ですか。失岡株というのが何かは分からないのですが」</div>
<br /><div>  女医はやっぱりというような表情を見せた。</div>
<br /><div>  「このDVDのタイトルは？」</div>
<div>  「セーラー服と機関充（セーラーフクトキカンジュウ）です」</div>
<br /><div>  今度の表情はしまったという感じ。女医はまだ若手だからか表情が実に分かりやすい。でも、分かりやすいのは表情だけで、これらの質問がまともな診察になっているのかは皆目検討がつかなかった。女医はカルテにペンを走らせた後、こう言った。</div>
<br /><div>  「会社員でいらっしゃるかと思いますが、給料日は10日ですか？」</div>
<div>  「えぇ…よくご存知で」</div>
<div>  「やっぱりそうですか。典型的なヒンケツの症状です。でも心配ありません。全治は次の月曜の朝9時5分過ぎですから。銀行によって処理が遅い場合もありますけどね」</div>
<br /><div>  さっぱり意味が分からなかった。全治一ヶ月というのなら聞いたことがある。でも、全治するタイミングが分刻みで明示されるなんて聞いたことがない。</div>
<br /><div>  「すいません、ヒンケツというのはどういう…」</div>
<div>  「ヒンケツじゃありません。・・・ケツです」</div>
<div>  「ケツってお尻の病気ですか」</div>
<div>  「違います！　・・・ケツです。…あ、いけない。いくら言っても通じないはずだわ」</div>
<br /><div>  何かに気がついたようで、女医はその場で薬をくれた。薬を飲ませてもらったら不思議とだるさはなくなってきた。</div>
<br /><div>  「改めて診察の結果ですが、端的に言いますと金欠乏性疾患、いわゆる金欠病です。この病気は、給料日前に症状が悪化することが多い奇病です。クレジットカードの引き落とし日に突如発症する場合もあります。海外旅行に行った後の女性に多く見られる症状です」</div>
<br /><div>  「はぁ…」</div>
<div>  私は戸惑うばかりだが、女医の顔はいたって真面目だ。話は次へと進んでいく。</div>
<br /><div>  「この病気が厄介なのは、その名の通り、ありとあらゆる『金』が欠けてしまうところなんです。お薬をお飲みになったので、今は大丈夫だと思いますが、このコミックは『鋼の錬金術師』、ハガレンです。さきほどは金が欠けて見えなくなってしまっていたんですね。こちらの週刊誌の見出しは『不況の今こそ鉄鋼株を買え』です。こうゆう症状だけならまだなんとかなるかもしれませんが、この病気の恐ろしいところは、何と言っても時空が歪んでしまうところなんです」</div>
<div>  「時空が歪む？」</div>
<div>  「そうです。一日丸々無くなってしまうんです」</div>
<div>  「…あ、そういうことか！　木曜の次が土曜になってしまったってことか」</div>
<br /><div>  思い起こすと、今日腑に落ちなかった出来事は、すべてこの病気に起因していた気がする。なんだか雲が晴れるような気分だった。ほどなくして診察は無事に終わった。</div>
<br /><div>  「では、お大事になさって下さい。あと、ご利用は計画的に、ね。」</div>
<div>  女医はいたずらっぽい微笑みを浮かべていた。</div>
<br /><br /><div>＊＊＊＊</div>
<br /><div>変な電子書籍を「変電書」と名付けることにしました。</div>
<div>2013年は自分で「変電書」を作ってみたいと思ってます。</div>
<div><span style="text-decoration:underline;"><a href="http://rooting.6.ql.bz/" target="_blank">http://rooting.6.ql.bz/</a></span></div>
<br /><div>●「かける✕おかね」　やました√とおる（リアルテキスト塾4期生）</div></p>]]>
                </content:encoded>
                <dc:creator><![CDATA[橘川幸夫]]></dc:creator>
                <nicoch:article_thumbnail>https://secure-dcdn.cdn.nimg.jp/blomaga/material/channel/article_thumbnail/ch1204/24673</nicoch:article_thumbnail>
            </item>
            <item>
                <title><![CDATA[新党「万年野党」宣言]]></title>
                <description><![CDATA[<p>2012年末の衆議院総選挙で、新しい政治のステージが幕開きました。
こういう状況の中で、本当に必要な政治とは何か、政治家はどうあるべきかを、考えて行きたいと思います。
</p>]]></description>
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                <pubDate>Tue, 18 Dec 2012 10:55:00 +0900</pubDate>
                <category><![CDATA[橘川幸夫]]></category>
                <category><![CDATA[原英史]]></category>
                <category><![CDATA[万年野党]]></category>
                <content:encoded>
                        <![CDATA[<p><div><span style="font-size:200%;">新党「万年野党」宣言</span><br /><br /><strong>原英史・橘川幸夫</strong><br /><strong>政治・行政対談集</strong></div>
