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さて普段とは調子の違う記事を載せる水曜日。水曜日の馬車目線[S馬](?)として、現代社会頻繁に言われているけど、ちょっと立ち止まって考えてみたいパターンを紹介します。
「おもてなし」を儲かる仕組みに価格競争に陥らないサービスの設計図とは −−平成25年度おもてなし経営企業選選出記念式典レポート|ダイヤモンド・オンライン
という記事がありました。これからの企業の成長に「おもてなし」が重要であるという内容で、
「人をよりよくもてなす=サービスの質を上げる」ことに真剣に取り組み、そこからより多くの収益を得る構造を作り上げることができれば、すべての企業は成長できる可能性がある。とか
「『おもてなし』は、一見無駄に見える行為の中から生まれるものです。大いなる無駄を覚悟することが『おもてなし』の創出につながるといっていいでしょう」といったことが書いてあるのですが、その一方で、導入には、
と書いてあります。サービスの生産性はなぜ上がらないのかわが国において、サービス産業はGDPにおいて約7割、雇用数においても同じく約7割を占めている。しかし日本のサービス産業の生産性は、ほかの先進諸国と比べて極めて低いとかねてより指摘されてきた。
どのフレーズもそこら中で言われていることですから、恐らく大半の人はすらすら読み流していると思います。おもてなしを使って付加価値の高いサービスを生み出せば、結果的に生産性も上がって外国並みあるいはそれ以上になるだろう、そう感じるのではないでしょうか。
しかし、おもてなしと生産性はまったく別問題ですし、むしろトレードオフの関係ですらあります。
サービスの生産性というと、この場合は「労働生産性」を指していると思われます。かつての物作りでは、労働生産性が上がり一人が作る物の数が増えればそれだけ安いものを海外にばんばん売り出すことができたので大事な指標でした。しかし、サービスはその場で消費されるため、一人のさばける量が増えても、その分輸出できるわけではありません。
たとえば、美容院で今人の手でがシャンプーをしているところを、シャンプーロボットができたとしてロボットにさせたとします。その分従業員を減らせますから、一人が客をさばける量は増え労働生産性は上がります。もしも、すっごいシャンプーロボットができて、人にしてもらうより、ロボットの方がちびるくらい気持ちいいとかいうと話は変わってしまいますが、すくなくとも、今日の「おもてなし」という文脈で、労働生産性をあげるためシャンプーロボット入れて、従業員減らしましたと言っても、誰も素晴らしいおもてなしだという人はいないでしょう。
しかも、日本の全ての美容院にそれが入ったとして、今までの倍お客さんがさばけるようになっても、お客さんの数は変わりません。海外に商品を輸出できるわけではありませんから、単に美容院の数が半減し、街に失業者が溢れるだけです。
また、生産性が上がる副産物も深刻です。顧客を規格化されてしまうことです。客がサービスにあわせるということです。やすく食べてもらうために、食券は券売機で買ってね、そのことで一人従業員を減らせて労働生産性が上がります。普通の元気な人にはなんてことないことですが、高齢者など事情のある人々には冷たいサービスです。
都会では都会全体でこの規格化が強制されています。鉄道からタバコが締め出されたら、次の矛先はベビーカーや高齢者に向かっています(参考: この点は、ベビーカー問題が大騒ぎされる直前に予告しています 焼け野原から復興した灰色ワールドに彩りを。 )。安くで便利な公共機関のために、個人個人が公共機関あわせなければならず、事情のある人には冷たくなっていきます。
シャンプーロボットの例に戻れば、ロボットを買うにもお金はかかりますから、ロボットを買って従業員を減らしても、お金的にはとんとんかもしれません。であれば、均一なサービスを目指す代わりに、あえて人を活用することで相手に合わせたサービスを目指す選択肢があります。むしろ今おもてなしのキーワードなどで取り組まれているのは、そちらなのです。
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