のすじいのそーさく日誌159・・どれみふぁ・らぷそでぃー⑦・・
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のすじいのそーさく日誌159・・どれみふぁ・らぷそでぃー⑦・・

2019-12-10 22:42
  • 2
乗り換えをして在来線、田舎っぽい気動車に揺られて更に数十分。
ようやくに到着した万座・鹿沢駅は屋根なしホームの田舎駅。
妙に珍しそうに見回すのは都会育ち、太平洋岸の新入生たち・・・
妙に懐かしそうに見回すのは此れは田舎育ちの新入生たちだろう。

丁度時刻は昼飯時、駅を出て駅前の人気のないバス停で=集合=を掛け
バスに乗り込むまでの小一時間の自由行動を許された音楽莫迦たちは
パートごと学年ごと気の合ったもの同士三々五々別れて昼飯に。

慣れた三,四回生の男どもは駅前の古ぼけた町食堂に大挙して駆け込み
・・おばちゃん、久しぶりっ・・かつ丼大盛りっ・・と声を揃えて注文する。
食堂の方も慣れたものであら、合宿の季節ねえ、なぞと言いながら
おばちゃんが忙しそうに注文を取りに走り回る・・まあ注文はほぼかつ丼だが。

群馬は豚の名産地、此処の田舎町のかつ丼は観光地じゃない分
半端なく分厚く柔らかいカツが新鮮な地卵でとじられた隠れ名物な逸品。

しかも遠来の学生には微笑と共に大盛りがサービスされると言う嬉しさ。
厳しい合宿の前後、唯一の楽しみとして伝統化されてる万座・鹿沢のかつ丼タイム。
値段も都内とは比較に成らぬ安さだからもういう事はないのである。

豪快にかつ丼を平らげた主将の山内がふと気づいたように
周囲を見回し、お茶啜りつつ正面の牟田口と蒼山にひょいっと聞く。

「ありゃ、哲つぁん居ねえぞ・・あいつ、一番楽しみにして無かったか?
喰いっぷりもそりゃあ見事って言うか二杯喰いそうな勢いだったのに去年。」

「・・・聞くな、俺に・・外の駅の・・木陰のベンチ見てこいよ・・山内。」
「ああ、ただよう、邪魔ぁしねえように・・行くほうがよかっぺなぁ・・」

そう言って箸も置かずかつ丼貪りながら応える幹部四回生ふたり。
喰い終わったかつ丼の器を下げに来たおばちゃんに笑顔で勘定すると
山内はひょいっと荷物片手に外に出、駅の方を覗って・・
妙に満面の笑みを浮かべ、食堂内に一目散にとんぼ返りしてきた。

「おい、おいっ・・ありゃ、何だあ?妙にこっ恥ずかしいことになっとるぞお・・
あ、あの哲っあんと、新人の、ああ、弓丘が・・ベンチで(笑)」

其処のベンチの木陰、実に恥ずかしげに大きな躰を縮めるように座った
=先輩=こと哲つぁんが・・妙に可愛げなカラフルに過ぎた=おべんとばこ=
其の大きな手で隠れるくらいの大きさの女の子用の代物を手に
如才無げにウィンナーとか卵焼きを喰ってると言う姿があったからである。

無論、其の隣にはあのおちびちゃんが幸福そうなお顔で鎮座してると言う落ち。
間違いなく此のお弁当、弓丘嬢の手作りと思しき代物であろう。

$のすたる爺の電脳お遊戯。

「せ、せんぱぁい・・どうですかあ?・・う、ウィンナータコさんですけど。」?
「うん、何か小学校の遠足のとき・・喰ってた奴に・・・似てるなあ・・・
 こ、今度は普通に喰えるけど・・・いいのかい?・・・俺が此れ喰っても・・・」