<br /><div>近代政治システムを超える新しい政治家の登場を。</div>
<div><br /><hr /></div>
<div><span style="font-size:150%;">万年野党宣言</span></div>
<br /><div>・選挙では、多くの政党が乱立しました。しかし、選択肢が増えたこと「政党中心の選挙」という仕組みそのものが、もはや崩壊してしまったことだと思います。</div>
<br /><div>・これまでの国政選挙は、政党中心で行われてきました。比例代表では政党そのものを選びます。また、小選挙区についても、候補者個人のことはよく分からず、所属政党で選ぶ人が多かったのでないかと思います。</div>
<br /><div>・しかし、最近の政治状況を考えれば、「政党中心の選挙」にむなしさを感じるのでないでしょうか。</div>
<br /><div>・各政党とも、選挙では「○○をやります」と高らかに政策を掲げます。しかし、そんな約束は完全に反故にされる可能性もあることを、私たちは知ってしまいました。</div>
<br /><div>・また、ここ数年の間に、所属政党が変わった議員がどれだけいることでしょう。「○○党所属の候補」だと思って投票しても、いつ別の政党に変わるか分からないことが明らかになりました。</div>
<br /><div>・もはや、政党を選ぶことも、所属政党で候補を選ぶことも、あまり意味がない・・と考えるのは、もっともです。しかし、だからといって、選挙に行かなければ、組織票をもった昔ながらの候補者たちを利するだけです。昔ながらの政治が続くことになるでしょう。</div>
<div>・そこで、新しい選択肢として、「万年野党」を用意します。「万年野党」は、政党として、政策の約束は一切しません。約束は、つだけです。</div>
<br /><div>・第一の約束は、「当選した議員は、その専門知識と技能を使って、それぞれの専門領域で、国政監視と対案提示に全力を尽くすこと」です。候補者は、約束を果たせるだけの資質・経験を備えた、「その道のプロ」だけに絞ります。</div>
<br /><div>・第二の約束は、「政権には決して入らないこと」です。政権に入れば、どうしても妥協が必要になる場面が生じます。「万年野党」は、一切の妥協を排除し、徹底して「国政監視」と「理想的な対案提示」だけを行い続けます。このために、首相指名選挙では白票を投じます。</div>
<br /><div>・「万年野党」の方針はこれだけです。個別政策については、所属議員の個人判断に委ね、党議拘束も一切しません。「万年野党」が議席を持つことで、どういう政策が実現されるのかは、何も約束できません。ただ、「その道のプロ」たちの手で、国の政治を一歩でも二歩でもよくすることだけは、約束できます。</div>
<div> </div>
<div>▼<a href="http://www.metakit.jp/mannen/">万年野党仮サイト</a><a>にて</a>サポーターに登録いただければ、活動報告を送ります。</div>
<div>　</div>
<div>▼連絡先　万年野党準備室　mannenyatoo@gmail.com</div>
<br /><div><hr /></div>
<div>原英史　はら・えいじ</div>
<div>「政策工房」社長。1966年東京都生まれ。東京大学法学部卒、米シカゴ大学ロースクール修了。89年通商産業省当時入省。大臣官房企画官、中小企業庁制度審議室長などを経て、国家公務員制度改革推進本部事務局勤務。2009年7月退官。2011年12月大阪府特別顧問、大阪市特別顧問に就任。著書に『官僚のレトリック―霞が関改革はなぜ迷走するのか』『「規制」を変えれば電気も足りる』ほか。</div>
<br /><div>橘川 幸夫　きつかわ・ゆきお</div>
<div>デジタルメディア研究所代表。1950年東京都生まれ。72年、音楽雑誌「ロッキングオン」創刊。78年、全面投稿雑誌「ポンプ」を創刊。80年代後半より草の根BBSを主催、ニフティの「FMEDIA」のシスオペを勤める。主な著書に『一応族の反乱』、『生意気の構造』ともに日本経済新聞社、『21世紀企画書』晶文社、『インターネットは儲からない』日経BP社、『暇つぶしの時代』平凡社『やきそばパンの逆襲』河出書房新社、『風のアジテーション』角川書店、『ドラマで泣いて、人生充実するのか、おまえ。』『希望の仕事術』ともにバジリコ、iPhone、iPadアプリ『深呼吸する言葉の森』オンブック　ほか共著、編著、講演多数。Twitter「metakit」</div>
<br /><div>------------------------------------</div>
<div><span style="font-size:150%;">第一章</span></div>
<div><span style="font-size:150%;">万年野党とは<br /></span>2012年12月10日<br /><br /><strong>●民主党政権は剣の達人に経営を任せたようなもの</strong></div>
<br /><div>橘川:原くんと官僚制度について、日経BPオンラインのコラムで、いろいろ議論してきたけど、現在の議会制民主主義には何か根本的な欠点があると思い始めた。民主党の長妻昭さんは、日本電気から日経BPに入り、ITの分かるジャーナリストだった。議員になって、野党時代は、質問主意書を効果的に使ったり、消えた年金問題などで注目された。その人材が与党になり厚生労働大臣になってからは、省内を掌握出来ず、党の支援もなく、沈没してしまった。野党時代あれだけ輝いていた人が権力の内部に入った瞬間から色あせたというのは、何か根本的な無理があるのではないかと思う。政権奪取をした民主党政権の挫折の意味は、もっと、根本的に検証されるべきではないか。単に党内の派閥争いの次元だけではないものがあるような気がする。</div>
<br /><div>原:これまでの議論でも出てきましたが、よくある答えは、民主党の中に、「政治主導とは何なのか」を取り違えている人が多くて、おかしな方向に行ってしまったということですね。つまり、大臣になるというのは行政組織の経営者になることだと、よくわかっていなかった。野党時代に、個人プレーで組織に切り込み、鋭い国会質問で役人をたじたじとさせ、大戦果をあげた成功体験が、逆にアダになってしまった面もあったかもしれません。</div>
