いろいろ意見が出そうですが、きっと候補に入るだろうなと思うのが、ロシアのエカテリーナ2世(1729-1796)。
サンクトペテルブルクにあるエルミタージュ美術館は、そんな彼女が生みの親となった、生きる伝説のような美術館です。
映画でエルミタージュ美術館を独り占めフランスのルーヴル、アメリカのメトロポリタンとともに、世界三大美術館のひとつに数えられるエルミタージュ美術館。約300万点の所蔵品に、2千の部屋、ほかのどの美術館よりも多い学芸員を有し、年間で366万人以上(2015年)の人が訪れます。
この超巨大ミュージアムの内部に迫ったのが、いま公開中の映画『エルミタージュ美術館 美を守る宮殿』。2014年にエルミタージュ美術館が250周年を迎えたことを記念して、これまで秘められていた特別なコレクションや、バックヤードまで撮影が許可されました。
映画に登場するのは、この世に十数点しかないダ・ヴィンチのうちの2点。そして、ミケランジェロ、ラファエロ、ルーベンス、レンブラントといったオールドマスターの作品に加え、ルノワールやマティスなど、ロシアの大富豪が収集したフランス近代美術も名作ぞろい。
世界遺産でもあるエルミタージュ美術館の華麗な空間に、世界屈指のアートが並ぶさまは、まさに絶景。ロシアに行かずして、こんな大画面・高画質で目の当たりにできるなんて、ぜいたくすぎてクラクラしてきます。
女帝の安らぎの場だった「隠れ家(エルミタージュ)」エカテリーナ2世が暮らした冬宮を中心に、現在は5つの建物からなる壮大なエルミタージュ美術館。その出発点は、彼女がごく親しい友人を招くために作った小さなギャラリーでした。
エカテリーナ2世の人生は波乱万丈。ドイツからロシアのピョートル3世に嫁いだものの、夫は病弱で人望ゼロ、エカテリーナを女性として愛そうともしませんでした。
ついにはクーデターを起こして夫を追い落とし、外国人初のロシア女帝に。大勢の愛人を持ち、歴代ロシア皇帝のなかでもっとも長く帝位につき、国土を史上最大にした最強の女帝──それがエカテリーナ2世です。
「隠れ家(エルミタージュ)」と名付けたギャラリーは、きっと数少ない安らぎの場所だったはず。映画にも登場する黄金の孔雀のからくり時計は、最愛の人、ポチョムキン侯爵からの贈り物。
偉大なる女帝の存在は、いまも美術館スタッフの誇りとなっているよう。館長のミハイル・ピオトロフスキー氏の
「女帝エカテリーナ2世の収集品は超一流品のみ。美術館のスタッフは全員、彼女と同じ情熱を持たなければなりません」
という言葉が印象的でした。
美術館の地下で生き抜いた900日
この映画の大きな柱は、館長をはじめとする関係者のインタビュー。
ロマノフ王朝の終えんやヒトラーの攻撃、ソ連崩壊後の経済危機を乗り越えて、美術館を守り続けた無数の人々。なかでも第二次世界大戦中、ナチスがレニングラード(現在のサンクトペテルブルク)を包囲した「900日の包囲戦」を振り返る高齢者の肉声は、壮絶でした。
当時、美術館職員は危険をかえりみずコレクションを疎開させ、家族とともに美術館の地下に身を隠し、3年にわたる飢えと戦火を耐え抜いたそう。
ある人は、疲れ果てた自国の兵士を空っぽの美術館にかくまった学芸員が、そこに作品があるかのように館内を案内してまわったときの思い出を語っていました。兵士たちはとてもよろこんで、「みんなでとてもしあわせな気持ちになった」と。
たとえどんな現実に直面していても、その苦しみを忘れさせ、しあわせを呼びさます力が芸術にはあるのだと、エカテリーナ2世の強さを受け継ぐ人々に教わった気がしました。
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