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  • 【クッキー☆SS】ぺらぺらロボットのぼうけん

    2021-03-08 20:181

     とある淫ク☆投稿者の電源の落ちたパソコン、
    たくさんの素材が入ったフォルダの中から、
    話し声が聞こえてくるでしょう。
     ひそひそひそ ぶつぶつぶつ……
     どうやら.aupファイルからのようです。
     ファイルの中では、美大落ちの絵で出来たブロックと、
    同じく球形のオブジェクトが話をしていました。
    「こんな薄暗いところはごめんだよ。すぐ隣に汚すぎるゲイポルノ男優の
    BB素材もあるし、早くこんな所からおサラダバーしたいなぁ」
    とブロックが言うと、
    「僕たちまだ編集途中なのにね」
    と球形の美大ボールが言いました。
    「あーあ、早くAviUtlの所に帰りたいな」
    とブロックとボールは、溜息を吐きました。
     すると、一番新しく保存されたばかりの足型のオブジェクトが言いました。
    「きっとすぐに見つけてもらえるよ。僕の造形にはとても時間をかけていたからね」
    「諦めるんだな」
    上のほうから大きな声がしました。一番古株の魔理沙の絵です。
    「あたしなんざもう半年もここにいる。つまり183さ。
    次に編集意欲が湧くときに開いて貰えるかもしれないけど、
    まあそれも運が良ければの話だな」
     すると、一番下にいたブロックが突然大きな声を出しました。
    「そこの長いオブジェクト君、君歩けるんじゃなかった?」
    「うーん。でも中間点の数値が変だから同じところを回っているだけさ」
     長いオブジェクト君はバレーダンサーのようにくるくる回って見せました。
     それを見ていたレイヤー1のブロックが、
    「それじゃ、僕がグループ制御で動かしてあげるよ」
    と言いました。
     「そうだ! みんなで一緒になればここから出られるかもしれない。
    私たちが体になるよ」
     他のブロックが言いました。
    「僕たち、目と腰になる」
    美大ボールが言いました。
    「そうすると……あたしは顔ってとこかな」
    魔理沙の絵が言いました。
     みんなが一緒になると——
     ペラペラ3DCGのロボットが出来上がりました。
    「さあ、フォルダから脱出だ!」
     カッタン カッタン
     カッタン カッタン
     ロボットは歩き出しました。
    「おや? 広いところに出たぞ。
    一体ここはどこだろう」
     見渡すと見覚えのある背景がありました。
    「あっ、見ろよ。僕達が保存されてた所だ!」
    と手が一群のフォルダを指さして言いました。
    「よし、登ってみよう」
     そのときです。何かが近づいてくる音がしました。
     BBの墓場素材を分割するため、一時的に保存するフォルダでくすぶっていた、
    77歳の肛門モロ感の親爺のクリーチャーBBです。
    「みんな、隠れて!」
     美大ボールが叫びました。
     錐変形した美大ボールはナナチの前に転がり出ました。
     ナナチが錐に爪をたてると、鋭い角が突き刺さりました。
     んなぁ~(>人<)おっぱい焦燥感
     77歳の肛門モロ感の親爺のクリーチャーBBはあわてて逃げていきました。
    「あー、よかった」
    「さあ、気を取り直して出発!」
     フォルダの頂上目指して登り始めました。
     腕の素材はしっかりフォルダにしがみつきます。
     足の素材は一歩一歩足を運びます。
     カッタン ギ―
     カッタン ギー
     カッタンタン カッタンタン
     ぱあーっと目の前が明るくなりました。フォルダの頂上に着いたのです。
    「わあ、ここだよ、ここだよ。僕が作られたのは」
     足のオブジェクトが言いました。
    「あっ、思い出したぞ」
     魔理沙の顔が言いました。
    「あたしゃ、このフォルダの中にいたんだ。
    この中にはとても美しい声の持ち主達の歌がよく流れていて、
    様々なファイルの中には美しい物語が詰まって、
    ひろーい世界が広がっているのさ」
    「へえー」
     みんなうっとりしました。
    「覗いてみよう」
    ぐっと身を乗り出したとたん——
     あっ!
     真っ逆さまに吸い込まれてしまいました。
    「ここはどこだろう」
     バラバラになってしまったみんなは、
    何が起こったのか分かりません。
     あたりはシーンと静まり返っています。
     そのとき——
    「あっ、こんなところにあった!」
     と大きな声がしました。
     カーソルがみんなを摘まみ上げました。
    「やったぞ。見つけて貰えたんだ」
    「僕達また編集してくれるね」
     それからは、楽しい毎日でした。
     球形の美大ボールは美大ドラゴンの胴になり、
    動画群の中でバッタバッタとビルを壊して回ります。
     錐変形した素材はベクターマシンの先端になったり、
    美大バイクのハンドルになったり。
     足のオブジェクトは様々なロボット素材で
    使いまわされたりします。
     美大ブロックは作者の大好きな声優達を乗せる
    乗り物の材料として。
     そうそう、魔理沙の顔は生まれ変わって、
    おもちゃ箱の素敵な顔になりました。
     みんなすっかり元通りです。
     ただ少しだけ変わってことがありました。
     時々電源が落とされ作者が寝静まると、
    誰もいない部屋のパソコンの中から、変な音が聞こえてくるのです。
     カッタン カッタン
     カッタン カッタン
    何の音でしょうね。