<div>　もうちょっと踏み込んで言うと、そういうことを含め、政党内での人材マネジメントができていなかったのだと思います。人間だれでも、得手不得手がある。たとえ話でいうと、戦国時代には、剣の達人として今も名を知られる人たちがごろごろいました。もし一対一の戦いで全国トーナメントをやっていたなら、彼らのうち誰かが全国制覇したと思いますが、現実世界では徳川家康が全国制覇した。当たり前ですが、個人としての戦闘能力と、組織の指揮統率能力、行政統治能力は別個の能力だからです。</div>
<div>　ところが、民主党のやったことは、局地的な戦闘で功績のあった剣の達人を、いきなり城主に抜擢し経営を任せてしまったようなものです。これは、うまくいくわけがありません。民主党は、長いこと野党で、いわば城の外側でゲリラ活動している勢力みたいなものでしたから、経営能力の長けた人材を選抜したり育成したりする機会がなかったのでしょう。</div>
<br /><div>橘川:情けないっちゃありゃしない。民主党が政権引き継いで3年経つのに、まだ自民党のせいだと攻撃している議員がいて呆れます。そう思っていても、自分が出来ないことの理由にしてはいけないことだよね。権力を握るということの怖さも意味も分かってないんでしょう。小沢さんが政権取る前に自民党との大連立を企てたのは、民主党の議員に一度、政権に入って権力運営の意味を教えるためだったという説がありますが、今となっては、それをやっとけば、少しはましな経営が出来たのではないかと思う。</div>
<div>　しかし、だからと言って、政治経営のプロが政治をやればうまくいくのか、と言うと、そうは思えない。何か、根本的なところで、何か新しい発想が必要なのではないかと思う。</div>
<div>　地域や組織の代表が議会で議論して日本の方向性を決めるという議会制民主主義は、日本の近代化のためには効果があったと思うが、これからの時代は、それだけではダメなような気がする。</div>
<br /><strong>●政権をとらない「万年野党」の意義</strong><br /><br /><div>原:僕は「万年野党」という存在があったらいいんじゃないかと考えています。剣術やゲリラ戦の得意な人たちが、政権交代で与党になった途端、裃を着させられてかしこまり、それがうまくできなくて左遷されてしまったりするのは、見るに忍びない。それぐらいだったら、自分たちは絶対に政権に入らないという政党をひとつ作って、長妻さんみたいな人は、ずっとそこで、鋭い国会質問での追求と、改善案の提示だけをやっていたらいいんじゃないか。その方も、ご本人も得意な活動をし続けられるし、そういう強力な監視・改善機能は、国の政策遂行にとって極めて有益だと思うのです。</div>
<br /><div>橘川:それは素晴らしい発想かも知れない。首相を目指さない政治家がいても良い。誰もが首相になれるわけではないので、自分の役割を認識した政治家が必要なんだな。</div>
<br /><div>原:僕の考えでは、「万年野党」の綱領はつです。</div>
<div>、政権には入らない。</div>
<div>、政党として、政策は一切唱えない。</div>
<div>、政策活動はすべて個人プレー。各議員が個人の専門知識・能力を活かして、それぞれの専門分野で国政監視・改善を行なう。</div>
<div>　議員は、それに堪える人。外交、防衛、経済、教育、社会保障などの各分野で、「その道のプロ」だけを厳選する。いわば剣の達人を集めて、国会質問の場で、大臣との一対一の勝負をしてもらう。この勝負で打ち勝ち、政府のやっていることの問題を暴き出し、世論の支持も受ければ、それこそ野党時代の長妻さんたちがやったように、国の政策を変えさせることだって可能です。</div>
<div>　それから、政権には入らない。なぜかというと、政権に入って行政経営の責任者になると、どうしても妥協が必要になる。これは、数多くの課題を限られた時間・リソースの中でこなさなければならない経営者としては、仕方ないことです。一方、これに対し、絶対に妥協をせず、常に理想的な姿を提示し続ける・・・という役回りの人も必要だと思うのです。ただ、これは、多くの国会議員にとっては、二の足を踏む条件かもしれません。やはり、政治家は、もともと権力志向の強い人がなるわけですから。ただ、中には、そういう志向よりむしろ、ジャーナリスト気質みたいな人もいると思う。そういう変わった気質と能力のある議員が、数十人でも集まれば、国会の機能が格段に上がると思うのです。</div>
<div>　あとは、政権をとりたい人たちは、党、党にわかれて、権力を握ることを目的とした論戦や、足の引っ張り合いをしてもらえばいい。国政の監視と改善は、「万年野党」で補っていく・・という構想です。</div>
<br /><div>橘川:いいですね。監査役としての政治家ですね。今、小党を作っても、大連立時代だから、政権与党に組み入れられていく。そしたら結局何も出来なくなる。ならば、いっそ、野党に徹した方が意味がある。万年野党の綱領には「首班指名は白紙で投票する」ということを明記しましょう。</div>
<br /><div><br />原:それは必要ですね。万年野党はすべて個人プレーなので、個々の政策での党議拘束とかは一切ありませんが、唯一の例外として、首相指名だけは必ず白票と決めておく。そうすれば、仮に将来的に、万年野党が国民の大きな支持を受け、過半数を制する事態になっても笑、政権与党にはならず、野党であり続けることができます。連立工作とかに巻き込まれることも避けられる笑。</div>
<br /><strong>●ジャーナリストは政治家になればいい</strong><br /><br /><div>橘川:議員になれば、国政調査権があるし、官僚たちが資料を集めてきてくれる。出張費もただだ笑。在野のジャーナリストは、大手メディア会社にいれば会社の規制で本当のことは言えなくなるし、フリーなんて政府の内部資料まで到達出来ない。だったら、政治家になってジャーナリズムをやればよいわけだ。世襲でもタレントでもない、新しい種類の政治家が生まれますね。</div>
