シリコンバレーで戦うデザイナーとしての連載は、今回が最後回。ここまで読んでくださったみなさんに感謝です。
バンクーバーで約2年、短いながらもいろいろな会社の方と仕事をさせてもらい、たくさんのミートアップに参加し、現地のデザイナーやエンジニアやクリエイターに出会いました。
慣れ親しんだバンクーバーを離れ、もどってきたシリコンバレー。そのときまた感じた新たな発見がありました。
そんな私なりのデザイナー哲学を少しだけお伝えして、連載を終えたいと思います。
デザイナーたるもの、満足するべからずシリコンバレーにもどり、いろいろな方にお会いすると、「どうしてアメリカにもどってきたの?」「カナダはどうだったの?」と聞かれることがよくあります。
私は、カナダの美しい街や、やさしい人たち、ライフスタイルがとても好きでした。外国人にとてもやさしく、包み込むような明るさを持つカナダ人。この環境にずっといることが許されたなら...と、思っていたのは本当です。
ただ私は昔から、良い言いかたをすれば刺激を求める性格で、悪い言いかたをすれば飽きっぽい性格でもありました。
常に上を目指そう、競争意識の強いシリコンバレーの地が、いまの自分に合っている、と思っていたのも本当です。
異常なバブル状態に疲弊している技術者も多いシリコンバレー。でも、正直に言うならまだまだ挑戦したい! という気持ちがあったから、素晴らしい環境のカナダからシリコンバレーへもどってきたのです。
現状に満足せずに常に最善策を考えてしまう――。そんなデザイナー的性質も影響しているのかもしれません。
そして、自分に満足してしまったときに、目の前の扉は閉じてしまう。
ストイックに聞こえるかもしれませんが、これは私が日本を出た瞬間から持ち続けている自分流の哲学です。
シンプルを極めよういろいろな文化を知ることは知識も教養も増えるし、選択肢も広がります。まるで、可能性が無限に広がったみたいに。
でも、関わる人や自分のキャリアの背景が複雑になっていくと、その状態がうまく混ざらずに反発しあったり、不協和音を発したりする原因になってしまうこともあります。
選択肢が広いことは、必ずしもしあわせとは限らない。
私は、自分の人生をよりシンプルにするために、常にスキルを磨き、最高のものを作り続けるマインドを大切にすることを最優先にしようと選択しました。
いま、ようやく、人生も仕事もおもしろくなってきたところ。
まだまだ先を目指したい。最高のものを作り続けるには、それだけのリソースや環境のある場所を選びたい。
ただそれだけの思いでシリコンバレーにもどってきました。
感性に従おういろいろ理屈を述べましたが、やっぱりいちばん大事にしたいのは自分の感性です。
感性って、本当に人によって様々です。
大自然のなかで、ていねいな時間の流れを感じたい人。
大都会の刺激に触れ、日々新しいインスピレーションを受けたい人。
誰かと密接に触れ合う人生を大切にしたい人。
じつは、学生のころ、一度シリコンバレーを訪れたことがありました。
そのときの刺激ある環境に「いつか私はここにもどってきて、テクノロジー業界の最先端で働くんだろうな」という予感をしていました。
そして、「自分はその感性に従っただけだったんだな」と、この地にもどってきた日に感じました。
自分の心は何を感じているのか。
何を大切にしているのか。
これからも流れるままに身を任せて、人生を楽しんでいきます!
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