「・・わ、私のお昼って思ってたんですけどぉ・・さっき、十川先輩にぃ・・・

 パン、貰っちゃってぇ・・・どうしようかなって・・・食べて貰えてうれしいですぅ」
「あ・・・ありがとう・・・帰ったら何か奢るから・・・学食でいいかなあ・・・。」

実に嬉しそうにうんうん頷くお稚美ちゃん・・此の朴念仁は気づいていない。

此の弁当自体、本来此のお稚美ちゃんが合宿出発の朝にも関わらず
2時間も早起きしていそいそと=先輩ぃ=のために拵えた代物と言うことを。

さっきの気車の旅の中、偶然の少女漫画ネタで此の朴念仁への妙な恥じらいやら
どぎまぎした遠慮やらが解けなければ、此のおべんとを切っ掛けにして
なんとか=先輩ぃ=に謝らなきゃ、と、ちいちゃな胸で悩んだ挙句に生まれた
此の子にしちゃ、かなり思い切った=策謀=の産物だったと言う事も、である。

駅を降り、さあて、あのカツ丼でも喰うかあ、と徐に独り歩き出した=先輩ぃ=に
必死の覚悟で後ろから声を掛け、せいいっぱいの嘘をついてまで渡すのに成功した
此のお稚美ちゃんの苦悩と努力(笑)の結晶で在ることなんざ、知る由も無い。

あ、此の間のお詫びかい?くらいの軽い気分でひょいっと受け取ると
駅の木陰のベンチに座り込み、缶コーヒーなんぞ此のお稚美の分まで買って
妙に気恥ずかしそうに二人でお昼喰い始めたのは、まあ、成り行きだった。

実際、先輩の十川が作り過ぎたサンドイッチを此のお稚美ちゃんに
もっと大きくなるにはたくさん食べなきゃだめ~とか言って押し付けたのも
まあ、事実といえば事実だったのでは在るのだが(笑)

=先輩=が目の前でちいちゃなおべんとばこを不器用そうに開いて
お、卵焼きとウィンナー・・懐かしい定番じゃん、と微笑んだのを見ながら
貰った缶コーヒー大事そうに握りしめ、ちょいと大きすぎなサンドイッチを
実に幸福そうに=はむはむ=と食べつつ妙に頬が赤い=お花畑おちび=
貰った=ご好意(笑)=を疑いもせず、頂きますと食べ始める=先輩=。

まあ、流石に味のほうは噎せも吹き出しもせぬごく普通のものだったらしく
微妙に足りねえなあ、と言いたそうな表情ながら結構嬉しそうに
弓丘って結構家庭的な子なんだなあ・・なぞと、のほほんと思いながら・・・

其れは、もう、何というか此の世の=ほのぼの=を凝縮し具象化したような
なんとも昭和初期の青春映画に見まごうばかりの牧歌的光景であった。

最初に此の風景を目撃したサックスの牟田口は・・へええ、ほおお・・とか
奇妙な声を発してひとしきり観察した後、こりゃあ哲つぁん誘っても無駄だべ、と
苦笑しつつ駅前食堂に向かったのだったが・・最終的にかなり多くの吹奏部員が
此のリアル=青い山脈=風の牧歌的ツーショットを目撃、驚愕したらしく
其処かしこで面白そうに遠目で観察中の2,3回生がちらほら見受けられる。

食堂を出た主将山内以下の幹部3人も無論其の野次馬の中に・・・居た。

$のすたる爺の電脳お遊戯。

「なあ、やっぱ、こりゃ、春だぜ・・哲つぁん・・間違いなく。」
「けっ、ドリルの合宿前に呑気なもんだ・・哲はあれだから、どうもよお・・」

「蒼山ぁ、単に弁当喰ってるだけだべ?そう言うなっての・・」
「ああ、其れに、妙に・・=和む=ぞ、あれ見てるとよ。」

「まあ、確かに・・哲だからなあ・・其れに・・あ、相手が・・くふっ」

合宿初日から何やってんだ、哲の野郎・・と幾分不機嫌そうに
此の牧歌的ツーショットを役職上眺めていた統制の蒼山も
最後はあのドリルお結び一件を思い出したのか苦笑を始めてしまい・・・

主将の山内に至っては、ほれ見ろ、やっぱり哲にも春が来てるじゃねえか、と

もう興味深々、こりゃあ当分からかいの種になるなあとほくそ笑み・・・
幹部とは言え同期の男どもは存外好意的に此のささやかな椿事を
遠巻きに眺めて楽しんで居るような雰囲気があったのだが・・・