<br /><div>原:僕の考える万年野党の役割は、本来的には、もっとメディアが果たすべきことなのかもしれませんね。しかし、おっしゃるように、今のマスコミには無理です。記者クラブで役所の提供した情報をみんな一斉に記事にするだけ。たまに、役所の課長さんから「これはおたくだけにリークするよ」といって情報をもらえたら、特ダネ記事を書けるので大喜び。またリークしてもらいたい一心で、役所に気に入られるような記事を書く。これじゃ、政府の監視なんてできやしません。</div>
<div>　そういう大会社を飛び出してフリーで活動している磯山友幸さん、町田徹さん、また会社の枠を超越してしまった長谷川幸洋・東京新聞論説副委員長など、傑出した方もなかにはいますが、ごくごく一握り。日本のジャーナリズムがまともに機能するのを待っているより、国会の中に監視勢力を作った方が早いでしょう。</div>
<div>　それに、これもご指摘のように、議員になれば、強力な情報アクセス権限を持てる。「国会議員の肩書を持ったジャーナリスト」っていうのは、最強のジャーナリストになりえます。<br /><br /><strong>●「質問趣意書」を最大限に活用する</strong><br /><br /></div>
<div>　たとえば、あまり知られていないかもしれませんが、議員は、よくテレビなどで映像の出てくる国会質問以外に、質問主意書という手段をとることもできる。これは、文書で政府に提出する質問状で、政府はこれに必ず一定期間内に回答しないといけないことになっています。役所にいろんな問い合わせをしても、たらいまわしにされたり、門前払いされたりしているフリージャーナリストや一般市民からみたら、夢のような制度です。</div>
<div>　ところが、大変もったいないことに、多くの議員はほとんどこれを使っていません。先日、僕も少し関わって、<a href="http://www.tokyopressclub.com/2012/12/blog-post_1.html">『国会議員☆☆☆データブック』</a>という本が出ました。これは、解散時点での全衆議院議員の国会質問の回数・分数、質問主意書の件数などをデータ化したものですが、このデータによると、質問主意書の件数は、年選挙以降の年か月で、最高回。ところが、回を超えている議員はわずか人しかいない。大半の議員はゼロ回です。政権にいた民主党の議員は、党の方針として質問主意書を制限していたこともあり仕方ないのですが、自民党や他の野党の議員たちにも、ゼロの人が大勢いる。政府の情報をなんとか入手しようとしている人たちからみたら、豚に真珠というしかありません。</div>
<br /><div>橘川:ギリシアは赤字で転覆しそうですが、第二次大戦後「ギリシアの奇跡」と言われるほど高度成長があった。今の破綻の原因は、公務員と福祉の社会負担が大きすぎるという面もあるのだろうが、それよりは、ギリシアがEUに加盟する時に成長を見込んで外資が大量の投資を行なってバブルになり、それを時の権力者が放蕩してしまったということのようです。今、ギリシアの若者たちが、そのお金が何処に流れたのかという調査を始めたと聞きました。日本も戦後あれだけ働いて稼いだのに、なんで、国家にこんなに負債があるのか、よく分からない。そうした過去をちゃんと調べて理由を聞いてみたいものだ。消費税増税は、その作業の次にあるべきだと思う。そういうことを調べてくれる政治家ジャーナリストがいれば、投票します。官僚装置にとっては、こんなに嫌な政治家はいないですね。<br /><br /><strong>●共産党のようなシビアなチエック機能が必要</strong></div>
<br /><div>原:僕が役所で仕事していたときも、嫌な政治家っていましたよ。明日○○議員が所管の委員会で質問に立つと聞いただけで、「ああめんどくさいな」と思うような人。</div>
<div>　たとえば、僕はむかし通産省から内閣安保室に出向したことがあって、周辺事態法を制定したときに担当したのですが、当時、もっとも厄介だったのが共産党の人たち。議員も党職員も、ともかくむちゃくちゃ勉強していて、「その説明は、昭和○○年の国会答弁と矛盾しているのでないか」とか「この説明と条文の規定が論理矛盾になっているのでないか」とか、重箱の隅をつつくようなところまで言ってくる。正直「もっともな指摘」ということもあって、そういうときは、国会答弁の中で少し補正したりしていました。</div>
<div>　このときに、僕は、共産党って絶対になくしちゃいけない政党だと思いましたね。ここまでしっかりと政府のやっていることを監視し、細部までチェックしつくしている政党はない。自民党なんて、「こんど質問に立つことになったので、質問を作って」と僕たちに頼んでくる人までいたぐらいです。共産党がなくなったら、日本の防衛政策は糸の切れた凧ですよ。</div>
<div>　それで、その頃から数年、僕は選挙の投票は共産党と決めていたのですが、ただそうはいっても、僕は共産主義者ではないし、共産党の主張には賛同できないことの方が多い。そこで、「共産党マイナス共産主義」の万年野党があったらいいんじゃないかと考えたわけです。</div>
<br /><div>橘川:共産党は地方議会でも地道な調査活動をしていますね。新聞記者で地方に回されたりすると共産党が提供してくれる情報が一番役立つという話は聞きます。それと、共産党と公明党以外は、離合集散が激しくて、議員と党の性格に一貫性がなくなってしまった。役所の方も、味方になってくれる議員とつきあいたいと思っても、選挙のたびに違う議員と付き合うのは大変。文科省のように長期的な観点からの政策一貫性が必要な役所は、公明党議員と仲がよいですね。公明党議員は、落選の可能性が少ないので、長く付き合えるからということらしいです。</div>
<br /><div>原:それはあるでしょうね。自民党や民主党は、「この人はいい政治家だな」という人ほど、すぐに次の選挙で消えてしまったりしますからね。<br /><br /><strong>●共産党の限界は、権力をとると監視機能を喪失すること</strong></div>
