声劇台本「雨男と晴れ女」
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声劇台本「雨男と晴れ女」

2020-06-17 08:59

    「雨男と晴れ女」


    作者:一時 初
    人数比率 ♂1:♀1
    上演時間 約15分


    登場人物

    林先生
    小学校のベテラン男性教諭 30代前半
    老成し落ち着いた雰囲気を持っており聞き上手。
    怒鳴ったり叱ったりすること無くしっかり話を聞いて答えてくれる大人なので、本人の知らないところで生徒や教師問わずとても信頼されている。
    台詞数 39

    藤先生
    小学校の新任女性教諭 20代前半
    今年から赴任してきた若く明るく美人という三拍子揃った人気教師。
    人と距離を詰めるのが上手くムードメーカーな存在だが、その距離の近さが災いして生徒達からも友達のような感覚で話しかけられるのが悩み。
    台詞数 40


    比率 男1:女1
    ●役表
    ・林 ♂:
    ・藤 ♀:



    本文


    (BGM 雨の音)

    藤N
    「あの先生が行事に参加する時にはいつも雨が降る、だから林先生はきっと雨男なんだよ」

    林M
    「私が教師として勤め始めてから、誰ともなしにそう噂されるようになったのは一体いつからだっただろうか。
    今思えば確かに、私が参加することとなった行事の日で、雨が降らなかったという記憶は、ほぼ無いと言っても過言ではないだろう」

    藤N
    「本日の天気は晴れのち曇り、所によって少しばかり雨が降るでしょう」

    林M
    「今日はたまたま雨だったが、職員室へ行く途中にすれ違う生徒達からは、どうか林先生は来月に予定している林間学校には参加しないでほしい、という切実な願いがこめられた視線を感じた。
    こういう子達に限って運動会やマラソンの時には絶対に来てねと、私を頼り念を押すことが多いのは、長年の教師生活で充分に身に染みていてわかってはいるのだが、やはりなかなかに心にくるものだ」

    (SE 扉の開く音 引き戸)


    「やったぁ!私職員室一番乗り~!」


    「残念でしたね、二番乗りですよ藤先生」


    「林先生いつの間に!?びっくりさせないでくださいよ。
    それにしても林先生の担当クラスは随分とホームルームが早かったんですね」


    「ええまぁ、雨も降り始めましたし、生徒たちを早く返すためにもできるだけ巻きで終わらせましたからね」


    「私のクラスも同じように、結構早めに終わらせてきたつもりだったのですけどね」


    「慣れてきたといっても藤先生は新任ですし、ここで負けてたら私の立つ瀬が無いですよ」


    「でも林先生以外の先生方よりも早く終わらせて来たんですよ、私もそれなりに凄くないですか?」


    「もしかして藤先生は朝礼の時に校長先生の話を聞いていらっしゃいませんでしたか。
    本日、他の先生方は林間学校の予定について話すからと、ホームルームを終わらせた後に指導室に集合しているみたいですよ」


    「すみません聞いてなかったです、これ絶対後で怒られますよね」


    「今私がやっている資料のまとめ作業を手伝っていただけるのでしたら口利きしておきますが……どうしますか藤先生」


    「林先生ありがとうございます!えっと……これ全部林間学校の資料なんですか?」


    「そうですね、なんでも例年お世話になってた施設が使えない可能性が出てきたみたいでして、その代わりに利用できそうな施設の候補一覧だそうですよ」


    「なんだか思っていたよりも候補施設ってあるものなんですね」


    「数は多いですけど選ぶ基準ははっきりしてますので、藤先生にはより分けていただけると助かります」


    「ちなみに林先生、そのより分ける基準とは」


    「一緒に行くことになるのは小学生の子達ですからね。
    体力的にも気分的にも、バスで行くとして長くても3時間辺りまでに着くような場所が望ましい感じですね」


    「確かにそうですよね、お出かけでいくら気分が乗っててもまだ小学生ですし、そこまで我慢強くはないですもんね」


    「えぇ、良くも悪くも正直で素直な子達ですよ、本当に」


    「林先生?」


    「いえなんでもありません、量だけは多いですから、さっさと終わらせてしまいましょう」


    「はい、そうですね」

    林M
    「藤先生は今年からこの小学校に赴任してきた新任の教師だ。
    彼女はいつも明るく笑顔でいることが多い人で、普段から生徒や教師の垣根を問わず声をかけられているのをよく見かける」


