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いつぶりだよこのシリーズ。
たぶん4年くらい放置してたマンガ紹介記事ですが、気が向いたので久々に1冊ご紹介させて頂きます。
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唐突ですが、いいマンガの条件というのは人によって色々とあると思うのですが、その中に「リアリティと妄想のバランスがいい」というものが有るんじゃないかと個人的に思っています。
リアルに寄り過ぎると、いわゆる“ご都合主義”が使いにくくなり、一つの章が終わるのに、
或いはエンディングにたどり着くまでがえらく長くなってしまいがちですし、色々と考証することが多すぎて作者が潰れてしまったり、解決の為に、例えば『デスノート』で言うところのジェバンニの様な超人を登場させてしまって白けてしまったりということがあると思います。
逆に妄想力が強すぎると、作者本人にしか分からない濃すぎる世界が誕生してしまって
薄い本でしか通用しないものになってしまいます。
今回ご紹介する『Landreaall』(ランドリオール)は、まさに冒頭で書きました「バランスの
いい」世界を作っている、割と稀有な作品であると言っても過言ではないと思います。
さてあらすじの説明に入る前に、作者であるおがきちか氏について少し触れたいと思います。
おがきさんは元々同人畑の人で、このランドリオールも『クレシェンドマリオン』という
読み切りの同人誌がベースになっていて、キャラの名称や設定を少し変えたものがランドリ
本編へ引き継がれています。(※クレシェンドマリオンは単行本1巻に収録)
以前おがきさんは蝉丸Pのニコ生に出演されたことがあり、それをまとめたものをアップさせて頂いたことがあるのですが、その中でおがきさんの担当者さん曰く「(単行本の売上が)角度1°くらいで右肩上がり」と言われたエピソードを話されていました。新規のファンはなかなか増えないけど、一度捕まえたファンは離れていかないという、これまたなかなか稀有な才能の持ち主です。
ここでやっとあらすじの方を説明したいと思うのですが、超ざっくり分けると前述の読み切りの話を延長させた「火竜編」と、主人公とその妹(+護衛)の3人が学校に入学する「学園編」に分けられます。学校と言ってももちろん義務教育的なアレではなく、将来的に騎士や政治家方面、女性なら社交界にデビューするための勉強&人脈作りをする場です。
主人公達が所属するアトルニアという国は訳あって王が不在となっており、議会と貴族達が
中心となって国を回している訳なのですが、王政復活に向けて水面下で動いていたり、主人公も父親が名誉ある元騎士である関係で将来の王様候補に入っており、田舎育ちである主人公は政治的な駆け引きや結婚(見合い即ち政略結婚)から逃げ回る反面、「国とは」「王とは」「自分のやりたいことは何か」ということを様々な事件に巻き込まれながら考え、成長していくという物語です。
またちょっと話が逸れますが、最近ガッツリ戦闘シーンを含むマンガでの女性の活躍度が
すごいなと思っています。例えば『鋼の錬金術師』や『アルスラーン戦記』を描いておられる荒川弘さん、むちゃくちゃ本格的な政治・戦闘・兵器描写で知られる『軍靴のバルツァー』の中島三千恒さん。言わずもがなの『鬼滅の刃』。そしてこのランドリにおいても体術や刀を使ったり、コミックス13巻前後のエピソードの偵察・戦略・補給といった、普通女性が描かないだろこんなの という分野まで進出してきているのを見て、マンガの新時代だなぁと感じる昨今です。
そう、このマンガには戦闘シーンが多く描かれています。ファンタジーの世界ですので、
ゲームの技的なものも少しあったりしますが、ちゃんとした武道の人のアドバイスがあったり、Avalon japanという中世の戦いや文化を研究している団体からの詳しい助言が取り入れ
られているので、先に書きました「リアリティ」という面で他のマンガと一線を画す部分となっています。
加えて、対談の中でも語られていましたが、おがきさんはいわゆるラブコメを描くのがものすごく苦手な方で、ランドリの中でも恋愛という要素は物語の中心軸とはなっていません。
この点においても一般的な女性漫画家が描くストーリーと一線を画しています。
序盤と中盤以降に、主人公は好きになった女性の為に積極的に動くシーンはありますが、
……これは女性漫画家のマンガをよく読まれた方には通じると思うのですが、「キャラクターが恋した感情を中心に世界が廻る」的なものではなく、あくまで主人公の恋はストーリーの
