スピリチュアリズム史上、最高のミディアムは誰か? もしそう問われるなら、まず間違いなく第1候補にあがるのは、ダニエル・ダングラス・ホーム(1833-1886)でしょう。

今日、「霊能者」や「サイキック」と呼ばれる人たちの世界を見渡しても、彼と並ぶほどの驚くべき現象を引き起こすことができる人はいないように思われます。

今回は、そんな19世紀後半のスピリチュアリズム・ムーヴメントの最中、第1級のミディアムとしてその名を轟かせたダニエル・ダングラス・ホームについて簡単に紹介してみたいと思います。



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photo by EyEclipse

1833年スコットランドのエディンバラ生まれ。9歳の時、養子に出された叔母の家族とともにアメリカへと渡り、少年時代はコネティカット州グリーンヴィルで過ごします。

本人の自伝によると、幼い頃から何度か奇妙な霊的体験をしていたようですが、彼が明らかにミディアムの道へと本格的に入っていったのは17歳のときからです。以前にも本コラムで紹介したスピリチュアリズム・ムーヴメントのはじまりに位置づけられているフォックス姉妹のラップ音のちょうど2年後の1850年のことです。

ホームはミディアムとして活動をはじめた初期の頃から、物体の移動や浮遊など物理的な現象を引き起こすことを得意としていました。たとえば、1852年ニューヨークのスピリチュアリストたちのサークル「ニューヨーク・カンファレンス」のメンバーたちの前で行われた交霊会では、様々な物体がまるで「重力の法則」を無視したかのような振る舞いを見せたことが報告されています。

「マホガニーのテーブルが参加者の質問に対して反応し激しく動いた。そのときテーブルの上には紙、鉛筆、キャンドルが上に置いてあったが、それらはすべてその場所から動くことはなかった。しかも30度の角度までテーブルが傾いたにも関わらず、そしてそのテーブルの表面は完璧に滑らかであったにも関わらず、それでもなおすべての物はそのままの位置を維持し続けた。しかもテーブルは何度も元に戻ったり傾いたりを繰り返したにも関わらずである。

参加者のR・T・ハロックは次のように述べている。『あたかもそれは、わたしたちが見たことが知覚の錯覚ではなく、霊の現存と霊の力の本物の発現であるという確信を、わたしたちに強めるためであるかのように』その傾きを何度も繰り返した。

さらに同様の角度にテーブルを傾かせ、なおかつ鉛筆だけを落とすように要求すると、鉛筆だけ転がり落ち、他の物はテーブルの上の同じ場所に留まり続けた。今度はテーブルの上に置かれたガラスのタンブラーだけを落とすようにと要求した。これもまた求められた通りの結果となった。テーブルが傾きタンブラーが滑り落ちていったにも関わらず、その他のすべての物は同じ場所に留まり続けた。

次にテーブルは6ないし8インチほど床から浮き上がった。参加者を上に載せて、動かすことができるかと尋ねると、霊からはその上に乗るのが2人ならばできると、ラップ音による返事があった。ハロックとパートリッジが背中を合わせる形でテーブルの上に乗った。2人の体重は合わせて350ポンドだった。しかしテーブルは揺れ動き、持ち上がった。そして最後にテーブルが大きく傾き、2人はその上から放り出される形となった」

(以上、S. B. Brittan and Dr. B. W. Richmond, A Discussion of The Facts and Philosophy of Ancient and Modern Spiritualism, New York: Partridge & Brittan, Publishers, 1853, pp. 249-250の中のレポートより要約)

こういった現象だけでも十分驚くべきものですが、これは後にホームが発揮するようになるミディアムシップからすれば、ほんの序の口にしか過ぎません

ホームの、他のミディアムを寄せ付けない圧倒的な能力として彼を有名にしたのは、なんといっても「空中浮遊(levitation)」なのです――。

後編はこちら


(伊泉龍一)

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