自作SS「AK」(Twitterからの加筆修正版)
閉じる
閉じる

新しい記事を投稿しました。シェアして読者に伝えましょう

×

自作SS「AK」(Twitterからの加筆修正版)

2020-01-30 13:12

    「AK」

    瞬間、視界が揺れた。
    頭に流れる血液が、重力に従い一気に流れ落ちる。
    「血の気が引く」
    その言葉を今、身をもって実感していた。

    絶望としか形容しようのない状況にいる。

    「最後まであきらめるな。」よく耳にするこの言葉。
    誰もが一度は嘯(うそぶ)いたことがある、無責任な一言。
    そんな言葉を、今の俺にかけるやつなど一人といないだろう。
    例えば100m走。
    ウサイン・ボルトが横に並んだ瞬間、誰も希望など持つまい。
    「万が一」すらあり得ない状況。
    そう…今の俺はそれに近い。
    まだ始まったばかり。いや、始まってすらいないのだ。

    「$%&$&#…」

    不意に聞こえた言葉で意識が帰ってくる。
    よく聞き取れなかったが、内容は考えるまでもない。始まりを告げる声だ。
    始まってしまった。既に敗者が決まっているゲーム、消化試合が。今、この場所で。
    でもそれを知るのは敗者のみ。…なんという皮肉だろうか。
    見慣れたいつものこの場所が、今はひどく無機質に感じた。


    「…ない」

    そう呟くしかなかった。
    目の前に広がる列、列、列、列。俺の目指す場所は、遥かに遠い…
    何人かの参加者が、横目で俺を見る。真剣そのものだ。
    誰もが手の内をひた隠し、誰もが誰もを疑い、伺っている。
    …ひたすらに沈黙。それはそうだろう。
    何せこのゲームの敗者には恐るべき罰が待ち受けているのだ。
    いつもの日常は、この無機質な部屋が覆い隠してしまった。
    瞬き一つですら、今はやけに目立つ。
    誰も、唯一の敗者になど、なりたくない。


    「…ない」

    また呟いた。
    数人訝(いぶか)しげに、こちらを見やる。先ほどよりも幾分多い。
    そんな目で見ても、結果は変わらないというのに。
    他の参加者はと言えば、どうやら戦いは次のステージへと進んでいるようだ。
    ある人は、わざとらしくおどけ、またある人は、無表情に徹している。
    はっ。なんて滑稽なんだろう。
    そんな駆け引き、すでに意味など無いというのに。
    俺はただ、俺の場所を恨めしく睨(にら)むばかりだ。


    「…ない」


    3度目だった。

    一心不乱に列に群っていた有象無象が、一斉に顔を向けた。
    いや、実際の所はよくわからない。正直、そんなことはもうどうでもよかった。
    部屋と同じく、俺の心はもはや鉄だ。何も響かない。
    路傍(ろぼう)の石が一つ、醜悪な笑みで俺の真似をする。
    「ない」
    煩(うるさ)い。俺は黙っている。
    別の石も続く。
    「ない」
    雑音が頭を掻きむしる。無くした心に何故か響く。
    それでも俺は、沈黙を貫く。


    そして…


    「…ない」


    4度同じ言葉を呟いたとき、俺は…






    ……
    ………






    七並べに負けた。

    なけなしのお札が自販機に吸い込まれた。


    -----------------------------------------------------------------------------------




    はい。どうも、ニルギリです。
    タイトルにある通り、昔Twitterに投稿したSSをブログ用に加筆修正したものです。
    …のつもりだったのですが、書いてるうちに大分変わっちゃいました。
    でもオチは一緒なので、問題ないかな(苦笑
    正直、加筆修正と書いてありますが、直さない方が良かった可能性もあったりします。
    それでも満足な出来にはなっています。自分的には、ですが。
    オリジナル版は30分。加筆修正版は2時間程かかってます。これは笑える。
    僕の文章力はこれが限界らしいですね。

    また、お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、
    当作品は、昔に実況させて頂いたフリーゲーム「題名は無い」に
    大分影響を受けています。(さいごのやつ)
    気になる方は是非そちらもご覧ください。→sm24055379
    実況初期の朗読でかなりへたくそですが…(苦笑2回目

    ちなみにブログに載せると公言してから半年くらいかかりました。
    他にもやりたいこと、やらなきゃいけないこと山積みですが
    少しずつ消化していきます。はい。

    すこしでも面白いと思ってくれた方は
    ツイートでもなんでもしてください。上に共有ボタンがついてるはずです。
    フリーノベルにしたい方も募集してます。

    …まあ、冗談はさておき。
    ご一読ありがとうございました。
    最後に↓にTwitter時のオリジナル版を載せておきます。
    ニルギリさんの成長(?)をご覧ください。
    と言っても、Twitter版のは修正版程の長文には向いてないから削ったっというのも
    あるし、ラフな文を意識したのもあるので、完全劣化というわけではないんですけど。

    では、またどこかで。



    -----------------------------------------------------------------------------------




    絶望の中にいた
    いや、始まった時から希望など欠片もなかった。
    目の前に広がる列、列、列、列。

    嘲(あざけ)りにも取れる嗤(わら)いを浮かべ
    皆が嬉しそうに決められた列に並ぶ。
    僕の場所だけ…遥か遠い…

    「…ない」

    そう呟くしかなかった。
    …あり得ない。
    そんな状況が目の前に広がっている

    そんな僕の心境などには構いもせず
    皆は一心不乱に列に群がる。

    「…ない」

    また呟く…
    こんな事、あり得るはずがない。
    (自分だけ…どうして自分だけ…)
    遠くにある自分の場所を恨めしく睨(にら)み、そして…

    「…ない」

    3度目だった。

    皆の中の一人が、醜悪な笑顔を浮かべ僕の真似をする。
    「…ない(笑)」
    嗤いが起こる。僕は、ただ黙っている。
    「…ない(ニヤニヤ)」
    他の奴も真似をする。僕は、ただ黙っている。

    分かっていたんだ。
    そう、初めから希望なんて欠片もなかったんだ。
    飛び交う嫌がらせも、僕には一つとして意味などなかった。

    「…ない」

    4回同じ言葉を呟いたとき、僕は…

    七並べに負けた。


    広告
    コメントを書く
    コメントをするには、
    ログインして下さい。