傍流という扱いです。それ故読者は主人公の恋の成就を願うのですが……(笑)。
さて2016年に大ヒットした映画に『シン・ゴジラ』がありますが、あれもパニック映画によくある「家族愛」や恋人に言う「必ず生きて帰るよ」的なワンパターンのお涙頂戴な要素を排したものでした。
最近ではヒットの条件が「主人公達さえ幸せになればいいや」というものよりも、社会全体の幸福を願うストーリー構造なものにシフトしているのではないかと思います。数年前の作品ですが、『けものフレンズ』がまさにそうでした。かばんちゃんとサーバルは多くのフレンズを幸せにし、最後にはそのみんなに助けられるというものでしたが、ある方のツイートで「ランドリはけものフレンズの社会をより高度にしたものに感じる」とありました。
それぞれのキャラクターが与えられた役割を存分に発揮し、誰かの為に力になる。
そしてその為のストーリー作りがまたすごい。作者ご本人はあまり自覚が無いようですが、
いわゆる「伏線回収」の腕前が恐ろしい方です。道中起こった問題や、解決方法・加えて
サブストーリー的な部分をまさに「あっ」と言わせる展開で畳み掛けるので、見事という他
ありません。「こんな量の荷物を包めるの?」と思っていたらあれよあれよという間に
風呂敷にすっぽり収まった-というような感じでしょうか。
そして、その話だけで終わらずかなり後の話にも生きてきたりということで、どこまでこの
作者さんは先の展開を考えているんだろうと毎度毎度思ってしまいます。
ここまでだいぶ褒めまくってきましたが、このマンガ、ストーリーがちょっと難しくもあります。というのも、主にセリフが「非常に」洗練されているので、そこかしこによーーく過去巻を理解していないと意味を理解しにくいものがあったり、ゲーム(特にファイアーエムブレムや
タクティクスオウガ・FFタクティクス)をある程度は知ってないと分からない単語・中世のヨーロッパの貴族社会、身分制度などにある程度知識がないと置いてかれる部分もあったりしますので、これを機に色々と勉強できます。しましょう。
一旦ここでまとめますと、
・洗練されたストーリー&セリフ
・ファンタジー過ぎないファンタジー
・クドくない恋愛要素
・「読むタクティクスオウガ」(あんな殺伐とはしてませんが)
・みんなで幸せな社会を作る(為の努力をする)
と言ったところでしょうか。
ここまで読んで頂いてどういうマンガか大体分かってもらえたでしょうか…?
まぁよく分かんないですよね。私の文章力が無いのが最大の原因ではありますが、とにっっかくこのマンガは説明が難しい。鬼滅のように倒すべき存在がいる訳でもなく、恋愛の成就がゴールラインでもなく、トップアイドルを目指す訳でもない。そしてどこが面白いかという説明もしにくい。多くのマンガはジャンルという属性である程度説明が出来ますが、ランドリオールは従来のジャンルには当てはまらないんですよね。
現在の最新刊である36巻辺りでの話なんですが、主人公達は従騎士(騎士の前段階)になるための訓練の一貫として、王城の下にあるダンジョンを哨戒するというミッションを行うのですが、その途中(ここがゲーム&ファンタジー要素)ダンジョンの要所を繋ぐワープポイントが異常を来し、本来ならワープ先ではないダンジョン深部に飛ばされてしまうという事態が発生します。
手強いモンスターに囲まれて主人公達は危機に陥りつつも、主人公の戦闘能力(すごい強い)と仲間との連携を駆使して&状況を把握した王国の救出部隊との先の読めないストーリーが現在続いています。これがまぁ面白いのなんの。ダンジョンと言えば『ダンジョン飯』が大変な人気作ですが、食料面の要素も取り入れながら、読み手側としては「あ、ゲームでこういう要素あったな(笑)」という楽しさもあるので、さきほども書きましたがこちらの知識が試される。
取り立ててたくさんのマンガを読んできた訳ではありませんが、このダンジョン脱出の部分だけ見ても他にこういう話を見たことがないんですよね。バトルマンガですと「突如主人公の能力覚醒」ですとか、ある程度先の話を予想出来たりもしますが、本当に先が分からない。突然便利な力が云々ではなく、今までの知識や経験の蓄積を反映させているので、上手く調整されたゲームをプレイしているような感覚を覚えることがあります。ランドリオール最大の魅力はそこかなと。
ということで文字ばっっっっかりになりましたが、2021年1月現在で36巻まで刊行されています。kindle版もあるんですが、とりあえず書籍版でもなんでもいいのでぜひ4巻まで読んでみて下さい。そこで面白さを感じたらあとは一気に揃うことでしょう。
