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Peilaさん のコメント


登場人物の名前、現実・仮想世界でのそれぞれのキャラ立ち、
もしかして・・!

なーんて妄想しながら楽しめました。
4人でどうやって書いてるのかも気になりますね!
No.35
132ヶ月前
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俺はちりちりと焼け付くような緊張感を感じ、身をよじる。途端、全身に痛みが走った。何故か身体中が痛い。今まで体験した事の無いような痛みだ。少し唸りながら力を振り絞り、右目だけわずかに開く。   ここは……どこだ?   これがゲームの世界なら俺の頭にはクエスチョンマークが二つ位並んでいたに違いない。右目から見えるのはこの世の終わり、または炎に包まれた〝地獄〟のような景色で、鎧を着た騎士とじいさん、直立してる猫、屈強な男が俺の周りを囲んでいた。突然の出来事に、何も思い出せない俺は右目だけきょろきょろさせる。 「おい、大丈夫か? かなり傷が深いからな……治癒呪文も追いついていない……しかしこんな場所でのんびりする訳にもいかなさそうだ」 そう騎士がぼやいた瞬間、真っ赤な空に数え切れないぐらいのドラゴンが猛スピードで飛んでいった。一瞬、全員空を見上げて構えたが、ドラゴンが去っていくと安堵の表情を見せた。 「もう魔力も殆どない……治癒呪文は続けているが、次に致命的な攻撃を受けたらお終いじゃな……」 「一巻の終わり、ってやつかい? どうせ死ぬなら魔王と相討ちして死にたかったぜ。まさか魔王城までたどり着けないなんてな」 じいさんと猫が……猫がしゃべった! ともかく、一人と一匹がそう言うと、騎士は一瞬何かを言いたそうだったが表情を曇らせて言葉を飲み込んだ。 どうでも良いが、何故そんなに鎧を着込んでるのに顔はガードしないのか? 何故猫が立ってしゃべっている? 毛皮があるのに服まで着てるぞ? この景色も相まって凄く熱そうだ! 騎士と猫に対してゲーム特有のメタな質問を投げかけようとしたが、何故か俺の口は別の台詞を喋り始める。 「みんな、大丈夫だ! もう動ける。左目が開かないけど……傷は大分癒えて来たようだし……」 もう動けるって、めっちゃ身体痛いですけど……。そんな俺の意思に反して身体を起こそうとした瞬間、案の定ありえない位の激痛が走る。 「あ…っつ! ぐ……」 あーこりゃダメだ、いけませんよ。全然動けません。思わずカッコイイ感じのうめき声を出すほど、未だに激痛が続く。 一瞬ではあるが、身体を起こしたときに周りの状況が見えた。まず第一に俺は勇者っぽい格好をしていた。勇者っぽい格好がどういう格好なのかという説明は難しいが、ゲームなら一目瞭然で主人公だと分かりそうな格好だ。何故こんな格好をしているかはまったく思い出せない。しかも全身血だらけだ。もしかしたら既にあの世なのかね? 良く見ると他の四人もボロボロだし、 RPG なら全滅寸前という状態だ。 ここでもう一つ気付いた事がある。喋っているのは俺の筈なのに、その感覚がまったくない。幽体離脱をして、霊魂だけこの傷だらけの勇者(仮)に入っているような感覚だ。 「まだ起き上がるのは無理だ、マコト…だが一旦この場を離れよう。ここは開けすぎているし目立つからな。俺がマコトを背負うから治癒呪文を続けてくれ。警戒を怠るなよ。」 あれ? 俺の名前は合ってるぞ? そう、俺の名前はマコト。魔王に立ち向かう程強くもないし、ドラゴンなんてゲームの中でしか見たことがない、どこにでもいるただのサラリーマンだ。……のはずだが、どうしてこうなった? 騎士が呻く俺を担ぐと、五人でよろよろと移動を始めた。普通こういうピンチな時は足早に逃げるもんだと思うけど、それすらままならない程このパーティは疲弊しているらしい。 