<br /><div>橘川:僕は東京の下町っぽい町新宿区四谷で生まれ育ったのですが、戦後の東京は古い地縁が崩れて、そこに登場したのが共産党と公明党でした。お互い仲が悪いのは、戦後ずっと勢力拡張争いをしていたライバルだからですね。共産党は共産主義、公明党は創価学会ですが、近所の人を見ていると、最大の魅力はコミュニティ作りだと思いました。どちらかに入れば、会合に出て友だちが出来るし、仕事にプラスになることもある。つまり、都市化の流れで、本来のコミュニティが崩壊した中で生まれた新しいコミュニティ創造運動だと思うのです。その最大のイベントが選挙だったわけです。僕は、どちらも、何かを狂信しなければいけないので、入りませんでしたが。僕の生まれた所は、創価学会の拠点である信濃町に近いのですが、どんどん地上げされていきました。信濃町は「信心が濃いい町」なので拠点に選ばれたという説が地元でありましたが笑</div>
<br /><div>原:ああ、狂信はいやですね。</div>
<br /><div>橘川:共産党や公明党にとって、選挙は組織勢力拡張のために重要なイベントなので、選挙になると燃えますね。2009年の民主党政権交代は、共産党が立候補者数を絞ったのが大きく効いたと思います。2012年の選挙は、共産党が昔のように全国の選挙区で立候補しましたから、反自民の勢力は苦しいでしょう。</div>
<br /><div>原:それに、政党が乱立しすぎ。自民党ボロ勝ちは当然の結果でした。</div>
<br /><div>橘川:共産主義のような外国の思想を信用しなくてよい共産党があればよいと思います。僕らは、共産党が昔は「ソビエトが開発する核兵器や原子力の平和利用は正しい」と言っていたことを覚えていますからね。でも、恐らく、若い共産党員は、そうした時代のことは何も知らないと思うので期待出来るかも知れません。共産党という名前を変えて、古い世代のガチガチの宗教的な共産主義者を排除すれば、すっきりとした新党になると思うのだが。それがダメなら、万年野党に入ってもらいましょう笑</div>
<br /><div>原:僕は、共産党の限界は、権力をとった瞬間に、監視機能を喪失することだと思います。まさに、ソ連や中国で起きたことです。日本の共産党は、あれだけすばらしい監視能力を持っていますが、万万万が一、政権をとったら、自らの信ずる道にまい進し、チェック機能は吹っ飛んでしまう。</div>
<div>　だから、万年野党なのです。万年野党の本質は、権力に立ち向かう精神。自民党が政権をとろうが、共産党が政権をとろうが、ともかく立ち向かうのです笑。<br /><br /><strong>●万年野党はつねに権力に立ち向かう</strong><br /><br /></div>
<div>　権力に立ち向かう精神は、古代文明以来、世の東西を問わず共通するものでしょう。中国共産党の創始者たちだって、もともとは、それが出発点だったはずです。ところが、政権奪取した途端に、万年与党になってしまった。そろそろ創業の精神に戻って、万年野党になってもいいんじゃないか笑。</div>
<div>　だいたい議会というのも、もともと、権力に立ち向かう機会を与えるための発明だったわけで、世界の議会で、これまで万年野党のような政党がなかったことの方が、むしろおかしいのです。僕の目標は、日本で万年野党をつくったあと、世界に万年野党を作ることですね。</div>
<br /><div>橘川:批判精神は批判しているから意味があるので、現実に対する責任を背負わせると、教条主義に走って自滅したり、頭が真っ白になって極度な官僚依存になってしまいそうです。都知事になった青島幸男さんが好例だと思います。今は、国民の多くは選挙には関心あるけど、投票する相手がいないというというのが実情でしょう。万年野党は、そういう層の受皿になりますね。政権を狙うわけではないから、党としてのマニフェストも要らない。立候補する政治家自身が、「自分をこのテーマを追求する」と言えば良い。主義主張はバラバラでよい笑。ただ、クォリティは守りたいですね。既存の政治家でも、党に入らないと政治が出来ないと思っていたり、質問時間が取れないから、いやいや所属している人も多いのでは。そういう人たちの受皿にもなりますね。</div>
<br /><div>原:政党が政策を約束するなんて無意味だと、もうみんな気づいてしまったんじゃないですか。選挙が終わったらそれっきり。あそこまで潔く約束を守らない政党が出てきてしまいましたからね。</div>
<div>　それに、選挙のとき、候補者個人はよくわからないが、「○○党の候補だから」という理由で投票することが、これまで多かったですよね。それも、意味をなさないことが判明してしまった。○○党の議員だと思っていたら、選挙のあとは、どんどん政党を変わり、またくっついたりしてわけがわからない。</div>
<div>　政党の唱える政策にもとづいて投票する、という枠組みそのものが崩壊してきている。これは、政党政治の危機ともいえます。歴史上、同じような場面はありました。戦前の日本では、一時的に二大政党制になったあと、急速に政党への信認が失われ、大政翼賛体制になった。ドイツもそうでした。政党不信は、皇帝的な存在への期待や全体主義的政治体制につながりやすい。そこを救えるのは、万年野党だけだと思います。<br /><br /><strong>●まずはインターネットでの選挙活動を可能にしよう</strong></div>
<br /><div>橘川:万年野党でも、普通に選挙に立候補したら、法定選挙費用が必要ですね。これが日本は図抜けて高い。小選挙区で300万円、比例で600万円ですよね。これは、日本に議会制民主主義が出来た時に、無産政党の労働者たちが大量に立候補するのは避けるために、多額に税金を払っている金持ち以外は選挙に立候補しづらくしたという時代のなごりだから、もっと下げるべきなんだと思うんですがね。</div>
<br /><div>原:カネのかからない選挙へということは、ずっと言われ続けていますが、こういうところに「結局、選挙はカネ」というのが残っている。</div>
<div>　たしかに、これをなくしたら、単なる受け狙いとか宝くじ感覚で立候補する人たちが大量に出てきてわけがわからなくなる、ということはあります。しかし、それなら、カネ以外のペナルティを考えたらいいと思いますね。たとえば、一定の投票数が得られず、不真面目な立候補だったと判定された場合には、以後年間、地域でのゴミ拾いなどの社会奉仕活動を年間時間とか。</div>
