この腸脛靭帯は、腰やひざを安定させるという大切な役割を担っています。走ったりジャンプしたりといった激しい運動を行う際には、特に重要。ここが緊張したり炎症を起こしたりすると、すぐに身体に現れます。
腸脛靭帯の緊張は、太ももや腰、ひざの外側に沿って痛みを感じる腸脛靱帯炎を引き起こします。
つまり、ひざに痛みを感じたことがあるなら、それはひざ自体に問題があるのではなく、腸脛靭帯の緊張によるものの可能性もあるのです。
横に動いたり足に荷重をかけたりしたときや、ランニングやその他の激しい運動の最中などにしばしば痛みを感じることも。こうした理由から、腸脛靱帯炎はランナーやサイクリスト、長距離を歩く人などによく見られる症状です。
よくあるストレッチは、気持ちいいだけで効果はない
痛みを和らげるためによく行われるのが、左右交互に身体を傾けて伸ばすといったストレッチでしょう。しかし、こうした一般的なストレッチではほとんど役に立たないことがわかりました。
「腸脛靭帯の構造研究によると、靭帯はあまりに強靭がゆえに(一般的なストレッチでは)たいして伸びないことがわかりました」と話すのは、ランナー向けトレーニング情報サイトを運営する認定ランニングコーチのジェフ・ゴーデットさん。
同じ理由から、フォームローラーによるストレッチでも痛みはたいして緩和されないでしょう、とのこと。
「こうした典型的なストレッチは気持ちいいかもしれませんが、問題自体を治すわけではないので、あまり効果はありません。そもそもなぜ腸脛靭帯が痛むのかという理由を理解していないのです」と言うのは、ニューヨークのフィットネストレーナーで認定スポーツ専門医・理学療法士ブライアン・ガーニーさん。腸脛靭帯への圧痛を和らげるのによい方法は、まわりの筋肉をストレッチすることです。
通常は、股関節の曲げ伸ばしがうまくできなくなってはじめて腸脛靱帯炎に気づく人が多いのですが、この股関節が硬くなること自体も連鎖反応で起こっています」とガーニーさんは説明します。
大臀筋にうまく力が入らなくなり、それをカバーするために脚の外側にもっと体重をかけるようになります。そして腸脛靱帯やふくらはぎが硬くなり、脚全体のバランスが変わってしまうのです。
腸脛靭帯の痛みを和らげるためには、可動性を高めて、動作の修復を助けてくれる筋肉をよくのばしてみてください。
次に、腸脛靭帯の痛みを和らげるストレッチを紹介します。各ポーズは少なくとも10秒間キープしましょう。
1. 大臀筋ストレッチ
このストレッチでは、腸脛靭帯の問題につながる大臀筋の緊張をときほぐします。
両ひざを曲げてエクササイズマットの上に仰向けになり、足の裏はぴったりマットにつけます。 左足を天井に向かって持ちあげ、ひざのちょうど下をつかんで支えます。 次にその足を胸のほうに引き寄せて、身体とほぼ直角になるようにすねを横に倒します。 この姿勢を数秒間キープしてから、反対の足でも同じように繰り返しましょう。より深くストレッチする場合は、一連の動作を行っている間、ストレッチをしていないほうの足を床の上で伸ばしてみましょう。
2. 外転筋ストレッチ
腸脛靭帯を使いすぎていると、ひざや大臀筋につながる外側の太ももに痛みを感じるのはよくあること。
両ひざを曲げてエクササイズマットの上に座り、身体の正面で両方の足の裏を合わせます。両手は身体の後ろの床におき、バランスを取ってください。 姿勢をまっすぐにして座り、両手で支えながら身を乗り出して、両足が床にしずむような感じで骨盤を前方に傾けます。それからリラックスして両ひざをやや上に持ち上げましょう。明朝の『Prevention』記事に続きます。
効果的なストレッチを
Laurel Leicht/7 Illiotibial Band Stretches to Alleviate Hip and Knee Pain ASAP
訳/Maya A. Kishida