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だから、ユニクロばっか着てる。夏帆の原動力
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だから、ユニクロばっか着てる。夏帆の原動力

2017-04-25 23:00
    行動を起こす源──。それが原動力。

    世間からは「なんで?」と思われることでも、本人に聞くときちんと理由がある。そんな個人の「原動力」に迫ります。

    ──この間、偶然コインランドリーで会って、そのときに、いま着ている服がぜんぶ「UNIQLO(ユニクロ)」って言ってたけど、それはなんで?

    「話すと長くなっちゃうんだけど」

    ──いいよ。ぜんぜん。

    「10代のころ、B-boyで、でかい服ばっかり着てたんだよね。それがトレンドだったし。それでなんか服が好きになっていって」

    ──そういう時期あったねー。

    「あのころって、ファッションとカルチャーがくっついてる時代っていうか。その服を着てる人はそのカルチャーにいる、ていうのが絶対な時代だった。で、俺、中二と高一のときにアメリカ行ってて」

    ──アメリカのどこ行ってたの?

    「中二のときは、オレゴン州のシアトル。サマーキャンプで。高一のときはミネソタ」

    ──アメリカ行ってどうだった?

    「高一のときは、1年間行く予定だったんだけど、3か月で帰ってきちゃった。で、アメリカ行ったらB-boyみたいな服の人ぜんぜんいなくて。雑誌とか映画で知ってた情報が何もない。皆無。俺だけB-boyみたいな。俺だけ、ブリンブリンのネックレスとかしてNellyみたいなピアスしてて、両耳。逆に外国人が着物を着て留学しちゃったみたいな」

    ──他のみんなはどんな感じだったの?

    「みんな超普通。やっぱギャングものだし、B-boyの服着れない、って。で、ホストファミリーってちゃんとした家柄の人しかできないようになってて。教会の人とか医者とか学校の先生やってます、みたいな人たち。だから、わけわかんない日本人きたー、みたいな感じだった」

    ──で、そのままB-boyでいたの?

    「学校の先生から少しずつ『外そうか』って言われて。日に日に減っていく感じ(笑)」

    ──従ったんだ(笑)。

    「素直に従うしかないんで。でも、オフの日はガチガチにB-boy着てたけど。だから、アメリカの友だちには『超かっこいい』みたいに思われて。でも本当は、わけわかんなかった。生活のなかでもすごいギャップ食らってた」

    ──ギャップってどんな?

    「髪切る、ってなったら、今日はじめて髪切ります、みたいな人に切られるし。『さぁ今日は買い物だ』とかいって、服買う場所は『Target』とかで、ノーブランドばっかだし。あっても『Dickies(ディッキーズ)』くらい。これ、1年やるんだ、みたいな」

    ──東京にいたころとはぜんぜん違うって?

    「夜なんて、どこにも行けないし、東京いたら渋谷で遊んでたのに。アメリカ行ったら、生活が真逆だった。バスケしに行ったのに、バスケする場所ぜんぜんなくて。ぜんぶ嘘じゃんってなっちゃって」

    ──それで日本に帰ってきたんだ?

    「でも、日本に帰ってきて友だちには『超良かった』とか話してた。自分としては『超クソだった。失敗だった』って思ってたのに、言えなかった」

    ──アメリカっていっても田舎だったんだね。

    「それに課題とか超多いし、アメリカンドリームみたいのもなかった。知らないだけかもしれないけど。ミネソタ、ハイエナとか朝見ますからね。こっちのネズミみたいに鹿が枯れてたり、田舎です」

    ──それで服は、B-boyのまま?

    「帰国してからもB-boyとかも着てたんだけど。親のコート着たり、兄貴の服とか借りるようになっていって。夜だけ変装してるみたいになってたのかも。昼間はスニーカーなのに、夜は革靴にコート着て同じ道歩いてみたり。自分のなかにある、真逆のことみたいなのを楽しんでた」

    ──ファッション自体が好きになった?

    「まぁ。それで、そういう自分を出したいなと思って。代官山のセレクトショプで働くようになって。客なんかぜんぜん来ないんだけど、たまに本当に洋服好きのバイトのやつとかに『ブランドもん知らないの?』とか言われて、教えてもらったり。なんか似合っちゃうから、なんとなくうまくやってた」

    ──ユニクロまだ出てこないね。

    「で、Forever21の渋谷店のオープンのスタッフやって。レディース着放題でそれは楽しかった。当時セレクトショップはフォーカスされるんだけど、Forever21はそういうのなくて、ただ服たたむ、みたいになってつまんなくなっちゃって、3.11の震災あたりでやめた」

    ──で、次は何したの?

