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【第7位】プロが選んだ名作SF映画BEST100!【未来世紀ブラジル】
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【第7位】プロが選んだ名作SF映画BEST100!【未来世紀ブラジル】

2014-10-29 15:57
    つれづれなるままに名作SF映画ベスト100をご紹介させていただいております。
    今回は第7位「未来世紀ブラジル」です。映画の裏に隠された由来や意味をうまく書けたらなあと思っております。
    ランキングのソースはこちらhttp://www.timeout.com/london/film/the-100-best-sci-fi-movies-10-1?pageNumber=4





    【第7位】  未来世紀ブラジル (1985)
               Brazil

    監督 :テリー・ギリアム
       

    脚本 :テリー・ギリアム
       チャールズ・マッケオン
       トム・ストッパード

    音楽 :マイケル・ケイメン

    出演: サム・ラウリー:ジョナサン・プライス
        アーチボルド・"ハリー"・タトル:ロバート・デ・ニーロ
        ジャック・リント:マイケル・ペイリン






     個人の情報がすべて管理されている未来。情報省記録係の主人公サム・ラウリーは夢想することで窮屈な人生のストレスを発散していた。
     ある日、同僚のミスで無実の住人がテロリストと間違えられ逮捕されてしまう。上司の期待に応えるべく、ミスを訂正しようと奔走していたサムは、情報局で夢の中でみた美女とそっくりな女性と出会う。それは無実の住人バトル氏の隣人ジルだった。
     反政府運動の一員であったジルが逮捕されることを知ったサムは彼女を救おうとするが、
    ジムは殺されサムも逮捕されてしまう。同僚の手によって拷問にかけられそうな
    サムを颯爽と一人の男が助け出した。なんとそれは件のテロリスト、タトルだった。
     