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  • 【クッキー☆SS】夢の話

    2021-03-05 00:44

     夢の話だ。
     目の前には薄灰色の土で出来た、靴跡や轍で押し固められ、
    その上傾斜がひどく、今にも滑り落ちてしまいそうな坂道があり、
    私は反射ベストを羽織り、誘導棒を握り締めながらも、
    軽々と登り進めていた。
     季節は多分夏だ。
     しばらくすると、炎天下の中、顔と背格好が全く同じの
    ヘルメットしか被っていない裸の男達が、パイロンとトラ柄のバーの奥で
    猫車で瓦礫を運んでいたり、ランマ―で砕石を平らに均していたりしていた。
     ここでいくつかの矛盾点が生じる。
     まず最初にこの夢を見始めた時、上目で坂を望むと、
    そこには途方もなく続いている道があり、人影どころか、
    遮蔽物一つ無く、その上に物でも置こうものなら、
    たちまち転げ落ちてしまい、工事作業なんて出来たものではない。
    しかし、それでも夢の中では、男達は活発に働き、
    私と同じ位高さの大岩や、砂埃に塗れた真っ黒なゴム板があったり、
    水の流れていない枯れた川の上には、鉄足場が置かれ、その上を渡ったりもした。
     ある一人の作業をしていた男が私に話しかけてきた。
    その男以外の作業員は皆一様に押し黙り、顔色一つ変えず、
    黙々と体を動かしている。不思議なことに交通整備で暇そうな男や、
    U字ブロックに座り缶コーヒーを飲んでいる男もいたのに、
    その男は土で汚れたツルハシを積んだ猫車を止め、わざわざ近づいてきたのだ。
    どんなことを話したか、内容はさっぱり覚えていないが、
    「気を付けてな」
    と別れ際に言っていたことだけが、頭にこびりついている。
     ここでもやはり夢特有の意識の違いが生じていたのだろう、
    その男ただ一人だけが、顔の表情を変え、感情があったというのに、
    そのことには全く触れず、会話を終えている。
     坂道を登りきると、海があった。
    海と坂道の間には、横一直線に丈の短い夏草が青々と茂っていて、
    畔が海を塞き止めている。何時か子供の時に夢想していたこと、
    そのままの光景が目の前に広がっている。
     畔を踏まないように、海に落ちないようにしながら、
    下を覗き込むと、その底の知れない黒々とした海面が恐ろしくなり、
    それをごまかすように、すぐさま遠くに浮かんでいる入道雲と
    人工的な色合いの空を見るため顔を上げる。
     ふと、今まで登ってきた道程を見てみたいと思い、
    シロツメクサを踏みにじりながら、振り返ると、
    そこには何も無かった。
     目を刺すような真っ白な空間を目の当たりにし、私はよろめく。
     夢の中の私が思ったことは、世界がこの小さな畦道と海しかなくなって
    しまったことに対する危惧だったような気がするが、
    それも今思うと中々見当違いな気がする。
     後ずさりして畔を踏んでしまい、靴を抜き取ると、
    そこからどんどん海が湧き出て、遂には地面にまで溢れてきた。
    ダムの決壊のように海水が地面を覆い隠し始め、私は走る。
     水はあの虚空の中に滝のようにほとばしっているはずだが、
    後ろも見ずに走り続けていて、あの水がどうなったかは分からない。
     そのうちに追い付かれ、私は海にのまれ虚空の中に落ちていった。
     目が覚めると、隣にはノエルが寝ていて、震える手で彼女の腕を握り、
    布団を深く被り、もう一度目を閉じて眠ってしまった。
     あの一人だけ感情を持っていた作業員の男は、
    誰とも喋ることなく、孤独の中で寒々しく生き続けながら、
    瓦礫を運んでいるだろうか。
     ラジオのツマミを弄っていたり、缶詰を開けていたりしていたり、
    ノエルと一緒に庭いじりをしている時に、そんなことを思う。


