2021年3月5日(金)
「さんごのひ」
「……?」
「さんがついつか、だから」
「あー……」
ここしばらくの体調不良で、いまいち時間の感覚が薄い。
「もう3月5日なのか」
「うん」
「道理で暖かい日が多いわけだな」
「さんかんしおん」
「……よく知ってるな」
「うへー」
「すごいぞ」
「テレビでいってただけだけど……」
「テレビで見ようが、ネットで調べようが、知識は知識だろ」
「そういうもの?」
「そういうものだよ」
「そか」
ベッドから身を起こす。
「おきてだいじょぶ?」
「寝過ぎてもう眠れないし、いい加減背中が痛いよ」
「せなか、もむ?」
「あとで頼むよ。まずはストレッチだな」
両腕を左右に伸ばし、小さく円を描くように回す。
肩甲骨同士を近付けるように胸を張ったあと、今度は両腕を前に伸ばす。
肩と背中のストレッチだ。
「ふー……」
運動不足のためか、僅かな動きでも体が熱くなってくる。
「◯◯」
「うん?」
「あのね」
「うん」
「さんごって、なに……?」
「あー」
「いし?」
「まあ、宝石として珍重されたものでもあるからな」
「むかしばなしの、おたからに、はいってるイメージある」
「わかる」
「うみの、へんないしなの?」
「いや、実際には生き物なんだよ」
「いきてるんだ……」
「サンゴが絶滅の危機とか、聞いたことないか?」
「あるきーする」
うにゅほが、うんうんと頷く。
「べんきょうになる」
「それはよかった」
いつか、俺がうにゅほに教えを請うこともあるのだろうか。
最近、いろいろなメディアから知識を蓄えているから、その日は案外近いのかもしれない。
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ヤシロヤ──「うにゅほとの生活」保管庫
小説家になろうで異世界小説始めました

異世界は選択の連続である ~自称村人A、選択肢の力でヒーローを目指す~