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ダサいインテリアの部屋では暮らせない。でも、結婚したい。
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ダサいインテリアの部屋では暮らせない。でも、結婚したい。

2016-04-11 07:00
    東京中で、引っ越し業者のトラックやスーツに身を包む新入社員たちを見る季節になりました。彼らの姿を見ていて、社会人になりたての頃は「好きなインテリアや家具に思いっきりお金をかけられる」ことがとてつもなくうれしかったことを思い出します。

    大好きなインテリアに囲まれて暮らしたい

    私のような重度の引きこもり精神の人間にとって、自分の「巣」である自室を居心地のいい空間に作り上げることは最重要命題のひとつです。

    「自分で稼いだお金を自分のためだけに遠慮なくぶっこめる! お金がないばかりに、実家から持ってきたものや先輩から譲り受けたものを使い続けてたけど、もう自分で買えるんだ!」

    開放感と高揚に包まれて、社会人になってから数年はとにかくインテリア雑誌を読みあさり、目黒通りをうろつきながら、数年かけて自分好みのベッド、カーテン、ラック、本棚、キッチン用品をそろえていきました。

    周りには、私よりもずっとこだわりを持って、お金と手間をインテリアにぶっ込んでいるアラサー独身女性が少なからずいます。彼女たちの家に行くとあまりの快適空間ぶりに「このおうち趣味がいい! 好き! この家の猫になりたい! ダメなら家具になりたい! サボテンでもいいから!」と叫んだことがどれほどあることか。

    アラサー独身女のストレスから逃れたい

    なぜ彼女たちがこれほどインテリアにこだわるかというと、独身アラサーOLをやるにはものすごいストレスがかかるから。

    あまりにできない新人に激怒したくても「お局コワイ」「若さに嫉妬してるんじゃない?」と言われるから笑顔で対応しなきゃならないし、無料キャバ嬢扱いされるうんこめいた飲み会に出ざるをえない時もあるし、主担当なのに「こういう若い女じゃなくて上司を呼んで」って言われるし、うっかり知識マウンティングしてくる男とデートしてしまうし、何かにつけて「結婚しないの?」と言われるし、「アラサー独身女」という属性由来のストレスはとにかく多い。

    せめて自分のホームぐらいでは、これらのストレスから徹底的に解放され、自分の好きなものにだけ囲まれて暮らしたい、という願いがあるのです。

    男性の部屋という新しいストレス

    そんなインテリア好きアラサー女性にとって、ひとつの鬼門が「男性の部屋」。

    ゴミが散らかりキッチンが廃墟、といった衛生班が必要な部屋は論外として(でも多いんですよね)、掃除されている部屋でも、インテリア配置が無秩序で混沌としていたり、素材と色合いが不統一だったりと、彼女たち基準からすれば「美しくない部屋」に住んでいる男性はたくさんいます。

    さて、こうした部屋に住む男性とお付き合いすることになったら彼女たちはどうするのでしょうか?

    対応方法はさまざまで、相手のこだわりのなさをいいことに徹底的に掃除して自分好みにする人もいれば、彼の部屋はなかったことにして自分の部屋だけでおうちデートをする人もいます。

    どちらにせよ、独身の恋人同士ならそれほど問題にはならないのです。が。

    恋人と一緒に住むか、自分の城を捨てるか

    同棲や結婚となるとそうはいきません。

    なぜなら二人の人間の空間をひとつにする作業だから。ここで戦争が勃発します。すなわち、センスの合わないインテリアを受け入れるか、すべて自分よりに統一してもらうか。

    「恋人のダサい家具は全部廃棄してもらった」と振り切れれば楽なのでしょうが、ここの対応は人によります。そこまで自分を突き通せずに「まだこれは使えるよね?」と言われてノーと言えない人、相手のインテリアを捨てることは相手の好みと過去を否定することだと感じて踏み切れない人もいます。

    センスは合わないけれど美意識がある相手の場合はさらに難しい。お互いが好きなものを持ち込んだ結果「東を向けば西海岸、西を向けば純和風」といったカオス空間が形成されることもしばしば。

    ダサいインテリアの部屋では暮らせない。でも、結婚したい

    これまで一人で気ままに自由に、自分の部屋の女王として君臨していた彼女たちは「自分とは違うセンスを持つ他者」の存在と、自分の自由を制限されるような感覚に戸惑います。

    ダサい部屋では暮らしたくない。自分の帰る場所で落ち着けないのはイヤ。ただでさえストレスがかかる生活で、これ以上ストレスがかかることには耐えられない。でも、結婚したい。

    こうやって妥協できないから結婚できないの? 妥協すれば結婚できるの? 自分以外の他者と暮らすことは、自分の城を捨てることなの?

    でも、結婚したい。安心したい。ストレスから解放されたい。

    自分の理想状態と、周りからの「気にしすぎ」「心が狭いんじゃない?」「結婚は譲り合いだよ」という声に挟まれて、彼女たちは「でも」「無理」「でも」の間で揺れ動きます。

    譲り合いと妥協は違う。自分の大事なものは守るしかない

    彼女たちに限らず、こだわりの強い人はしばしば、「譲り合い」と「妥協・我慢」を混同しているかのように見えます。

    ネガティブな気持ちで自分を押し殺して相手を優先する「妥協・我慢」をしても、結局はそれってただの抑圧なので、高い確率で「私はこんなに我慢してるのになんでそっちはやってくれないの!」とガスバス爆発することになります。イライラは伝染するので、お互いにピリピリしてリラックスできず、関係破綻を早めることになるだけ。

    譲り合いとは、このようなネガティブな気持ちで願望を抑圧することではなく、「まあいっか」とポジティブな気持ちで執着を手放すことだと思います。

    もし自分のパーソナルスペースを変えたくない、自分ルールを徹底した城に住みたいなら、もう今はそういう時期なのだと腹をくくるしかない。かといって、「自分は一人でなきゃ生きられないんだ」と悲観する必要もない。

    趣味が合う人をとことん探す、自分のインテリアがどれほど居心地がいいかをプレゼンして納得してもらう、二人の趣味を折衷した新しいインテリアをそろえて気分一新など、無理しないための方法はいろいろありますし、「一緒に住まないけど結婚する」という選択肢だってあります。自分ルールへのこだわりが薄れることだって考えられます。

    大事なのは妥協でも我慢でもなく、「自分が今、何を優先したいかを自覚」することではないでしょうか。

    自分のこだわりがものすごく大事なら、それを大事にするしかない。自分の大事なものを捨ててまで一緒にいる関係、心を犠牲にする前提の関係は長続きしないし不健康なので、私はしたくないし、おすすすめもしたくありません。

    正直、こだわりが強い人はそうでない人よりマッチングがかなり難しいとは思います。でも、もしかしたらこだわりをまるっと受け入れてくれるインテリア王子がいるかもしれないし、逆に相手の部屋がロココ調でも「まあいっか」と思えるぐらい大事な人ができるかもしれない。いや、やっぱりロココ調はどう転んでも無理。せめてヴィクトリア調にしてください。

    撮影/出川光



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