ōrzさん のコメント
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先日ニコニコ動画の投稿作品に対して奨励金を払う「クリエイター奨励プログラム」について、今までの実績が発表されました。 niconicoがクリエイター奨励制度を拡充、収入1000万円超える人も -INTERNET Watch クリエイター奨励プログラムについては、開始当時に「 ニコニコ動画、クリエイターに還元で新しいエコシステムに挑戦! 」で紹介して以来、今までほとんどなんの発表もなかったので、うまくいってないんじゃないかと不安でした。 しかし、 ニコニコ動画の売上100億円 のうち3億円以上を還元しているということですし、今回「ニコニコ静画」にも対応ということからもかなり順調ではないでしょうか。 今回1000万円以上獲得した人が3人も現れ、100万円以上獲得した人も60人輩出されました。1000万円といえば、立派な年収ですし、100万円もしっかり家計の足しになる収入です。既存の仕組みに乗らない形で、それだけ稼げる人がこれだけ輩出されたいうのは、時代の流れの中で大きな大きな金字塔です。 月々プレミアム会員費の525円のうち3%にあたる16円は、自分がせっせと見たり、コメントしたり、マイリスしたりした人のところに届くし、それで「食っていける」人まで現れたのです。 おお、なんかもっとニコ動見なきゃ!って気になる、お金出す方もワクワクする仕組み です。 うろ覚えなのですが、「有名な映画俳優は外車ばんばん乗り回すくらい金持ちになるから、アニメータ(? 声優?)からもそれくらいのが出させるくらいにならないと」みたいな発言を聞いたことがあります。 ニコニコ動画からも出てもらいましょう。ニコ動のトップクリエイターは、 巨大ロボ、クラタス10台持ち! みたいなの。もちろんニコ動の仕組みは海外にもにじみ出てもらって、外貨をがっぽがっぽ稼ぐのです。 この数字が出たことで、今後「クリエイター奨励プログラム」はますます活発になることでしょう。 さらには似たような取り組みが他の分野でも始まるかもしれません。 今後、ますます楽しみですね! 「クリエイター奨励プログラム」の背後を探る
(2013/3/1)追記: niconicoヘルプに換金の下限が1万円 と書いてあるのを発見しました。下記で予測した下限約1200円とは大きく異なりました。 そういうこともあるさと改めて増えたデータも使って分析してみましたが、うまく近似できませんでした。
総額を合わせつつ、赤印に近づくように近似しようとしているところ。合わない。
どうやら、より複雑な分布をしているようです。たとえば「もうすぐ期限が切れるから早く手続きして」みたいなアナウンスしているので、支払われていないポイントがかなりあるのかもしれません。いずれにせよ今あるデータだけでは、ロングテールっぽい分布ではあるけど、下記のように、どれくらい支払いが偏っているかを推定できません。残念。 簡単に近似できないということは、きっとそこに興味深い構造があるはずなので、とても気になります。もう少しデータ公開してくれるといいのですが。特に実際に支払った金額情報でなくて、付与したポイントの情報。 なお ニコニコポイントには10ポイントから変換できる そうです。 あと、下記少し計算間違いしてたみたいで、計算し直したら下限は1700円くらいでした。それくらいなら、出したグラフはそんなに変わらないのでそのままにしておきます。
さて、ここからはみらふつ名物ロングテール解析です。(過去の記事は、 Naverまとめから ) 今回1000万円を超える人が複数も出て来たのにはそれなりの仕組みがあるようです。 分析してみました。使ったデータは以下。
クリエイター推奨プログラムがスタートした2011年12月から2012年9月までの10カ月間で、総計3億336万8632円分の奨励金を支払ったことも明らかにした。
奨励金を受け取ったユーザーは合計3973人に上り、中には受取額が1000万円以上のユーザーが3人、500~999万円のユーザーが4人、100~499万円のユーザーが56人いたとしている。
とりあえずの目標は、このデータから10〜100万円、1万円〜10万円、千円〜1万円のクリエイターがそれぞれ何人くらいいるか、推定してみることです。 (註:なおロングテールについてあまりなじみがなくても読めるようにしましたが、より詳しく知りたい人は、 ロングテール記事一覧(Naver) の記事をいくつか参考にしてください。特に先頭の「 ロングテールの、ほとんど知られていない、しかしもっとも重要な性質 」が良いかと思います。) べき乗則として推定してみる
まず、報奨金の分布が、もっとも原始的なロングテール分布である、 べき乗則 に従っているとして推定します。こちらをご覧下さい。
たくさんもらう人から少ししかもらわない人広く分布するので、軸は、800万円、900万円、1000万円や1位、2位、3位と等間隔に取るのでなく、10万円、100万円、1000万円や1位、10位、100位と取ります。ログスケールという奴です。 そして3位の人1000万円、7位 (=3+4) の人500万円、63位 (=7+56) の人100万円として点を打ちます。ご覧の通りかなりきれいに直線に並びます。べき乗則に従うときは、このように直線に並びます。 しかし、今回は、そのままべき乗則として緑の線で近似すると少し問題が起こります。全部で3973人受け取ったとありますが、この緑の線で総額を計算すると6億円を超えてしまいます。 なので、実際の分布は次のように、直線ではなく少し弓なりになっていると考えられます。
これは現実の分布ではごく普通に起こることです。そこで、別の分布を使って、どれくらい弓なりになっているかを調べましょう。 対数正規分布で推定してみる