「やばい、またドラゴンだ! 隠れろ!」 猫がそう叫ぶと、再び頭上にドラゴンが見えた。今度は獲物を探すかのようにゆっくり飛行している。数は六匹。凄く強そうに見える。まさにラストダンジョンに出そうなモンスターだ。このシチュエーションから察するに、俺達を探しているんだろうな……。そしてこういう時は…… 「しまった、見つかった! 降りてくるぞ! 戦闘準備だ!」 ほーら、フラグってやつだな。ゲームならパーティーが弱っている時こそ良くない事が起きるもんだ。俺自身が自分の意思で動いている気がしないから、なんだか他人事になっていたが……    その瞬間、俺は当事者になった。   「ぐごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉおおおおおおおおおぉぉぉぉぉおぉおおおぉぉぉぉ!!!!」 目の前に地響きを立てて降りてきた、山みたいにでかいドラゴンたちが、一斉に吼えた。他のメンバーはとっさに耳を塞いだが、俺は身体すら動かせずにまともに咆哮を浴びてしまい、激しい頭痛に襲われる。そして無音になった。 ああ、鼓膜が破れるってこういう事を言うのかな。絶体絶命にも関わらず冷静な俺は、身体も動かせないし耳も聞こえないならもうダメだろうと、半ば諦めた心境になっていた。ドラゴンって現実で戦うとこんなに迫力があるんだなぁとしみじみ思う。 「×××!! ~~~!」 俺を背負っていた騎士はこっちを向いて何かを話すと、突然後ろに向かって俺を放り投げた。他の四人はもう武器を持って臨戦態勢に入っている。無茶だ。 そう思った刹那……   ドカーーーーン!!!!   見た事もない位の爆発が六匹のドラゴンのど真ん中で起きた。大きな衝撃が身体を伝わり、激痛でまた呻いてしまった。ドラゴンとの間に距離があったからいいものの、近くだったら確実に巻き込まれていただろう。 芋虫の様に這いながら再度右目を開けると、既に目の前には猫と屈強な男は居なかった。爆風で生じた砂埃のせいで、近くに居るじいさんしか見えない。状況が読めないが、この隙に逃げれば良いんじゃない? なんて思うのがまさに俺らしい。 徐々に砂埃が落ち着くと、逃げない理由が分かった。逃げれないからだ。何故ならドラゴンはピンピンしていて、猫と騎士と屈強な男が CG 映像のような身のこなしで果敢に戦っていた。あの爆発で何ともないドラゴンにも驚きだが、ハリウッド映画のヒーローのように戦うパーティメンバーも半端ではない。 「やはりもう……魔力……ダメじゃ……」 杖をこうこうと光らせたじいさんの独り言が、くぐもった音で聞こえてきた。鼓膜は破れてなかったらしい。徐々に音も聞こえる様になってきた。もしかしたら先ほどの無音や爆発はこのじいさんの呪文だったのかもしれない。マジかよ、このパーティ凄く強いんだな。さっきまであんなヨロヨロだったのに。 もしかしたらドラゴンに勝てるかも、という一瞬沸いた希望は、戦闘開始からすぐに途切れた。たった今、騎士がドラゴンの前足の攻撃をもろに受けてしまい、吹っ飛んでからそのまま動かなくなってしまったのだ。 残った猫と屈強な男は何かを叫び騎士に駆け寄ろうとしたが、その隙を突かれ大きなドラゴンの前足で踏み潰されてしまった。現実ならぺしゃんこだろうが、屈強な男がドラゴンの足と地面に挟まれながらも両手を上げて耐えていた。 しかし、ここまでだ。騎士は動かず、じいさんの魔力は尽きた。猫と屈強な男も時間の問題だ。   ここで立ち上がるのが勇者ってもんじゃないか?   俺の頭にそんな言葉が横切る。第一俺は勇者なのか? この状況は? 傷だらけなのに立ち上がって何をする? そんな疑問をよそに、横たわりながらも腰の鞘に納まっていた剣を抜き始めた。   ああ、そうか、ここで立ち上がってこそ……。   