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▼ 2015.8.5号
▼ 『FOREST 島人通信』
▼ FOREST ISLAND
▼ http://ch.nicovideo.jp/morishimachannel
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▼ご挨拶
みなさま、いつもFOREST ISLANDをお楽しみいただきありがとうございます。
さて、次回の生放送では、FOREST ISLANDがついにニコ生公式番組に登場です!
これもひとえにリスナーの皆様、出演者・スタッフの皆様のおかげです。
本当にありがとうございます!
2015/08/08(土) 開場:21:50 開演:22:00
心霊界のジャンヌ・ダルク二宮歩美&FOREST ISLAND森島大輔が心霊スポットを生検証/ホラー生放送
http://live.nicovideo.jp/watch/lv230457937
そして、先週も告知させていただきましたが、8月16日(日)の『心霊スポット配信リレー』もお楽しみに!
『心霊スポット配信リレー』
開催日:2015年8月16日(日)
参加者(放送順)
金子丸さん 放送時間21:00~/0:00~(http://com.nicovideo.jp/community/co1567054)
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森島 放送時間21:30~/0:30~
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ゲッティさん 放送時間22:00~/1:00~(http://com.nicovideo.jp/community/co2269581)
↓
ZeNrAさん 放送時間22:30~/1:30~(http://ch.nicovideo.jp/ch2525458)
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ゆーたさん 放送時間23:00~/2:00~(http://com.nicovideo.jp/community/co2458547)
↓
ろっくまんさん 放送時間23:30~/2:30~(http://com.nicovideo.jp/community/co2146263)
どうぞご期待ください!
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★ FOREST ISLANDホラー劇場『タクシー運転手が見た幽霊』②
斉藤さんから聞いた幽霊の話が妙に気になり、私は再びその町を訪れた。
まずは警察に行き、事故のことを訪ねてみたのだが、関係者でなければ話せないとにべもない対応をされてしまった。
次に、斉藤さんが勤めていたタクシー会社に向かう。
社員が亡くなった事故のことであるから職員の口も重かったが、取材ということを極力匂わさずに聞き出したところ、どうやら坂道でブレーキが利かなくなる「ベーパーロック現象」が起こったことが原因のようだった。
そして私は事故現場を訪れた。平日であったこともあり、町は閑散としている。数日前の週末に訪れた際は、大勢の外国人観光客で賑わっていたのだが、今日は交通量も少ない。神社の向かいは観光バスや長距離バスの発着場になっているらしかったが、今は一台の長距離バスが停まっているばかりだった。
写真で目にした電柱の傍まで行く。黄色いテープが張り巡らされ、電柱に触れられる距離まで近づくことは出来ない。もちろん事故車両は片付けられ、掃除もされていたが、数日前に起こったばかりの凄惨な事故の爪痕を完全に消すことは出来ず、電柱には生々しい衝突痕が残り、表面は大きく削られていた。
家族か、あるいは友人や同僚だろうか、花や酒、タバコが供えられている。
花束も供え物も用意してこなかったことに若干の後ろめたさを感じながら、私は電柱に向かって手を合わせた。
近所に聞き込みでも始めようかと考えていると、一人のバスガイドの女性が歩いてくるのが見えた。発着場に停まっている長距離バスの添乗員だろうか。
女性は私の脇をすり抜け、電柱の前に立つと静かに手を合わせた。
その女性の着ているユニフォームに見覚えがあった。先ほど訪れた、斉藤さんの会社で歩いていた数人の女性と同じものだ。
