作家吉本ばななさんに「恋の全てに効く本です」と言わしめた、『来世でも読みたい恋愛論』(大和書房)には、人生を豊かにしてくれる「愛」についての心の指針がたっぷりと詰まっています。
豊かな愛情関係を築いていくための、心の指針
赤ちゃんは生後2~3か月頃から、自分を保育してくれる人(主に母親)との間に「愛着(アタッチメント)」を形成し始めます。つまり、人は生後数か月で、特定の相手との親密さを持つ情緒的な絆・つながりを獲得する能力を発揮しているということなのです。
『来世でも読みたい恋愛論』には、すべての人に備わっている「愛する」という能力について、より豊かな愛情関係を築くための心の指針を、40の「愛の姿勢」と、40の「愛の技術」がまとめられています。
「愛されないのは不運であり、愛せないのは不幸である」というカミュの言葉にもあるように、誰かを愛せない人は悲しい。愛という最高に美しい感情を抱かせてくれた相手にまずは感謝することです。たとえ愛の対象が自分を愛してくれなくても、あなたが幸せな人であることに変わりはないのですから」
(『来世でも読みたい恋愛論』p.21より引用)
本の第1部「愛の姿勢」には、愛に関する本質的な理解を深めるための40の指針が、第2部「愛の技術」には、「愛の姿勢」の理解に基づいて、相互が望む関係を構築・維持していくための指針が書かれています。
大人の恋愛だからこそ心得ておきたいこと
恋愛に年齢は関係ありません。しかし、これまでの人生経験や学びなどを通してのアップデートはしたいもの。恋愛は自由とわかっていても、たとえば30代の女性が、10代のような若さゆえの向こう見ずな恋愛にはしるということは、社会的にも厳しいものがあるかもしれません。ただし人を愛するということにおいて、凝り固まった先入観や、見栄やプライドなどは不必要です。
あなたが抱いている相手への感情が本物の愛であるのなら、勇気を出して告白に踏み切るべきでしょう。その際は、自分と恋人として付き合ってほしいといった気持ちを超えて、あなたに出会えたことでこの上ない喜びや感謝の気持ちが生まれ、だから、あなたがどんなに魅力的で素敵な人なのかを伝えたいだけであり、この世に生まれてきてくれて、ここに存在してくれて、そして、出会えてくれて本当にありがとうという気持ちを伝える姿勢で告白するのがよいでしょう。関係を要求しない、愛情と感謝だけを表現する告白こそが、人の心を動かすのです。
(『来世でも読みたい恋愛論』p.23より引用)
自分を愛することが、恋愛への第一歩
諸外国と比べ、日本人の自己肯定感(自分自身への満足度)は、かなり低いといわれています。同様に、自分には長所があるといった質問についても、先進諸国のなかで日本は最下位というデータがあります。その理由は、日本人特有の国民性にもあるのでしょうが、もしかしたら育てられた環境や、家族や先生など幼少期から関わってきた人たちの影響も大きいかもしれません。
自分を成長させ、魅力的にし、幸せにすることは、最終的な受取手である愛する相手のためにもなります。さらに言えば、愛する人のためにできる最善のことは、自分自身を愛することではないでしょうか。
(『来世でも読みたい恋愛論』p.88より引用)
まずは自分を慈しむこと。日々の生活を充実させること。それが豊かな人間関係を構築させ、人を愛するための第一歩となるのではないでしょうか。
決して傲慢になることなく、自分への信頼を深めていく。自分への確固たる信頼さえ手に入れることができれば、どんな局面に陥っても、他者の価値観やきまぐれに惑わされないで、自分自身で問題に立ち向かえるようになります。その揺るぎない姿勢が、人間としての強さとなっていきます。そして、その強さを優しさに変えていけるように努力することです。
(『来世でも読みたい恋愛論』p.91より引用)
すなわち人は自分を信頼し、慈愛に満ちていれば、たとえどんなときも、どんなシチュエーションでも、その人らしい振る舞いや判断ができるのではないでしょうか。目指すは、美しくしなやかで、愛に満ちあふれた女性。秋の夜長、珠玉のコトバが詰った恋愛論を片手に、愛について考えを巡らせたくなりました。
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