とっくのとうに失くしたはずの、誰しもが憧れるヒーローへの思い。それが俺にもほんの少し残っていたのだろう。その瞬間、勇者の身体と俺の精神が同化したような気がした。劇中の人物になりきるように、現実ではありえないシチュエーションに対しての一切の疑問がなくなっていた。 「うぉおおおおおおおおおおおおおおお!!!」 あれだけ身体が痛かったのに、あれだけ血が出ていたのに、俺は剣を使って必死に立ち上がろうとしていた。勇者になろうとしていた。 そうだ。昔から俺は、勇者になりたかったんだ! 「いくぞおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」 俺は、立ち上がった。   ベッドの上に。     「……………………」 朝日が差す窓、鳴り止まない音の大きな目覚まし時計。漫画やゲームソフトが散らかった汚い部屋。紛れもなく俺の部屋だ。 「まぁ、夢ですよね。」 そうぼやくと、部屋のドアが突然開いた。まぁ何故開いたのかは分かっている。そろそろ出社の時間だ。 「あら、何してるのマコト! 朝から課長にアッパーカットをお見舞いする練習でもしてるの? そろそろ朝ごはん食べないと遅刻するよ!」 まーたつまらない日常が始まったんだな、と思った。何時もと違うのは、剣を持っていたはずの右手を上げながらベットに立っている寝ぼけた俺だけだ。 「いやぁ。朝一番のアッパーカットは気分が良いよマミー。すぐ下に行くから」 夢の内容を説明するのもメンドクサイし、ゲームのやり過ぎだと小言を言われそうなので、とりあえず誤解された通りアッパーカットの練習で手を打った。実際さっきまで見ていた夢もゲームのやりすぎだろう。正直俺が親なら、息子が朝っぱらからアッパーカットの練習をしていたら嫌だが……。   俺の名前はマコト。普通の人生を送ってきたただの一般人だ。漫画やゲームは人並み以上に好きだが、オタクって程でもない。 部屋を出て朝ごはんを食べ、支度を終えて時間通りに自宅を出発して会社へ。小学校からこの繰り返しを何度してきたか分からないが、それは誰でも同じ事だろう。 でも今日は変に現実味のあるファンタジーな夢をみたせいか、会社へ向かう途中の電車の中での妄想が少し楽しかった。あの時立ち上がっていれば、パーティはピンチを抜け出せたのだろうか? なんて夢の続きを考えてしまうぐらいには、俺はゲームが好きである。ゲームの中なら俺は主人公になれるし、次々に起こるイベントのお陰で退屈もしない。でも現実では自分は六十億分の一というちっぽけな存在で、何のイベントも起こらない退屈な日常を送るだけの毎日だ。いっそゲームの中に行きたい、そんな事を思っているのは俺だけじゃないはずだ。 夢の反芻であっという間に時が経ち、気がついたらもう会社に着いていた。いつもより若干早めの到着だ。残業疲れだか飲み疲れだかわからない表情の社員の群れに紛れてセキュリティゲートを通る。普段なら俺も彼らのような顔色をしているのだろうが、今朝に限っては恐らく晴れやかに見えるに違いない。 エレベーターで所属部署のあるフロアに移動し、自分のデスクに着くと、課長の手書きの付箋が貼られた書類が置かれていた。アッパーカットが炸裂するかもしれない。 パソコンの電源を入れてメールをチェックしていると、幼馴染で同じ会社に勤務する、友達のスズキに話しかけられた。 「よっす。そういえば明日久しぶりに四人でお前んちで遊ぶ約束してたけど、覚えてるか?」 覚えている。大学生までの俺なら遊ぶことに忙しくて忘れてしまうこともあり得ただろうが、社会人になると友達を自宅に招いてゲームをする、という約束自体が珍しくなる。単純に仕事で忙しくなる奴は多いし、そもそも時間が合わなくなるのが当たり前だ。遊ぶとしてもウィンドウショッピングとかカラオケなんかに行くのが普通だろう。