今回もクソ長い文章を読んで頂き、ありがとうございました。「みんなもランドリを読まないか?」(某鬼の画像略
たぶん4年くらい放置してたマンガ紹介記事ですが、気が向いたので久々に1冊ご紹介させて頂きます。
唐突ですが、いいマンガの条件というのは人によって色々とあると思うのですが、その中に「リアリティと妄想のバランスがいい」というものが有るんじゃないかと個人的に思っています。
リアルに寄り過ぎると、いわゆる“ご都合主義”が使いにくくなり、一つの章が終わるのに、
或いはエンディングにたどり着くまでがえらく長くなってしまいがちですし、色々と考証することが多すぎて作者が潰れてしまったり、解決の為に、例えば『デスノート』で言うところのジェバンニの様な超人を登場させてしまって白けてしまったりということがあると思います。
逆に妄想力が強すぎると、作者本人にしか分からない濃すぎる世界が誕生してしまって
薄い本でしか通用しないものになってしまいます。
今回ご紹介する『Landreaall』(ランドリオール)は、まさに冒頭で書きました「バランスの
いい」世界を作っている、割と稀有な作品であると言っても過言ではないと思います。
さてあらすじの説明に入る前に、作者であるおがきちか氏について少し触れたいと思います。
おがきさんは元々同人畑の人で、このランドリオールも『クレシェンドマリオン』という
読み切りの同人誌がベースになっていて、キャラの名称や設定を少し変えたものがランドリ
本編へ引き継がれています。(※クレシェンドマリオンは単行本1巻に収録)
以前おがきさんは蝉丸Pのニコ生に出演されたことがあり、それをまとめたものをアップさせて頂いたことがあるのですが、その中でおがきさんの担当者さん曰く「(単行本の売上が)角度1°くらいで右肩上がり」と言われたエピソードを話されていました。新規のファンはなかなか増えないけど、一度捕まえたファンは離れていかないという、これまたなかなか稀有な才能の持ち主です。
ここでやっとあらすじの方を説明したいと思うのですが、超ざっくり分けると前述の読み切りの話を延長させた「火竜編」と、主人公とその妹(+護衛)の3人が学校に入学する「学園編」に分けられます。学校と言ってももちろん義務教育的なアレではなく、将来的に騎士や政治家方面、女性なら社交界にデビューするための勉強&人脈作りをする場です。
主人公達が所属するアトルニアという国は訳あって王が不在となっており、議会と貴族達が
中心となって国を回している訳なのですが、王政復活に向けて水面下で動いていたり、主人公も父親が名誉ある元騎士である関係で将来の王様候補に入っており、田舎育ちである主人公は政治的な駆け引きや結婚(見合い即ち政略結婚)から逃げ回る反面、「国とは」「王とは」「自分のやりたいことは何か」ということを様々な事件に巻き込まれながら考え、成長していくという物語です。
またちょっと話が逸れますが、最近ガッツリ戦闘シーンを含むマンガでの女性の活躍度が
すごいなと思っています。例えば『鋼の錬金術師』や『アルスラーン戦記』を描いておられる荒川弘さん、むちゃくちゃ本格的な政治・戦闘・兵器描写で知られる『軍靴のバルツァー』の中島三千恒さん。言わずもがなの『鬼滅の刃』。そしてこのランドリにおいても体術や刀を使ったり、コミックス13巻前後のエピソードの偵察・戦略・補給といった、普通女性が描かないだろこんなの という分野まで進出してきているのを見て、マンガの新時代だなぁと感じる昨今です。
そう、このマンガには戦闘シーンが多く描かれています。ファンタジーの世界ですので、
ゲームの技的なものも少しあったりしますが、ちゃんとした武道の人のアドバイスがあったり、Avalon japanという中世の戦いや文化を研究している団体からの詳しい助言が取り入れ
られているので、先に書きました「リアリティ」という面で他のマンガと一線を画す部分となっています。
加えて、対談の中でも語られていましたが、おがきさんはいわゆるラブコメを描くのがものすごく苦手な方で、ランドリの中でも恋愛という要素は物語の中心軸とはなっていません。
この点においても一般的な女性漫画家が描くストーリーと一線を画しています。
序盤と中盤以降に、主人公は好きになった女性の為に積極的に動くシーンはありますが、
……これは女性漫画家のマンガをよく読まれた方には通じると思うのですが、「キャラクターが恋した感情を中心に世界が廻る」的なものではなく、あくまで主人公の恋はストーリーの
傍流という扱いです。それ故読者は主人公の恋の成就を願うのですが……(笑)。
さて2016年に大ヒットした映画に『シン・ゴジラ』がありますが、あれもパニック映画によくある「家族愛」や恋人に言う「必ず生きて帰るよ」的なワンパターンのお涙頂戴な要素を排したものでした。
