• うにゅほとの生活2597

    2019-01-16 23:484時間前

    2019年1月16日(水)

    「──たッ!」
    柱とテーブルの隙間を通ろうとして、内くるぶしを思いきりぶつけてしまった。
    「!」
    うにゅほが即座に膝をつく。
    「みして」
    「はい……」
    「かわ、すこしめくれてる」
    「マジか」
    「さびおはるね」
    「お願いします……」
    子供みたいで、すこし恥ずかしい。
    そんなことを思っていると、
    「子供じゃねえんだからよ、もうすこし気ィつけろよな」
    と、父親に呆れ顔で言われてしまった。
    「子供じゃなくたって、怪我くらいするだろ……」
    「鏡見ろ、鏡。同じこと言えるか?」
    「──…………」
    反論できない。
    「でも、おとうさん、こないだこゆびぶつけてちーでてた」
    「うッ」
    「おかあさんに、さびおはってもらってた……」
    父親が目を逸らす。
    「人のこと言えないじゃん」
    「俺はいいんだよ、俺は」
    その様子を見ていた母親が、誰にともなく呟いた。
    「ほんと、親子だねえ」
    「──…………」
    「──……」
    父親と顔を見合わせる。
    面立ちも性格も似ていないが、やはり似通う部分はあるらしい。
    苦笑していると、
    「どうでもいいけど、ドラマ見てるんだから静かにしてくんない?」
    ソファに寝転がった弟に注意されてしまった。
    我が家の日常は、たいていこんな感じである。




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  • うにゅほとの生活2596

    2019-01-16 00:02

    2019年1月15日(火)

    「♪~」
    うにゅほが手際よくダスキンモップでホコリを拭い取っていく。
    最適化され、ルーチンワークと化した自室の掃除は、ものの十分ほどで終わりを告げる。
    たまには手伝おうかと思わなくもないのだが、逆に邪魔をしてしまいそうで、あまり申し出たことはない。
    「──…………」
    うにゅほの鼻歌を尻目に無言でキーボードを叩いていると、

    ゴツン!

    「た!」

    ──ぶおおおおおおおおッ!

    寝室のほうで、何かが唸り声を上げ始めた。
    「くうきせいじょうき、おこった!」
    「足でもぶつけた?」
    「ぶつけた……」
    自室にある加湿空気清浄機は、衝撃を与えると、直後にニオイセンサーランプが真っ赤に点灯し、激しく吸気を行い始める。
    それが、怒ったように見えるらしい。
    「ごめんなさい……」
    見れば、うにゅほが空気清浄機に頭を下げていた。
    毎度のことだが、ちょっと面白い。
    「空気清浄機、許してくれた?」
    「まだ……」
    「ダスキンで撫でてあげな」
    「うん」
    モップのパイルが、空気清浄機の上部を優しく撫でていく。
    しばらくして、
    「あ、ゆるしてくれた」
    ニオイセンサーランプが緑色に戻り、唸るような轟音も鳴りを潜めた。
    「よかったな」
    「うん」
    「足、痛くないか?」
    「だいじょぶ」
    「今後は気をつけるように」
    「はーい」
    この空気清浄機も、既に四年選手だ。
    大事に使わなければ。




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  • うにゅほとの生活2595

    2019-01-14 23:40

    2019年1月14日(月)

    ──ぴぴー! ぴぴー! ぴぴー!

    ファンヒーターが電子音を鳴り響かせる。
    「灯油切れたか」
    「!」
    うにゅほが、期待に満ちた目をこちらへ向ける。
    「はいはい、いま汲んできますから」
    「わたしもいくね」
    「気にしなくていいぞ。今日、寒いし」
    うにゅほは、俺の手に付着した灯油の匂いが好きである。
    この冬も何度嗅がれたやら。
    「でも」
    「帰ってきたら、あっためてくれ」
    「わかった!」
    こうでも言わなきゃ、ついてくる。
    その気持ちは嬉しいのだが、俺としては、うにゅほに寒い思いをしてほしくない。
    灯油を汲んで戻ってくると、
    「おかえりなさい!」
    ぎゅー。
    「あっためー……」
    正面から抱きすくめられた。
    「××、灯油タンク入れてから」
    「あ、そか」
    ファンヒーターに灯油タンクを戻し、チェアに腰掛ける。
    膝をぽんぽんと叩いてみせると、
    「うへー……」
    うにゅほが、対面する形で、俺の膝を跨いで腰掛けた。
    「あっためますね」
    「お願いします」
    ぎゅー。
    「おきゃくさん、ひえてますねー」
    「今日、ほんと寒いわ……」
    「とうゆ、いれてきてくれて、ありがとね」
    「……嗅ぐ?」
    うにゅほの鼻先に、右手を差し出す。
    「かぐ!」
    ふんすふんす、
    はー。
    ふんすふんす、
    ほー。
    灯油の匂いを嗅いで幸せそうなうにゅほに抱き締められながら、俺も幸せな気分に浸るのだった。




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