しかし、明日の約束をしたのは、同じくゲームが好きな奴らばかりだ。何年ぶりかは分からないが、中学時代から遊んでいる面子で集まるのだ。プチ同窓会みたいな形で俺の家でゲームをしようぜ! と企画したのが発端だった。 「覚えている。オーボエのテイル、つまりオーボエの尾っぽだよ。わかるか?」 「まったくわからん。何言ってんの、やばいなお前。とりあえず明日の午前中にお前んち集合でいいんだよな」 「ああ。オーボエのテイルだからな。俺んちに集合だぜ」 スズキはそれだけ聞くと、俺のギャグを総スルーし自分のデスクへと戻っていった。なんてクールな奴だぜ。ちくしょうめ。 まだ始業までは若干余裕がある。今の内に明日の事を確認しておいた方が良さそうだし、あとの二人、ダイスケとケンタにも携帯で連絡してみることにした。私用も私用なので、休憩室に移動する。 まずはダイスケからだ。 「もしもし! 俺俺詐欺だけど。明日オーボエのテイルだぞ。わかってんのか、お前この野朗!」 「四人で遊ぶんでしょ? マコトんちでいいんだろ?」 マジかよ、伝わったよ。エスパーかよコイツ。とりあえず明日の約束の時間等を確認して、早々に通話を切った。ダイスケは中学生の時からの友達で、昔は良くゲームを一緒にプレイして遊んでいたもんだ。そして本人に自覚はないが、極度のシスコン野郎である。妹の悪口を言うものなら、例え相手が上司であろうとアッパーカットをお見舞いする、危険な奴だ。あまり怒らせない方がいい……まあ、いつも俺に対してあたりは強いが。 次はケンタだ。始業まで時間が無くなってきたので手早く確認してしまおう。 「もしもし! 食らえ! オーボエのテイルアタック! うにょにょにょにょにょ!」 「わー! オーボエのテイルアタックだ! やばい! オーボエが頭の中で鳴り響く~!」 手早く確認のつもりが、結果ふざけてしまった。これも人のサガか……ケンタはノリが良いので俺のギャグ(?)にも反応してくれる。しかしそれゆえにつっこみもなくギャグの応酬をしてしまうので、内心ではお互い『早くつっこめよ!』と思ってたりするだろう。趣味はまったく合わないが、ギャグはソウルメイトの域に達している。また屁が臭い、危険な奴だ。 そんな事をしていたら始業のチャイムが鳴った。これがアニメや漫画の世界なら社長とかが来て「良いサボり場だね、私も混ぜてくれたまえ!」などと言うだろうが、現実ではみんな真面目に仕事をしているので、チャイムが鳴ると共に軍隊の如く各部署に戻って業務を開始する。これが習慣というものだろう。とにもかくにも、つまらない一日がまた始まったな……。心の中で俺は再度ぼやいた。   正直、俺はこんな毎日が嫌だった。     次の日。 ジリリリリリリリ! 今日は目覚ましの音で目が覚めた。昨日の夢の続きが見れないかと期待していたが、今日は何の夢も見ることはなかった。……残念、とちょっとだけ思ってしまった。 気を取り直して窓の外を見ると、午前中なのに夕方かと思うぐらい外が薄暗い。まぁ、昨日の夢に出てきた真っ赤な空に比べれば可愛いもんだ。そろそろ三人が家に来る時間だ。休日だがのそのそと朝支度をすませ、三人を待つ事にした。ゲーム機の準備をしているとチャイムが鳴ったので玄関に向かう。 「「お邪魔しまーす!」」 「あれ? ダイスケ君、ケンタ君こんにちは。久しぶりね! マコト、人が来るなら早めに言ってくれないと困るわよ! 部屋は汚いし、あんたが壊したトイレのドアも直ってないのに……まったくもう!」 「ノープレブレム、ノープレブレム! あ、スズキが後から来るから着いたら入れてやって!」 そう言いながらまだ何か言いたそうな母さんを尻目に、自分の部屋に入っていった。 「こうやってみんなで集まるのも久しぶりだな! まぁメールで色々話してるから新鮮感はそんなにないけど……ところでお前らなんかゲームソフト持ってきてないの?」 