そういえば、発着場に停まっている長距離バスの車体の色は、斉藤さんのタクシーのそれと一緒だ。同じ会社に勤めているのかも知れない。
顔を上げ、バスの方へと歩き出しかけた女性を呼び止める。
確認すると、案の定、女性は斉藤さんの同僚だった。
取材と言うと最初はあまり良い顔をしなかったが、斉藤さんの車を利用した乗客であることを伝えると、少しずつ話してくれた。
彼女の名前は新美さんといった。
新美さんの仕事は長距離バスの添乗員。この街を起点にし、東京や名古屋といった大都市を結ぶバスに乗務しているのだそうだ。
新美さんの話によると、斉藤さんは明るくて社内でも友人が多く、会えばいつも声をかけてきてくれた。
運転歴は三十年を優に超え、その間無事故無違反。何度も社内で表彰されている模範運転手だったそうだ。
「だから、斉藤さんがベーパーロックで事故を起こすなんて、考えもしませんでした」
新美さんはうつむいた。
ベーパーロック現象は、長い坂道を下る際に、ブレーキを何度もかけていると発生しやすくなる。防ぐためには、エンジンブレーキなどを使いながら降りる必要がある。
私が乗った時、斉藤さんは、間違いなくエンジンブレーキを使っていたはずだった。
「事故の原因に、心当たりはありませんか? 一度乗っただけですが、本当にすいすいと運転もされていて、この辺りの道も知り尽くしている感じで、ブレーキが利かなくなるような失敗をなさるようには思えないのですが?」
新美さんはかぶりを振った。
ずいぶんとショックを受けている様子だったが、それには理由があった。
彼女は、斉藤さんの事故の目撃者だったのだ。
「今でも信じられません。斉藤さんがあんな恐ろしい顔で……」
事故のあった時、新美さんはちょうど、団体旅行客をバスから降ろし、神社へと続く横断歩道を渡らせていた。
そこへ急に、遠くからタイヤのきしむ音と、クラクションの音が近づいてきたのであった。
新美さんが顔を上げると、一台のタクシーがカーブを曲がって坂の奥から姿を現したのが見えた。
「うちの会社の車だと気づいた時には、タクシーはもう坂を下りきっていました。全くスピードを落とす気配のないまま、私たちのいる方へと突っ込んできたのです。ほんの五秒にも満たない時間です。一瞬のことで、横断歩道にいた誰もが足がすくんで動くことが出来ません。大勢いましたので、斉藤さんが誰かを撥ねずに横断歩道を通り抜けることは出来なかったと思います。車は少しジグザグに動いていましたが、スピードが緩まることはありません。その時、開いていた窓から斉藤さんが顔を出しました。ひどく歪んで、怖い顔で……。あんな斉藤さんを見たことがありません。手を振り回して、叫ぶんです。『おおい、どけっ! どいてくれっ!』」
「ちょっと待ってください。今、なんておっしゃいました?」
ふと気づいて、話を止めた。
新美さんが怪訝そうな表情を向ける。
「『おおい、どけっ! どいてくれっ!』」
「その前です。手を振り回して叫んだっておっしゃいましたか?」
「ええ」
嫌な予感がした。
「どんな様子だったか、やってみてくださいませんか?」
訳が分からないという顔だったが、彼女はその時の斉藤さんの様子を再現してくれた。
「こうです」
新美さんは、右手で拳骨を握りしめると、振り回して見せた。
それはまさに、タクシーの中で斉藤さんが私にやって見せたのと同じ動きだった。
「もっと右手を振り回してた……?」
「はい」
「『ぶるんぶるん、ぶん回す』といった感じですか?」
若干の沈黙の後、
「……ええ」
その答えを聞いて、全ての謎が氷解した。
幽霊が示していたものは、死ぬ間際の斉藤さん自身の動きであった。
「それも一瞬のことでした。怒ったような、諦めたような、そんな表情で、斉藤さんは一気にハンドルを切りました。そして、この電柱へと突っ込んでいったのです」
斉藤さんの車は電柱で真っ二つに切断された。斉藤さんの乗った前部は宙を飛び、ひっくり返ってようやく停まった。
最後に新美さんが、嗚咽を堪えながら話してくれた。
「すぐに私は車のところへ行き、運転席をのぞき込みました。でも、見た瞬間にこれは駄目だと分かりました。斉藤さんの顔は潰れていました。真っ黒になって、誰だか分からないぐらいになってしまっていたんです」
<終わり>
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2015.8.5号
発行 FOREST ISLAND
発行者: FOREST ISLAND
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