それとなく続くやりとりも、ふたりにとってはまたとない大切な時間です。
当連載では、妄想ツイートで話題のライター・カツセマサヒコさんが、思わず「あるある!」とうなずいてしまうような男女のリアルな会話を描いていきます。
まだ付き合っていないけど両想いの男女の会話 サシ飲み帰り男「いやー、酔ったー」
女「ね、顔赤い」
男「すぐ顔に出るんだよね、恥ずかしい」
女「あんまり酔ってるところ、見たことなかったかも」
男「みんなといると酔わないんだよね、サシだと、なんかつい」
女「大丈夫? 帰れる?」
男「んー...」
女「ん?」
男「...帰れないって言ったら?」
女「...んん?(笑)」
男「冗談だよ(笑)」
女「冗談かあ」
男「冗談だよー」
女「冗談なのかあ」
男「...冗談じゃないほうが、よかった?」
女「んー、どうだろうねえ?」
男「んー...?」
女「なぁに?」
男「...もっかい言っていい?」
女「だめ」
男「だめなの?」
女「うん、もう『冗談』って言っちゃったから、今日はだめ」
男「ええ、なにそれ」
女「今日は帰るよー」
男「はぁい...」
女「私こっちだから、ここで」
男「あ、送るよ」
女「いいの。絶対に、ここで解散」
男「ん...はい。じゃあ、また」
女「うん、ありがと。気を付けてね」
男「そっちこそ、気を付けて。またね」
女「ばいばーい」
帰りの電車のLINE男「あーーーーー」
女「なに笑」
男「たのしかった」
女「うん、私も」
男「またいこ?」
女「うん」
男「ぜったいいこ」
女「はい笑」
男「あーーーーー」
女「だからなに笑」
男「冗談じゃ、なかったんです」
女「なにが?」
男「帰りたくないの」
女「うん」
男「うん」
女「帰りたくなかったね」
男「うん、うん」
女「酔った勢いでさ」
男「うん」
女「始まっちゃうのも悪くないって思ってたんだよね」
男「大胆なこと言う」
女「でも、冗談って言うから」
男「いや冗談じゃなかった」
女「遅いよ」
男「うー...」
女「だから、また今度ね」
男「うん」
女「すぐ会える?」
男「今すぐでもいいよ」
女「はいはい笑」
男「うー...」
女「後悔してるでしょ、抱けなかったの」
男「うるさいわ笑。抱くって言い方やめろ笑」
女「ごめん笑」
男「でも、後悔してる」
女「うん」
男「あの、一応言うけど」
女「うん」
男「誰でもいいわけじゃないです」
女「誰でもいいような男だったら、とっくに殴ってる」
男「そうですよね」
女「うん」
男「また今度」
女「うん、また今度」
男「おやすみなさい」
女「おやすみ」
......という男女のやりとりが、金曜の終電間際、地下鉄とJRで別れるその前後で起きていたら、なんだか東京の夜が、ネオンやオフィスの光が、そのふたりには妙にキラキラして見えるのではないかと思うのです。
デートと呼ぶには大袈裟だけれど、ただ遊ぶのとはワケが違ったその曖昧な時間とそのあとのLINEこそ、もっとも高揚する時間だともなんとなく思っています。
撮影(トップ、2枚目)/出川光 写真/Shutterstock 文/カツセマサヒコ
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