<br /><div>橘川:500時間というのが、なんともリアリティがありますね笑。万年野党が選挙に勝つためには、インターネットでの選挙活動が公認されることが一番重要ですね。まずは、この法案に積極的な既成政党を応援したい。インターネットの選挙活動がープンになれば、街宣車も事務所もなしで、パソコンの前だけで選挙活動が出来るから、選挙活動費がいらない。</div>
<br /><div>原:僕は以前から、インターネット選挙活動の解禁を主張してきましたが、その最大の眼目は、「政策本位の選挙」の実現でした。今の選挙は、街宣車で名前を連呼し、街頭演説でワンフレーズを叫ぶだけ。政策論で戦う選挙というならば、そういうことではなく、政策の内容をきっちり説明し、反論や疑問にも応えてもらわないと判断しようがない。そのためには、インターネットが一番よいツールで、それを禁じて街宣車とかだけ許しているのはおかしいでしょう、ということだった。</div>
<div>　ところが、思わぬことに、ネット選挙解禁が実現する前に、「政策本位の選挙」という枠組みの方が崩壊してしまった。今後、ネット選挙が解禁されると、昔ながらに政策を唱える既成政党が政策論争を戦わせると思いますが笑、万年野党は、その先に行ってしまっているので、ここでは蚊帳の外。万年野党の利害という意味では、ネット選挙解禁によって、埋没の危険性があるのでないかとひそかにおそれているのです笑。とはいえ、これは解禁するしかありません。もっとも政治への関心が高まる選挙期間中に、政治家がネットで発信できないなんて、こんな馬鹿げた規制はありませんから。</div>
<br /><strong>●選挙における無駄と無駄なルール</strong><br /><br /><div>橘川:原くんは、今度「選挙ボランティアの教科書」を作りましたよね。政治に関わるというのは、単に投票するだけではなくて、選挙ポランティアにも積極的に参加することが必要ということですね。特に若い人たちは。</div>
<br /><div>原:そうです。選挙への参加というと、一般には、立候補か投票かを思い浮かべます。立候補はあまりにハードルが高いし、投票はあまりに参加度合いが薄い。そこで、第三の道として、自分が支持できる候補を探し出して、選挙ボランティアとしてサポートする、という参加の仕方をもっとやったらいいんじゃないかということです。</div>
<div>　ところが、そこで問題は、さっきのネット選挙もそうですが、公職選挙法で、こまごまとしたいろんなルールがあること。知らずにいると、うっかり法律違反をしかねません。たとえば、選挙事務所で、お茶は出してもいいけど、缶コーヒーを出したら違反って知ってます　「お茶かお茶菓子程度しかダメ」というルールになっているのです。</div>
<div>　バカバカしい話も多いのですが、そうはいっても、法律は法律。知らずに問題をおこしてしまったりするとまずい。そこで、選挙ボランティアとして参加する上で、最低限知っておくべきルールやお作法をまとめて、冊子にしたのがこの本です。</div>
<br /><div>橘川:選挙になると選挙のプロという人たちが活躍しますが、選挙のための情報が公開されていないということが問題ですね。こういう情報は義務教育で教えてもよいくらいだ。選挙シーズンになると、街角に選挙ポスターの掲示板が出来て、あれも設置や撤収費用が大変だと思うのですが、立候補者がポスターはるのもえらい大変な作業ですよね。あんなの無駄だと思うのですが、仕方がないとしても、専用業者が立候補者のポスターまとめて張りにいけば効率的なのでは。ポスターハリスターって、芝居のポスターを飲み屋を回って貼っていくサービスの会社がありますよ。</div>
<br /><div>原:無駄なことは多いですよ。たとえば、ポスターやビラに一枚一枚証紙を貼る。これは、ビラの枚数などに上限があって、これを担保するために義務付けられているのですが、膨大な作業。こんなことに時間をつかうぐらいなら、候補やボランティアたちが地域を回って、主張を説明して回ったり、意見・要望を聞いて回ったりする方が、よっぽど意味があるでしょう。ところが、これはまた、公職選挙法に「戸別訪問禁止」という規制があって、一軒ずつ回ったりはできないのです。</div>
<div>　まあ、馬鹿げたルールがたくさんあって、いろいろと変えていかないといけない現状ですが、それでも、選挙ボランティアとして参加してみることは価値が高いと思いますよ。</div>
<br /><strong>●インターネットが万年野党の候補者を培う</strong><br /><br /><div>橘川:21世紀の政党「万年野党」を立ちあげたいですね。具体的なロードマップは出来てますか?</div>
<br /><div>原:はい。日本での結党から、世界か国に万年野党を作り、三年後に世界万年野党大会を盛大に開催するところまで、工程を考え抜いてあります笑。まあ、こんなのは、やってみないと分からないでしょうね。</div>
<br /><div>橘川:原くんの構想の本質部分は分かりました。まだ世界に例を見ない、議会制民主主義そのものをイノベートする革命になるかも知れない。ついでなので、ちょっと長くなると思いますが、僕の構想も聞いてください。僕は1970年代から参加型メディアというものをテーマにして考えてきて、実践してきました。それは封建主義から議会制民主主義へと進化してきた流れの、次に来る社会のイメージをまさぐってきました。1995年に世界的なインターネットのビッグバンがあって、インターネット以前と以後の社会は、あきらかに違うものになるだろうと思いました。</div>
<div>　インターネット以前は、社会は現実の地理的環境の上で成立していましたから、地縁・血縁・学校縁・仕事縁みたいな現実的な関係性が重要だったと思います。社会全体を経営・運営する政治家は、こうした現実的な利害関係の代表として選ばれたと思います。</div>
<div>　もちろん、この関係性は、今だに重要なのですが、インターネット普及以後の、本格的な情報化社会においては、別の次元のコミュニティが成立してくるのだと思います。ネット環境でのコミュニティの成立過程を見てみると、最初はもちろん軍事なのですが、やがて大学の研究成果のデータベースが始まります。それぞれの大学がデータベース構築する。そして、アメリカの西海岸と東海岸の大学が回線で結ばれ、データベースの相互利用がはじまります。それを研究者たちが利用しているうちに、研究者同士がオンライン上で出会ってしまった。つまり、機械工学を研究している学者が、同じテーマのデータベースにアクセスしている者同士ということで、交流がはじまったのです。そこから、会議室ブレッティング・ボードというシステムが開発され、コンピュサーブのようにネット上のコミュニティを提供するサービスが始まりました。</div>
