うにゅほとの生活1000
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うにゅほとの生活1000

2014-08-23 23:43

    2014年8月23日(土)

    「──……1000回」
    「?」
    俺の呟きに、うにゅほが顔を上げた。
    「今日、日記を書くと、ちょうど1000回になるんだ」
    「へえー」
    うにゅほが小さく頷き、
    「すごいね!」
    と言った。
    ああ、これは、あんまりわかってないときの「すごいね」だ。
    ちょいちょいと手招きする。
    「……?」
    俺の両肩に手のひらを乗せながら、うにゅほがディスプレイを覗き込んだ。
    「1000回分の日記があるってことは、
     その日なにをしてたのか、1000日前まで遡って確認できるってことだよ」
    「おー」
    「試しに、適当な日付け言ってみな」
    「うと……」
    しばし思案し、
    「きのう」
    「昨日はポニテで遊んだことくらいしか書くことなかっただろ」
    「じゃ、いちねんまえ」
    「了解」

    2013年8月23日(金)
    どうやら、検査入院をしていた弟が退院した日の出来事のようだ。

    「おもしろいね!」
    「そうだろう、そうだろう」
    すこしだけ鼻が高かった。
    「じゃ、じゃ、にねんまえは?」

    2012年8月23日(木)
    試しに買ってみたものの、半端じゃなく不味い塩レモン味の飴の対処に困っていたらしい。

    「あ、おぼえてる」
    「残りの飴ってどうしたんだっけ」
    「すててないよ」
    「捨ててないよな……」
    今もどこかに仕舞われているのだろうか。
    「さんねんまえは?」
    「××、三年前はまだいなかったろう」
    「あ、そか」
    ずっと一緒にいたような気がするのだが、まだ三年しか経っていないのだ。
    「じゃあ──、さいしょのひ!」
    「はいはい」

    2011年11月25日(金)
    うにゅほが、シフォンケーキを作ってみたいと言い出したときのことが書かれていた。

    「──…………」
    「うー、あんましおぼえてない」
    「……俺は、覚えてる。思い出した」
    「?」
    「これ、××が家に来て、まだ一ヶ月くらいのころだよ」
    「うん」
    目蓋を閉じる。
    脳裏に、あのときのうにゅほの姿が映し出された。
    「まだ、ぜんぜん慣れてなくて、喋るときも単語だけだったり、オウム返しだったり──」
    「そだっけ……」
    うにゅほが苦笑する。
    すこしは覚えているのだろう。
    「だから、さ。
     したいこと、やってみたいことを初めて言ってくれたから、俺、すごい嬉しかったんだよ」
    「──…………」
    「んで、なんとなくそれをメモったら、いつの間にか日記になってました」
    なんだか照れ臭くなって、痒くもない頭を掻いた。
    「……◯◯、にっき、よんでみていい?」
    「最初から?」
    「うん」
    全部は無理だと思うけど。
    なにしろ、毎日毎日増えていくものである。
    チェアを譲り、うにゅほの頭を撫でた。
    「──…………」
    PCが使えなくなってしまった。
    読書する気分でもなかったので、リビングのソファで眠くもないのに昼寝をしていると、うにゅほがふらふらと現れた。
    「……いっかげつぶん、よんだ」
    「おつかれさん」
    残り三十二ヶ月ぶんである。
    「全部読まなくていいんだからな」
    「うん……」
    たまに、今日みたいな遊びをすることができれば、それだけで十分に価値がある。
    これからも可能な限り書き続けていこう。



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