「俺はそもそもゲームするなんて一言も聞いてねえから、何にも用意してないぞ! せめて昨日の段階でちゃんと言えよ! なんだよオーボエのテイルって!」 ケンタが言うが、お前もノリノリだっただろ! と心の中でつっこむ。 「コイツアホだから言ってもしょうがないよ。とりあえず昔持ってたソフトないの? 四人で遊べる奴」 そう言われてもなぁ、と思いながら部屋を探す事にした。最近のゲームは俺が一人で大体やりつくしたし、ここはいっちょ昔のソフト群でも探してみるかと押入れを漁ってみた。すると意外に遊べそうなゲームがぽろぽろ出てくる。懐かしい。 中学の頃、スズキ、ダイスケ、ケンタ、ナオキと一緒にゲームをして遊んでいた記憶が蘇える。そういえば今日はナオキも呼べば良かった。ナオキはダイスケ、ケンタと同じく中学からの仲なのだが、最近仕事が忙しそうだったから声をかけるのを若干躊躇っていた。今度また誘ってみようと気を取り直し、昔のゲームを三人でプレイして盛り上がっていると、スズキから着信があった。 「すまん、今日ちょっと事情があって行けなくなった。久しぶりにダイスケやケンタと会いたかったなぁ」 俺は「そうか、わかった」と言って通話を切る。スズキが来れなくなると一気に寂しくなるな……と思った俺は、ほぼ無意識でナオキに通話をかけていた。 「もしもし! 久しぶり! 急で悪いが、今ケンタとダイスケが俺んちに集まってるんだ。良かったらお前も来ないか?」 ダメで元々だったから、かなりあっさりめに誘ってみる。恐らく今日も仕事だと思うし。 「そうなんだ。今日は仕事が無くなったからいいよ。久しぶりにお前らの顔でも見てやるか」 おお、意味不明に高圧的だが良かった。やっぱりゲームは四人で遊んでこそだからな。ナオキはテンションは低いが、内には熱いソウルを持っている奴だ。この面子の中では人一倍負けず嫌いだし、ゲームも盛り上がることだろう。 2時間後にナオキも家に来て、久しぶりの四人でのゲーム大会が始まった。社会人といえど、ゲームが好きな心は全員変わりない。何年ぶりかはわからないが、中学の頃と変わらないテンションでゲームをする俺たちは、じじいになってもこの関係が続くのだろう。 「いえーい! 勝った勝ったー! まっ、なんたってパーティー野郎だからな!」 ケンタは運が良いので、パーティータイプのゲームはかなり強い。それにしてもパーティー野郎の意味は分からないが、既にケンタのテンションに慣れてしまっている三人は余裕のスルーだ。 「もう一回! もう一回やろーぜ!!」 ナオキが悔しそうに言った。負けず嫌いのナオキは、やはりこういうゲームとかスポーツをやる時はテンションが上がる。こいつも俺と同じで日常に退屈しているのだろうな、と中二病台詞を心の中でつぶやく。 しばらく懐かしいゲームを楽しんだ後、昼食がてらピザを頼む事にした。四人で集まる時は大体ピザを頼む仕来たりになっている。ネットでの注文を終えて、ふと先ほどチョイスした数本のゲームに目をやると、その中で気になるタイトルを見つけた。 『M.S.S.Planet』 なんだこのゲームは? まったく覚えてない。幾ら昔のゲームソフトだからと言って、存在自体を忘れてしまったゲームはない。当時の少ないお小遣いやお年玉から買ったゲームなら尚更なはずだ。もしかして以前こいつ等が来た時に誰かが置いていったゲームかもしれないと思い聞いてみた。 「お前らこのゲームどんなゲームだったか覚えてる?」 三人は顔を見合わせる。が、誰もピンとこないようだ。だれかが置いてったゲームでもないのか? とすると、まったくの謎のゲームという事になる。 「まぁピザが来るまでまだ時間あるし、とりあえずやってみようぜ。」 『M.S.S.Planet』 名前だけは聞いたことがあるような……。まぁこういう時はプレイしてみるのが一番だ。