映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」について
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映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」について

2019-09-01 19:04
  • 11

 クエンティン・タランティーノ監督作。1969年のハリウッドを舞台に落ち目の俳優とそのスタントマンの日常を描いた作品。



 落ち目のTV俳優リック・ダルトンは映画スターを目指すがなかなか芽が出ず苦心する。そのスタントマンであり大親友のクリフ・ブースはリックの事を懸命にサポートしていた。そんなある日リックの家の隣に映画監督ロマン・ポランスキーとその妻の女優シャロン・テートが引っ越してくる・・・・・

 レオナルド・ディカプリオとブラッド・ピットの2大スターが初共演したことで話題になった映画。
Wikipediaに「スリラー映画」と記述されていますが完全に「コメディ映画」です。ピークが過ぎ情緒不安定な元TV俳優とそれを必死に支えるスタントマンら1969年のハリウッドに生きる2人と1人の女優の運命が描かれます。この映画はタランティーノが一緒に仕事した年配の俳優とそのスタントマンから構想されました。

 バイオレンスな内容が多いタランティーノ作品に珍しく過激な描写は少ないです。登場人物に悪人が少ないのも異色かもしれません。ディカプリオ演じる落ち目の俳優リック不安になるとすぐ泣きわめいたり、子役の少女に褒められ涙ぐんだりとすごく情けないです。対照的にブラッド・ピット扮するクリフはリックにとって兄弟以上の存在で常にクールな非の打ち所がない良き親友。こんなにカッコいいブラピ見るのもファイトクラブ以来の様な気がします。

 タランティーノ自身が好きなものを全て混ぜ込んだ本作は当時のテレビ番組や映画が登場したり次々に名曲が流れきたりと60年代終焉のノスタルジーが詰め込まれています。観ているこっちもあの時代に引き込まれます。今回の映画は「レザボア・ドッグス」や「パルプ・フィクション」のようなものを求めている人には合わないかもしれません。1969年ハリウッドの日常を淡々と映していてストーリーもどこに向かっているか分からない内容になっています。タランティーノが愛する映画、俳優、音楽、カルチャーそして彼が過ごした少年時代の時代背景を知っておいた方がより楽しめると思います。


 
 60年代当時のアメリカではベトナム戦争に対する若者の反戦運動が起き、カウンターカルチャーそしてその中から既成の制度、慣習、価値観念に縛られることに反抗したヒッピー・フラワームーヴメントが生まれました。愛と平和、フリーセックス、東洋趣味と神秘主義に行き着いた末に始まったLSDなどのドラッグの流行、ロック黄金期・・・・。シリアルキラーが知られる前の時代なので街中でヒッピーの少女たちがのんきにヒッチハイクする姿が映画で登場します。

 そしてハリウッド映画界でも大きな変化がありました。ベトナム戦争の参入でアメリカ政府に国民が不信感と懐疑心を持ちました。そんな世相から勧善懲悪なストーリーとハッピーエンドが多かった以前のハリウッド映画から打って変わって60年代後半から反体制が体制側に反抗する、無軌道に生きる若者の前に不条理な現実が立ちはだかり破滅するといった「アメリカン・ニューシネマ」がヒットするようになります。特に不良俳優デニス・ホッパーピーター・フォンダが組んで制作した「イージー・ライダー」が1969年に公開されると、既存のスタイルではない低予算映画でありながら大ヒットし本格的なアメリカン・ニューシネマの時代が幕開けしました。

 そんな60年代の終焉に生きる俳優リックとスタントマンクリフは複数人の人物をモデルに作られたキャラクターとなっています。かつて西部劇のTVドラマで活躍したという部分ではスティーブ・マックィーン、バート・レイノルズ、クリント・イーストウッドなどなど多くの俳優を彷彿とさせます。因みにバート・レイノルズが演じたキャラクター「クイント」タランティーノ監督の名前の由来になっています(本作にレイノルズが出演予定でしたが撮影直前にお亡くなりになりました・・・・非常に残念です)

 そしてマックィーンやバート・レイノルズには相棒ともいうべきスタントマンがおり、大物コンビとして名を馳せていました。これらもリックとクリフのコンビの元になっており映画内の彼らも大物を目指しています。

 リックはアル・パチーノ演じるプロデューサーマーヴィン・シュワルツにイタリアのマカロニ・ウェスタンへの出演を推薦されます。シュワルツは実在の人物で実際に人気に陰りを見せた俳優をイタリアや日本映画に斡旋していた人物です。当時海外に出稼ぎに行く俳優は数多くいました。代表格はなんといってもドル箱三部作で国際的に人気になったイースト・ウッドが有名ですね。その他にチャールズ・ブロンソンがイタリア・フランス映画などに出演し海外スターの地位を築きました。バート・レイノルズもマカロニ・ウェスタンに出演しています。しかしこれらはあくまで成功例であって、海外映画に出るも成功せず落ちぶれていった元TV俳優ももちろんいました。



 今回の映画の舞台となった1969年という年、ヒッピーにあふれるアメリカ社会に衝撃を与える事件が起きます。それが「オルタモントの悲劇」「チャールズ・マンソン事件」です。この2つの事件は愛と平和のヒッピー・ムーヴメントに大きな疑念をもたらし、理想主義的な若者たちが現実に引き戻されヒッピーの時代が終焉を迎える一つの遠因となります。

