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2021年3月2日(火)
「──よいしょ、と」
2リットルのペットボトルが六本詰まったダンボール箱を抱え、帰宅する。
お茶が切れていたのだ。
「おかえ、り──」
迎えに出てきたうにゅほの表情が、見る間に厳しくなっていく。
「◯◯」
「はい……?」
「だめでしょ。おなか、まだいたいのに」
「でも、だいぶ良くなったし……」
「ゆだんしたら、だめ。なおりかけがかんじん」
正しい。
正しいが、買わなければ飲み物がないのだ。
まあ、ペットボトルに水を汲んで飲めばいいだけのことなのだけれど。
「わかった。治るまで安静にしておくよ」
「うん」
うにゅほが、安心したように微笑む。
「じゃあ、これ、わたしがはこぶね」
「えっ」
「?」
小首をかしげる。
「大丈夫か……?」
2リットル×六本で、12kg。
うにゅほの細腕で持ち上がるものなのだろうか。
「だいじょぶ、だいじょぶ」
床に下ろしたダンボール箱に、うにゅほが手を掛ける。
「んぎ」
ダンボール箱が、わずかに浮いた。
「……行ける?」
「いけ、──る……!」
よたよた、ふらふら。
腰に悪そうな体勢で、うにゅほが階段を上がっていく。
あまりに危なっかしい。
俺は、うにゅほの背中に手を添え、万が一に備えた。
幸い、何事もなく二階へと辿り着く。
「ふひー……」
「お疲れさま。でも、ひとりのときは重いもの持って階段上がらないように」
「はーい」
わかっているのか、いないのか。
気を揉む俺だった。
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ヤシロヤ──「うにゅほとの生活」保管庫
小説家になろうで異世界小説始めました

異世界は選択の連続である ~自称村人A、選択肢の力でヒーローを目指す~
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