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ドレスの白金・青黒問題の写真、ものすごい話題ですね。ついに本当は青黒だったと真相も明らかになりましたし。
ネットで話題の“例のドレス”、反響の大きさにメーカー側「実際は青と黒のドレスだけど白と金バージョンも作るよ」と宣言 - ねとらぼ
色の錯覚を見せてくれる例題なんて、いままでも吐いて捨てるほどありましたが、それらをぶっこぬいて、この写真がこれからの色錯覚例題の標準になるのではないでしょうか。未来の普通です。
この写真は、偶然できたものかもしれませんが、なるほど、人間の心理をついた傑作なのです。
見た目の色が実際の色と全然違うというのは、写真どころか、今実際に目で見ている現実世界でも常に起こっています。
たとえば、今私が座っている部屋、今日は曇りで部屋はあかるくなく、しかも陰のところに真っ白なタンスが置いてあります。冷静に見ると、全く白ではなく、しかも灰色でもなく、床の畳の影響でしょう暗い茶色です。でも、白と認識しています。
いくら目で見ても白にしか見えなければ、いちどスマホで写真に撮って、その部分を拡大してみるといいと思います。全然白じゃないはずです。
この記事をウェブでご覧なら、右に白いドレスを着て湖の上を歩いている女性がいると思います。彼女のドレス、体の部分の色を実際に測定すると、青みがかった黒です。でもお尻あたりの服の色を手掛かりに、誰もがそれは白いドレスと感じているでしょう。
そんな風に目に入る本当の色はころころ変わっていますから、実は人間は色なんてあんまり気にしていません。昔ディスプレイ開発してたんですけど、花の色とか土の色とかは大胆に変えちゃっても誰も気づきません。だって何色でもありえますから。
では、なぜ今回の白金・青黒ドレス写真はこんなに多くの人を惹きつけたか。服だってどんな色だってあります。
それはこの写真にたまたま人の肌が入っていないからです。そして問題の対象が「服」だからです。
右の写真がその好例ですが、普通服は人の顔など肌と一緒に映っています。その女性の顔はほとんど真っ暗ですから、体の服も暗くて当然。まさかお尻は白、ほかは黒の服を着ているとは認識しません。
人間肌の色には非常に敏感です。いろんな肌の人がいるし、同じ人でも場合によって赤みをさしたり青くなったりしますが、それでも色全体の世界から見ればごく一部の色しかカバーしていません。したがって人の肌が視野にあれば、その場が相当いびつな照明で、元の色からかけ離れたとしても、それを肌の色として認識して、それ以外の色を正しく認識していきます。写真の世界ではホワイトバランスといいますが、人間の目は肌の色バランスを取っているわけです。
ですから、問題の写真に顔も一緒に映っていれば、服の色も即座に白金か青黒かはたまた白茶か決定されるはずでした。しかしこの写真はたまたま肌が映っていないのです。服というのは常に人間とともにありますから、日常生活において大抵なんなく色が決定しています。
しかし、問題の写真は照明の具合もよく分からないし、人の肌も映っていないために、服なのに色が一意に決まらない。それは、めったに起こらない非日常的な事件なのです。
それが、この写真が大騒ぎされた理由です。これが服でなければ騒がれなかったでしょう。しかしそれが服だったために、その色が一意に決まらないことに人々は強い不安を覚え大騒ぎをするということに今回人類は気づいたわけです。
今後色錯覚問題を取り上げるときは、この手法が使われることが多くなるでしょう。
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