  • 【クッキー☆SS】クッキー

    2021-02-14 12:15

    「また来たの?」
     幼少期の頃からいちごは体が弱く、入退院を繰り返し、
    学校はほぼ休学というかたちをとり、
    まともに通えていない。ご近所で親同士がとても仲がよく、家族ぐるみの付き合いを
    ずっとしており、彼女とは姉妹のような関係だと私は思っている。
    今回は生死に関わる大手術のため、特別な病室に入れられ、面会の日は限られている。
    「今日はこの前失敗したやつのリベンジ、ワッフルです」
     味気の無い病院食ばかり食べているのは、むしろ心にとっては毒だ。
     実家がお菓子の材料屋である私は、よくお菓子を食べ、作り、
    いちごにおっそわけをしている。彼女は体つきから想像もつかない位、よく食べるのだ。
     本当は病人にお菓子なんてあげてはいけないけど、油や砂糖をあまり使わないように心がけ、
    すっきりとした味付けにすれば、少し位食べてもいいだろう。
    「おいしい」
     いちごはワッフルを手に取り、布団に欠片を落とさないよう、丁寧に頬張っている。
     一つ二つと口に入れていき、彼女は全て平らげた。
    「いつもありがとうね、にょん」
     あなたのお菓子は病院での唯一の楽しみだわ、と彼女は言ってくれた。
     次の面会日は3日後、手術前に会える最後の日だ。
     バイバイ、と病室を後にし、私は次のお菓子の構想を練るのであった。

    「娘は死にました」
     手術を翌日に控えたある日、彼女の両親は目に涙を浮かべ、彼女の死を告げた。
     私は混乱した。最後の会話を思い出そうとしたが、よく出来なかった。
    「どうして死んだの?」
     彼らの口から語らせるのは酷なような気がした。それでも私は知りたかった。
     にょんは2日前、病院に来る途中の横断報道を渡っている時に、
    車に轢かれた。即死だ。
     涙は出なかった。あまりに唐突だから、処理が追いつかなかった。
     彼らはにょんが病院に来る途中に持っていた小さな箱を手渡し、
    病室を去って行った。
     この小さな箱は彼女から十数メートル離れたマンホールの上の、
    バッグから出てきたものらしい。
     私はしばらくその箱の外観を眺めていた。
    やがて、真っ白で飾り気のない紙箱を眺めるのをやめ、箱を開けた。
     中には予想通り、お菓子が入っていた。クッキーだ。
     そのクッキーの上には小さく折られた一枚の紙があった。
     なんだろうと私は思い、その紙を手に取り、広げる。
     にょんの普段書く丸っこい字から、かけ離れ、
    白紙に黒く、力強く書かれていた。
    『生きて』