若干一名、ちょいと無粋にして生真面目なお邪魔虫・・・出現。

「弓岡さんっ、何してるのっ・・駅前の公共の場所でっ。
活動中移動中は人目のあるとこで公然とべたべたしないっ!
てっ、哲ちゃんもっ、か、幹部なんだからっ・・少しは・・・。」

$のすたる爺の電脳お遊戯。

きりっとした甲高い声、直立不動な姿勢、殆ど仁王立ちな足元。
言わずもがなの四回生のお局キャラ、ラッパ(トランペット)の美樹遙(はるか)嬢である。
あの某宴席での壊れっぷりからは想像も付かない=女統制(いいこちゃん)=ぶり。

ただ、ちょいと其の顔面が紅潮してるのはまんざら怒りからのみでは無いらしい。

前にも述べたが此の美樹ちゃん自体のレンアイが今ちょい危険な状況であり
只でさえその辺の感情表現に敏感になっちゃってるのはまあ言うまでも無く

しかも、此の微妙に気の強い風紀委員風の4回生女幹部ちゃんの本質はと言えば
密かな愛読書がみつはしちかこの=小さな恋のものがたり=であったりすると言う
少女漫画のようなレンアイ至上主義の純粋無垢なお嬢様だったりした訳で

そう言う無意識の憧憬其の物のような行為を、同じ幹部の其れも結構優しいから
以前はまんざら憎くもないと思ってた此の朴念仁が、生きてる少女漫画のような
天然お花畑、新入部員のお稚美ちゃんと、まあ、何の力みも違和感も無しに
周囲をはばからず、嬉々として(彼女にはそう見えたらしいが)繰り広げる光景は
彼女にとって純粋に羨望の対象と言うか・・そんな感情も大いに在ったやも知れず。

其れゆえかどうかは不明だが、彼女の視線はもっぱら弓丘お稚美にのみ集中し
其のまあ厳しすぎるほどの口調の=指導=は主に此のお稚美(ちび)へのもの。

「いい、弓丘さんっ、此の部は伝統的に衆人の前で
 そんな風にしちゃ駄目なの。

 直属の先輩から聴いていないのかしら?・・
 大体、此れから行く合宿は・・・」


くどくどくどくど・・・・何処から此の語彙が出るか、
と思うほどの弁舌で・・くどくどくどくど。


天然お花畑で正直無垢と言うか後先体面考えるだけの成熟度に乏しいであろう
此のお稚美(ちび)にとっちゃ、もう、青天の霹靂どころか天変地異レベルの説教。

$のすたる爺の電脳お遊戯。


が、思わず、せんぱぁい・・助けてぇ・・・と、ばかりに、無意識に
=哲つぁん=の背中にひょいっと縋りつかんばかりに近づきながらも、
此の説教マシンに必死に何というか違うんですぅ、とか、
そんなつもりじゃないですぅ、とか・・其れでも抗弁しちゃうのも
まあ、彼女の気持ちから言えば、むべなるかな、と言ったところなのだろうが・・・

此れが、美樹女史にはますます気に障ったらしい・・其の上、同期の朴念仁が
珍しくもちょいと表情を哀しげにして、此の掟破りの新人ちゃんを庇うように
更に自分の後ろ側にさりげなく移動させようとしたものだから、火に油である。

とは言え、流石にあの宴席で壮絶にぶっ壊れ、ほぼ泥酔状態に成った上に
甘え泣きして愚痴聴いて貰いながら強制膝枕でおねんねした上に
最後は歩いて30分以上かかる自分のアパートまで此の朴念仁に背負われて
殆ど子供あやすように連れ帰って貰ったと言う甘いような痛いような記憶が在る
同期で、まあ、仲が悪くは無い此の朴念仁、=先輩=はどうも=怒れない=らしく
その甲高い声の非難は殆ど弓丘嬢に向けられているのは妙に可愛いと言えば可愛いが
かわりにもう一方の当事者、弓丘1回生に向ける舌鋒は強烈無比な代物で
其の語気の鋭さと妙に冷徹さも含んだ=指導=はまさに容赦なしだった。