 「オルタモントの悲劇」はローリング・ストーンズのフリーコンサート中に興奮した黒人の観客と警備をしていたバイク集団ヘルズ・エンジェルスのメンバーが乱闘を起こした末にナイフで殺害された事件です。40万人もの若者が集まったにも関わらず3日間1人も死人が出なかった「ウッドストック・フェスティバル」に対して、観客が暴徒化しそれを暴力でねじ伏せたうえ殺人が起き事故死含め4人が亡くなり多数の負傷者を出したこの事件はロック史の汚点となりました。

 「チャールズ・マンソン事件」チャールズ・マンソン率いるヒッピーのカルト集団「マンソン・ファミリー」が引き起こした残忍な殺人事件の事で、ワンス・アポン・ア・タイム...ではその事件の1つ「シャロン・テート殺害事件」を扱っています。

事件の詳細はこのサイトを参考して下さい。
https://www.madisons.jp/murder/text/manson.html

 ワンス・アポン・ア・タイム....では殺害される直前のシャロン・テートの何気ない日常が描かれます。そこにはドラマ性はなく1人の女性として描かれており、悲劇の側面でしか語られない彼女の別の部分にスポットを当てています。四苦八苦しながら生活するリックとクリフ、それとは反対に幸せの絶頂を過ごすシャロン・テートの日常が作りこまれたセットと和やかな雰囲気で明るく映し出されます。この映画にあるのは当時の暗いイメージのあるハリウッドではなくタランティーノ監督にとっての夢の時代だったハリウッドなのです。

 しかしそんな夢の時代に潜む闇「マンソン・ファミリー」の登場シーンでは雰囲気は一変し映画内に異様な空気が流れます。

 カウントダウンのように日にちが過ぎていき、後に起きる惨劇を知る観客たちの緊張感が高まっていきます。しかしタランティーノ映画が普通に終わるわけがなく超展開のクライマックスを迎えることとなります。そして何とも言えない余韻が残るラスト・・・・。今までタランティーノ監督の映画を観て「面白い映画を観た」と感じていたのが「良い映画を観た」と感想が変わりました。長年映画製作に携わったタランティーノ監督の集大成といえる作品だと思います。

 もちろん万人に受ける作品ではないです。事前情報ありきで観なければ理解できない映画です。しかし映画の本質を知ることができれば飽きずに2時間41分間あの時代のハリウッドを堪能することができるはずです。サウンド・トラックも名曲ばかりで最高!CD欲しくなりました!

 
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 2019年後半、ジョーカー映画やスコセッシ監督の新作などまだまだいろんな映画が楽しめそうです。そして問題作になりそうなスター・ウォーズの新作。前作の記事を書いた頃は賛否両論の中そこまで悪い印象はなかったんですがネットじゃ今でも叩かれてますね・・・・。まぁ批判されている部分は擁護しようがないです。ライアン監督の印象もいろんな発言で悪くなったし。処女作「ブリック」やブレイキング・バッドの傑作回を作りあげた彼はどこにいったのやら。

 なんだかんだ新作スターウォーズがどうなるのか気になるところです。頼むぞJ・J。




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他1件のコメントを表示
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リックがトルーディに慰められるシーンほんと情けなくてすき。パンフレットにある町山氏の評論の締めの一文もおしゃれですき。
7ヶ月前
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ミネソタニキ早く動画一覧許可してね❤︎
7ヶ月前
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ミネソタ兄貴の映画コラムはとても参考になります。今度観に行こうとしてたのでありがたいです。
60年代の落ち目の俳優が日本に出稼ぎに来ていたというのはよく知りませんでした、
そのおかげであの有名なCM「マンダム」が出来たのかと思うと人生どう転ぶかわからないと感じますね。
あと、ヒッピー文化は愛と平和を常に掲げてるものと思っていましたが、やはり社会を批判し無軌道な道を進んでいるとそこから過激な行動に走る人間が現れてくるということも起こりうるんですね。
チャールズ・マンソン事件のことを教えていただけたおかげで、映画をもっと理解して観ることが出来そうです。

あと、次の動画あくしろよ
7ヶ月前
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ミネソタ姉貴の違う面を見た気がする
7ヶ月前
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シャロン事件知らずに映画見に行ったからよく分かんなかったゾ…
7ヶ月前
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やっぱり高い教養あってこその面白い動画なんすね~
この映画気になってた
7ヶ月前
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久しぶりに映画動画つくってくれ。
7ヶ月前
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何かしながら流すのにいい映画だと思った(小並感)
ラスト付近は確かにクッソ草生えたゾ
7ヶ月前
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マンソンとシャロンテートといえばディアゴスティーニのマーダーケースブック創刊号で特集されてた!映画になったんですね気になります 
6ヶ月前
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「ワンスアポンアタイム」というだけあって往年のハリウッドを美化しつつ懐かしむ映画でしたね
特にラストの流れは本当はあの事件がこんなだったら良かったのに…というタラちゃんの願望のように思えました

あと動画作ってるのはミネソタ兄貴の娘だからコメント欄で急かしても意味が無いってそれ一
6ヶ月前
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