しょうせつ ロボトミー
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しょうせつ ロボトミー

2014-08-03 02:01
  • 4
いちおーさいうぷ

ロボトミーって小説ですう。。。。。。。。。。。





 もう一週間ほども外出をしていなかった僕は、たまには散歩にでも行こうと、深夜にひとり、外へと出た。まだ少し肌寒いかと思って、カーディガンを一枚はおってきたが、Tシャツ一枚で十分なほどの暖かさを、歩く道に漂う空気は残していた。僕はカーディガンの袖を肘の上まで捲くると、歩いて十分ほどの公園へと向かった。
 公園へと着くと、公園のなかを縫うように繋がる歩道を歩く、横目にはブランコやのぼり棒といった遊具が、公園内にぽつぽつと点く街灯に暗く照らされている。子供のころにはよく、これらの遊具で遊んでいたものだ、と僕は回想する。ブランコに乗っている僕の背中を押してくれる祖母の姿や、鉄棒にぶらさがる僕を、優しく見守る母親の姿が、鮮明に頭のなかで蘇る。一瞬、深夜のこの公園が、あのときの穏やかな陽光に包まれたかのような錯覚をも覚えるほどだった。
 公園を抜けてしばらくすると、街頭も疎らな田圃道に出た。遠くで、コオロギの鳴く声が僕の耳に届く。夜空には、遠くの山を覆うような曇り雲があり、それから千切れるような格好の小さな雲もあった。その千切れた雲の丁 度真上に佇む月は、その二分ほどを欠けさせている。遠くのほうに、この田舎道にはまるでそぐわないまぶしい電飾の明かりが見える。昨年に開店したばかりのパチンコ店だった。平日の深夜に一人、田舎のあぜ道を歩くことで「不毛」な感傷に浸っていた身としては、その店は酷く迷惑な存在だった。その店が出来てから、僕の散歩のコースは、変更を余儀なくされた。視界にあのような景色が入ってくるようでは、とても自身の感傷になんて浸れない。
 僕はさらに街灯の少なくなる山の方角へと続く道へと、歩くその進路を変更する。すると虫の音がいっそう大きく聴こえるようになる。繁る木々を掻き分けるように続く道の上を僕は歩く。このまましばらく歩き、突き当りを左折する。そうするとまた街灯や住 宅は増え、深夜の住宅街の中では異質なほどの存在感を放つコンビニエンスストアが見えてくる。そのコンビニエンスストアをさらに左折してそのまま直進すれば、一分も経たぬうちに自宅へと着く。これが僕の、決まった散歩のコースだった。
 壁に掛けられた時計の針を確認すると、五時二十一分を指していた。閉じたブラインドから淡い橙色の光が直線状に漏れ、布団の上を照らしている。昨日、散歩を終えた僕は、羽織ったカーディガンを乱雑に床へと脱ぎ捨てると、そのまますぐに寝てしまったのだ。確か、部屋に着いたときに見た時計は三時頃を示していたはずだから、十五時間も寝てしまったことになる。しかし、この十五時間という睡眠時間は、僕としては、さほど長いわけでもなければ短いわけでもない。極めて標準的な時間であるいえるだろう。僕は溜まり切った小便を済ますと、本やらビールの空き缶やらで本来見えているはずのフローリングの床が、もはや一坪分も見えない床に、これもまた同じく粗雑に置かれた菓子パンの封を 開ける。それに噛り付くと、二日ほど前から(生活のリズムが滅茶苦茶である為、定かではないが)キャップの開けっ放しであるペットボトルの緑茶で、それを喉の奥へと流し込む。ブラインドを開けようかと思ったが、どうせもう夕方であることに気付き、やめた。菓子パンと緑茶のその全てを飲み下すと、僕は床と同様に散乱した机の上に置かれたノートパソコンを開き、電源を入れた。基本ソフトが起ち上がるまでの時間に、煙草に火を点けると、吸う。火種が丁度紙巻の半分程にまで到達すると、ようやくデスクトップ画面が表示される。不規則に配置されたアイコンの中から、「原稿」とのファイル名がついたアイコンをクリックする。原稿用紙三十枚分ほどの小説のデータが入った文書作成ソフトが起ち 上がる。僕は煙草の煙を口から吐きながら、物語の続きを考えた。不器用な自身の性質により、仕事のミスを連発し、先輩や社員に怒られながらも、アルバイト先の女性と付き合いたいが為に、どうにかこのまま辞めずに働き続けたいと苦悩する二十四歳のニートが主人公の小説であった。この小説というのはほとんど私小説のようなもので、そこに描かれる物語はほぼ、昨年の自身の姿そのものだった。
