あれよあれよと言う間にデビュー後負けなしで史上最多28連勝した藤井聡太四段。とてつもない記録です。
藤井四段はなぜ28連勝もできてしまったのか。
明らかに今までの棋士とは「質の違う」強さを持っているからです。藤井四段にしても、プロになってどれだけもまれるかと思ってたのに、始めてみたらほいほい勝って、自分自身でもあっけに取られているのではないでしょうか。
21世紀生まれ最初の棋士という象徴的なデビューを果たした藤井四段は、今までの棋士とどう質が違うのか。その背後には、やはり人間より強いソフトがあるのではないでしょうか。
なにしろ要は本当に将棋に強い人間たちと対戦する前に、人間より強いAIで切磋琢磨しているのです。
将棋の対局を見ていると、Ponanza の予想手を見て解説者は「この手は人間には思いつかないですね」とか「この手は人間には指せないですね」とコメントすることがよくあります。人間同士の対局や経験の中で、プロ棋士たちの間に培われたいわば「直感」です。
しかし、AIにとって、そんな常識は関係ありません。あくまで一つの候補手で淡々と読むだけです。藤井四段は、その AI の並べる候補手で育っているわけですから、AIの「直感」に近い「直感」を持っているのでしょう。もし、自分の手を「この手は人間には思いつかないですね」とか「この手は人間には指せないですね」とか言われても、ピンとこないかもしれません。あえていえば人間には読むのが大変な手とか、少しでも間違えると逆転されてしまう勝負手といったものはありますが、今までの人間同士では、「それは指しにくい手」とされて、可能性はあるけどあんまり読まれることのなかった手が膨大にあり、しかし藤井四段は、そういうのを「分け隔てなく」読んでいるのでしょう。
実際序盤の進め方はAIに近いそうです。古い定跡が頭に染み着く前に、AIの序盤を覚えてしまったのです。
また終盤の粘る力も大きいのではないでしょうか。必至をかけられて絶体絶命だったのに、攻め続ける中でそれを解除して逆転したこともあります。AIはどんなに劣勢でも、それがどんなに無様でも必ずなにか手を考えてきます。そんなAIに最後まで勝ち切るのは大変でしょうし、逆にAIのように粘れば逆転できる
最後まで勝ち切る訓練をしていれば、逆に劣勢のときでも、AIのように粘ることができるでしょう。28連勝の中には完全に劣勢であったものの逆転しているものもいくつかあります。
さらに時間の使い方も正直です。読み筋に入っている時はほいほい指しているようです。最近の棋士はわりとそういう傾向にあるかもしれません。
その場合逆に読んでいる時は、「ああこれは読み筋じゃなかったのか」と相手にばれますから、人間同士で対戦する場合は、読み筋に入っていてもわざと時間を使って相手に心を読まれないようにしたりするもんですが、まあ最近の人はむしろ AI との読み合いが多いでしょうから、そんな駆け引きに時間を使うのには慣れてないでしょう。
以上のように質の違う強さだということは、すでに全棋士が意識していることでしょう。
そしてそれ自体が武器になります。
羽生三冠と同じように、藤井四段が指せばそれがどんなに悪手に見えようと、「なにかあるのではないか」と疑ってしまいます。そして変な風に指してしまい逆転される。「聡太マジック」です。
序盤中盤から従来の定跡に縛られない手を指してきますから、考慮時間を浪費しがちになります。
終盤優勢に進めていてもまったく諦めることなく粘ってきますから、間違えるわけにはいきませんが、すでに時間は使い果たしていて1分将棋になっていたりすると、間違えずに勝つのは大変です。
藤井四段が勝てば勝つほど、相手にかかるプレッシャーは大きくなることでしょう。
藤井四段も一度でも負ければ、もっと気楽にさせるのかもしれませんが、ここまできたらどこまで伸ばせるのか、一局一局集中力は高まるでしょうし、ついでに一気に自分のスタイルを築きあげていくことでしょう。いったいどこまで連勝が伸びるのか、また、たとえ負けたとしても、どれかの棋戦では勝ち続けて優勝やタイトル挑戦に行ける可能性は非常に高いのではないでしょうか。それもまた大記録になりそうです。
逆に彼に対抗できるとしたら、彼より若い人ということでしょうか。AIがなくとも彼はものすごい天才であることは間違いありません。それでも、これからの若い世代で、彼と同じようにAIで訓練して同じように強くなる人が量産されるのかもしれません。はたまた藤井四段は今までの天才棋士と同じように滅多に現れることがないのか。これからの将棋界から目が離せません。
まずは新記録のかかった次戦が楽しみです。
《ワンポイントミライ》(?)
ミライ: 囲碁の世界では、 囲碁AI、AlphoGoに3戦全敗した柯潔棋士がその後7連勝してるとか。
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フツクロウ: ホホウ。