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こわい体験 「強かった(小並感。」
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こわい体験 「強かった(小並感。」

2014-07-14 03:30
    さぁ、初めましての方ははじめまして。Miruchiと申します。最近事故を一発トラックからもらいました。バイクを乗っていた私にはそれが充分怖い体験だったのですが今回はまた別のお話。「こわい体験」ということで、こわいお話の一つでもご紹介したいと思います。お題投稿は初めてなのでお付き合い頂ければと想います。

     口に手をすると、手が血で染まった。
     あれはそう、小学校の2年生の春先だったかな。私の両親は共働きで帰りはいつも夜遅かった。そのため私は放課後は地域の児童館に預けられていた。同じ境遇の子どもたちと毎日を日暮れまで遊んでいたのを覚えている。その日もいつも通りに帰路につく。
     私の家は東京都S区に住んでいた。都心といえど夜は薄暗く、街灯の無いところや電球の切れかかったところもよく目にした。狭い路地を車が私スレスレに追いぬくことも日常茶飯事だった。さすがに夜にはライトで後ろから車やバイク、自転車の存在は気づいたが事故も決して少なくはない。通学路には事故の目撃者を探す警察の立て看板がいたるところに立てかけてあり、見通しの悪い交差点には死亡事故多発の看板もあった。朝はスクールゾーン規制で車両は通行禁止となっているが学童保育の終わった夜はそうはいかない。そんな道を毎日独りで帰っていたのだ。

     私の家は7階にあった。建物の造りが独特で普段使うエレベーターのエントランスは地下にあった。ここは薄気味悪い。ここは薄暗く、電球を覆うカバーは日焼けで黄ばみ、透過率は悪くなっていた。向かいには鉄格子のポンプ室があり、中は暗くて様子が伺えない。覗き込む勇気さえ私にはなかった。このマンションは何かが出るには、充分過ぎた。狭いエレベーターに乗り込み7階のボタンを押す。ドアが閉まりモーター音が一定のリズムを刻む。7階に到着しても心が休まることはない。私の家は廊下の一番奥の角部屋。長い長い廊下を歩かねばならないのだ。マンションの管理は行き届いてるとは言えず、よく電球がきれていた。私は通学路より暗い廊下を毎日、独りで歩いた。

     家に入りただいま、と言う。返る言葉は無い。私には行って来ます、ただいまと言って返してくれる人が居たことがない。それでも私は毎日行って来ますとただいまを繰り返した。

     部屋の明かりを灯し、私はやっと落ち着くことができる。いつも通りランドセルを下ろし、手を洗う。うがいをする。寝室に赴き部屋着に着替えリビングへ。テーブルの上には置き手紙とフキンを被った皿が一枚。母からの手紙のようだ。「☓☓さんへ 今夜は早く戻れそうです。夕食はママが頑張ってつくるから、☓☓さんはおやつ食べてて待っててね♪ ~ママより~」毎日一言とイラストを添えて夕食かおやつを準備してくれる。どうやら今夜はおやつのようだ。

     フキンを取るとミ❍タードー❍ツのオールドファッションがふたつ。私はテレビをつけ、ドーナツを頬張る。しばらくして異変に気づいた。ガリッっと何かを硬いものを噛んだ感覚を感じたのだ。だが、気のせいかと思いもう一度口にした。するとまたガリッっと何か硬いものを噛んだ。気のせいで無いことを確信し、一度は口にしたものだが皿に吐き出し口を拭う。すると拭った布にはべっとりと赤いものが染み付いていた。幼い子どもでも見れば一瞬でわかる。そう、血だ。痛みはない。しかし口は真っ赤。テレビのバラエティで笑い声がする。まるで私を笑うかのように感じた。
     何故かまだ冷静だった私は何が合ったかを把握するためために洗面所へ向かった。口をゆすぎ、鏡の自分と目を合わせる。私が目の当たりにしたのは、いや目の当たりにできなかったと表現するほうが正しいだろう。血まみれの口元には前歯が一本、抜け落ちていたのだ。止血をすませ、吐き出したドーナツを解剖する。どうやら飲み込むことは避けられたらしい。乳歯が一本発掘することができた。
     まもなくして母が帰宅し、この惨状を知る。ひとしきり笑ったあとで一言、
    「そうかそうか、ドーナツが強(こわ)かったんだねぇ」と。

     最後までお読み頂きありがとうございました。ちなみにこれ、実話です。
     お題が「こわい体験」だったので、怖くかつ強いお話をと考えていました。自分で読んでも全く怖くもなんともありませんが、文章で怖さを表現するというのは難しいものですね。最初は落語の「まんじゅうこわい」をネタに創作でもと考えていましたが、幼少期のこわい体験を思い出し、書いてみました。

     普段は、といっても更新頻度はかなり低いですがバイクについて語ったりしています。興味がありましたら過去記事もどうぞ。それでは。
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