最後は直立不動になって無言に成り完全な涙目で切なげにちらっちらっと
=先輩=を見る弓丘おちびちゃん・・完全にパニック一歩手前。

その様子を妙に優しげな眼差しで見つめていた=先輩=は、ふと溜息を吐き
此のお稚美をこんどは完全に意図的に自分の後ろに庇うように隠した。

其れは明らかに、此の子に其処まで無茶言うなよ、美樹・・と言う意思表示。

其れに気づいた美樹の舌鋒は、なぜか鋭いを通り越してさら過激化し
更に感情的な色が滲みだし、語気も言葉も妙に荒く、激しくなって行く。

しまいには叱責と言うより私怨めいた雰囲気すら漂い始めた気配すらあった。

3年間以上、此の朴念仁と妙に仲良く、お神酒徳利のような遊び仲間関係を
続けていた牟田口は、此のちょいと親父臭い無駄に優しい朴念仁が
本当にぶち切れた時、ちょいと青ざめた顔に成り、冷徹で逃げ場のない弁舌で
相手をぐうの音も出ぬまで追い込み、最後は腕力に訴える事も躊躇しないと言う
かなり厄介な一面もある兄ちゃんだ・・・と、いう事を経験で熟知していた。

$のすたる爺の電脳お遊戯。

まあ、女に手をあげるような奴では絶対に無いにしても、先ほどから見ていると・・・
どうも、=哲つぁん=の顔色が徐々に危険領域に確実に近づいてるようにも見える。

「こりゃあ、恥さらしはどっちだ?・・・人目に悪いのは美樹のほうだっぺ?
・・ちょいと、俺行ってくるわ・・ありゃ、ほっておけんだろ、このまま。

ああ、蒼山、統制が出ると・・大事に成るから、まあ、ちょいと此処で待ってっぺよ。
其れに・・滅多に切れねえが・・・哲つぁん切れると実は一番厄介だしよお。」

見かねた牟田口、まあ、此の手の揉め事には此の部一番のムードメーカーが
此処はひとつ、俺の出番って奴だべな、とばかりにひょいっと腰も軽く
食堂の入り口から駆け出して、美樹女史の一方的口撃(こうげき)を諌めんと
駅前樹下に佇立する三人のもとへ向かおうとした・・・時である。

弓丘おちびちゃんと美樹女史のあいだに、=おべんとばこ=持ったまま
佇立していた=先輩=が・・・ふと、何時もののほほんとした表情を取り戻し
一歩二歩、オーバーヒート気味の美樹嬢にゆっくりと歩み寄った。

其の、ちょいと吊り上って感情的な瞳をじーっと見詰めつつ、である・・・

さっきから意図的に視線を合わせてなかった同期の=哲ちゃん=の急な接近に
思わず鋭い舌鋒が一瞬止まる美樹嬢・・・・この辺の素直すぎなお子ちゃま具合は
叱責されてるお花畑お稚美と=どっこいどっこい=に見えるのはご愛嬌だが・・

「な、何よ・・哲ちゃんっ・・
 な、何か言いたいことが在る訳ぇ?
 ・・大体、あんたも・・・」


此処まで来たらもう引けぬ、と言った風情で更に言葉を続けようとする美樹に
此の朴念仁は、何とも微妙な笑みでうんうんと頷いて・・まあ、落ち着け、と言いたげに
ちっこいお弁当箱を手にしたまま、美樹嬢の肩をぽんっと軽く叩くと
さっと1歩引いて直立不動の気を付けってな姿勢に成り、其処からいきなり
有力なOBか大学吹連関係の大先輩に答礼する時でなければ見れないような
四五度の角度できっちり綺麗に思いっきり・・・=正式の答礼=をかまし・・・・

「チューバ4回生、幹部文連=哲=ですっ、誠に不用意でありましたぁ~っ。」

駅前広場全体に響き渡るような大声で=謝罪=を始めたのである。

$のすたる爺の電脳お遊戯。


主将の山内の口がぽかあんと開き、統制蒼山が思わずぶっと吹き出す・・・

牟田口に至ってはおっとっと、と前につんのめり掛けて其の儘止まる。
無論、美樹の舌鋒もぴたりっと止まり・・な、何よおっ?ってな表情になり
遠巻きに此の騒ぎを見てた、2,3回生男女のざわめきもまたぴったりと止まった。

