『リズと青い鳥』は山田尚子監督の「オナニー作品」だ
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『リズと青い鳥』は山田尚子監督の「オナニー作品」だ

2018-04-22 17:50
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京都アニメーションが贈る劇場最新作、「響け!ユーフォニアム」の
スピンオフという位置づけとなる「リズと青い鳥」を鑑賞してきた。
レビューなどというものを書ける身分ではないが、
興奮冷めやらぬ状況の為、文字に起こして頭を冷やそうと思う。

ブロマガ著者:にとぱん
個人制作ながら商業アニメと同じ土俵に立つというコンセプトで
1クールアニメを企画・制作・成功を収めたアニメ監督。
アニメ作品:「へんたい!」「チンアナゴさん」




タイトルだが、下品で目を引く表現を使わせて頂く。
しかし、これは紛れもない客観的事実であり、
あながち的外れではないと思うのでこの表現に留めておこうと思う。

はじめに断っておくが、「オナニー作品」が100%悪であるということを言いたいわけではない。
世の中には色々な趣味嗜好の方が存在し、本番より一人での行為を覗き見るのが
大好きな人もいるわけであって。
私はそのような嗜好を否定するつもりない。
事実、私はオナニーが大好きである。

が、あえてこの作品は「オナニー作品」という表現を
悪い意味での言葉として使わせて頂く。

なぜならば、この映画が決定的に「ハッピーエンドではない」からだ。

「いきなりネタバレかよ」
「え?何みてたの?」

こう思っている方々、安心して頂きたい。

何も私はこの作品のストーリーに関して「ハッピーエンドではない」と
言っているわけではない。

この映画に関わったスタッフ、見てくれたファンが「ハッピー」になるか、
もっというと、まだ見ぬ潜在顧客まで「ハッピー」にするつもりがあるのかという点である。

簡単にいえば、この映画が「売れるかどうか」という点である。


広告の掛け方からして、あまり全面的に売り出そう!という作品ではないのかもしれないし、
こんなこと言うのは余計なお世話以外の何物でもないことは分かっている。

だが、私は京都アニメーションが「世界で最も優れた美しい映像を創るスタジオ」と信じて疑っていないし
山田尚子監督に対して日本を代表する映画監督になって欲しいと心から願っているし、その素養があると確信している。

そのポテンシャルとコストから考えて、本作品は視聴者を選びすぎる。
儲けにもならないし実績にもならない。
前衛的で挑戦的な「知る人ぞ知る作品」にはなり得ても
「誰もが知っている名作」にはなり得ない。
まずこの映画を見た私が他人に奨めようとはあまり思わない。
この映画を理解するには予備知識が多すぎるからだ。

普通の人が映画に行く動機なんてものは、
オタクからしてみたら本当にどうでもいい理由だったりする。

ジブリだから。宮崎駿だから。プリキュアだから。声優にあの有名人が起用されるから。等々。

私はそこに「京アニだから」「山田監督だから」を追加したいのである。

詳しいことなど分からない。
誰が作ったかも分からない。
原作など知らない。

だが、最大級の興奮と快感、感動を与えられる。
それが映画のエンタメ性だと思っている。
皆さんはジェットコースターの設計者をご存じだろうか?
ジェットコースターはそもそも面白いのである。だから乗るのだ。
同様に、映画もそもそも面白くなくてはならないのだ。
ちなみにこの映画はどちらかというと「お化け屋敷」、つまりホラーに近いと私は思っている。
もちろん「お化け屋敷」に入る心境で映画館に足を運んだわけではない。
感想で尊いとか可愛いとか良かったとか言っている人の感覚が分からない。
何せ私は「お化け屋敷」に入った感覚なのだから。

少なくとも、「けいおん!」や「たまこラブストーリー」、「聲の形」では
それができていた。できていたのだ。
(現時点での最高傑作は「たまこラブストーリー」である。異論は認めない。)

