• うにゅほとの生活2757

    2019-06-25 23:368時間前

    2019年6月25日(火)

    風呂上がりに窓際で涼んでいると、どこからか懐かしい音が鳴り響いた。
    それは、リコーダーの音色だった。
    「どっかで子供がリコーダーの練習してる」
    「ほんとだ」
    「ぶんぶんぶん、だな」
    「ぶんぶんぶん、はちがとぶー」
    運指が複雑になる"おいけのまわりに"の辺りからbpmが下がるのも可愛らしい。
    「こうしてると、いろんな音が聞こえてくるな」
    「うん」
    まず意識にのぼるのは、断続的に響くゴルフの打球音だ。
    ゴルフ練習場から程近い我が家では、実に聞き慣れた音である。
    さらに集中すると、げこげことカエルの鳴き声が耳朶を打つ。
    「かえるかな」
    「虫の音も混じってる気がする」
    「かわでないてるのかな」
    「たぶん」
    近場を流れる小川へ赴けば、きっと、大合唱が聞けるのだろう。
    行く気はさらさらないが。
    しばし夜の音に聞き入っていると、
    「あ、ぼうそうぞくだ」
    「暴走族だなあ……」
    空吹かしの音が高らかに響き渡る。
    やかましいことこの上ないが、風物詩と言えば言えなくもない。たぶん。
    「……窓閉めるか」
    湯冷めしてもつまらないし。
    「わたし、ねるへやのしめてくるね」
    「頼む」
    手分けして自室の窓を閉め、しばらくのちのことだった。
    「──あ、パトカーのおとする」
    「誰か呼んだかな」
    あるいは、単純に聞きつけたのかもしれない。
    自分はここにいるのだと喧伝しているようなものだし。
    「つかまるかなあ」
    「捕まっても、またやるよ。正の方向で承認欲求を満たせないんだから」
    「そか……」
    暴走族なんて、どうだっていい。
    卓上鏡を覗き込みながら、そろそろ床屋へ行くべきか悩む俺だった。




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  • うにゅほとの生活2756

    2019-06-24 23:36

    2019年6月24日(月)

    「なんか、手が熱い……」
    「てが」
    「××、こっち来て」
    「?」
    手招きに応じ、うにゅほが隣へやってくる。
    そして、俺の手を取り、指を絡ませた。
    「ほんとだ、あつい」
    「だろ」
    「ねつあるのかな」
    「熱はないと思う。風邪っぽくないし」
    うにゅほが俺の首筋に鼻先を寄せる。
    すんすん。
    「かぜのにおい、しないね」
    「手だけ熱いんだよ」
    「へんなの」
    「こうすると、もっと熱いぞ」
    うにゅほの頬を、両手で包む。
    だが、触れない。
    僅か数ミリではあるが、手のひらとほっぺたのあいだに確かな距離を作る。
    「……?」
    小首をかしげたそうに、うにゅほが口を開く。
    「さわんないの?」
    「十秒待って」
    「はい」
    しばしして、
    「──あつ!」
    「熱いだろ」
    「すーごいぽかぽかする……」
    「触れるより、触れないほうが、なんか熱が伝わるんだよ」
    「なんでだろ」
    「さあー……」
    理屈はよくわからない。
    「◯◯、てーからなんかでてるきーする」
    「気かな」
    「き」
    たぶん違う。
    手が熱いと、どうにも落ち着かない。
    たまにある症状なので、なんとかならないものか。




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  • うにゅほとの生活2755

    2019-06-23 23:51

    2019年6月23日(日)

    今日の俺は肉食である。
    「××、ステーキ食いに行こう!」
    「いいねー」
    「決まりだな」
    手早く身支度を整え、家を出る。
    「今朝から肉が食べたくて食べたくて仕方なくてさ」
    「あさから?」
    「起きた瞬間から」
    「げんき……」
    「生来、胃腸が丈夫なもので」
    「にく、ダイエットにいいって、テレビでいってた」
    「食べるプロテインみたいなもんだしな」
    「とうしつないんだって」
    「糖質はほとんどない。腹にも溜まるし、糖質制限するなら良いメニューじゃないかな」
    「ごはんたのんだらだめだよ」
    「頼みません」
    行きつけのステーキハウスへ赴き、600gのステーキと、300gのヒレステーキを注文した。
    「300gで大丈夫か?」
    「だいじょぶ」
    うにゅほは、普段、200gしか頼まないのだ。
    「無理そうなら早めに言うこと」
    「はーい」
    本当に大丈夫かな。
    密かに心配していたのだが、それは杞憂だった。
    「はー……」
    300gのヒレステーキをぺろりと平らげ、うにゅほが自分のおなかをさする。
    「くったー、くったー」
    「おなか、ぽっこりしてるぞ」
    「うへー」
    俺も、人のことは言えないけれど。
    0.6kgの牛肉を摂取し、俺の"肉欲"はようやく治まった。
    「──さて、これからどうするか」
    「どっかいく?」
    「走りながら考えよう」
    「はーい」
    結局、さしたる目的もなくヨドバシカメラへ寄り、店内を一時間ほどぶらついた。
    すこしは腹ごなしになったかもしれない。




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