しょうせつ ともdAち
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しょうせつ ともdAち

2014-07-26 00:51
    いちおーさいうぷ

    世にも奇妙
    っぽいショートショート書きましたっ!☆





    「お、起きたか」
    智が、寝そべる僕の顔を覗き込みながら言う。
    「今何時だと思ってるんだよ、窓の外、見てみろ」
    カーテンの開いた窓の外からは、赤い夕焼け空と、分厚い入道雲が、ぴったりとその枠に嵌められていた。どうやら僕はまた、昼夜が逆転してしまったようだ。確か昨日は、悟と二人で、朝まで外で飲んでいたはずだ。二人して千鳥足のまま家へと帰って、そのまま寝てしまったのだろう。時計の針は五時ほどを示していて、確か昨日帰ったのが六ごろであったから、十一時間も寝てしまったということになる。
    「悟はいつ頃起きたんだ」
    「え、俺はお前と違って酒に強いからな、大学もあるし、九時には起きて、そのまま学校へ行ったよ。で、今帰ってきたとこ」
    悟ははそう答えると、続ける。
    「飯、食い行こうぜ。最近バイト代も入ったし、奢ってやるよ」
    僕はその提案を快諾すると、近くのファミリーレストランへと悟と向かった。

    僕の頼んだハンバーグステーキが運ばれてくると、勢いよくそれを頬張った。空腹が満たされる快感がとても心地良い。悟は既に運ばれていたミートドリアを食べながら、僕のほうをじっと見つめたままに訊く。
    「美味いか」
    僕は、うん、と頷くと、ライスとハンバーグをリズムよく口の中へと放り込んでいく。お互いに、しばらく無言で自身の料理を口へと運んでいると、悟が、なにやら神妙そうな顔で言う。
    「……ちょっと頼みがあるんだけどさ」
    「頼み?」
    「ああ、まあ、お前に頼むようなことでもないかもしれないけど」
    悟は言い辛そうに、ドリアを掬うその手を止めたままに、言った。
    「俺に、友達を紹介してもらえないかな」
    「友達?」
    「ほら、俺ってお前も知っての通り、お前以外の友達が一人もいないだろ。大学に入ってもう半年経つけど、一向に出来る気配もないし。そこで、お前に誰か紹介してもらえないかなって」
    「誰かって言ったって、二人して地元から東京に出て来てるわけだし、こっちで紹介できるような友達なんていないことくらい、お前だってわかってるだろ。まして、お前は大学に行ってて、ニートの俺なんかより、よっぽど人との接点も持ってるじゃないか。相談する相手、完全に間違ってるぜ」
    「それは、そうなんだけど、お前しか頼める奴がいないんだ、頼む、一生のお願い」
    悟は持っていたスプーンを置き、合掌すると頭を下げた。これで何度目の一生のお願いなんだよ、と僕は思いつつ、悟の頼みとなると、やはりどうしても断れない。小学生の頃、事故で両親が死んで、途方に暮れているとき、一生懸命に励ましてくれたのは悟であったし、中学の頃、初恋の相手に振られて落ち込んでいる僕を元気付けてくれたのも、悟だった。僕が誰かに手を差し伸べてもらいたいとき、その手を差し伸べてくれたのはいつも悟だったのだ。
    「つまり、俺が今から新しく友達を作って、お前にそいつを紹介するってこと?」
    悟は口を真一文字に閉じると、上目遣いで頷く。
    「わかったよ。悟からの頼みごとじゃ断れないしな」
    悟は閉じたその口の口角を上げると、ありがとう、やっぱりお前がいてくれて良かった、などと、安堵したように呟いた。