その観点からしてこの映画の作り方も売り方も
「知っている人だけ見ればいい」といった具合に独りよがりすぎる。

それでは名実ともに世界一のスタジオにはなれない。
なって欲しい。
そういう意味で、この作品は「オナニー作品」だと言っている。

個人的に、自称「知っている」人間である私から言わせてみると、
この作品は言うまでもなく100点満点中100点であろう。

であるからして、尚更に惜しいのだ。

「君の名は。」で化けた新海誠監督を見習ってほしいものである。

さぁ、「オナニー作品」という過激なタイトルに釣られた
そもそも鑑賞する気がなかった諸君。

騙されたと思って見てきなさい。
これが私にできる最大限の布教活動である。


ちなみに、内容はJK二人(みぞれと希美)の青春のひと時を
ガラス越しに覗き見るというその手のフェチには溜まらない構成となっているため
「オナニー」という表現は中らずと雖も遠からずといった具合である。



以下ネタバレあり感想。


























ユーフォ2期とは何だったのか。

個人的に、みぞれと希美の関係はユーフォ2期で確固たるものになっていたと
解釈した為、まさか「ふりだしに戻る」的な観点から始まるとは思ってなかった。

冒頭の期待感。
希美を待っているであろうみぞれ。
足音だけでそれだと気づく。犬なのか。鳥なのか。
挨拶を交わすだけでもない。
しかし時々振り返っては互いに見詰め合い二人の存在を確認する。

なになに、こういう焦らしプレイ的な百合を見せてくれるの?www
もっとイチャイチャしていいんだよ?wwww
とか思いながら観ていた自分が浅はか過ぎた。

まさか聲の形でまざまざと見せつけられた
人間の潜在的暴力性・残虐性をこの作品でも突きつけられることになろうとは。

「本番(コンクール)なんて一生来なくていい…」

こう冒頭でみぞれが漏らすのである。

あれ、コンクール好きになったんじゃないの?
アニメ流行語大賞にも選ばれたよね??
何今更自分の世界に籠ろうとしてんの?

disjoint

んんん???
よく意味は分からんが、jointの否定系だなぁ?
二人はもう一心同体だと思ってたんだが…???

練習開始からの不穏な空気に首を傾げつつも
繊細な情景描写に釘付けとなる。



リズと青い鳥という絵本の話。

「これ(リズと青い鳥)は私たちに似てるよね」と希美。

もうこんな分かりやすいフラグはない。
「あぁ、逆なんだな。」
この時点でみぞれが希美に依存してるのではなく
その逆なんだろう、という流れになるのは分かる。

ということは、希美の成長が描かれないことには
この物語は報われないのだ。

他社の作品であるが「宇宙よりも遠い場所」で
めぐっちゃんが最終的に北極へ行ったように。

この作品では最終的にその結末が描かれていない。
二人は別々の道を歩き始め、そうなるかもしれないというところで終わっている。
余りにも余白が大きすぎる投げっぱなしジャーマンだ。


「まるで成長していない…。」

元々ユーフォ本編でもトラブルメーカーとしてヘイトを集めていた希美だが
終始私の中の安西先生がこう囁く。
「まるで成長していない…。」

きっと後輩からチヤホヤされて天狗になったんだろうなー、とか。
なんて薄情なんだろう、とか。
俺が2期で見たひた向きにみぞれを支える希美は幻だったのか、とか。
そんなことを思うわけだ。

普通の映画の展開なら。
あくまで普通の映画なら、だ。
自分の身の程を知った希美。
そこから切磋琢磨してなんとかみぞれに食らいついていこうとするであろう。
それがユーフォニアムの最大の魅力である熱血スポ根物語としての醍醐味だ。

しかし、希美は違う。
圧倒的な実力差を前にして受験へと敵前逃亡である。
いや、そこは練習しろよ、と。
ラストの「みぞれのソロを支える」があまりにも説得力がない。
一体何を根拠に言っているのか。
練習しなければ上手くはならない。
さらにそこには練習だけでは超えられない壁もある。
これはTVシリーズで突きつけた基礎中の基礎だ。
ドラゴンボールで強い相手を倒すには修行するしかないように、
吹奏楽は練習しなければ置いて行かれるだけなのだ。

