第3回 「このマンガが好きだ!」
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第3回 「このマンガが好きだ!」

2017-07-07 21:00
    前回の更新からめっさ間が開いてしまいましたすまぬすまぬ…。


    今回ご紹介するのは速水螺旋人さんの『大砲とスタンプ』というものです。
    ジャンルとしては戦争モノに入るのですが、一般的に戦争モノと言うと陸・海・空軍の最前線で戦う兵士のストーリーであったり、後方の士官の政治バトルといったものが多いですが、
    これはなんと「兵站」というほとんど誰も描いてこなかった、地味ながら非常に重要な部署を描いたマンガです。

    兵站というのは、戦闘を維持する為の食事・装備・弾薬・燃料・兵器・運搬・娼婦などなど
    物理的な物質の補給から兵士の士気の維持というものまで色々なものを担当しているのですが、実質的な戦闘には加わらないので作中では「紙の兵隊」と揶揄されています。

    凛々しい顔つきですが女性です

    詳しく内容に触れる前に、作者の速水螺旋人さんについて少しご紹介させて頂きます。
    速水氏は非常に世界の歴史や文化・軍事方面に明るい方で、特にロシア・中央アジアに
    ついては半端でない知識を持っておられます。特に(旧ソ連含む)ロシアという国が好きで、
    たまーに旅行に行っておられるのをツイッターで見かけています。

    この作品の舞台も、主人公はロシア(領土的には旧ソ連に近い)を模する架空の国「大公国」に
    所属しており、同盟国であるバルト三国とベラルーシ・ポーランド辺りを合体させたような「帝国軍」と共に敵国である「共和国軍(オスマン帝国の範囲)」と戦闘をしているのですが、全体的な雰囲気は第ニ次世界大戦前後な感じですが、兵器は現代の兵器のようなもの(ミサイルやヘリ)が混じっていたりと、その辺の設定は割とガバガバです。しかし当然ながらわざと
    やっているので、作者の趣味全開な内容となっています。

    そしてここが速水氏の得意とする上記のロシア、第一次世界大戦辺りから冷戦辺りまで、
    ある種のロマン溢れる珍兵器の描写に力を入れています。
    宮崎駿の雑想ノート』を読んだことがある方には分かって頂けると思うのですが、アレの
    架空兵器バージョンのような感じです。


    速水氏がロシアを非常に好むのは、西側諸国のような「合理的で洗練された兵器」よりも
    技術が不足する部分をトンデモアイデアでカバーして本当に作ってしまう、というところに
    あるのではないかと思います。「発想は分かるんだが本当に作るとは」的な、独特な兵器に
    速水氏は大変惹かれているようです。もちろん欠点は多くあるのですが、氏はそこに
    人間味を感じでいるのではないでしょうか。


    さて本編の方ですが、旧共和国領内で前線基地であるアゲゾコ要塞の前任者の死亡により、
    些細な書類のミスも許さないガチガチの真面目系事務員であるマルチナ少尉が赴任することとなり、たるみ切った配属部署を立て直すべく奮闘する・・・というストーリーです。
    そんな後方任務の話が面白いの?と思うかもしれませんが、ハッキリ言いましてめちゃめちゃ面白いです。



    このマンガの時代は現在のようにネット等を利用して緊密な情報連携・物品管理が出来ない
    ため、色々とごまかしが効く時代です。つまり不正がはびこり放題。横流しやら横領やらが
    横行している為、主人公達は共和国との戦闘より内部の人間との闘いが主だったりします。

    最初の頃は熱い正義感により、真正面からそういった犯罪行為をしている人間と対峙した為に
    エライ目に遭ったりする訳ですが、そのような経験を積むうちに徐々に正攻法以外の道も覚えていくという成長譚(?)でもあります。


    軍隊内には一応敵を倒すという共通目標はあるものの、様々な思惑・利権・しがらみが絡まり合っており、極めて泥臭い話が描かれています。基本的に1話読み切り形式で、たまに2~5話と続くものもありますが、一つの話の中で色々な出来事に見事にオチがつき、マンガという媒体のメリットを最大限に利用していると感じます。
    速水氏は本当にたくさんの映画やマンガなどの作品を見てきたんだろうなと思うことしきり。

    絵柄はコミカルな作風で、これで戦争モノ?と思うかもしれませんが、逆にこの絵柄の方が
    戦争における残虐行為の恐ろしさをいや増してくれます。むしろリアルな描写の方が心に
    響かないんですよね。私は30超えたオッサンなので、子供の頃にドラクエ3とかをやっていた訳ですが、最近のリアルな3D映像よりもドット絵の方がより妄想を膨らませて感情移入出来るのと同じ理屈なのでしょうか。


    それはさておきまして、この架空の戦争ゴチャゴチャ人情劇。現在6巻まで出ておりまして、今からでも追いつきやすい巻数ですし、刊行ペースは1年に1冊くらいです。

    もうほんとーーーーーに面白いマンガですので、「人間」を描く作品が好きな方には超絶
    オススメです。先ほど残虐行為の~とは書きましたが、別に特別グロいシーンがある訳では
    無いのでご安心を。

    このマンガが気に入ったら、同じく速水氏の『靴ずれ戦線 魔女ワーシェンカの戦争』も
    ぜひ。
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