 僕は中学二年生のとき、ひきこもりとなった。特に学校で嫌なことがあったわけではないが、自分でもよくわからないが、ある日突然、行きたくなくなってしまった。その日、僕はいつものように母親に起こされ、顔を洗い、朝食を食べた。寝巻きから制服へと着替え、あとは鞄を持って家を出るだけだったのだが、その日、僕にはどうしてもそれが出来なかった。母には体調が悪いと嘘をついて、休んだ。それっきり僕は学校へと行かなくなってしまった。高校へも進学せず、家でテレビを観るかインターネットをするかで毎日を過ごした。それまであまり小説は読んだ事のなかった僕だったが、父の部屋にたくさんの小説が置かれていたこともあって、小説も読むようになった。それ以外は特にこれといっ たことはせず、気付くとそれから十年程もの月日が流れた。さすがにこのままではいけないと感じた僕は、思い切って近くの居酒屋でアルバイトを始めることにしたのだが、元々が不器用であった事と、長い間社会にも触れていなかったという事で、自分自身が嫌になるほどに仕事がこなせず、居た堪れなくなって、結局三ヶ月ほどでそのアルバイトは辞めたのだった。そのとき両親は、良くやった、と褒めてくれたが、僕自身には、普通に働くことは、もう不可能なのかもしれないという諦めが、頭の中を支配していた。
 それから僕はまた以前の生活に戻ったのだが、ある時、つまらないバラエティ番組をベッドに横になりながら、虚ろな目で眺めていると、ふと、小説を書いてみよう、と思い立った。その発想が 思い浮かんだとき、なんともいえぬ高揚感が体の奥から湧き上がってくるのを感じたのを憶えている。早速書いてはみたものの、いざ書き始めると、頭の中に書きたいことはその輪郭も確かに思い描けているのに、なかなか文章にすることが出来なかった。それは僕を実にもどかしい気持ちにさせたが、少しずつ、例え一日一文でも良いから書き続けていこうと思った。その久しく感じることのなかった高揚感は、それを苦にさせなかった。
 あれからもう半年以上も経つが、まだ小説は三十枚ほどしか書けていない。それでも、僕は良かった。今まで久しく感じることがなかった歓びや楽しさが、そこにあったからだ。
 しかし、その一時も、長くは続かなかった。僕の体調が、どうにもおかしくなってしまった。小説を書き始めてからの高揚感は勿論、あらゆることに対するやる気というものが、SSSSのように、すとん、と急に抜け落ちてしまった。小説を書いても楽しくもなんともないし、小説を読んでもテレビを観ても、インターネットをしても、何も感じなかった。つまらない、とすら感じない。空虚だった。さすがにおかしい、と感じた僕は、精神科の診察を受けることにした。先ほどのことと同様のことを医者に述べると、鬱病だとの診断を受けた。その日のうちに数種類の薬を処方され、僕は自宅へと戻った。医者の診断は、しっくり来ないというか、腑に落ちなかった。確か鬱病に掛かると、食欲が低下する といった事を、以前に本で読んだことがある。僕の場合、食欲は今まで通りあるし、むしろ増えたくらいだ。それに、特に気が滅入る事もない。ただ、やる気が出ないのだ。しかし、このような形の鬱病もあるのだろうか。
「どうよ、最近は」
 車に乗り込むと、猪井が訊いた。
「べつに、これといって何もないよ、いつも通り」
 そっか、猪井はそう呟くとサイドブレーキを引き、車を発進させた。
「そっちは? 彼女とは上手くいってるの」
 猪井は両サイドのフロントガラスを開け、ポケットに入った煙草を取り出すと咥えた。
「まあ、一応な」
 そう答えると、咥えた煙草に火を着けた。僕もつられるようにして、煙草を咥えると火を点ける。
 猪井は僕の唯一の友人である。僕がひきこもるようになってから、何度も家まで訪ねて来てくれた。最初の一年ほどは、なかなか会う気になれず、玄関で猪井と母親が話している声を自室から聞いているだけだったが、その後も、途切れることなく、月に一度は必ず訪ねに来てくれた。小学生の時はクラスも何度か同じになったこともあり、何度か遊んだことはあったが、中学ではクラスも別々になり疎遠になっていたので、どうしてそんなに僕のことを気に掛けてくれているのかわかならかった。後に聞いたところ、何となく、だそうだ。そうして今でもこうやってドライブに誘ってくれる。彼がいなかったら、きっと僕には一人も友達がいなかったことであろう。そう考えると、彼には感謝しかない。
 車は駅前の商店街を通り過ぎると、薄暗い田舎道の中を走る。開いた窓の外を眺めながら、うっすら輝く半月と、煌く多くの星が見える。こんな夜空を見ることができるのは、田舎に住んでいる者の特権だろうな、と僕は思った。
「仕事のほうはどう」
「相変わらず上司はめっちゃうざいけど、なんとかやってるよ。この前なんかすげえむかつく事があってさ」
 猪井は仕事でのちょっとしたミスを、上司に厭味ったらしく注意されたということを話した。その上司の言い方というのは、関係のない僕まで腹立たしい気持ちにさせた。しかし、こういう話をユーモアを含めて話すことの出来る猪井が、僕は好きだった。
「そっちはどうなんだ」
 猪井が言う。
「またバイトしようとか、これからどうしていきたいとかさ」
「今はとくにないかな」
「自分のペースでやっていけば良いと思うぜ。前だって、初めてのバイトで三ヶ月も続けたんだからたいしたもんだよ」
 猪井がドリンクホルダーに置かれた灰皿で煙草を揉み消す。その後も僕たちは他愛もない話を続け、市内を一周すると、そのまま自宅まで送ってもらい、別れた。