    「あ……ここなんて良さそう。きっとみんな楽しんでくれるだろうな~」

    林M
    「私とは随分と真逆だ、雨男と呼ばれるだけあって普段から浮かない表情をしていると良く言われる。
            あんたん
    その度に暗澹たる思いを抱き落ち込んでいるのだが、自分ではどう改善すればいいのかよくわからない。
    全く……自分のことながら情けなく救いようのない奴だと心からそう思う」


    「林先生!今のところ見た中で、この施設がロケーション的にも、体験出来る事の充実度的にも良いと思うんですけどどう思います?」


    「そうですね、確かに良い感じで検討の価値がありそうです。
    そうだ藤先生、なんならプレゼンテーション用にまとめてくださってもよろしいですよ」


    「え?良いんですか!?私も行ってみたいなって思ってたことですし、
    しっかりまとめて候補地として選んでもらえるように頑張りますよ、エイエイオー!」


    「もしその場所が選ばれなかっても拗ねないでくださいね藤先生」


    「もう私だって子供じゃないんですから、そう簡単に拗ねないですよ」


    「ふふふ、私なりの冗談ですよ」

    藤M
    「内心とてもびっくりした、林先生でも冗談を言う時ってあるんだ。
    林先生はとても大人で私も含め同僚の教師達にとても頼りにされている。
    今日だってこうして1人、資料のまとめを林先生がしているのも、それを見越した校長先生が信頼して託しているからだと私は思っている。
    林先生って本当に凄い人、いつかみんなから信頼される教師になりたいって考えてる私にとって彼は理想の教師の1人なのだ」


    「……藤先生?少しばかりボーっとしてますけど、気分でも悪かったりします?」


    「いえ!少しばかり考え事でボーっとしちゃいましたごめんなさい」


    「大丈夫ですよ藤先生、私もここ最近は考え事に耽ることが多々あるのでその気持ちはよくわかります」


    「林先生もなんですか?なんだか意外です」


    「雨が多いこの時期は特にね、なにせ私は雨男だそうだから」

    ──少しの間──


    「雨男って……あの雨男ですか?」


    「はい、藤先生もご存じの通り──」

    ──食い気味に──


    「──水溜りに普段は擬態しつつ、人が通りかかればその水飴のようなドロドロした姿を利用して道行く人を驚かせるというあの!?」


    「いえ違いますからね、なんですかそのB級映画に出てきそうな妖怪は、それにアメはアメでも美味しく舐める方の飴じゃない方ですからね」


    「ふふふ、私なりの冗談ですよ」


    「藤先生……さっきのやりとりの仕返しですか?」


    「それもありますけど、なんだか林先生元気がなさそうでしたから。
    頼りないかもしれないですけど、私で良かったら相談になりますよ」

    林M
    「藤先生のその一言が不思議と耳に残った。
    確かに私はこれまで1人で考えてばかりで、誰かに相談なんてした覚えが無かったのだと、そう気づかされたのだ」

    藤M
    「林先生のふと沈んだその表情がなんだか見ていられなくて、咄嗟の勢いで出た一言だった。
    でも私って頼りないみたいだから林先生が愚痴や相談を言ってくれるのか少し不安かも」


    「そうですね、折角ですし相談に乗ってもらいましょうか」


    「はい!どんな相談でもドンとこいですよ」


    「実は……来月の林間学校に同行するのを辞退しようと思っていましてね」


    「え?どうしてですか?確かに確定参加だとは言われてないですけれど、
    できるだけ多くの先生方が時間差毎に交代して生徒に同行するようにって言われてますよね」


    「まぁそうなのですけど。どうも私はこういった行事に参加しない方が生徒達の負担にならないのじゃないかと思うのですよ」


    「もしかして、さっき仰った雨男の話です?」


    「えぇ、生徒たちの間では私が行事に参加すると雨が降るというジンクスは確固たる物となっているみたいでして、あまり私は歓迎されないとそう感じてしまったのですよ」


    「そんなことないですよ!林先生はとても大人な方で頼りになりますし、私としても来ていただけると助かりますし嬉しいです!」


    「えっとその……ありがとうございます藤先生。
    ですがやはり参加するのはやめておこうと思います。
    自分のことながら雨男なのだということは身に染みてわかっていますから」