<div>　これが日本に輸入されて始まったのが、アスキーネットであり、ニフティサーブだったわけです。つまり、ネット上のコミュニティは「テーマを共有する者同士の情報交換の場」なわけです。ニフティの「フォーラム」というのは、そうした流れで発展しました。映画フォーラムは、映画を好きな人たちが集まり、マーケティング・フォーラムはマーケティングに関心のある人が集まりました。ここに集まる人たちは、地縁・血縁ではなく共通のテーマに集まる不特定のテーマ縁だったわけです。知らない人たちですから純粋にテーマを追求出来る面もありましたから、争いもありました。それらを含めて活性化していったわけです。僕もメディアマン・フォーラムのシスオペをしていました。メディアに関心のある人を集めたのです。</div>
<div>　それが1995年のインターネット爆発により、ニフティは衰退していきます。特別なテーマを持たない人たちが大量にネットワーク参加してきました。ニフティのフォーラムの一部は、2ちゃんねるに流れ、他方はMixiに流れました。Mixiは、友だちの友だちを集めてくるSNSですから、フォーラム的な活動は本質ではありません。そして、現在は、SNSの究極の姿としてのFacebookの時代になっています。</div>
<div>　僕は、この時代にフォーラムを復活させようと思っています。名前はライフワーク・グループにしました。ニフティの時代と違って、現在は誰もが自由に自分の会議室を作れる。シスオペが提出するテーマごとのコミュニティを作っていきたい。誰もが自分自身の関心領域とテーマをライフワークとして持つ時代だと思うからです。</div>
<div>　そして、ライフワーク・グループの活動に対して、さまざまな支援活動を行い、活性化していきたい。例えば、交通ライフワーク・グループがあって、交通に関心のある人たちを集めて情報交換や議論を進める。その成果は、出版したり、シンポジウムを行なって放送したり、具体的な交通政策としてまとめるようにしたい。その中から、日本社会の構造にまで問題を発展出来たら、そこから、万年野党の議員立候補者が登場するというのが、理想です。<br /><br /><strong>●「社会的ソフトウェア」の萌芽を感じる</strong></div>
<br /><div>原:そういうテーマごとのコミュニティで議論を通じて、リーダーが見出されていくというのはいいですね。</div>
<div>　民主党の議員には、労働組合出身の人がたくさんいます。「組合のいいなり」とか批判を受けることもありますが、それは別として、個人の資質という意味では、人間的魅力があり、能力も高い人が少なくない。あれは、組合支部の末端での活動以来、ずっともまれてきているからだと思います。末端での活動で「こいつはできるな」となると支部幹部に抜擢され、さらに上のクラスでもまれ、最終的にごくごく一握りの選ばれた人が「彼を市議会に送り込もう」とか「国会に送り込もう」というところまでたどり着く。厳しい選抜・育成プロセスを経ているのです。</div>
<div>　ほかの領域だと、そういうプロセスがなかなかない。これに代わる孵化装置になるんじゃないでしょうか。</div>
<br /><div>橘川:組合も貧しい時代は真剣に未来社会を考えていたと思いますが、豊かになって組合費も潤沢になってきた頃から堕落したと思いますね。組合を一つのフォーラムとして捉えると、面白いですね。</div>
<div>僕は、情報化社会という言葉を作った故・林雄二郎さんから多くを学びました。林さんは、僕の師であり親友でもありました。林さんが最初に情報化社会をイメージした時に、楽観的な希望と悲観的な絶望の両方を感じました。情報がオープンになって、誰もが自由に情報を扱えるようになるというのが楽観的希望。しかし、そうした環境が出来たら、人は勉強する意欲を失うのではないか、というのが悲観的な絶望。そして、お亡くなりなる最後の勉強会に僕も参加させていただきました。そのテーマは「社会的ソフトウェアとは何か」というテーマでした。システム的な情報化社会の姿は見えたが、果たして、その社会で生きるための人間の新しい倫理や方法は何なのか、という大きなテーマでした。林さんは、ついにそのテーマへの解が見えないまま、お亡くなりになり、僕らはそのテーマを引き継いでいます。その回答のかすかな気配が原くんの万年野党論に見えて気がします。</div>
<div>　つまり、情報化社会以前において、勉強とか情報収集は、ひたすら個人が自分自身を強くし、自らの商品価値を高め、権力を握るものとしてあったと思います。しかし、情報化社会以後においては、勉強の目的は、自分自身のためだけではなく、社会全体を強くし、商品価値を高めるものでなくてはならない。そうした社会全体を意識する人間を育てていくことが、林さんが言いたかった「社会的ソフトウェア」ということなのではないかと思いました。</div>
<br /><div>原:インターネットは、個人がいろいろな形で社会と接する場を作りました。この環境の中で、若い人たちと話していても、社会全体を意識する人は増えているように思います。そういう人たちが万年野党の基盤になると思いますよ。</div>
<br /><div>橘川:20世紀は組織と組織の戦いの時代だったと思います。企業でも国家でもシェア獲得争いだった。個人が世界にコミットするためには、何かしらの組織に所属する必要があった。21世紀の最初の戦いは、組織と個人との戦いだと思っています。インターネットは、個人が個人のままで生きるための世界的なツールなんだと思います。万年野党は「個人政党のネットワーク政党」となるのではないか。</div>
<div>とはいえ、現実は、一筋縄ではいかないでしょう。やれるところから、確実にやりましょう。まずは、中心になる仲間集めですね。主義主張は問わないから、問題意識が高くて突破力のある人たちが集まると良いですね。</div>
<br /><div>原:政治を近代の呪縛から解き放つプロジェクトとも言えるでしょうね。なんとか実現したいものです。</div>
<br /><br /></p>]]>
