ちょびの東京放浪記 その弐
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ちょびの東京放浪記 その弐

2015-05-07 19:32
    重い荷物から解放されてバスの中に入るとそこには怪しげな暗幕が窓を覆っていた。
    しかも指示された座席は通路側。少し窓の景色でも見て暇をつぶそうなどとなどと企んでいた僕には少しばかりショックな旅の始まりだ。

    まあ仕方がないかと座席に座ってみると驚くほどすわり心地が悪い。そのままでは首がつらいのでリクライニングを倒すと足がしんどい。普段横向きに寝ているので、体を横にすると今度は腰が痛い。いろいろ調整したもののどうやっても居心地良くはならなかった。






    車にはかなり慣れているつもりだったが、ものの数分で根を上げた。バス特有のエンジンの振動と運転中の揺れで体は常に緊張していた。なんとか体をリラックスさせようとするが、窓の外は見ることができないし、車内で暇つぶし出来るモノもない(スマホもゲーム機も本も何も持っていないのだ)。





    仕方なく用意していたお菓子でも(これだけは忘れなかった!)食べようと袋を開ける。が、どういうわけか、わずかな音のはずなのにバスの騒音をかき分けて袋を開ける音が響くのだ。ガサガサガサ・・・慎重に開けたつもりでも容赦なく他の客にその物音が伝わる。

    そんなこと気にしなければいいのだが、なんだか気になってしまって、食欲も失せてしまった。袋をそっと閉じて、静かに目を閉じる。目をつぶっても眠気は一向に起きない。

    車内のいろんな音がまるで耳元で鳴っているかのように僕の睡眠を邪魔する。旅はまだ始まったばかりだというのにすっかり意気消沈してしまった。なにせこの地獄のような忍耐の時間が10時間も続くのだ。気が滅入るのも仕方あるまい。

    2時間ごとにトイレ休憩があった。特に説明もなく休憩場所についたことだけが知らされる。自分が今どの辺にいてこれからどこに行くのか(まあ最終的に東京に行くわけだが)全くわからない。休憩が終わると車内の暗幕は完全に閉じられ、照明も落とされる。なぜか囚人輸送車でどこかの刑務所に護送中のような錯覚に捕らわれる。







    そんな中、いびきを立てて熟睡しきっている勇者がいた。暗闇なのでよくわからないが、バスに途中で乗車したけっこういい年をしたあの男性だろう。彼は乗車してすぐに眠りにつき、とうとう最後まで目を覚ますことはなかった。世の中には豪胆なものがまだまだいるという証しだろうか。羨ましい限りだ。

    豪胆さの欠片もない僕は、肩こりと頭痛と体中の痛みにただひたすら耐える。どうにかこうにか体が座席になじんできたころ、最後の休憩場所にバスは止まった。外はすっかり朝日が昇っている。体の疲れとは裏腹にすがすがしい朝焼けだった。時間は朝6時すぎ。

    いよいよあと1時間で東京に着く。当の昔に寝ることをあきらめた僕は気持ちを新たに
    ガタガタと体を揺らしてまだまだ元気があるぞとアピールするバスに乗り込んだのだった。





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