そこで今回は 対数正規分布 という分布で近似しました。ずばりべき乗則を弓なりにした分布です。もう少しデータがあれば、 Double Pareto-Lognormal Distribution (DPLN) という日本語でほとんど文献のないようなマニアックな分布が使えるのですが、残念……。
これは実際に近似作業をしているところです(註:縦軸が16とか変な数字ですいません)。 さっきの緑の線に対して、今回の緑の線は程よく赤い点近くを通っています。ここで、一番右の点3973位の報奨金額を調整して奨励金総額が3億336万8632円くらいになるようにします。緑の線は対数正規分布の 確率密度分布 という線ですが、それがわかるとその 累積分布関数 というのを使って総額も分かるのです。緑の線で近似するのは、そういうことができるようにするためです。 この時一番右の点は、3973位で1201円になりました。各点が現実ぴったりに合うことはないですが、まあそれくらいの金額から支払われているのではないかと推測ができます。 近似から分布の姿を見てみよう
ということで近似ができたので、当初の目標を実現しましょう。それぞれの金額帯に何人いるかを近似した関数で推定します。 1千万円〜 2.2人
百万円〜1千万円 57人
十万円〜百万円 285人
1万円〜十万円 1012人
千円〜1万円 2616人
計 3972人
実際は "1千万円〜" は3人、 "百万円〜1千万円" は60人、計 3973人なので、だいたいあってます。グラフにするとこんな感じです。
下にいくほど人数が増えるというロングテールの特徴がよく現れています。 そして、「 ロングテールの、ほとんど知られていない、しかしもっとも重要な性質 」から一貫して述べている、どの金額帯も存在感があることを確認しましょう。つまり、各金額帯に支払われた総額をグラフにします。
まずまずロングテールの特徴が出ています。つまり、千円〜1万円帯にもそこそこ払われているということです。 たとえば、人口100から999人の市区町村に住む人は、全人口の0.01%で、人口1,000から9,999人の市区町村に住む人は2%なので、 同じようなグラフを作るとほとんど見えません 。これはロングテールではない例ですが、それに比べれば、上記のグラフはまずまずロングテールの特徴が出ています。 とはいえ、この分布、かなり百万円〜1千万円帯に集中していて、このブログで取りあげた事例の中では相当偏っている方です。普通このような仕組みはもっと均させた分布になるのですが、なぜでしょう。 これは間違いなく、コンテンツツリーによって、子作品から親作品に一部報奨金が流れていく仕組みがあるからです。それがなければ、グラフはもっと均されることでしょう。 n次創作による子作品がヒットしたら親作品に一部還元するというのは、道徳的な面がある一方、報償金が一部に集中するという側面も後押しするようです。 仮にこのような仕組みがなく、全体が単純にべき乗則に従うと仮定すると、1000万円を超える人は1人、100万円を超える人は20数人に半減すると推定できます。 この変形ロングテールシステムのおかげで、「1000万円以上獲得した人が3人、100万円以上獲得した人も60人」という結果が出ました。「ニコ動クリエイターからクラタス持ち出るか?」みたいなばかげた夢を言えるくらい力強さのあるプログラムになりました。 もちろんあまりに偏りすぎればそれはそれで不公平感が出ますが、これくらいならかなり良いバランスだと思います。千円〜1万円帯という少額の人までちゃんと払われているし、でも多すぎず、1000円以下は払われていないことの不公平感がでにくくなっています。見事な調整だと思います。 この仕組みが今後も順調に進むことを期待します。このような還元の仕組みは昔々から期待されていましたが、ニコニコ動画は導入にことのほか慎重でした。その背景には一つには違法アップロードの問題があったと思います。間違っても違法アップロードされた動画が稼いでしまったら、継続は困難を極めるでしょう。JASRACと提携してそれらの楽曲の利用を可能にする一方、違法アップロードを地道に削除するなど、かつてよりは遥かに見通しが良くなりました。 また親作品の問題もあったと思います。コンテンツツリーの整備した上での「クリエイター奨励プログラム」。満を持してのこの実績、ニコ動さすがです。 これからもますます目が離せません! 以上、みらふつ名物ロングテール解析でした。中の人だったら簡単に手に入るデータですが、これくらいのデータでも充分分布の全体像をつかむことが出来ます。未来の基盤である多様性を開花されるロングテール構造の分析、統計とかに興味のある人は是非挑戦してみてください。 ・併せてどうぞ 【 ニコニコ動画、クリエイターに還元で新しいエコシステムに挑戦! 】 みらふつ名物ロングテール記事一覧 - NAVER まとめ ミライ : はい! ここからは「クリエイター奨励プログラム」について六葉未来点 (?) です。1000万円以上3人とか、さらっとすごくないですか!? フツクロウ : ホウじゃ、ホウじゃ。「国民1億人から1円もらえば、1億円になって、大金持ちじゃね?」なんて笑い話があったが、「プレミアム会員100万人から10円もらいました!」は現実になったわ。(実際はプレミアム会員もっと多いけど) (2013/5/2まで、何を血迷ったか「プレミアム会員1000万人から1円もらいました!」と書いてました。お恥ずかしいです。コメントでのご指摘ありがとうございました。) ミライ : ほんとだ〜。ウソみたいなほんとの話ですね〜。
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