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僕はたいした理由もなく君の手を握る 第十一章
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僕はたいした理由もなく君の手を握る 第十一章

2014-04-27 19:10

    ある日の朝、儀礼用の正装に着替え広場に集合せよ。との通達があった。訓練所の中の空気は引き締まり、皆、ついにこの日が来たかという感じで何が行われるかを察していた。訓練所の同期たちが広場に集合すると、課ごとに整列させられた。

     周りを見渡すと学舎で一緒だった懐かしい面々の顔が至る所に見受けられた。

     前列に並ぶ凛々しいマントを付けたエリート集団の中にはレーニャもいて、敬意の念を覚えつつも、別世界の人間であると私に思わせた。

     しばらく待っていると上官たちが仰々しく表れ、形だけは格式高いセレモニーが始まった。

     つまり戦地への配属が決まったという事だ。

     私たちは正式に戦闘に参加することになる。

    「貴様らは本日をもって、正式な魔法少女となる――」

     大声で、上官の演説が始まった。威勢の良い戦意高揚の言葉と、今までの訓練のねぎらい、これからの振る舞いなどの注意事項なんかが話されていた。

     セレモニーが終わると配属先が知らされた。私の所属する部隊は西方に向かうルートに配属されることとなった。仲間たちは配属先を噂し合っているが、どこに配属されようと死ぬときは死ぬし、生き延びるときは生き延びる。そういうものだ

     それでも、気になる人は気になるらしく、至る所で配属先について噂し合う声が聞こえていた。


    ―――


     装備

     通信機材

     そして、私たち。

     私たちは幌(ほろ)付きのトラックの荷台の荷物だった。一人の人間でありながらも消耗品と同義であると実感させられる。輸送用のトラックも安全ではない。いつ空の上から、マジカルステッキに乗った敵の魔法少女が攻撃してこないとも限らない。

     とはいっても、皆気楽なもので、許されるギリギリのラインで、おしゃべりをしたりして暇をつぶしていた。娯楽があるわけでもないので、何かをして気を紛らわせたり暇つぶしをしないわけにはいかなかった。

     普段より皆、気が張っているわけだから、気晴らしが無いと士気が上がらない。皆、そのことを理解していた。だから、多少は目を外したところで咎める者はいなかった。

     そうして基地についたのは二日後の事だった。

     すぐに荷物を運びこむ作業と、必要機材の組み立て、そして私のような通信半の人間は魔術電信の設備を整備させられた。

     上官からは、敵はそこらじゅうに隠れているから、市街地に入ってもむやみに住民と交流するなとの命令。

     人は入れ代わり立ち代わりという感じて、流動性が高く一定ではなかった。前線から戻ってくるものもいれば、別部隊から応援として派遣されるもの、それに加え使い魔も派遣されてきた。場合によっては単独行動の必要があり、使い魔はそのサポートとしての役割が与えられていた。

     皆見た目は、小動物や訳のわからないぬいぐるみのような姿だったが、大半は魔力を持った男性である。表向きの言い訳として、恋愛感情を持たせないためだの、性暴力防止だのの大義名分があるが、実際は、実体化させないことで余計な力を持たせないという側面と、こちら側に都合よく管理するという側面が強かった。

     契約もあくまでも、こっちが主でありこちら側の負担は少なかった。

     配属後は、当直、伝令、雑役を中心とした仕事をこなした。通信班なので魔術伝信の定時連絡の受信と待機。戦闘というのは、最後の手段であって、あくまでも基本は待機だった。

     とはいっても、毎日の定期便のごとく的の魔法少女が基地周辺を旋回してくる状況で気は抜けないのだが、不思議なもので、数日経つと当たり前の風景の一つとなってしまった。

     人を殺したこともある。

     進軍中に、通りかかった民間人たちをとっさの判断で殺めた。慣れないと、みんな一斉に弱い者いじめのように集団で攻撃する。何よりも恐怖と生き残ろうという真剣さがそうさせた。

     数日は罪悪感が残っていたが、嫌な話だがしばらくすると慣れた。現実逃避なのか、何なのかよくわからないが、段々と他人に対する興味の様なものが薄れてくるのだ。

     戦場での行動に慣れてくると、行動に無駄が減って、表情も昔ほど豊かではなくなってくる。毎日のようにストレスにさらされているためだ。人によってそれが外に向かうか、内に向かうかの違いで皆、蝕(むしば)まれていた。


    ―――


     慣れてくると、魔術伝信の癖で、誰が術者なのかとか発信元かわかってくる。繰り返し送受信をしていくうちに全体の戦況も読めてきた。どちらも圧倒的な力で殲滅することは不可能とわかっているため、落としどころを探して休戦に持っていきたいらしい。

     ただ、今の様子じゃ停戦までに時間はかかるであろう。それは確かだ

     戦場では、自己判断がモノを言う。

     奇襲があれば、上官の判断は当てにならないし、素直に守ったら逆に死んでしまう事がある。それに最初に上官を狙い、部隊の士気を低下させたり無力化させようとする輩もいる。

     さらに言えば、防寒着が必要な場所でフリフリした露出の高い魔法少女然とした服装をした奴は本物のバカか、相手にしたらヤバい、かなりの強者かのどちらかだ。そういう奴は嵐のように通り抜け、部隊を全滅させる。

     私たちはそんな奴等と戦っているのだ。常識的な感覚は疑うくらいの方がちょうどいい。それが生き残る秘訣(ひけつ)だ。


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