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                <dc:creator><![CDATA[橘川幸夫]]></dc:creator>
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            </item>
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                <title><![CDATA[ペニオク事件から広告の現在を考える。橘川幸夫]]></title>
                <description><![CDATA[<p>タレントがブログにステマ記事を掲載したペニーオークションの「ワールドオークション」の詐欺事件のことをきっかけに、広告とは何だったのかを考えてみた。</p>]]></description>
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                <pubDate>Mon, 17 Dec 2012 14:25:00 +0900</pubDate>
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                        <![CDATA[<p><div><span style="font-size:150%;"><strong>ペニオク事件から広告の現在を考える。</strong></span></div>
<br /><div>1.ペニオク事件</div>
<div>2.広告とは何か。</div>
<div>3.現代社会と広告</div>
<br /><div><strong>1.ペニオク事件</strong></div>
<br /><div>◇2012年12月7日にペニーオークション（通称ペニオク）の「ワールドオークション」の詐欺事件に伴い、ギャラをもらって自分のブログにステマ記事を書き込んだ芸能人が問題になっている。ステマはステルスマーケティングの略で、消費者に分からないように宣伝する技術。この問題には、インターネット時代の根本的な問題が横たわっている。</div>
<br /><div>◇ペニオクというのは、欧米で流行ってるオークションサイトで、商品はオークション側で用意し、入札単位で手数料がかかるので、1回で落札すれば激安で入手出来るが、購入希望者が多くて何度も入札すると手数料も多くなる。ワールドは、Botを使い、機械的に入札回数を多くして手数料を高くしていたようだ。</div>
<br /><div>◇ほしのあきや小森純などは、自分のブログで30万から40万円のギャラをもらってステマ記事を書いていた。アメブロではブログを活性化させるために芸能人にシステムを提供していたから、アメブロを舞台にした場合が多い。芸能人もインターネットの効果を認識して以来、積極的にインターネットを活用していた。中には自らの表現衝動からブログやTwitterを始める芸能人もいるだろうが、多くの場合は、新しい宣伝ツールとしてしか考えていなかっただろう。ブログやTwitterは個人の性格や感性がそのまま出るので、事務所の人間に代筆させたら、すぐにバレる。アメブロの場合は、本人が書いて事務所の人間がチェックをしているのだと思う。</div>
<br /><div>◇今回の事件は、事務所のチェックがなくて、タレント本人がブログの内容を管理している場合で起きたと思われる。タレントからすれば、財界人の宴席に呼ばれて、ご祝儀をもらってスピーチするような感覚だろう。事務所を通らない報酬で、請求書も領収書もない「とっぱらい」であれば税務署の調査が入るだろう。</div>
<br /><div>◇インターネットはテレビのように電波枠の既得権益がないから、誰でも情報発信できる。だから本来であれば、テレビタレントのような価値は意味がないのだが、やはり、古い価値観はまだまだ強力で、テレビの有名人はインターネットでも吸引力があり、インターネットで有名になってテレビに進出する者もいる。</div>
<br /><div>◇インターネットの情報は、基本的には全ての責任は発信した個人にある。テレビや雑誌などの旧来のメディアは、個人とプロダクションなどの事務所や発行媒体が責任を取る。タレントは純粋な個人ではなく、メディアビジネスのパーツの一つであり、個人の言動は事務所が管理している。今回の事件は、事務所に管理されていたタレントが個人の判断でビジネスをしてしまったことにある。</div>
<br /><div>◇これは、今後、電子書籍の発行ソリューションの簡易化により、旧来の編集者がいないところで表現を開始するであろう、多くの著者が抱えるリスクに通じる。これまでは著者は好き放題に書いても、編集者がチェックをして社会的にまずいと思う箇所については制限を加えていた。しかし、電子書籍になって、著者がそのまま発行者の時代になると、ペニオクのような危ない情報を平気で発信する人間が増えてくるだろう。</div>
<br /><div>◇しかし、だからといって、編集者や出版社が個人を管理する旧来のメディア体制が優れているとは思わない。組織の縛りを超えて、個人がインターネットや電子書籍で自分をあらわにしていく時代の流れは止めてはならない。その時に、旧来の組織や他の人間に守られていたタレント意識は捨てなければならない。単なるエンターティナーではなく、社会性を身にまとった表現者と編集者が一体となった存在が必要となるのである。アーティストとエディターを組み合わせて、アーディターとでも呼ぼうか。</div>
<div>　</div>
                            <a href="https://ch.nicovideo.jp/metakit/blomaga/ar23378">続きを読む</a>
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                <dc:creator><![CDATA[橘川幸夫]]></dc:creator>
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