仕事が終わり電車に乗って家に帰る途中、お腹がすいて最寄りの駅でいつもの餃子屋に入る。
カウンターに座ろうとしたが、あいにく空きがない。テーブル席に通される。焼き餃子のニラニンニクなし(私はニンニクが苦手)、肉味噌もやしとスープ、レモンサワーひとつを注文した。
イヤホンから流れる音楽を聴き流しながらボーッと料理を待つ。携帯の充電はすでに5%を切っている。餃子を食べ始めるころにプツッと音楽が止まる。
ひとりで食べる餃子も捨てたもんじゃない携帯の真っ暗な画面を確認しイヤホンを外すと、隣の席に座る女性ふたり組の会話が耳に入る。同い年くらいだろうか、20代半ばくらいの、職場が近所なんであろうふたり組。
「こないだはじめてここのランチ食べにきたの、ひとりで。ホラここ、ランチセットがあるじゃん。餃子とご飯とスープがついてるやつ」
「あ~たしかに、いつも看板出てるね。食べにきたことないけど」
「でもね、全然おいしくなかったの。いつもと違って。で、気づいたんだけど、やっぱり餃子は誰かと食べるから美味しいんだなって思った!」
「ねぇ~超わかる~!」
隣の席にポツンと座るたったひとりの私。
いやわかるよ、わかる。
そりゃ誰かと食ったほうが飯は美味いかもしれない。
でも、ひとりで食べる餃子も捨てたもんじゃないのよ。
今日も仕事がんばったなぁ、明日も朝早いや、はやく帰ってお風呂入ろう、今日やってたドラマまた見逃した、もう何話目だっけ? まぁいいか、いっつもこうやって全部見逃すんだよな、なんてめちゃめちゃどうでもいいことを考えながら過ごすのも悪くない。
楽しいよ、ひとり。ひとりでもふたりでも、その時間を楽しもうと思えば楽しめるし、つまんなくするのも自分の気持ち次第。
楽しいよ、ひとり。
なにしても誰もなにも言わないし。野菜注文してなくても怒られないし。
でも、こうやってひとりでいるのが楽すぎて、年々人付き合い悪くなってんだよなぁ。ダメだよなぁ。
そんなことを考えながら今日もまた、ひとりで餃子を食べながらレモンサワーを飲み干すジメジメした夜がやってくる。
>>連載「UNTITLED BY KIKUNO」をもっと読む
こちらも読まれています・もうずれ落ちない。日本人の鼻にぴったりのサングラス見つけた
・世界7か国の女性に聞いた「年齢と結婚と仕事」 #sponsored
・「引っ張られたり、突然切られたり。」◯◯って私みたい! #sponsored
【参照サイト・画像・動画へのアクセスはこちら】