最近ではヒットの条件が「主人公達さえ幸せになればいいや」というものよりも、社会全体の幸福を願うストーリー構造なものにシフトしているのではないかと思います。数年前の作品ですが、『けものフレンズ』がまさにそうでした。かばんちゃんとサーバルは多くのフレンズを幸せにし、最後にはそのみんなに助けられるというものでしたが、ある方のツイートで「ランドリはけものフレンズの社会をより高度にしたものに感じる」とありました。
それぞれのキャラクターが与えられた役割を存分に発揮し、誰かの為に力になる。
そしてその為のストーリー作りがまたすごい。作者ご本人はあまり自覚が無いようですが、
いわゆる「伏線回収」の腕前が恐ろしい方です。道中起こった問題や、解決方法・加えて
サブストーリー的な部分をまさに「あっ」と言わせる展開で畳み掛けるので、見事という他
ありません。「こんな量の荷物を包めるの?」と思っていたらあれよあれよという間に
風呂敷にすっぽり収まった-というような感じでしょうか。
そして、その話だけで終わらずかなり後の話にも生きてきたりということで、どこまでこの
作者さんは先の展開を考えているんだろうと毎度毎度思ってしまいます。
ここまでだいぶ褒めまくってきましたが、このマンガ、ストーリーがちょっと難しくもあります。というのも、主にセリフが「非常に」洗練されているので、そこかしこによーーく過去巻を理解していないと意味を理解しにくいものがあったり、ゲーム(特にファイアーエムブレムや
タクティクスオウガ・FFタクティクス)をある程度は知ってないと分からない単語・中世のヨーロッパの貴族社会、身分制度などにある程度知識がないと置いてかれる部分もあったりしますので、これを機に色々と勉強できます。しましょう。
一旦ここでまとめますと、
・洗練されたストーリー&セリフ
・ファンタジー過ぎないファンタジー
・クドくない恋愛要素
・「読むタクティクスオウガ」(あんな殺伐とはしてませんが)
・みんなで幸せな社会を作る(為の努力をする)
と言ったところでしょうか。
ここまで読んで頂いてどういうマンガか大体分かってもらえたでしょうか…?
まぁよく分かんないですよね。私の文章力が無いのが最大の原因ではありますが、とにっっかくこのマンガは説明が難しい。鬼滅のように倒すべき存在がいる訳でもなく、恋愛の成就がゴールラインでもなく、トップアイドルを目指す訳でもない。そしてどこが面白いかという説明もしにくい。多くのマンガはジャンルという属性である程度説明が出来ますが、ランドリオールは従来のジャンルには当てはまらないんですよね。
現在の最新刊である36巻辺りでの話なんですが、主人公達は従騎士(騎士の前段階)になるための訓練の一貫として、王城の下にあるダンジョンを哨戒するというミッションを行うのですが、その途中(ここがゲーム&ファンタジー要素)ダンジョンの要所を繋ぐワープポイントが異常を来し、本来ならワープ先ではないダンジョン深部に飛ばされてしまうという事態が発生します。
手強いモンスターに囲まれて主人公達は危機に陥りつつも、主人公の戦闘能力(すごい強い)と仲間との連携を駆使して&状況を把握した王国の救出部隊との先の読めないストーリーが現在続いています。これがまぁ面白いのなんの。ダンジョンと言えば『ダンジョン飯』が大変な人気作ですが、食料面の要素も取り入れながら、読み手側としては「あ、ゲームでこういう要素あったな(笑)」という楽しさもあるので、さきほども書きましたがこちらの知識が試される。
取り立ててたくさんのマンガを読んできた訳ではありませんが、このダンジョン脱出の部分だけ見ても他にこういう話を見たことがないんですよね。バトルマンガですと「突如主人公の能力覚醒」ですとか、ある程度先の話を予想出来たりもしますが、本当に先が分からない。突然便利な力が云々ではなく、今までの知識や経験の蓄積を反映させているので、上手く調整されたゲームをプレイしているような感覚を覚えることがあります。ランドリオール最大の魅力はそこかなと。
ということで文字ばっっっっかりになりましたが、2021年1月現在で36巻まで刊行されています。kindle版もあるんですが、とりあえず書籍版でもなんでもいいのでぜひ4巻まで読んでみて下さい。そこで面白さを感じたらあとは一気に揃うことでしょう。
今回もクソ長い文章を読んで頂き、ありがとうございました。「みんなもランドリを読まないか?」(某鬼の画像略
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