で、静まり返った白昼の田舎駅の一角で茫然と其のお辞儀を眺めてる美樹に、
更に今度は小声で何かちょいと笑いながら言葉を続け、最後には
顔を上げて何ともおどけた表情で此のお局様を拝み始めた=先輩=。

其の、言葉と言うか弁明らしきものを呆然と聴いていた美樹嬢の顔が
一瞬さらに紅潮し、そのうちにぶるぶると何かを堪えるように震え始め・・
最後は何かを堪えるような、必死の表情へと変化して行って・・・

「・・哲ちゃんっ・・こ、今後っ・・
 言動と行動には・・きっ、気を付けてねっ、

 ゆ、弓丘さんもっ・・・こんな、ば、莫迦の言う事、
 まっ、真に受けないでっ。
 ほっ・・ほっ・・ほんとにっ・・・もおおおっ
 ・・・やってらんないっ・・・。」


最期、捨て台詞のようにそう言い残してそそくさと樹下から走り去ってしまう。

其の時の美樹嬢の顔が、何故か先ほどまでの怒りとは異なる表情で
紅潮しつつ笑いを堪えているようにさえ見えたのはちょいと疑問だったが
此れ以上の大騒ぎは避けられたみたいだべ、と・・牟田口は安堵したように息を吐き

今度は残された例の凸凹男女のほうを・・大丈夫かあ?と思案顔で眺めた。

統制の蒼山と主将の山内も、美樹の奴、やっぱちとナーバスになりすぎか?・・とか
・・森村の野郎、一応くっついたなら、最期まで責任もって面倒見ろよ・・とか
こころのなかで=男の本音=を密かに呟きつつも此処では顔には出さずに
此の一過性の台風のようなちょいとした珍事の当事者二人を遠目に見ていたが

其の同期3人の注視する前で、何の力みも無く、ごく自然に・・・

走り去る美樹を微笑で見送りながら、此の朴念仁は・・・
自分、つまり=哲つぁん=の背に隠れるようにちょこんっとくっついて
幾分震えているようにさえ見えた涙目の=弓丘お稚美(ちび)ちゃんへ
妙に優しげに何かひとことふたこと言い・・さらに半べそになった此のお稚美の
自分の胸まで在るかないかの頭のてっぺんをくしゃくしゃっと=撫でた=

$のすたる爺の電脳お遊戯。

其れを見た蒼山と山内は・・・=おっ、=と一瞬瞠目したものの、
其の、妙にほのぼのとした凸凹ツーショットをさらにまじまじと眺め
何とも脱力感に溢れた声音で・・ほぼ同時に呟いたのだった。

「・・・殆ど親父と娘だな・・あの組み合わせって言うか・・其のなあ。」
「・・ありゃ、ほぼ親子じゃん・・・色気もへったくれも無いわな・・くくくっ。」

が、牟田口は二人の其の一言を聞いて心中で密かに呟く。

ばぁか(莫ぁ迦)、それじゃあ・・
何だ、其の、ああ、近親相姦になるっぺ?


・・い、いや・・まあ冗談冗談っ、失言失言っ
・・・あの哲つぁんだもんなあ。
さ、流石に最近・・・ロマンポルノ見すぎだっぺかなあ、俺。

と、苦笑して今度は逃げて行くように去った美樹を追いかけて行く。

彼女の突然の逃走の理由は定かでは無いけれど、まあ、此の場合は
其れなりにフォローしとくべ、という気遣いでからなのは、まあ疑い無かった。

このあたりが此の兄ちゃん天性の優しさであって、此の兄ちゃんの存在が
此れまでも此の学年と其の前後の吹奏部員の人間関係調整に於いて
重要でありがたい潤滑油のようになってくれているという事実は
周囲全部が熟知しているところだったから・・此の場はまあなんとなく収まり
此の瞬間、駅前に偶然屯していた部員以外は、何があったかも知らぬまま
此のささやかなひと揉めは無事終息を迎えることになったのだが・・・

ほぼ一時間後、合宿の本拠地に向かう田舎の路線バスの中・・・
一時のお怒りは鎮まったものの思い起こすたびに莫迦らしくなってくるのか
問わず語りに喋りまくる美樹の=饒舌=で本件の全貌は明らかになる。

