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▼ 2015.10.10号
▼ 『FOREST 島人通信』
▼ FOREST ISLAND
▼ http://ch.nicovideo.jp/morishimachannel
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▼ご挨拶&お詫び

 

みなさま、いつもFOREST ISLANDをお楽しみいただきありがとうございます。

 

そして、誠に申し訳ございません。

 

おそらくお気づきの方もお気づきでない方もいらっしゃるかと思うのですが、当ブロマガの更新が9月16日以降、ストップしておりました。

 

言い訳なのですが、DVD化のための編集作業と会社の他の業務に忙殺されており、ブロマガの更新まで手が回りませんでした。

 

ようやくそちらの件が落ち着いて参りましたので、誠に勝手ではございますが、これから先、お休みさせていただいた分を増発という形でお送りしていければと考えております。

 

お付き合いいただければ幸いです。

 

さて、先日、9月末にようやく、缶バッジプレゼント企画の発送を行わせていただきました。

今日現在、返送などの形で戻ってきたものはございませんので、全て届いたかなと安心しておりますが、万が一、お申し込みをされたのに届いていない場合は、チャンネルへのお便りあるいは株式会社もりしまHPのお問い合わせページよりご連絡くださいませ。

http://www.morishima-pro.com/form1.html

 

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        FOREST ISLANDホラー劇場『神社の肝試し』③

 

隆介くんが帰ってくるのを、みんなほとんど黙ったまま待っていた。

明らかに雰囲気が変わっている。

 それまでは、待っている側にはそれなりに余裕があった。

 冗談を言う者もいたし、笑い声もあった。

 今は違う。

 みんなが黙ったまま、視線を隆介くんが消えていった墓地へと注いでいる。見えないが、その先には神社がある。

 一度だけ、一人の男子が、「なあ、扉が開いていたなんて嘘だろ?」と翔くんに尋ねたが、青ざめたままの翔くんの表情を見たきり、黙ってしまった。

 それからは完全な沈黙である。

 風が吹くと、周囲の木がざあざあと音を立てる。カラスが気味の悪い声を上げて鳴く。

 それらの音が時おり静寂を破って聞こえるばかりで、翔くんたちは重くのしかかる不穏な空気にじっと耐えていた。

 時間の感覚が失われたのか、翔くんにはそれが20分にも30分にも思えた。

 やがて、墓石の隙間から小さな光が漏れ、それが段々と大きくなって、全員が安堵したのか張り詰めた空気が和らぐのと同時に、隆介くんが墓石の角から姿を見せた。

 翔くんは頬がゆるむのを感じた。おそらく全員がそうだったろう。

 しかし、当の隆介くんだけは硬い表情を崩さなかった。

「どうだった。隆介?」

 さっきまで情けない声を上げていた男子が、打って変わっておどけた口調で尋ねた。

「何もねえよ。神社の扉、閉まってたぞ」

 隆介くんは翔くんを非難するような口調で言った。

「ええっ、嘘だあ」

 思わず口をついて出る。

「風で開いてたとかじゃないの?」

 しっかり者の女の子が尋ねるが、隆介くんはかぶりを振った。

「上に上がって押してみたんだ。鍵もかかってた」

 翔くんは反論したかったが、それ以上言葉が見つからなかった。

「それに、鉛筆が無くなってたぞ。翔、お前の行った時はあったのかよ?」

「あったよ。3本ちゃんと残ってたんだ。そこから1本持ってきたんだもん。残ってるはずだよ!」

 翔くんが抗弁するような形になってしまった。

 隆介くんはまだ何か言いたそうだったが、それ以上は言ってこなかった。

「まあいいや」

 隆介くんが言った。

「シャイカーのカード、置いてきたからさ。加奈、取って来いよ」

 下を向いていた加奈ちゃんを含め、全員がハッとしたように隆介くんを見る。

 シャイカーとは、子供たちの間で人気の特撮ヒーローテレビドラマだ。

 隆介くんは、まだ肝試しを続ける気なのだ。

「ちょっと、もういいじゃないの」

 女子の抗議にも、隆介くんは動じなかった。

「みんな行ったじゃんかよ。加奈だけ特別なんてずるくね?」

 加奈ちゃんはまた下を向いてしまった。

「ねえ、もう帰らない?」

 助け船半分、本気で帰りたい気持ち半分で、翔くんも言ってみる。

「じゃあ、俺のカードどうすんだよ。翔、お前、代わりに行ってくるか?」

 バカにしたような隆介くんの発言にムッとして、翔くんは思わず答えていた。

「いいよ、じゃあ、行ってくる」

「あたし、行く」

 急に顔を上げた加奈ちゃんに、全員が驚いてそちらを見る。

「加奈、無理しないでいいんだよ」

 しっかり者の女の子も、困惑しながら声をかけるが、

「大丈夫、行く」

 泣き出しそうな表情ではあったが、そう言われてしまうと、もう誰も止められる者はいなかった。

 加奈ちゃんは、懐中電灯を受け取ると、恐る恐るではあったが、墓の奥へと進み、角を曲がると見えなくなった。

 加奈ちゃんが帰ってくるのを、みんな緊張して待っていた。

 隆介くんさえも軽口のひとつも叩かず、じっと加奈ちゃんの消えた方角を見つめていた。

 

 そのまま、加奈ちゃんは消えてしまった。

 20分が過ぎても一向に戻らない加奈ちゃんを心配し、全員で神社まで向かってみたが、加奈ちゃんを見つけることは出来なかった。

 隆介くんが置いたはずのカードも消えていた。

 大人が呼ばれ、警察が呼ばれ、町中を挙げての大騒ぎとなったが、加奈ちゃんの行方は分からなかった。

 にもかかわらず、加奈ちゃんの失踪は、なぜかあまり公になることはなく、警察も公開捜査には踏み切っていないとのことであった。

 そんな中、鍵のかかった神社の本殿に、加奈ちゃんが持っていたハンカチだけが残されていたという噂が、どこからともなく流れてきた。

 その噂が嘘か本当なのか、翔くんは教えてもらえなかった。

 翔くんはどうしても、あの開いていた拝殿の扉のことが忘れられないそうである。

 そのことが、加奈ちゃんの失踪に関係があるような気がするのだそうだ。

 そして、「あたし、行く」と急に答えた時の加奈ちゃんは、既に何かの見えない力によって導かれていたのではないかと思えてしょうがないと、翔くんは語ってくれた。

 長野県I市の落合加奈ちゃんは、今も行方不明のままである。

                                  <終わり>


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              2015.10.10号
              発行 FOREST ISLAND
              発行者: FOREST ISLAND
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