     江戸時代末期、「ええじゃないか、ええじゃないか、よいよいよいよーい♪」とお囃子に
    合わせて踊る民衆がいました。空から御札が降ってきた、こいつは慶事の前触れだ!ついでに
    世直しもしましょうよ、と明治維新直前の政治の混乱を揶揄した騒動だというのは、なんとなく学校の歴史の授業で皆さんも習ったことと思います。
     もうなんでもいいよ!こうなったら踊りくるっちゃえーと半ば自暴自棄に民衆たちは踊り
    明かしたわけですが、今でも年に一度踊り狂っちゃう人たちがいます。ご存知ブラジルの
    サンバ、リオのカーニバル。老若男女とわず、朝から晩まで踊り明かす様子は日本人の私でも楽しくなってしまう素敵なイベントですが、そのサンバの起源はアフリカ。アフリカの奴隷
    たちが南米にもたらしたダンスでした。彼らもまた踊らなきゃ(人生)やってられなかったのです。
     大変前置きが長くなってしまいましたが、この映画のタイトル「ブラジル」はそこからとられたものです。映画の中でことあるごとに「Aquarela do Brasil」というブラジルのラテンミュージックが流れてきます。なぜサンバ(ラテンミュージック)が流れるのか?それは監督
    であるテリー・ギリアムの実体験から来たものでした。彼の監督第2作目「ジャバウォッキー」で訪れた鉄鋼産業で栄える街は、工場の煙突からはモクモクと煙が吐かれ、煤で
    薄汚れていたといいます。
     そのすぐそばにある海岸は驚くほど美しく、その町と海の異常なコントラストに、あるイメージが浮かび上がりました。薄汚れた町での生活から現実逃避するため海岸で日光浴する男性とラジオから流れてくるサンバ。それが映画「未来世紀ブラジル」のコンセプトとなったのです。その日光浴する男性とはテリー・ギリアム自身の投影でした。
     テリー・ギリアムは1940年、アメリカのミネソタ州で生まれ、多感な青春時代をカリフォルニアで過ごしました。そこでテリー・ギリアムは、戦後の冷戦時代に伴う赤狩りとその後の
    ベトナム戦争の苛烈な反対運動の制圧を経験します。体制側の無慈悲な鎮圧、そしてジャーナリズムの暴走。その経験で心底アメリカという国が嫌いになったテリー・ギリアムはイギリスへと渡り国籍を取ります。
     アートに興味のあった彼はイギリスでコミックやアニメの仕事を始めました。そしてそれがきっかけで今や伝説となった「モンティ・パイソン」の仲間たちと出会うことになったのです。モンティパイソンとはイギリスのテレビ局BBCが製作していたコメディ「空飛ぶモンティパイソン」のこと。この番組は時事ネタ、政治、宗教、哲学、などありとあらゆるものをネタに過激でブラックなジョークを連発する大人気コント番組でした(これが公共放送だというのだから驚きです)。そのモンティパイソンのオープニングアニメーションを担当したのがテリーギリアムでした。その独特のユーモラスでナンセンスで悪趣味なアニメは番組のトレードマークとして人気となりました。
     当初はアニメパートのみの担当だったテリー・ギリアムは徐々に番組の脚本に参加したり、役者として画面に出たりするようになり、モンティパイソンの重要な役割を果たすようになっていきました。そんな中、過激さが増す一方のモンティパイソンとBBCでトラブルが発生します。BBCが番組内容を厳しく検閲するようになり、勝手に編集したりカットされるようになったのです。これがテリーギリアムと”体制側”との戦いの始まりでした。
     監督第一作のモンティパイソンの映画化「モンティ・パイソン・アンド・ホーリーグレイル」では、映画業界からまったく相手にされず資金不足に陥り、撮影で使うはずだった城が
    スコットランドの環境局の命令で突然使えなくなるなどのアクシデントに見舞われました。
    この映画製作に多大なストレスを感じていたテリーギリアムが二作目の「ジャバウォッキー」のロケ地で見たイメージが”サンバを聞きながら美しい海岸で現実逃避する男性”だったのです。
     夢か現実かわからない世界で”体制と戦い破れる男”、”最初理解されないが最後に理解される男”を描くのがテリー・ギリアムが作る映画のパターンです。映画の主人公は全て彼の分身であり、彼の人生そのものを写し取っています。
     「未来世紀ブラジル」では主人公サムが口うるさい上司の元、必死に働く様子が描かれています。これはテリーギリアムの学生時代のアルバイトの経験が下敷きになっています。また、この映画の世界では文書がすべてで、文書(許可)がなければ何もすることができません。
    これは映画業界(特にハリウッド)を風刺したものでもあります。
     ハリウッドでは映画をつくるとき何をするにもプロデューサー、組合、国の”許可”を取らなければいけません。例えば撮影中、目の前によくわからない箱があったとします。もしそれがじゃまだからといって自分で”勝手に”どけることは許されません。ハリウッドでは箱をどける”許可”を取らなければ(あるいは箱をどける権利のある者に言わなければ)箱を移動させることは決してできないのです(極端だと思われるでしょうが、これに似たことは本当にあるのです)。
     そんな余りにも窮屈な世界で主人公は戸惑い、怒り、なんとかしようと反旗を翻したりしますが、結局”体制”という圧力に屈し、夢の世界へ主人公は逃避します。テリー・ギリアム本人は「未来世紀ブラジル」の編集をめぐってスタジオと戦い負けます。彼は戦いに疲弊し、
    体制に迎合した映画を撮らざるを得ない状況に陥ります(そしてそれが興行的に成功してしまうところがなんともモンティパイソンの描く皮肉とそっくりです)。
     彼が映画をつくると必ず大きなトラブルに巻き込まれました。「バンデットQ」(1981)は”興行的理由”で勝手に編集される。念願の映画化「バロン」(1988)はプロデューサーのずさんな予算管理で歴史的大赤字。「ドン・キホーテを殺した男」(1999)は度重なるアクシデントで製作中止。「ラスベガスをやっつけろ」(1998)では脚本家協会に糾弾される。「ブラザーズグリム」(2006)では制作会社社長と(また)脚本家協会と揉め2年も撮影が遅れたうえに赤字。「Dr.パルナサスの鏡」(2009)では主演俳優が撮影途中で亡くなり大幅に内容が変更されるなど、まるで神様がテリーギリアムに映画を作らせまいとしているかのようです。
     トラブルの多くはやはり体制側(スタジオや協会・組合)との対立が原因で、彼は常に映画を支配しようとする者たちと戦ってきました。その一方でそれは映画を自分の思い通りにする戦いでもありました。すなわち彼自身が映画を自分の手で支配しようとしていたのです。
     劇中サムはサムライの怪物と戦いますが、これは「Sam, You are I」(サムユアラーイ)のシャレです。「サム、お前は私だ!」つまり体制側とテリー・ギリアムが表裏一体の関係にあると示唆しているのです。体制側を憎んでいるにもかかわらず、自分もまた意図せずとも簡単に体制側に立ってしまうことの恐怖や、苛立ち、諦めはテリー・ギリアムの夢だか現実だか
    わからないという世界観によく表れています。
     理想と現実にいつも苦しめられてきた男テリー・ギリアムは「ええじゃないか」と世直しを夢見て踊る民衆の如く、あるいはサンバのリズムに合わせて自由が訪れることを夢見る奴隷のように、今日も自分が夢想する映画を作ることで、まあいいじゃないかこんな世の中でもと、
    自分を慰めているのかもしれません。



    さむらーい

     文章書くのって本当に難しいですね。作品の魅力が1ミリでも伝われば幸いです。朝晩、
    気温が低くなってまいりましたが、皆様、風邪などひかないようお気を付け下さい。私は馬鹿なので風邪など引きません。ベスト100もあとわずか、もう少しだけお付き合いください。
    それでは次回もお楽しみにー
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