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中尾さんの仕事は女性の憧れ。ファッション誌の美容ページを作る、フリーランスの美容エディター・ライターです。
中学生の頃から雑誌が大好きで、ティーン向けのファッション誌を読みたいのに、家が厳しくて17歳になるまで買えなかったとか。
「それでますます想いがつのったのかもしれませんね。華やかな世界に漠然とした憧れを抱いていました」
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■流れに身をゆだねて道を紡いできた
中尾さんがいまの仕事をするようになったきっかけには、人生の流れに身を任せ、人とのご縁を大切にする、しなやかな姿勢が伺えました。
「大学生のとき、友達の紹介で女性誌でバイトをすることになったんです。そのとき印象的だったのが、バリバリ働く編集部の女性たち。仕事の指示がスマートで理路整然としていたりすると、『かっこいい! 私もあんなふうになりたい』と思いました」
取材ではそれまで雑誌で見ていた憧れの人が目の前に。「なんでも自分の目で確かめたい」という好奇心旺盛な中尾さんは、すっかりこの仕事に魅了されたと言います。
アルバイトといっても仕事内容はシビア。社員と変わらない質を求められ、仕事の基礎を身につけたそう。
電話取り、写真の整理に始まり、ときには撮影用の高級ブラント品のピックアップに都内を駆けまわることも。そんな忙しさのなかでも、中尾さんは仕事を任される誇らしさも感じていたと言います。
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あるとき、撮影で使った高級ホテルのスイートルームに取材を担当したスタッフ同士で泊まることに。
夢のようなひととき。自然と会話も深まるうち、先輩編集者に『編集とライター、どっちになりたいの?』とふいに聞かれたそう。
「気づくと『ライターです』と答えていました。編集者は編集部に入らないとなれないんだろうな、ぐらいで、仕事内容もよくわからなかったんですが。そうしたら、別のスタッフから『私は料理家を目指すから、担当のページを引き継いで』と言われたんです。こうして任された連載がフリーランスとしての初仕事になりました」
■毎日を輝かせてくれる「ロンドン発、香りのおしゃれ」
中尾さんはここ数年、定期的にロンドンに滞在しています。
その理由は、自身の病気などつらい時期を経験し、「ずっと同じスタイルで仕事を続けるのではなく、自分の成長に見合った新しいスタイルを模索していきたい」と思ったから。そのひとつがヨーロッパの最新美容にじかに触れることでした。
そんな中尾さんが、毎日の暮らしに取り入れた美容アイテムがあります。
「伝統ある英国ブランドの香水です。ひとつは、優雅な香りの『Red Roses Cologne(Jo Malone)』。もうひとつが、優しい気持ちにしてくれる『Artemisia(Penhaligon's)』。仕事が忙しいときでも、これをつけると気持ちを切り替えて元気に現場に向かえるんです。イギリスに行って香水の奥深さに感動しました。ただ香りが心地よいだけではなくて効能もあって...。日本にも和漢植物を健康や美容に使ってきた歴史があるので、そういう意味でもシンパシーを感じますね」
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「ウソがない記事を書きたい。記事に精一杯愛情を込めたい」と中尾さんは言います。これは、かつてアシスタントについた、尊敬するベテラン美容ライターの影響なんだとか。
「彼女は仕事が丁寧でコスメへの愛情があふれているので、記事を通して読者に愛が伝わるんです」
そのモットーを胸に、新しい扉を開け、新たな可能性に向かっていく。その笑顔には、流行の先を行くライターらしい好奇心や高い感性が垣間見え、前向きな明るさが溢れていました。
中尾のぞみ(なかおのぞみ)
美容エディター、ライター。1998年より『VERY』にてライターをスタート。2002年-2005年、『美的』の専属エディター・ライター。以後、様々な有名ファッション誌、大手化粧品メーカーのカタログ、会報誌などで、美容を中心に、フリーランスのライター兼エディターとして活躍。現在、主に『美的』『CLASSY.』などで美容ページを担当。食・ファッション・アート・インタビューなどの実績も多数。