 相変わらずに僕には気力というものが抜け落ちたままだった。薬を飲み始めてからもう一ヶ月ほどが過ぎたが、回復する兆しは一向に無い。あれほど楽しかった小説の執筆も、まるでやる気が起きない。僕は一体どうしてしまったのだろうか。それでも、書きたい、という意欲はあるのだ。しかしどうしても手が動かない。せっかく見つけた僕の生きがいとも呼べる物を失ってしまったと思った。僕は読書もしなければテレビもみない、インターネットすらしない毎日を過ごすことになった。
 それからさらに三ヶ月ほどが過ぎると、以前の僕がなんだったのかと思うくらいに、僕は以前の状態へと戻っていた。それが薬の影響であったのか、僕は本当に鬱病であったのかも、わからない。しかし、僕にはそんなことはどうでも良かった。また小説を書くことが出来る。それだけで十分だった。しかし、小説を書こうと久しぶりにノートパソコンを開いたとき、ある考えが脳の表皮を掠めた。以前、インターネットで精神薬は科学的なロボトミー手術であるという記事を読んだことを思い出す。ロボトミー手術というのは、側頭部に穴を開け、その穴から入れたメスで、前頭葉を切除してしまうという、今から八十年ほど前に行われた手術のことである。精神疾患を抱えた患者に対して行われたが、重大 な副作用なども認められ、今では禁忌とされている手術である。ある患者は手術を受けたことによって感受性が著しく低下したとの事もその記事には書かれていた。精神薬は、その手術となんら変わりは無いという内容の記事だった。
 僕は不安になった。僕にそんな大袈裟な才能があるとは思わないが、もし精神薬の影響で感受性が低下していたとしたら、僕にとっては大きな問題だ。実際に小説の続きを書いてみたが、これまで通りに書けているとも思えるし、書けていないとも思えた。これは僕の気にしすぎであろうか。それとも実際に僕の感受性は低下してしまっているのか。こんなことを精神科医に相談したところで、そういうことはあるかもしれないしないかもしれないとの答えが返ってくるに決まっている。小説を書くことに対して薬の影響があるかどうかなんて誰にもわかるはずがない。
 もはや僕には、それを確かめる術は無かった。

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内容の言及以前に、改行が少なすぎて読む気が失せます。
正直、読みづらい。

PCの画面で文章を読む側の人間の目がわかってない
70ヶ月前
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>>2
ごめんなさいっ
改行しますっ
70ヶ月前
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ふぇ~ん…ぜんぜん面白くないよぉ~
67ヶ月前
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>>4
ふぇーん。。。

次のは絶対おもしろいの書きますっ!!!!!
67ヶ月前
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