無論、目撃者のみならず、見てないから知らずに済んでた連中にまで(笑)

「・・もうっ、聞いてよっ、ほんとに、もおっ・・・ああっ!
あの二人ってっ、ほんとにもうっ・・敵(かな)わないわよっ!・・

え?何怒ってるって?・・あ、呆れてんのよおっ。

あ、あんなとこで=おべんとばこ=ひろげて、二人でご飯なんてっ
公衆の面前で、その、あんなにべたべたしてたりしてっ・・・
哲ちゃん、一応=幹部=よ?・・其れも入って1カ月の1回生、相手にっ!
た、確かに、見てて・・可愛いかも知れないけど・・こ、これじゃ・・その
そ、そうよっ・・・後輩に示しがつかないわっ・・・って、
ち、注意しに行ったのっ、あたしっ・・此れは先輩の義務よっ。

そ、そしたら、哲ちゃん、あたしにあんな凄いお辞儀してっ・・
何言いだすかと思えば、いきなり、・・・もうっ・・・

こ、此の間ドリル練習で喰わされたお結びがあんまりに凄いから、
冗談で=弓丘、おまえ根源的に味覚が常人と異なるだろ=・・ってあの子に聞いたら
=酷いですぅ・・じゃあ、お弁当作って来ますぅ=って言うもんだから
妙に面白くなって、思わず、冗談半分に・・そのっ・・・
ああっ・・もうっ・・
じゃあ、うっ、上手くできたらっ・・ 
よ、よ、よっ・・=嫁にもらってやる= って言ったら

此のお稚美(ちび)が・・半ば本気にして・・作って来たんであって?
非は全部俺に在るから許せっ・・なんて・・真顔で言ったあとに・・さらによっ・・

まあ、充分今すぐでも貰ってやれるくらい旨かったから
つい本気で食ってて
状況とか周囲に気が配れなかった、
俺がすべて悪い、許せ、・・とか・・

まっ、真顔で言うのよっ・・そ、そんなの冗談でも・・
本気で、お、怒れないじゃないのおっ!


ああっ、ばかばかしいっ!もうっ!ほんとにっ!・・あんな、そのっ・・
=少女漫画地で行ってる=連中っ・・もうっ・・好きにすればいいのよおっ。

な、何が可笑しいのっ?・・ひ、人の事莫迦にしてっ・・もおおおっ!」

無論周囲の座席の幹部全員が大爆笑し、三回生以下の部員も声を潜めつつも
其の顛末を聴いて大いに笑っていたのは言うまでもない・・・
むろん、其の時前方の席で真っ赤になってた当事者の弓丘と、
どこ吹く風で窓の外眺めてお、綺麗な緑とか言ってる=先輩=を除いては。

何処か長閑な風景が山道に変わり、木々の緑が更に色濃く変わる田舎道。

貸切状態の路線バスがつづら折りのカーブを曲がってちょいと揺れるたび・・
=先輩=の手元で妙に軽快に、明るく、かたかたっと鳴る=音=。
よくよく見れば其れはちいさなおべんとばこのなかのプラスチック箸の鳴る=音=。
先程の、木陰の昼食騒ぎのあと、綺麗に喰い終わったちいさなおべんとばこ。

洗って返すよ、と言ったまま=先輩=が持ってた其のおべんとばこの蓋のうらに
お稚美ちゃんの精いっぱいの自己主張、可愛い願望の具象化らしきもの・・・

流麗な女文字の=せんぱぁい=というひらがなに添えるようにして
ちっちゃな=はあと=マークがこっそり描いてあるのに此の兄ちゃんが気づく事は
まあ、此の調子では当分在るまいなあ・・・と思われる、初夏の午後であった。

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たまらん 先輩の朴ニンジンがたまらんw
1ヶ月前
×
>>ezoroninさん 朴ニンジンっすよねえw
実際、往時は朴念仁という言葉を聞いて
一発で理解する奴が少ないくらいの楽器莫迦集団でしたw
外に、歩く混沌(カオス)だの言われてたようです此の兄ちゃん。



1ヶ月前
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