そこで感じるのが、「日本」よりも「海外」に重点を向けている人が多いということ。
では、実際に、日本と海外でどんな違いがあるのか...。
今回、アメリカの会社でVMD(ヴィジュアルマーチャンタイザー)として働き始めた私と、東京で数々のハイエンドブランドのVMDとして活躍している大先輩・Kumiさんとで、「働きかた」について語り合ってみました。
すると、意外なことに、見えてきたのは「違い」よりもたくさんの「共通点」だったのです。
ファッション業界は華やかなことばかりじゃないファッション業界を夢見る人たちが描くイメージとして多いのが、毎日イベントやパーティに出席し、最先端なモノや人に囲まれている、華やかな毎日。
でも、それはあくまでもイメージです。
「InstagramやFacebookと同じだよ。それは表向きのイメージだけ。私たちは"黒子"。デザイナーの作品を目立たず裏方となって支えているだけだもん」
そう話すKumiさんの言葉に、思わず何度もうなずいてしまいました。VMDの仕事は黒子。それはアメリカも日本も同じみたいです。
男性もけっこう多い。「VMD」って何?VMDという職業をかんたんに説明すると、ブランドのコンセプトやイメージを表現し、店舗のディスプレイやレイアウトなどすべての面でヴィジュアルを作り出す、いわば店舗作りのデザイナー。
もちろんその仕事内容は、ハイエンドブランドやデパート、ファストファッションブランドなどによって、少し変わってきます。
ストアスタッフ、マネージャーなどとともに店舗に勤務して、ヴィジュアルを担当する係として働くVMDも増えてきていて、とくにファストファッションのブランドに多いとのこと。
一方、ハイエンドブランドのVMDは、会社から各地に派遣されておこないます。また、ときには本国への出張もあり、出張が多くかなりタフな仕事。
女性が多い職業だと思われがちですが、意外と男性もけっこういます。割合はアメリカでは半々といった感じですが、東京もそれに近いくらい、男性のVMDが多くいるそうです。
外資系で試されるのは、強いメンタリティまず、「外資系ブランドで働きたいんです」という声に対して、Kumiさんも私も同意見だったのが、
「日本の会社だって素晴らしい! 若い企業もたくさん活躍していて、さまざまなチャンスがある」
ということ。
外資系だから、という固定観念でオープンで働きやすい職場と思ったら大間違い。外資系でも、とてもコンサバティヴな会社はたくさんあります。
外資系で試されるのはとにかくメンタリティ、と話すKumiさん。とくに老舗ブランドなどではそのなかでどう自分を出していけるか、という強いメンタリティが試されるのです。
身につけているスキルによって仕事の幅が変わるまた、語学力も必要です。
数々のハイエンドブランドのVMDとして活躍しているKumiさんは、英語だけでなく、イタリア語も話せます。
「海外ブランドで活躍したいなら、やはり言語ができないとコミュニケーションが取りにくい」
とのこと。
いま、英語が話せる人材が多くなってきた時代とはいえ、VMDのスキルがあり、さらに語学力もともなう人材はけっこう少ないのだそう。
英語だけでなく、とくにヨーロッパ系のブランドの場合はイタリア語やフランス語ができればなお良し。となると、なかなかハードルが高くなります。
しかし、語学ができると現地の社員とのコミュニケーションが取りやすく、もちろん仕事をしていく上でも優位です。
アメリカでも同じで、ブランド本国の言葉が話せるのと話せないのでは、ポジションもかなり違ってきて、給料面でも大きく変わります。もちろん、VMDのスキルあってのことですが。
「心豊かなプライベートを送ることも大事」VMDとしてずっとファッション業界にこだわってきたKumiさん。その理由を聞いてみると、「これが私のできることだから」というシンプルな答えが返ってきました。
「これからは社会貢献というか、次の世代を育てるためにも、教えるなどのニーズにも答えてスキルを生かすしかない」
そう話す彼女からは、ファッション業界にこだわって生きてきた強い意志を感じます。
VMDはとにかく出張が多かったり、徹夜があったり、イレギュラーなスケジュールで動くことが多い職種。日本でも女性のキャリアアップが注目されていますが、Kumiさんは、
「心豊かなプライベートを送ることも大事」
とも話してくれました。
実際に、Kumiさんは仕事とプライベートを完全に分けて、オフの日はしっかり楽しんで、心豊かな時間を過ごすことを大事にしているそうです。
仕事とプライベートを切り離す、という考えはアメリカも同じ。
アメリカで仕事をし始めた当初、私は「あれ、同僚の人ともっと交流ないのかな?」など、仕事に馴染む前に、同僚と馴染もうと必死でした。
でも、働いていくうちにわかったことは、みんなプライベートと仕事を区別して、そのバランスをとても大事にしているということ。それぞれの時間に集中することによって、結果、どちらのパフォーマンスも向上するのです。
がんばれるフィールドを作るのは自分自身今回、Kumiさんと話をしてみて、日本とアメリカでの働きかたにたくさんの共通点を見つけることができました。
また、自分のこの先を見極める、とても良い機会となりました。
じつは私、ハイエンドブランド系を扱うデパートのVMDから、カジュアルブランドを扱うデパートのVMDに転職したばかり。通勤や時間のフレキシブルさなどを吟味した上での決断だったのですが、自分のなかでけっこう葛藤がありました。そんななか、
「おもしろいじゃない! 新しいフィールドこそ、楽しい。難しい商品こそ、どうよく見せるか挑戦だよ」
というKumiさんの言葉をもらって、国は関係なく、がんばれるフィールドはどこにでも作れる。自分次第なんだ、と改めて気づきました。
取材/フレシュラスともみ 写真/Shutterstock
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