『君の名は。』江川達也氏の「プロから見ると全然面白くない」は面白い
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『君の名は。』江川達也氏の「プロから見ると全然面白くない」は面白い

2016-10-07 03:39
    漫画家であり、いまやおそらく毒舌コメンテーターとしての方が有名であろう江川達也氏のテレビでの『君の名は。』批評が見事に燃えています。

    江川達也氏 「君の名は。」に持論「プロから見ると全然面白くない」
    http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161006-00000114-spnannex-ent

    「(映画に対して)何のプロなんだよ」とか「プロ漫画家の総意みたいに言うのやめて」という反応が多いようです。そこは「物語を作るプロ」ということだろうとは思います。

    漫画をあまり読まないぼくですが、江川氏の『まじかる☆タルるートくん』と東京大学物語』あたりはいくらか読んだ記憶が。東京大学物語』序盤の、知能とプライドと性欲が飛び抜けてスゴい主人公が現実と妄想の間でゴタゴタする感じが好きでしたが、中盤でドラゴンボール並にエロのハイパーインフレが起きたあたりで挫折した覚えがあります。

    それは置いといて批評の中身ですが、炎上ポイントはここです。
    「これは売れるなと思いましたけど、プロから見ると全然面白くないんですよ。作家性が薄くて、売れる要素ばっかりぶちこんでるちょっと軽い作品」
    炎上するよねって内容ですが、個人的にはこれはおおかた正しいと感じています。内容は映画『転校生』以来すでにお馴染みである「男女入れ替わり」ものを、現代の通信技術を絡めてひねったもの。問題が問題を呼びつつ、ひとまず解決が見えたと思ったら裏切られ、最終的に丸ごと全部解決するというアメリカの映画やドラマのような明快な展開。主人公は特に社会的な課題を背負ってはいないし、犠牲の伴う二者択一の判断で葛藤するようなこともなく、順にタスクをこなして行きます。綺麗に行き過ぎて現実的ではない。そこに「現実に起きたら絶対シェアしたくなるような出来事」とか「息をのむような美しい景色」とか「実在するリアルな街並み」とかが溢れている。
    ずっしりと骨太なテーマは無いのです。ジブリ系のスタッフが入っていることも話題になりましたが、別に宮崎アニメ的な「人の業」とか「大きな時代や社会のうねりに翻弄されながら成長する」みたいなものも無いです。その代わりに、上記に上げたような要素が的確に配置されていて実に爽快。友達や恋人と一緒に観に行って、帰りに喫茶店で絶対ケンカになったりしない感じ。見た後に何を食べても美味しいなと。
    番組内でもスマホ世代に向けて作られた作品であることが述べられていますが、個人的にはは、最終的に視聴者に判断を仰ぎつつ答えが曖昧なままの物語より、明快な方が好まれる傾向が強くなったとは感じます。これは検索以前・以降という点と、1対1よりも集団として多くの人とコミュニケーションを取る手段が増加したことなどが影響しているのではないかと感じています。感想があまり長文になるような映画はあまり求められないんじゃないでしょうか。

    ちなみに江川氏が番組内で言っていた「(批判が許されないことについて)ある種ファシズム映画」とか「よく出来たものを作っている、商売として」という文言は、ある意味「売れる要素」的な発言だなと思います(笑)。ネット上では炎上していますが、実際の番組内では「きれいーすごいー的な大絶賛派vs分析的ダメ出し」という構図の後者的なポジション取りであって、ワイドショー商売としての批判だと一見してわかるライトな感じでした。

    今回『君の名は。』の中身にはふれませんでしたが、いろんな仕掛けが上手く出来ていて面白いので、そういう視点で観に行ってみるのも良いですよ。
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