    「広告の仕事やってて、ガールズアワードとかのモデル出しの仕事とかしてた。ステージ裏に冨永愛とかいて、あの人だけ返しのモニター見たらかっこよすぎて泣いた」

    ──子どものころから服好きだったの?

    「保育園のころから、トレーナーにベルトしてキャップかぶって行ってた」

    ──親がお洒落だったとか?

    「漫画の影響で服が好きになったって俺は感じてる。あと、体にフィットしないと嫌だ、みたいな感覚は小さいときからずっとある。紐はギュッと結んじゃうタイプ。友だちが泊まりに来ても、帽子かぶって寝る子どもだった(笑)。親はそれを見て笑ってた」

    ──かわいいね(笑)。

    「学校嫌いで渋谷とかのストリートにいて、今度はストリートっぽいと思ってアメリカ行ったら、そうでもないなってなって。広告の仕事したら、ハイブランドのショウとかのバイトするようになったんだけど。ディオールとかグッチとか、セリーヌとか。ガチの方。なんか服はかっこいんだけど、これ結局、本国の持ってきてるだけなのかって、思っちゃって。うわっ自由ない、って思った」

    ──で、どうなったの?

    「なんか、自分はどこを応援したいか、って考えたとき、ユニクロがいいな、って思った。それからずっとユニクロ着てる」

    ──なんでユニクロがいいと思ったの?

    「俺、ひとり鎖国してるんですよね。結局、ずっと誰かの広告のなかにいた。で、日本ってアメリカっぽいこと多いから、その逆がいいかなって。そしたら、日本のブランドで誰でも着られるユニクロがいいなってなった」

    ──アメリカ行ったことがユニクロにつながってるんだね。

    「いまは、どういう波及効果があるかで、モノを選んでる。なんて言うんだろう...。ただ単にかっこいいっていうだけでは、モノを選ばない。いい方向になるものを使いたくなったんすよ」

    ──人にどう見られるかって気にする?

    「自分がどう見られるかっていうより、相手の心地よさ考える」

    ──どういこと?

    「たとえば俺、メガネ持ってんすよ。100均のだけど。ファーコートとか着てるときとかに、タイミングでメガネかけてダサくするんすよ。たまにファッションに自信なさそうな店員さんとかに接客してもらうときとか。そうすると、その人やりやすそうになるんすよ。のびのび接客してもらって、俺もスムースに用件こなせる。逆に、声かけられたくないときは、青いメガネとかかけてイカつくする。勘ぐられたりするのが面倒くさいし」

    ──自分がお洒落って思われたいとかは?

    「べつに...。お洒落ではいたいっすけど。でも、お洒落ってぶっちゃけ謎じゃないですか。人によってお洒落の土台って違うし、もう世に出ちゃってるのってお洒落じゃなくなっちゃうから」

    ──服っていうより、もう人になっちゃうよね。

    「キャラクターですよね。漫画に近いっていうか。なに、この感じ! みたいな。ドラゴンボールに出てくる人の配色って超お洒落なんすよ」

    ──インパクトだね。

    「超究極っすけど、ファッションってキャラクターだと思う。スタイル。その一個のキャラクターがどんどん進化してくだけじゃないのかな。思考っていうか。だからジョブズとかのファッションが注目されたり」

    ──家に冷蔵庫も洗濯機もないのはなんで?

    「てか、飲み物とか飯とかコンビニって一回分で売ってるじゃないすか。冷蔵庫は、コンビニっすね。それにいまだと自分でモノ作ってるからその機材とかにお金使いたかった」

    ──何を作ってるの?

    「日本のこと。日本って良い、っていうのを撮りたい。アメリカの枠のなかにいたのとは違う日本があるっていう感じのを撮りたい」

    ──アメリカでの経験があって、そうやって思うのかもね。

    「アメリカに行って、人にやさしくされたのが大きかった。ピュアにやさしくされて、超やさしい自分に出会ったのも大きい。渋谷にいたときは、悪い自分とキレる自分を楽しんでたんだけど、アメリカ行ったら、いい子になって(笑)。自分のなかに余白をもてるようになったことが、多分いちばんよかった」

    >>連載「原動力を聞く」を読む

    撮影・取材・文/グリッティ編集部

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