もしかしたらタイトルを完全に忘れてしまって居ただけで、内容を見れば思い出すかもしれない、そう思いながらゲーム機にセットし電源ボタンを押した。しかし妙な違和感を覚えた。   押した、というよりも勝手に押された、という感覚だった。   その瞬間、部屋は一切の無音になり突然チープな BGM が聞こえてきた。しかしそれは耳から聞こえるのではなく、頭の中に鳴り響いたといった方が正しい。 同時に急に目の前が真っ暗になり、急激な眠気が襲ってくる。 目を開けていられない。 意識がTVに吸い込まれていくような感覚を覚えた――   もしかして今日は、面白くなるのかな?   何故だが一瞬、そんな事を思ってしまった。     どれ位経っただろうか? 意識が途切れる直前の事は覚えていたが、 時間感覚 がない。 「…………………また夢か。」 最近はリアルな夢ばかり見るなと思いながら身体を起こす。 朝日が差す窓、鳴り止まない音の大きな目覚まし時計。漫画やゲームソフトが散らかった汚い部屋。紛れもなく俺の部屋……ではない。何故ならそれらが一切見当たらないからだ。 そんな状況に焦り、慌てて周りを見渡すと、公園の様な整理された草木が見える。自分が居る場所も芝生の上だ。どこか公園で寝てしまったのだろうか? でもこんな公園、俺は見たこともない。 立ち上がってもっと良く周りを見ると、思わず息を呑む光景が広がっていた。 「なんだ……こりゃ……?」 公園の外は大きなビル。それだけなら只の都会だが、若干の違和感。ビルと自分の居る高さがおかしい。落ち着いてもう一度良く見てみると、ビルは浮いていた。いや、ビルだけじゃない。ありとあらゆる建物が浮いている。もしかしたらこの公園も浮いているのかもしれない。 公園の端まで走ると、展望台の様な場所が見えた。あそこならこの一帯を見渡せるかもしれない。しかしかなりの高さがある。どうやって行くのだろうか。 とりあえず近づいてみると、展望台の様な場所の真下にエレベーターらしきものが見える。エレベーターだと断定できないのは、乗るべき場所がガラスの筒のようになっているからだ。俺はこんなエレベーターは SF 映画やゲームの中でしか見た事がない。 そんなエレベーターらしきものの近くまで行くと、中には入れる様だったので意を決して乗ってみた。ガラス張りだが地面もあるし、液晶画面の様な物に上と下の記号もある。とりあえず上を押してみる事にした。 「おお!?」 思っていた以上の速度で動いた透明なエレベーターは、一瞬でガラスの筒を上り展望台の様な場所まで着くと透明のドアを開けた。突然の出来事に冷や汗と言葉が出たが、致し方無いだろう。 そして展望台の様な場所から再度周りを見渡すと、浮いているのはビルや建物どころか、都市全体である事がわかった。更に目を凝らして良く見てみれば空を浮いているバスや車の様な物も見える。先ほども思ったが、まるで SF 映画やゲームの世界だ。 おかしい。勇者になる夢からは、もう目覚めたはずではなかったのか? さっきまで久しぶりに会った三人とゲームをしていたと思うのだが……これも夢か? ここでお決まりの行動の出番だ。必殺、頬をつねる! 夢なら痛くないはずだ! むぎゅうううううぅぅぅぅ! 痛い! めちゃくちゃ痛い! むしろ、本気でつねるとこんなに痛いんだと思うぐらい痛い! しかし前に見たあのゲームみたいな夢の時も実際に痛みを感じた。これも夢なのだろう、そう思えてきた。 ふと横を見ると、ガラスの掲示板に何か文字らしき物が表示されている事に気がついた。現実とはまったく違う世界観だが、文字は俺でも読めるようだ。   「究極プラネット…?」    どこか懐かしい言葉――ここから俺の不思議な冒険が始まった。  第二話>>
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永遠の中二病集団が織り成すガサツな活動日記