ちょびの東京放浪記 その六
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ちょびの東京放浪記 その六

2015-05-15 20:15
    四谷にやってきた。四谷怪談と聞けば話は知らなくともお岩さんの名前は誰もが知っている
    だろう。元禄時代に起った事件を元に鶴屋南北が東海道四谷怪談として歌舞伎にしたことで
    一気に知名度が上がった。





    ざっくり話を説明すると、夫に裏切られらた妻が殺された後に幽霊となって夫に復讐するという話だ。歌舞伎以外にも落語や舞台、小説、映画など様々な媒体で取り上げられ、そのバリエーションは無限ともいえる、今なお人気の怪談話だ。

    芝居や映画になると必ず騒がれるのが”お岩さんの呪い”である。上演前にお参りしないと(場合によってはしていても)関係者に病気や不慮の事故が起こるといった話は一度や二度聞いたことがあるだろう。

    最近も市川海老蔵氏主演映画「喰女(くいめ)」において市川海老蔵氏の自宅車庫に車が突っ込んでくるという事故が起きて話題となった。何とも恐ろしい話である。お岩さんの怒りは
    今もなお残っているのだろうか?

    さて、四ツ谷駅からほどなく歩いて(もちろんK女史の後ろをついて行って)閑静な住宅街の路地に入っていく。すると赤いのぼりが見えてきた。於岩稲荷田宮神社と書いてある。





    おお、ここがあの有名なお岩さんが祀られているのかと思ったが、それにしてはあまりに
    小さい社だ。斜め向かいには於岩稲荷陽運寺がある。どちらも四谷怪談のお岩さんを祀って
    いる。





    静かな境内にはお岩さんゆかりの井戸、お稲荷様、水掛地蔵、百度石などその敷地に比べ
    密度はかなり濃い。その一つ一つをじっくりと見て回る。その中に心願成就の石というものがあった。小さな入れ物に丸い石(叶石というらしい)が3個入っていて、それを大きな
    石の中央の穴に投げ入れて入れば願いがかなうという。

    叶石は3個で100円。この値段で願いがかなうのだ。やらないわけにはいかないだろう。
    地面に置かれた大きな石は足元から50センチほどしか離れていない。手をのばせば届きそうな位置にある。

    こんなに簡単に願いがかなっては申し訳ないなと思いながら、ひょいと叶石を一つなげた。
    ころころころ・・・心願成就の石の脇を虚しく丸い叶石が転がり落ちた。そ、そんな馬鹿な!
    この距離を外すとかありえん!

    ちらっと横を見るとK女史は境内を探索していて、こちらの失態には気づいていない。そっと
    地面に転がった叶石を拾い上げやり直す。しかし、K女史はその瞬間を見逃さなかった!
    「どうしたんですか?」と慌てふためいている僕に声をかけた。僕は仕方なくことの次第を
    報告した。K女史はどれだけ不器用なのかとケラケラと笑った。

    まだ二つも残っている。これくらいのもの目をつぶっていてもできるぜ。・・・緊張しながら慎重に投げた。コンと穴の縁に当たり、ぽちゃんと穴の中に納まった。あぶないいいいいい。当たり所が悪ければまた外に転がり出るところだった。

    最後の一投をほぼ真上から落とすように投げ入れる。ふう、今度はなんとかスムーズに
    入った。これほど緊張した石投げは今までもこれからもないだろう。緊張のあまり願い事を
    念じるのを忘れたくらいだ。





    お岩さんは一説によれば夫婦仲睦まじく田宮家再建に内助の功を尽くしたという。ここでは
    縁結びと商売繁盛の神様として祀られているのだ。歌舞伎人気の秘密の一つがこのお岩さん
    詣でにあるのかもしれない。

    お岩さんは呪いを恐れられて今日まで祀られたのではない。慕われて祀られているのだなあと
    ほっこりした気持ちで神社、お寺を後にした。

    ふと時間を見ると11時を過ぎている。これから中目黒まで足を延ばすとなると、少し困ったことになる。ホテルのチェックインを12時にすると言ってあったのだ。とてもじゃないが間に合わない。K女史は連絡を入れておけばいいんじゃないですか?と進言してくれた。





    じゃあそうするかと携帯を取り出して体が固まった。ホテルの電話番号を知らない。
    そんな事態になるとは考えてもいなかったので、どこかにメモしてるという訳もなく、検索できるようなものも持っていない。何度も言うがスマホなどというマジックアイテムをこちらは持ち合わせてはいないのだ

    K女史はそんなことだろうと思ったと、スマホで(マジックアイテムだ!)さくっとホテルを
    検索して僕に電話番号を教えてくれた。K女史が居なかったらどうなっていたことであろう。いそいそとホテルに電話を入れてチェックインが遅れることを伝えた。

    ホテルの受付はそんなことで電話するなよと言いたげにこちらの伝言を快く受けるとすぐに
    切った。まあいい、これで心置きなく探索が続けられるというものだ。四谷の福の神を
    お岩さんだとすれば、K女史は僕の福の神と言ってもいいだろう。

    だが、きちんと感謝の気持ちを忘れないようにしなければ、祟られてしまうかもしれない。
    気を付けないと!足どりも軽く僕たちはいよいよ中目黒へと向かう。



    消防署の屋上にヘリ。なんだか秘密基地みたいでわくわくする



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