みぞれに対して希美の描かれ方があまりにも凡人だ。
彼女は腐っても中学名門校の元部長兼エースであり他の子より頭一つ抜けた存在なのは決定的なのである。

夏紀も「みぞれも希美もエースって感じがしてカッコいい」と言っている。
夏紀は自分が低音のエースでないことを自覚しているのがまた切ない。
けど可愛い。一番好き。
でもキャラデザが圧倒的石田将也だった。夏紀先輩はもっと可愛いよ!!!

本作だけ見ると勝手に部活やめてまた戻ってきて
気分で大学決めるイヤな奴にしか見えない。
というか、本来希美はその程度の奴なんだと思う。


劇場では「綺麗なジャイアン」が見たい

しかし、映画、とりわけ劇場版アニメに対して聴衆が求めているのは
「綺麗なジャイアン」であって「醜い人間の本質」ではない。
希美の嫉妬も諦めも自己顕示欲もあまりにも生々しい。

寿司を食いに来た客に対して
「今から漁船に乗るぞ!」と言って
荒波の中船酔いし、魚の腸をえぐり取られるのを眼前で見せつけられ、
「実は寿司を握るのにはこんな過酷な工程が必要なんだよ?」
とか言われても
「うるせぇ、こっちは旨い寿司を食いに来たんだよ!!」
としかならない。
せめて最後に寿司を食わせてほしい。
本作にはそこがない。
最後のご褒美がない。
只々、天才と凡人の差を見せつけられて終わるのである。

「もうやめて!青い鳥のライフはゼロよ!!」

視聴した人は皆圧巻だったと思うが、
みぞれ覚醒後のソロの掛け合い。
真・めざめるオーボエ。
鬼のようなリズだった。
演奏でここまで人を絶望に叩き落とすことができるのかと恐ろしくなった。
無垢で、無慈悲で、残酷で…。
獅子が我が子を千尋の谷に落とすかの如く。
もう、フルー鳥ちゃん、「ピヨ…ピヨ…」ってwwww

ん、てか楽曲の解釈的にはオーボエがリズでフルートが鳥で合ってるよね?



最後に希美は何を言ったのか。

そんな描かれ方で、最後の最後に希美の一言で
みぞれの顔が明るくなる。
この一言が、意図的に伏せられていて何を言っているのかは
観客に委ねるということになっているようだが
正直、こんな打ちひしがれた凡人の希美にこの物語の悲劇性をひっくり返すほど
気の利いた一言が言えるわけがないと思う。

ラストの希美の一言が容易に想像できた人がいるのだろうか?
私は全く分からなった。
そもそも希美の決意としては「私がみぞれのソロを支えるから」と明言しているので
似た意味のことではないとは思うのだが…。

私なりに解釈…というか
もしこの作品を120分として残り30分私が作っていいというのなら
「明日からまた一緒に朝練しよう」と
踏ん張って貰いたいところである。
ちなみにみぞれちゃんのハっと嬉しい顔するのが
「私も音大行こうかな」のときと似ている。
だが「やっぱ音大行くわ」だとあまりにも浅はか過ぎるので
みぞれの望む、見放してなどいない、ずっと寄り添ってあげる的な言葉だったのか。
まぁそんな言葉が出てくるキャラとは思えないけれどw


最終的に「joint」となる。

でも自分が思ったことはやっぱり全然かみ合ってねーじゃん!
ということだった。
みぞれという天才が凡人の話題である「ハッピーアイスクリーム」を振っても
希美は「何?アイス食べたいの?」と全く理解していない。
結局みぞれは希美だけを見ていたわけではなかった。
サファイア川島やその他凡人の動きなど見て把握している。
一方で希美は周りのことなど全く見えていない。
だからフルート組の話題にはついていけるけれど、その他に対しては
「こうなんだろう」という思い込みで動いている。
みぞれのことを見ているようで全く見ていない。
「みぞれが希美のことを見ている」のを確認しているだけなのだ。