    「……林先生」


    「すみませんね、ただでさえ雨が降っているのにこんな湿っぽい話をしてしまって」


    「実は私、晴れ女なんです」


    「え?」


    「昨日生徒達から言われたんです。
    藤先生はとても明るい晴れ女だから、空も人もすぐに涙が引っ込んじゃうだろうって、
    よくわからなかったですけど、聞いた感じ私の方が強いみたいだから林先生がいらっしゃっても大丈夫な筈です」


    「は……はぁ」


    「あーー!もしかして信じてもらえてないんですか?
    だったら手を出してみてください」


    「手をですか?」


    「ええ!……じゃあ失礼しますね」

    (SE 赤マジックペンの書く音)


    「えっと藤先生……これは?」


    「晴れ女のおまじないです。
    林先生の雨男もきっとこれで治りますよ」

    林M
    「そう言って顔を上げた彼女の笑顔が眩しくて、私はつい視線を逸らしてしまった。
    今思えばの話だが、雨男だから参加し辛いだなんて、私はなんて子供っぽい理由を語ってしまったのだろうか。今更ながらとても恥ずかしい」


    「もしこれから空が曇ってたり、雨が降りそうだったりしたら太陽の方角に手をかざしてみてください。
    きっとおまじないの効果があると思いますから」

    (SE 携帯電話の着信音)


    「あぁ、携帯鳴っていますよ藤先生」


    「あ……学年主任からですね。
    はい……はい……えっと林先生の手伝いで林間学校の資料まとめを……はい。
    えっとそうなんですね、はいわかりました、すぐにそちらに向かいます。(SE 通話終了)
    すみません林先生、どうしても現場で周知しないといけないことがあるらしくて呼ばれちゃいました。
    資料のまとめ作業、最後まで手伝えなくてごめんなさい」


    「いえ、私の方こそ手伝っていただけてとても助かりました」


    「また明日、放課後の時間に続き手伝いますからね!
    今度こそキッチリ終わらせて候補地しっかりと決めちゃいましょう約束ですよ」

    (SE 慌ただしく遠ざかる足音)


    「……返事も聞かずに行ってしまいましたか。
    でも藤先生のお陰で少しばかり気が晴れて気分転換になりましたね。
    帰りはこのまま雨でしょうけど」

    藤N
    「林先生は窓の外を眺めながらそう呟くと、ふと思いついたのか手を太陽の方角にかざして見せた」


    「晴れ女のおまじないでしたっけ、藤先生は一体誰から聞いたんだか。
    これで本当に晴れるのだったら私は雨男だなんてことで悩まなかった。
    っ!?……晴れた?あんなにも曇天で雨が降っていたのに」

    藤N
    「その視線が手の甲へと移る、藤先生が赤ペンで描いたおまじない。
    屈託のない彼女の笑顔と重なる、とても綺麗なスマイルマーク」


    END



    あとがき
    もっと上手い言い回しが出来なかったのかと未だに悩む今作
    私はサシ台本を書くのは苦手かもしれない。

    ちなみに今作の登場人物は実際のモデルがいらっしゃいます。
    自分が小学生の時の先生方で名前もその方の苗字の一部を使用させていただいております。

    男性の方は〇林先生、自分が入学した際に他校に異動したらしく兄からの話しか聞いたことなかったのですが、他校との合同の自然学校(一部地域特有の林間学校や臨海学校の呼び方)でご一緒した際には実際に雨が降りました。

    女性の方は藤〇先生、担任になって頂いた際のテストの採点中に、私の手の甲に赤ペンでチェックが付けられたことがあり。
    その時に晴れ女の件と力をわけてあげたという発言をいただきました。
    また出来事の当日、学校帰りの雨空に手をかざして本当に晴れになったことを切っ掛けに自分は本物の晴れ女だと今でも信じてます。

    モデルになった2人の先生方は時期のズレもあり接点はありませんでしたが、
    今回の話ではもしものIF話として書かせていただきました。

    PS 2020年6月17日 投稿

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