    あのあと悟は、出来れば同じ大学の奴が良いと言ったので、僕は居候させてもらっている悟の家へと二人で帰ったあと、すぐに眠ってしまった悟の横で、どうするべきかと黙々と考えた。そして、ある考えに絞ると、僕は早速行動に移した。
    大学の食堂では、学生たちがそれぞれのグループに分かれては、楽しそうに言葉を交わしながら昼食をとっていた。僕はそのなかの一つのグループに狙いを定めると、声を掛ける。
    「一緒に食べてもいいかな」
    三人の学生は、最初こそ戸惑った様子だったものの、僕が同じ学年であることなどを伝えると(勿論、嘘である)、了承してくれた。どこの学部であるとか、サークルには所属しているのかなどの質問が、僕に投げかけられる。僕はそれに、あらかじめ用意しておいたもので答え、瞬く間に僕らは打ち解けた。コミュニケーション能力の高さだけが、僕の取り柄なのだ。すると学生たちは、今晩飲みに行くから、僕も一緒にどうか、などと誘ってくる。友達を一人呼んでも良いかと尋ねると、彼らは快諾してくれた。

    早速だな、ありがとう、電話で今晩のことを伝えると、悟は弾んだ声で言った。悟の役に立つことが出来て、僕は嬉しかった。

    食堂の彼らと、僕と悟とが対になる形で、居酒屋のテーブル席へと着いた。彼らのなかの一人が、あるロックバンドのファンであることで、同じくそのバンドのファンであった悟と意気投合し、僕と、残りの二人を置いて、すっかり盛り上がっている。ようやくその話も一息ついたのか、彼が僕に言う。
    「マジでありがとうね、このバンド好きな奴ってなかなか居なくてさ、いつも誰かと熱く語り合いたいって思ってたんだ。ようやくその時が来たよ」
    僕は、いやいや、そんな感謝されるほどでも、などと首の裏を掻きながらはにかむ。いつからか出来ていた小さなイボが、指の爪に引っかかった。
    その後、何軒か店を梯子し、僕らは別れた。帰りの道中、悟に言った。
    「良かったね、出来たじゃん、友達」
    「ああ、ほんとありがとう、あんなに楽しく人と喋ったのなんて、久しぶりだった」
    嬉しそうな悟の横顔を見て、僕まで嬉しくなった。

    家へと着くと、悟が蛍光灯のスイッチを入れ、言った。
    「しばらくは、あいつらと仲良くやっていけそうだ」うん、良かったね、と僕は答える。
    「あれ、お前首の後ろにイボできてるぜ」 
    「ああ、いつからかできてたんだよね」
    すると、悟は僕の背後に回る。そして、囁くように言った。
    「……また、必要になったら起こすよ」
    悟は僕の首に出来たイボを、そっと押した。僕の意識は、激しいノイズ音とともに、徐々に暗闇に溶けていった。


    「お、このバンド、アルバム出したんだ」
    俺は商品棚にずらりと並べられた中の一枚のCDを手に取った。
    「そのバンドも聴くんだ? 俺も結構好きだぜ。でもそのアルバムより、初期のアルバムのほうが、俺は好きだな」
    「それって、緑色のジャケットのやつ?」
    「そう、それそれ」
    俺たちはそのバンドの話で一花咲かせると、デパート内のCDショップを出た。向かいの家電量販店の、通路に面した、店の一押し商品が置かれる台の上には、『当店一押し!友達紹介ロボット「TMー04」。お好みの顔、人格、人生史を設定することが出来ます!きっとあなたのお役に立つことでしょう!』とのポップが貼られた「あいつ」が、のっぺらぼうの状態で立ち尽くしていた。
    「お前が買ったのってあれだよな」
    彼は指を差すと言った。
    「うん、そうだよ」
    「俺、思うんだけどさ、あれに友達を紹介してもらうんだったら、あれと友達になったほうが早くない」
    「うーん、でもやっぱ、結局はロボットじゃん」
    そう答えると彼は、それもそうだな、と笑う。なんにしてもさ、俺は続ける。
    「あれのおかげで、俺たちは出会えたわけだしな」

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