まさに1年のときみぞれに黙って辞めたように。
もっと周りを見ろ。そして成長しろ、お前は!!
ちなみにみぞれに本気出させる為に一歩引くことは
成長ではなく只のポジションの最適化である。
そしてまた、自分の実力の無さを隠すための守りでもある。
決してまだまだ成長といえる段階ではない。
なに、成長ってそんな必要なのかって?
いや、だからこちらは成長物語という「寿司」を期待しているのだ。

ちなみに楽器の反射で銃の標準に見立てて
指鉄砲を撃つシーンは、直前に「いぬやしき」を見ていたら
「やべぇwwこの二人ロボになって空中バトルし始めるんじゃねぇのかwww」
とハラハラするシーンである。


キャラデが変わってない滝先生www

そもそも、この結末は滝先生が始めから見抜いているのである。
希美に対して「もっとみぞれの音を聴け」(意訳:全然ついていけてねーぞ)
みぞれに対して「もっと歌え」(意訳:てめーの実力はそんなもんじゃねーだろ)

しかし、滝先生はできない人に「やれ」とは言わないのだ。
久美子のパートを地区大会から削ったように。
ところで久美子ちゃん髪切った?
ボリュームが抑えられていてすっごい可愛くなってたよ、久美子。

今回の場合はソロの掛け合いとして消去法的に希美が選ばれているのかもしれないが
それでもみぞれの本気になんとかついていけるくらいの根性はあると希美を見込んでいるはずである。

そこを、見たかった。
いや、これから何らかの続編で見られるのかもしれないが。
なのでこの作品単体では評価しようがない。
あまりにも結末が曖昧すぎる。
なんなら香織先輩よろしく「私にソロは吹けません」くらい言って貰わないと。
スッキリしない。
爽快感がない。
オナニーの先にあるのは満足感ではなく賢者タイムである。

願わくば山田監督にはこの高精彩な描写で以て王道の一本でヒット作を打ち出して欲しいものである。

P.S.
来場特典のカード。
みぞれ・のぞみ・麗奈が描かれている。
もちろん、みぞれは青い鳥、希美はリズの対比として。
で、麗奈は鹿wwww
というのも、動物は「羽ばたける存在」として描かれているから、
麗奈もまた「特別」な存在であるから、鹿なのだろう。
そして希美はその鹿が鳥に寄り添おうとしているのを遮っている。
嫉妬であり、傲慢である。
このリズ(希美)は青い鳥(みぞれ)に「飛び立て」と言うことはできないという
悲しい表れなのだ。


以上





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共感です。
ですが僕には希美はあまり悪くは思いませんでした。
みぞれの演奏で希美の立場を理解させられて、音大に行くのを諦めるのは普通のことだと思います。
そこからみぞれと一緒に音大を目指すのは何か違和感を感じます。希美のキャラに合っていない気がします。
まあ当然過ぎる行動だったとも思います。
それがどうであれ、物語の切り方は明らかに早かったと思います。
自分的には高得点の作品なんですが、友達には勧めにくい作品だというのも共感しました、良いブロマガでした、ありがとうございました。
最後に
みぞれちゃん可愛い
25ヶ月前
×
最初から最後まで共感しました。
僕も、この映画はスッキリしないなと思いモヤモヤしてました。
特に、希美が朝練やめちゃったところは納得いきませんね。
それが、希美というキャラクターなのかもしれませんが、だとしたらあまりに可哀想です。
ここでやめたことは10年20年経っても後悔し続けると思います。
別に結果的に音大に入れなくたっていいし、みぞれについていけなくてもいいですよ。
将来希美が、「あの時もうちょっとできたんじゃないか」と思ってしまうことが可哀想です。
このブロマガを読んで、自分が何にモヤモヤしていたのか気づけました。
本当にありがとうございます。
ちなみにユーフォシリーズは大好きですし、新作にもとても期待しています。
長文失礼しました。
22ヶ月前
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