• うにゅほとの生活2783

    2019-07-21 23:503時間前

    2019年7月21日(日)

    理想の枕を手に入れるため、オーダーメイド枕の専門店へ赴いた。
    「では、こちらに横になっていただけますか?」
    「はい」
    枕選びのプロであるピローフィッターの言葉に従い、靴を脱いでベッドに横たわる。
    「よろしくおねがいします……」
    うにゅほが、ピローフィッターにお辞儀をする。
    「あ、おまかせください」
    ピローフィッターが、戸惑いながら会釈を返した。
    「──…………」
    ちょっと恥ずかしい。
    三十分ほどかけてフィッティングを終え、すこし固めの枕を購入する運びとなった。
    「いままでずっと低反発だったから、ちゃんと寝れるか不安だな……」
    それなりに高かったし。
    「ていはんぱつ、しっくりしなかったの?」
    「微妙だった。よくある、首元が膨らんでるタイプだったろ」
    「うん」
    「あのせいで、こう、圧迫される感じがあってさ」
    「あー」
    「帰ったら、ためしに昼寝してみよう」
    「もう、ゆうねだね」
    「だな」
    帰宅し、オーダーメイド枕を開封する。
    うにゅほが、枕をぽすぽすと叩きながら、
    「ほんとだ、かたいね」
    「パイプが入ってるらしい」
    「パイプ?」
    「ストローを細かく切ったみたいなやつ」
    「あ、みたことある」
    「よくある素材だからな」
    マットレスの上にオーダーメイド枕を設置し、横になる。
    ざら。
    枕の中から小気味良い音が響いた。
    「……じゃあ、三十分経ったら起こして」
    「はーい」
    アイマスクを装着し、そのまま目を閉じた。

    ──三十分後、
    「◯◯、じかんだよー」
    「んが」
    寝てた。
    「ねごこち、いい?」
    「──…………」
    「わるい?」
    「わからん……」
    「わからんの」
    「劇的に何かが違うってわけでもないかなあ」
    「そなんだ……」
    三十分程度の仮眠では判断がつかない。
    評価を下すには、最低でも、一晩は使用する必要がありそうだ。




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  • うにゅほとの生活2782

    2019-07-21 01:20

    2019年7月20日(土)

    ギシギシと軋む体を持て余しながら、高らかに宣言する。
    「──筋肉痛だ!」
    「きのう、すーごいきんとれしてたもんねえ」
    「頑張りました」
    「からだ、だいじょぶ?」
    「大丈夫、大丈夫」
    右腕を曲げ、力こぶを作る。
    「筋肉痛は、超回復の前段階だからな。あると、むしろ安心する」
    「そなんだ」
    うにゅほが、うんうんと頷く。
    「きんとれ、きょうもするの?」
    「今日はしない。回復する前に酷使すると、筋肉が成長しないから」
    「……◯◯、むきむきなるの?」
    「ムキムキになりたいわけじゃないんだけど……」
    「ちがうの?」
    「違う」
    うにゅほが、俺のふくらはぎに触れる。
    「むきむき」
    「そこは最初からだから」
    「そだね」
    「いままで、食べない方向でのダイエットをしてきたんだけどさ」
    「うん」
    「限界があることに気づいて……」
    「おそい……」
    うにゅほが、呆れたように口を開く。
    「ずっとたべないの、できないもん。だめだよ」
    「──…………」
    「わたし、むりしないでって、ずっといってたのに……」
    「はい……」
    どんどん肩身が狭くなっていく。
    「……その、これからは体を動かす方向でダイエットをしていきますので……」
    「よろしい」
    「続けていいですか……?」
    「はい」
    ほっと胸を撫で下ろし、説明を再開する。
    「筋肉をつけて、基礎代謝を上げる。そうすれば、黙ってても痩せる」
    「あ、きいたことある」
    「ダイエットの基本ではあるからな」
    「じゃあ、やっぱしむきむきになるんだ」
    「ボディビルダーを目指すわけじゃないけど、ある程度は仕方ない」
    「きんとれ、むりしたらだめだよ」
    「はい……」
    うにゅほに心配をかけないよう、無理せずトレーニングを続けていこう。




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  • うにゅほとの生活2781

    2019-07-20 00:12

    2019年7月19日(金)

    「◯◯ー」
    「うん?」
    「これ、でてきた」
    うにゅほが差し出したのは、見覚えのあるボイスレコーダーだった。
    亡くなった父方の祖母との最後の一年を記録したものだ。
    「おばあちゃんのこえききたいけど、でんちない……」
    「あー」
    ボイスレコーダーを受け取り、スライド式のUSB端子を伸ばす。
    「全部、パソコンに取り込んじゃおう。データ飛ぶの怖いし」
    「おねがいします」
    ボイスレコーダーをPCに接続し、すべての音声データをHDDにコピーする。
    「よし、と」
    「こえ、きける?」
    「再生してみようか」
    「うん」
    耳掛けイヤホンをうにゅほとシェアし、適当なファイルを再生する。
    流れ出したのは、祖母と両親との病室での会話だった。
    「──…………」
    「──……」
    無言で聞き入る。
    三年ぶりに聞く祖母の声は、細く、いまにも灯火が消えてしまいそうだ。
    乗り越えたと思っていた。
    何も感じないと思っていた。
    だが、改めて聞くと、すこしだけ胸が苦しくなった。
    俺ですら、この体たらくなのだ。
    「──う、ふぶ……」
    隣を見る。
    うにゅほが、涙で頬をべしょべしょに濡らしていた。
    「あー」
    「ひッ、うぶ、うええ……」
    再生を止め、ティッシュでうにゅほの目元を拭う。
    そして、
    「ほれ」
    うにゅほの頭を掻き抱くように、強く抱き締めた。
    「懐かしいな」
    「うん……」
    「今度、また聞こうな」
    「──…………」
    こくり。
    「よし」
    頭を軽く撫でてやる。
    声を聞いた瞬間に泣き出してしまうのでは、内容どころではない。
    祖母の声を収めた音声データは、しばらく封印しておこう。




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