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2021年10月13日(水)から 12月25日(土)まで、ミュージアムシアター(東京国立博物館内)と、ミュージアムシアターチャンネルで上演中のVR作品『空海 祈りの形』。
2019年初演時には漫画家・おかざき真里、美術ライター・橋本麻里による記念トークイベント「『阿・吽』ミュージアムシアターコラボ おかざき真里と橋本麻里の「空海」徹底放談会!」が開催され、チケットは即日完売。その大好評イベントの内容を、全6章にわたってまるごとおとどけします。
3章となる本記事では、いよいよ曼陀羅の世界へダイブします。空海を取り巻く人々とのドラマや、今後の『阿・吽』の展開についても語っていただきました。

※この記事の内容は、2019年トークイベント開催当時のものです。


<登壇者プロフィール>

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おかざき真里 漫画家 
博報堂在職中の1994年に『ぶ~け』(集英社)でデビュー。2000年に博報堂を退社後、広告代理店を舞台にした『サプリ』(祥伝社)がドラマ化もされるなど大ヒット。現在は「FEEL YOUNG」で『かしましめし』を連載中。2021年5月「月刊!スピリッツ」連載の『阿・吽』(小学館/監修・協力:阿吽社)が完結。

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橋本麻里 日本美術ライター/永青文庫 副館長 
日本美術を主な領域とするライター、エディター。永青文庫副館長。新聞、雑誌への寄稿のほか、NHK・Eテレの美術番組を中心に、日本美術を楽しく、わかりやすく解説。近著に『かざる日本』(岩波書店)、ほか『美術でたどる日本の歴史』全3巻(汐文社)、『SHUNGART』(小学館)、『京都で日本美術をみる[京都国立博物館]』(集英社クリエイティブ)ほか多数。


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自己プロデュースの匠、空海の遺したドラマ

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橋本麻里(以下:橋本):唐へも、空海が最初から密教を求めて行ったと考えられている方もいると思うのですが、実はそうではないんですね。空海にはもちろん、行き詰まった日本の仏教を革新する教学を求める気持ちもあったはずです。だからといって「密教が!」「恵果和尚のいる青龍寺へ!」と、最初から具体的な目的を持って行っていたわけではない。行った先で、結果的に恵果和尚と出会ったことで、新しい展開が生まれてくるわけです。おかざきさんも、そこをとてもドラマチックに描いておられます。

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おかざき真里(以下:おかざき):そうですね。空海が恵果に出会ったとたんに恵果が、「お前をずっと待っておったよ。大いに好シ。大いに好シ。」と言うんですけど、これはまぁ、でも空海が言っているだけなんですよ。

性霊集にも書かれているのですが、この性霊集自体も空海のお弟子さんがまとめたという体を成しているんですが、研究者によっては、実は空海が書いたんじゃないかというぐらい、「俺はちょっと偉かった!」みたいな話になっているんですね。

橋本:それをわざわざ弟子が書いた体でこの世に遺している。

おかざき:だから空海はかなりもう、演出家として、本当にすごいです。

橋本:自己プロデュースし過ぎじゃないですか?(笑)

おかざき:そうなんですよ。しかも最澄さんが、ものすごく悲しい文書をいっぱい遺しているのに比べて(笑)。